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悪夢  作者: &E
3/6

悪夢の攻略方法

悪夢から覚めた時、夢の中で起こったことは現実ではないと知らされる。

その時に、はっきりとした安堵感と圧倒的な現実感が押し寄せるのだ。


あぁ、あれは夢だったんだ。だから大丈夫。

あんなひどい夢を見た後でも、そう、現実に目覚めてしまえばどうってことない、と中学生の私は思ったのだ。


「夢」は現実に干渉しない。


だから、すぐ忘れてしまうのだ。学校行って、部活をやって、家に帰ってお風呂に入って…。

昨夜感じたあの痛みを感じる夢は、現実じゃない。遠い昔話のような、そんな感覚だった。

ベッドの中に入っても、怖がることはない。だって、もう同じ夢を見ることはないでしょ?

と、たかをくくっていたのだ。


しかしだ。

またあの悪夢を見るのは、一週間ぐらい経ったあとだったろうか。

今度は、夢を見ていない時に起こった。

あの時の痛みを唐突に感じたのだ。暗闇の中。お腹が痙攣しているような痛み。どくどくどく、と。波打っているような痛み。痛む場所は、一か所。決まって右腹や左腹そして背中を移動する。小さい小人が私のお腹の中で蹴りを入れているような。

トン、トン、トン、トン、

ドン!ドン!ドン!

定期的なリズムを刻む小さい痙攣のような痛みから、急に激痛に変わる。そして、その激痛は不定期で、長く続くこともあった。

目を瞑りながら、その痛みが収まってくれないかと望むのだ。

何度も目を瞑りながら寝返りをうつ。

でも、痛みは変わらない。

痛い、痛い

でも、目は開かない。手でキツくお腹を押さえる。痙攣しているお腹の一部が上下に動く感覚があるのに、手にその感覚は伝わってこない。痛みは続く。時々、刃物で刺されているような痛み(刃物で刺されたことないからこの例えが適切か分からないけれど)のようだったり、お腹にいる赤ちゃんがおもいきりお腹を蹴り上げいるような痛み(妊娠したことないから分からないけれど)のようだったりする。


私は、前回のように起きることを試みる。

目を開けようと試みるのだ。でも、私の目は貝のように閉じたまま、動かない。

開けろ、開けろ、開けろ。何度も寝返りを打つ。

一瞬、目を開ける。ものすごい眠気が襲ってきて、やはり閉じてしまう。


起きれない。だけど、痛みの感覚はすごくリアルだった。

目を瞑りながら、痛む場所に神経を向けて、その痛みが収まらないかどうか念じてみる。

ドン、ドン、ドン、

痛さに腰が浮く。歯を食いしばる。眉間にしわを寄せる。

痛みは変わらない。念じても痛みは収まらない。

声を出さなきゃ、あーあーあーあーあーあーあー、何度やっても声はでない。


唐突に目が覚める。目が覚めると、痛みは引いていく、少し余韻を残しながら。

体が硬直して、動かすのがしんどい。ずいぶんと体が重い。水の含んだ毛布にくるまれているようだ。

現実の世界でお腹に手を当てて、ゆっくり、体の位置を動かして寝返りを打つ。

お腹に手を当てるのも、寝返りを打つのも、全部夢だった。私の夢の中の話だ。

恐ろしい。私の「現実世界で動いている」と思って行動したことは全て、夢だったのだ。


体が現実に徐々に慣れていったのを感じたら、起き上がって電気をつける。

目が覚めると、痛みは必ず引く。そして、お腹はなんの損傷もない。

あの時と同じ夢だと疲れた頭で思い出す。悪夢から目覚めた後でも、ものすごく眠かった。

このタイミングですぐに寝たら、またお腹の痛みが戻ってきそうだったけれど、恐ろしいくらいの強烈な眠気が襲ってくるのだ。


私は、もう一度眠る。

しばらくした後、またあの痛みがやってくる。

(あぁ、嘘だろ、2回目じゃないか)

もう少し時間を置けばよかったと後悔しても、時すでに遅く。

二回目の激痛。ドン、ドン、ドン、

一度目が覚めればもう見ないと都合よく思っていたが、そうではなかったわけだ。

私はまた、夢から目覚める為に何度も夢の中で目を覚ます。


ーーーーーーーーーーーー


悪夢を見るスパンは、1週間後だったり、3日後だったりして、不定期だった。

3日続いて同じ悪夢と見た時は私もとうとう、どうにかしなければならないと思い始めた。


私は、この悪夢を攻略しなければならない。

悪夢のパターンは色々あったにせよ共通点がある。

1、痙攣するような痛みがあること。

2、夢の中で起きても痛みはやまないこと。

3、二度寝でも見ることがあるし、見ないこともあること。

4、悪夢を見た後でも、眠れなくなることはないこと。強烈な眠さは若さゆえか。

5、夢の中だと気づいていてもなお、夢は私の思い通りにはならないことが多い。

6、夢から覚めれば痛みは消える。声を出すことが有効的だが、うまくいかないこともあれば、何もしなくても突然目覚めることもある。


眠っている時に起こる心霊体験に「金縛り」がある。

金縛りというのは、眠っている時に体が動かなくなることだ。

自分の上に誰か乗っている感覚がある。体が重い、動かない。そんな現象だ。

金縛りは、医学的に現象が証明されていることで、それは睡眠麻痺という睡眠障害の一種なのだとか。

私の悪夢も「睡眠障害」なのだろうか。睡眠時に物理的な痛みが伴うことがあるのだろうか。

確かにあの時期、私は病んでいたのかもしれない。ストレスがあったことは事実だ。


だけど私は、おそらくだけど、何か嫌なモノが私の体を実際に傷付けていたのではないかと思う。

「悪夢 痛い」「痛みを感じる夢」と色々な単語で検索して、中学生なりに調べてみても、私と同じ例は出てこないからだ。


私の夢は特殊であり、“見えざる誰かが私に暴力をふるっている”と仮説を立てる。

それをやめさせるためには、私は現実に戻る必要があり、つまりは夢から目覚めなくてはならない。

それが私の悪夢の攻略方法だった。

だけど、私は苦戦する。夢から覚めればいい。目を開ければいい。そんな簡単なことができない。


私はとうとうある手段に出ることにする。

母に相談することにしたのだ。


それが吉と出るか凶と出るか。

次回、私は親に悪夢のことを相談します。


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