初顔合わせで罪悪感が満載に
遂にオルファンに向かうフロレンティーヌを待ち受けるのは友好的な歓迎だった。
優秀な講師を招き、元々優秀なフロレンティーヌは知識をドンドン吸収して一年を待たず八ヶ月目にカリキュラムを終えました。
出発まではやり残した論文仕上げだ。これを出してまた賞が取れたら自立資金で財団を立ち上げる。
そしたら総帥になって紙に書いていた事を実行したい。
一心不乱に筆を動かす。
頭の中に完結にまで至る文字がかってに出てくる。
まさにトランス状態こうなると止められない。
あれよあれよという間に遂に出発日がやってきた。
今日は宮殿で最後のお別れの後旅立ちます。
全然淋しくないわ。
だって一年後に帰ってくるから。
今日は普段は離宮で暮らす高祖父様と叔母様もおいでになります。
御父様の妹の叔母様は肖像画の御高祖母様に似て大変お美しい方です。
御高祖父様が溺愛されて他国の婚姻も断り続け、結局公爵家の次男を婿養子にとり二女の孫と暮らしていらっしゃいます。
「御高祖父様 わざわざありがとうございます
幾久しくお元気で」
「ああ 行っておいで
エリザベートによろしくな」
「はいお伝えします」
にっこりと微笑んでご挨拶を終えました。
見送りに来てくれた両親と姉弟、姉妹達。
お祖父様、お祖母様に、叔父様叔母様達に別れを告げました。
八頭立ての婚礼用の大きな馬車に乗り込んで出発しました。
まぁ一年後に帰ってくるから、まぁ留学だと思って参ります。
ガタガタと揺れる馬車に乳母と侍女を伴って長い旅路に向かいます。
長い道のりを馬車や帆船に乗ってようやく着いたオルファン帝国は書物に乗っていた通り異国情緒たっぷりでなんだかワクワクします。
外国訪問は初めてです。これが本当に留学ならどんなにいいでしょうか??
宮殿は開放的で今は冬らしいがフェレイデンの晩秋くらいの気候です。
あぁ本当に留学だったらいいのに!
となんだかんだ宮殿に入りオルファンの民族衣装を着て、まずは皇帝陛下夫妻に謁見します。
まっ今回は親族同士の婚姻なので、皇帝陛下の私室の居間で家族だけで行われました。
ちなみに臣下のお披露目式は行われてから結婚式を大神殿で行います。
気温の温暖なオルファン帝国では基本床での生活の様です。
侍女が私を手前の座に座る様に促しました。
上座は当然皇帝夫妻、私の隣は左は空席当然ここは皇太子殿下が座られるのでしょう。
慣れないですが、床に座椅子を敷いてクッションの上に座ると事です。
そしてもう一つ慣れないのはこのオルファンの民族衣装です。どこも開き開きの衣装……。
暑いのでそれは仕方ないですが、腕は一応手首までありますが二の腕までぱっくり開いているし。
胸元はざっくり胸元まで開いてます。さらに足元は足首まであるもののざっくりざっくり開いています。
こんなの着たことないです。どうしたらこんなの……。恥ずかしい~~~~で~~~~す。
恥ずかしいしかもこれで座ったら丸見えじゃない~~~~~もう~~~~~。
どっしたらいいの?どっしたら見えないの???
などと座り方をあれこれあれこれ試していると……。
「陛下おいでになります」
万事休す。もう知らない(泣く)
手を床につけて頭を頭を手の甲につけて正座でいるのがオルファンのお辞儀です。
あれ?なんかそうすると意外と開いているとこ全部かくれるのね。なるほど……ね。
書物では民族衣装の絵は見ていたけど、実際にきているとなんだか感覚がちがいますね。
下を向いていると前に人影が通るのがわかります。
向かいの席に人が座る感じが伝わります。
そして私の隣にも座る人物を感じます。皇太子殿下ですよね。
伯母様のエリザベート皇后陛下
叔母様お綺麗です。
宮殿で何度も叔母様の肖像画を見ましたが、豊満なお身体と妖艶な容姿が大変お綺麗です。
女の私もドキドキしてしまいます。
頭を下げている私の前に人影の雰囲気でおそらく女性です。
もうあの方しか考えられません。
ものすごく百合の香水の香りがします。
この国の百合は皇后の象徴であり、その香りを付ける事の出来る方は皇后陛下のみだそうです。
膝をついて私の手を握りしめたかと思うと。
私の顔を両手で掴んでにっこりと微笑んだではありませんか。
その顔といったら肖像画よるも美しく本当にこんな方がいらっしゃるのかと思わずぼ~としてしまいました。
「お会いできてうれしいわ。
フロレンティーヌ。
本当にアレキサンドリアにそっくりね」
お声も鈴がなるように可憐です。
うっとりしている私は我を完全に忘れています。
あ~~ダメ駄目駄目私しっかりしなきゃ。
「皇帝陛下 皇后陛下 皇太子殿下
お初にお目にかかります
フェレイデン帝国 フォルディス大公 フロレンティーヌ・ディア・フォルディス大公女でございます
幾久しくお仕えさせていただきます」
「うふっ いいのよ。
今日は家族だけの内輪の顔合わせよ。
また謁見の間でね」
「エリザベート僕も紹介してくれ。
なんて可愛い公女様だね。」
低くコントラバスの様な響きの良い声皇帝陛下だ。
若い頃は一時期残忍皇帝と呼ばれ皇后を十人犠牲にしたと噂の皇帝だったそうですが、エリザベート伯母様の機転で大変な名君として有名です。
すごくエキゾチックなお顔立ち美男子でいらっしゃいます。
とてもお似合いの御夫婦です。
「お許しを皇帝陛下
ご挨拶もせず」
「ふっ かまわないよ。
エリザベートもいってたろ。
君は家族だよ。私の娘だ。 よろしくね」
笑った笑顔も素敵です。
「さあ あなたの旦那様の皇太子殿下です。
ハインリッヒ・ディア・オルファンよ」
伯母様はそういって私の顔を隣の男の子の視線に向けさせた。
そこには黒い髪の少し小麦色をした健康的な肌と輝くほどに純真なライトブラウンの瞳をし桃色の唇をして口角を上げて微笑む皇太子の姿があった。
年の頃私より二歳上、でも同い年くらいに見えます。
いかにも純真に育てられた無垢な印象で正直まだ何も言っていないのに私の心に罪悪感が大波のように押し寄せます。
「こんにちわフロレンティーヌ
ハインリッヒです。
これからよろしくね」
あぁ~できればそれ以上話さないでほしい。私の罪悪感が防波堤を超えて崩れそうです。
ご挨拶当日はこんな感じで終えました。
まだ結婚式を済ませていないので初夜はありません。
お式は明日の謁見の儀式と翌日に大神殿でその夜が披露宴そして初夜になります。
どうするの私??
********************************************
「ところでフロレンティーヌはどんな印象でしたか?
ハインリッヒ殿下」
皇后の私室に息子のハインリッヒを呼んで今日の初顔合わせの感想を聞かれています。
「とてもお綺麗で。凛としてすてきな女性です。」
本当にそう思う。
それに雰囲気もしっかりしていて好印象です。
母上もそうでしょうそうでしょうと何度も頷いてくる。
これは絶対逃がさないわよという戦闘態勢のようだ。
僕も少し感じたけど緊張はしていたけどなんだか変な感じも見受けられる。
好意を持ってほしいのか
ほしくないのか?
なんだか微妙な表情だった。
これから何かあるかもしれない。
フロレンティーヌは内宮式、結婚式、披露宴が。
オルファン帝国の宮廷生活が始まります。
いいねありがとうございます。
励みになります。