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悪夢  作者: &E
2/6

私はひどい夢を見る。

それは、学校で遠足に行く夢だった。


仲の良いグループと一緒に遠足に行く夢で、楽しい夢だった。

詳細は覚えていないけれど、とにかく何の苦しみのない夢だったのに、突然自分のお腹が痛くなった。


その痛さは内側から私の腹を思い切り蹴り上げるような痛みだった。時計の針のようにリズムよく、脈を打つように。そしてその痛みは移動していた。右腹から左腹に移動したかと思えば、背中が痛くなったりした。どの痛みも内側から誰かに蹴られているような痛みだった。

痛い、痛い、痛い、痛い、


私は、目を開ける。

痛い、まだ痛い、起き上がろうとする、起き上がらない。

痛い、痛い、手を伸ばそうとする、手が伸びない。動かない。

眠い。ものすごく眠い。私は眠りにつく。


眠っている間、少しは痛みが和らぐのを感じる。

よかった、このまま寝れる。


そして、唐突にまた痛くなる。

痛い、痛い、起きなきゃ、目を開ける。寝返りを打つ。

それでも痛い。起きようとする、起きて電気を付けようとする。

電気がつかない。何度、紐を引っ張っても、電気がつかない。

電気がつかない?

お腹がいたい。痛い、痛い。


目を開ける。さっきのは、夢?

お腹が痛い。私は、起き上がる、電気を付けようとする。

紐を引っ張る、引っ張ってもカチッとした感触がない。電気はつかない。

電気がつかない。なんで?

私はベッドから降りる。二段ベッドのはしごの固い感触が足の裏から伝わった。

梯子から降りて、部屋のドアを開けようとする。

ドアの目の前で、体がふわりと浮き上がる。うきあがる?

ドアの取っ手に手が届かない。

私の体はベッドに戻される。


あぁ、

これは、夢なんだ。


お腹が痛い。痛い。目覚めなきゃ。


目が覚める。お腹が痛い。声を出そうとする。

あーあーあーあーあーあーあーあ、

出ない、声がでない。喉の奥に言葉が押し込まれるような。

あーあーあーあーあー、

体は動かない、お腹はものすごく痛い、声はでない。


目を開ける。起きた。起きれたのに、お腹が痛い。

目の前には、オレンジ色の豆電球。目は開いているのに、体が動かない。


脈打つその痛みは波があって、ものすごく痛いときと我慢できないほどじゃない痛みとが、不定期にやってくる。

声を出そう、声を。息をすって、吐く。

あーーーーーーーーーーー

掠れる、その息に私の声は乗ることはない。

あーーーーあーーーーあーーー、「あーーーー」



声が出た。そして、唐突に目が覚めた。

今まで「起きた」と思っていたのは、夢の中で「起きた」だけであって、現実の世界で「起きた」わけではなかった。私はひたすら夢の中で起きる夢を何度も繰り返しみていたのだ。

それを、「現実」だと思って。


ひどい夢だった。まだお腹の脈打つような痛みの余韻が残っていた。

でも、「本当に起きた」今、もうその痛みはかすかに残るだけだ。

私は上半身を起こして、電気の紐を二回引っ張った。豆電球だった電気は、カチカチと音を立てて、白く発光した。


電気が点いた。

私は、自分のお腹を確認する。私のお腹は、何の傷もなかった。


楽しい夢だったのに。友達と一緒に遠足してたのに。

その夢の中に突然割り込んできた。


眠るのが怖かった。眠ったら、またお腹が痛くなるような気がした。

でも、明日は学校だった。寝なければならないし、眠かった。

寝たら、うなされるかもしれないから、私は電気を付けて寝た。

電気を付けて寝れば、うなされないような気がしたから。


ひどい夢を見ても、私は明日のために寝なければならない。

生きる上で寝なければならない私たちは、夢を見ないことは避けられない。


これが、私のはじめての悪夢で、そしてこの悪夢が続くことになる。

何度も、何度も、現実だと信じて夢の中で起きるのだ。

次回は、夢の頻度とか攻略方法について

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