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「床入れの儀式」夫を愛さない宣言します!でもその時に夫は?

あわただしい儀式の後の初夜に向かう皇太子ハインリッヒを待ち受けていた新妻フロレンティーヌは?

挿絵(By みてみん)

薄暗い内宮の廊下を侍女に灯りをともさせて足元を照らす光を頼りに僕は歩く。

いつもとは違うその場所が近づくにつれて、心臓がドクドク音をたてているのがわかる。


母の勧めで結婚した相手フェレイデンの大公女。

皇太子には皇太子妃を決める選択権はない。

どんな人が嫁いできてもちゃんと誠意を持って夫の務めを果たそうと思っていた。いや思っている。


そうそれは事実だ。

嫁いで来た大公女は意外にも噂とは違う印象の女性だった。


噂…そうフェレイデンの大公女の噂


「氷の大公女」


誰にも冷たく誰にも容赦なく、誰にも心を許さない。

会った者見た者を一瞬のうちに凍らせる冷たい女性。

並居る求婚者をめった刺しにして退散させるという人物と聞いていた。

母上は声を出して笑っていたが。

それが大陸の各国の宮廷で囁かれている大公女の評判だ。


今の所借りて来た猫のように大人しい。

どうかわからないけど…それでも僕は誠意を示そうと決めている。


いろいろ考えていたら侍女が急に立ち止まった。

皇太子妃の寝室の扉の前らしい。

僕も止まる。


侍女がその手でノックした。


「はい」


小さな小さな声がする。

急にまたドクドクと心臓の鼓動が激しくなった。



「皇太子殿下 お越しでいらっしゃいます」


「お越しください」


侍女はその声で扉の脇に移動し、僕を部屋へ入る様に手で促す。


僕は深呼吸をして冷たいドアノブに手を掛けてゆっくり回す。

ギ~という音と共にその部屋の奥が開かれた。

挿絵(By みてみん)

闇に溶けてゆきそうに薄暗い寝室に入ると、廊下のさらに薄暗い寝室の中央に寝台が置かれている。

天蓋に薄いシフォンの絹のカーテンが閉じられてその中に正座して座るあの人がいる。


身体のラインがうっすらと見えるナイトドレスはライトピンクで、所々レースや刺繍が施してある。

少し俯いて固くなっている姿は初々しい。

ちなみに僕は女性経験は皇太子の必須案件なのですでに体験済だ。

これは一種の成人の通過儀式で後継を得るために名家では一般的に行われている。

大体は乳母の中なら若い女性が選ばれる若いといっても僕より二廻りほど年上の既婚女性が最適だそうだ。

初床の儀式に選ばれた女性は夫には官職を上げ、それなりの対価が与えられる。

そのまま寵愛されて公娼に昇格する場合もあるらしい。

僕の相手は対価をたっぷり与えられ夫と宮廷を去り現在念願の田園生活を満喫していると乳母頭は言っていた。


寝台に近づくと妃は震えて身を縮めて目をつぶっている。

薄暗い光は青白い肌を照らしてほのかに浮かび上がる。

光を浴びて輝く白い磁器のような肌は美しい。

思わずぽ~となる。


妃はベットの真ん中で、僕は端に腰をかけてしばらく無言でお互い下を向いている。

ほとんど意思の疎通なく、お互いを知らないまま結ばれる事がいいのか?悪いのか?僕にはわからない。


ただ少なくてもそういう事とは関係ないのが王侯貴族の婚姻だ。

でも何故かこの妃にはそうしていいのか?

そうすることがよい事なのか?

と疑問にするそんな雰囲気がある。


僕はどうしたいのか?そうすればいいのか?

決められないまま、なんだか話がしたくなって身体を妃に向けた。

言葉をかけようとした時だ。


「殿下! お話があります」

突拍子もなく突然の大きな妃の声に驚きと疑問と戸惑いが同時に起こる。


「何?」


僕は警戒されないようにつぶやくようににっこりと微笑んで言った。


妃は震える身体で、しかし瞳には決心したような力強い意志が見える。


しばらく口元が震えていたが、目を閉じたまま急に口を大きく開けその言葉を放った。



「私フロレンティーヌ・ディア・フォルディスは

   皇太子殿下を愛する事は絶対にありません」


えっ今僕の事を愛さないと言った?


エッ えぇ~~~??


僕は何を言っているのかしばらく呆然としたがそのうち我に返った。


何それってどういう意味?

愛さない?愛する?愛さない?えっえっ…………。


今僕の出来る事は現時点においてそう。そうだ。

とりあえずとりあえず……。

続きは聞きたくないし、頭はパニックだし、その発言に頭が置き去りにされているこの現状を回避したい。


とりあえず考えるのは後にしよう。


どうも妃がどういう性格でどういう人なのか今はわからないから。

ひとまず嫌いではないようだが!!


どのくらい時が流れたのかまったくわからないが、ぼんやりして浮かぶ妃の口が開きそうになっているのがわかった。


僕は速攻布団を頭から被り。


「疲れたから寝るね。

 君も疲れたろう寝よう」


そう早口で言ってそのまま何も聞かない。

何もしないまま。

身体を横にして妃の反対を向いて眠りにつく。

本当に寝れるはずはないが、とりあえず今夜はこうするしかなかった。


とりあえずは……。


この後は妃は何も言わなかったが、しばらくベットに正座したまま微動だにせず一つため息をついた後僕と同じように反対を向いて眠りに入る。

おそらくは熟睡出来ないだろうが。



そのうち話合いが必要ですね。


オルファンの夜はふける。


次回はついにフロレンティーヌ離婚宣言貰う作戦決行


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