第15話~夢を語る~
「秋ですねぇ」
「そうだねぇ」
ゆるーく会話しているのは、オレとアリイちゃんだ。この前の保健室で同じベットで寝た日から少しだけ時間が経っている。さっきちょうど、放課後の中庭でアリイちゃんが読書しているところを教室の窓から見かけて、オレがひょっこり会いに来たわけだ。もしかしたら、オレのアリイちゃんに会いたいと言う思いが伝わったのかもしれない。こういう好きな子と中庭でまったり過ごすのも乙なものだ。というか、なんで、図書室じゃなくて、中庭で読書しているんだろう。秋の心地いい風が吹いてそう遠くない未来に冬が来るのか……とか考えていた。
「先輩は2年生ですけど、進路とか決まってます?」
「オレは進学かなぁ、できれば、この関西圏で、関東に戻るのは嫌だなぁ」
それを聞いてアリイちゃんはホッと胸を撫で下ろしたように見えた。そりゃ、関東からわざわざ転校してきた先輩がまた進学のために関東圏に戻ると言われるとオレでもモヤッとはするか。
「進学ですかぁ、勉強続けるんですねぇ」
「まぁ、オレはさ、夢があるんだ、学校の先生になるっていう」
「わぁ、大人になっても勉強続けるんですね、どうしてです?」
「今まで何人もの学校の先生とか見てきたけど、本気で生徒とか児童に、まぁ、学生にしっかり教えたいって言う熱意を感じなくてさ、もちろん、ここの先生も例外なく何人もいるんだけど……。それで、オレが先生になって、生徒や児童は勉強はやり方によってはすごく楽しいんだって伝えたいんだ。なんていうか、先生ってさ、勉強教えるのだけが仕事だけじゃないしさ。勉強が楽しいって伝えたいの後に『勉強教えるのだけが仕事じゃない』って言うのは変だけどさ」
「そうなんですか、頑張ってください!! わたしは……の」
「アリイちゃんは、この間高校受験終わったばっかだけど、今のところ就職したいのか、進学したいのか決まってる?」
「おっ、三条先生の放課後の秘密の進路面談ですね」
「まだ、先生になれてないし、ただの友達として聞きたいんだ。アリイちゃんの人生に少しでも関わった者として」
「なるほど、わたしは……やっぱり言えないよ、先輩の奥さんになって一緒に教育改革進めたいだなんて……。付き合ってるわけでもなしし、今も友達としてわたしの進路に興味があるって言ったんだもん」
「どしたの?」
アリイちゃんが話すごとに言葉が小さくなっていってなんて言ってるかわからなかった。
「いえ、わたしはわたしの人生を歩みます!! 先輩、さよなら」
「え?」
そのままアリイちゃんは学校を後にした。オレなんか言っちゃいけないこと言ったけ? その後、しばらくアリイちゃんはオレと学校ですれ違っても挨拶すら返してくれなかった。これは本格的に嫌われてしまったのか……?
毎度の如く、当たり前のようにつるんでいる、ヒミコさん、船原さんといるとに、アリイちゃんとすれ違った。
「あれれ〜アリイちゃん、空くんのこと無視してるよね、意図的に」
「そうなんだよな」
「転校せーい、山下さんに何をした?」
「船原さんよ、いい加減に名前で呼んでくれないか? 何をしたと言われてもなぁ。オレはただ単に夢を語っただけなんだけどなぁ」
「夢?」
「その……先生になりたいっていう夢をアリイちゃんにちょっと話しただけなんだけど、それかなぁ」
「うーん」
「というか空くんはアリイちゃんのことどう思ってるの? ただの後輩? それとも友達?」
「うーん、オレはアリイちゃんのことは、後輩だと思ってるし、友達だとも思ってるし、それ以上に好きなんだ!! ……恋愛感情でさ。なんだろ、文化祭の前後から、日に日にアリイちゃんに惹かれていって」
「それを今、アリイちゃんにぶつけたらいいんじゃないのかな?」
「でも、今無視されているんだよ?」




