政争勃発 三大派閥の激Ⅴ 最後の闘争前半
皇帝と皇后、皇太子妃は離宮で囚われて幽閉の身に。
皇太子は大公のイスファハン郊外の別宅に監禁された。
さてオルファン帝国どうなる?
最大のクライマックス遂に残り三話に。
「そろそろ皇室の避暑での滞在期間が過ぎる頃合いですな。
陛下 いかがされますか?」
メディルス公爵は勝利を目前に実に愉快な様子でダルディアン大公をあえて陛下と尋ねた。
「ふっ…。
えぇ。
来週初め休暇後の定例会議になりますね。
その際ですが陛下の病状についてどういう説明を?」
「あぁ。
それなら準備万端です。
陛下は皇太子殿下が早急の即位の野望の為に毒を盛られたのですよ。
事実医師の告白と皇室派の告白、皇太子の居間に
毒薬を仕込んでおいた。
また侍女の目撃情報も捏造している。
心配はございませんよ陛下。
全ては私が手を廻しておきました。
陛下はただその地位に就いてくだされば。
新皇帝陛下 ダルディアン朝オルファン帝国樹立
でございます
ハッハ~~」
大公は満足し胸を撫で降ろす。
「公爵は私の寵臣となり支えてほしい。
そうだ。
そなたの娘を皇后に就けよう。
将来は国父となろう。どうだろうか?」
公爵の瞳の輝きが増し口元が上がる。
願ってもいない申し出だ。
「なんと光栄な。
我が娘が皇后となるのですね。
新しきオルファン帝国に栄光あれ
万歳」
二人葡萄酒を飲みほして、メディルス公爵は満足そうにその夜を味わった。
公爵は離宮に残した部下や重用する貴族達を使い、見張らせ帝都へ戻っていった。
大公もその三日後に別宅から帝都の本宅に戻っていった。
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そんな大公と公爵の会話の十日前の私
「はあぁ……はぁぁ……はあぁ~~」
スカートが揺らめきて足が見えるのも構わずに走り続ける。
月夜のない。
真っ暗な裏庭をひたすら土を思いきり踏みしめて駆ける。
心臓が出てくるのだはないかと思うほど吐き気が襲い掛かりそうになるのも無理やりに押し込めて。
走る。
汗など足元が汚れたなどと構っていられない。
走り続けなきゃ。
皇太子を陛下を助けなきゃ!!
伯母様から打ち明けられた脱走計画
召使の制服を着てひたすら裏庭から丘を越えて、坂道を駆け上がり下りの後に言われていた馬小屋を見つける。
乗馬用の皇室専用馬屋だ。
放牧するのがよいと少し離れた場所に造られているのが幸いした。
皇后陛下が陛下の看護疲れからという理由で倒れる騒ぎを起こしその隙を見て逃げ出した。
「フロレンティーヌ。
いいですか、皆を私が惹きつけますから。
あなたは隙を見てここから逃げ出すのです。
そしてパラディン公爵に助けを求めるのです。
いいですね。
ハインリッヒの救出にも手立てがあるはず。
大公はあなたが逃げても私達を頃そうとはしない
はず。無理やり奪った皇位は常に不安定。
あえて皇族殺しは出来ない」
仮に拿捕されても異国の皇族を大公は殺害はしないという伯母様の策によるものだ。
案の定うまく巻くことに成功する。
一番体格のよい黒馬を選び抜き、帝都の皇室派の重鎮の邸宅を目指す。
ほとんどの貴族は各避暑地に滞在しているが、皇室の重鎮であるバラディン公爵は避暑地からすでに帰ってきているのだそうだ。
私は伯母様から事前に聞いていた帝都への帰路を頭に入れながら全速力で馬を走らせる。
こうみえて乗馬は得意だ。
狩猟は好きではないが。
さあぁ~~~帝都へ。
お願い帝都まで黒馬の鬣を優しく撫でて手綱を取り、馬の横腹を踵で蹴り逃走開始。
夜通し走っては民家の納屋や馬小屋に隠れて寝てを繰り返した。
しかし時には家主に掴まえられたりしたが。
私が公爵派の貴族の主人の横暴から逃げてきたというと嘘を打ち明けると、庶民にも評判の悪かったのか。
空いた部屋や居間で泊まらせてくれたりもした。
五日後に公爵の邸宅に到着したものの安堵感からか疲労からか門前で倒れてしまった。
駄目よ私~~~。
そうは思うものの意識は白濁していく。
あぁ~~駄目なのに………
「NNん~~~~」
自分の声が聞こえる。
ん??
寝台に横たわる私。ふかふかであったかい。
久しぶりの快適な朝。
でも目が覚めた時身体の不調を感じる。
え!!
節々が痛い。
脹脛も激痛い。
どこもかしこも痛い!
でも痛気持ちいいかもしれない。
変な解放感で見たされていた。
「目覚められましたか?妃殿下?」
初老の婦人が目に入る。
年配だが品の良い顔立ちはふっくらとした白髪に、細めた薄いブルーの瞳は優しく私の額に手を当てた。
「お熱はないようです
大丈夫ですか?妃殿下」
「あっ。
バラディン公爵夫人。
御機嫌よう」
ふぁふぁする意識の中で彼女を思い出してその名を口にした。
「御機嫌よう妃殿下。
おかげんはいかがでしょうか?」
召使に指示して水の入ったガラスを私の手に渡しながら言った。
「えぇ。身体が痛いですが。
大丈夫です」
そう言って水を飲みほした。
新鮮で冷たい水、生きていると実感する。
「三日間も眠っておられたのですよ」
私とした事が!!
その時はっと気が付く。
「バラディン公爵にお会いしたいです」
公爵夫人は何故か私の一言でふっと柔らかく笑う。
「お許しくださいな。あまりに妃殿下がお可愛らしくて。
健気で。
きっと素晴らしい皇后陛下に御成りになられますわ」
夫人は優しく私の背をその皴の手で撫でて肩を抱いてくれた。
ふっと緊張感が抜けて涙の一筋す~と流れた。
駄目とまだする事があるのだから。
「着替えたいわ」
夫人にそういうと夫人は召使達に着替えの準備をさせ、私は入浴後身支度を整えて公爵に会う。
公爵の居間に通されるとすでに公爵は部屋に立っていた。
年配の鋭い眼差しの年配者ではあるものの凛としてその姿は王族と言ってもいいほどの貫禄がある。
背筋を伸ばす。
「ご無沙汰しています。
バラディン公爵。
是非お力を皇室にお貸しいただきたいのです。
両陛下が公爵派に幽閉され。
ダルディアン大公が謀反を。
皇太子も追っ手に追われて今ご無事かどうか。
皇室派の貴族に至急騎士団の召集の伝令を」
「えっ!妃殿下」
公爵派驚きのあまり言葉が出ない。
ようやく出た言葉は。
「本来騎士団の召集は皇帝陛下もしくは緊急時に摂政殿下が伝令される事になっております。
しかしまずは我がバラディン騎士団を召集しましょう」
いないよりもいいに決まっている。
「妃殿下。
大公だけでこのような謀反は考えられません。
背後にメルディス公爵がいます。
つまり敵は二派全オルファン帝国の三分の二の貴族達が敵になります」
衝撃的な言葉だった。
政治的な事は私はあまり知らなかったから。
いや知ろうとしなかったのだ。
自分勝手な理由で自ら招いた不幸かもしれない。
後悔が身体中を埋め尽くす。
いやそんな事に酔っている暇はないわ。
「バラディン公爵。助けてください」
公爵は厳しい顔つきをしながら、腕を組んで考え事をし始めた。
そうだろう。
帝国中の三分の一の貴族と戦う事になるのだ。
最もな時間だ過ぎていく。
「妃殿下。
まずは聖エルディア大陸総大神殿の神騎士団を召集し
なくてはいけません。
但し聖騎士団召集出来るのはエルディア大陸の太古の歴史ある六国の内
二大帝国の許可がいります。
まず当事者の皇室から援助要請と妃殿下のご実家であるフェレイデン帝国の皇室から援助要請を。
まず我ら皇室派の貴族を召集し、各騎士団の派遣要請をいたします。
摂政殿下をお救いしてすぐに援助要請いたしましょう。
それでも圧倒的に数では不利。
一度離宮へ進軍し、両陛下をお助けして。
そして皇太子殿下ですが。」
「わかりました。
御祖父様にお願いして至急要請してもらいます。
皇太子殿下の行方はわかりません。
私を逃がして殿下は敵と戦ったはずなんですが、
その後の行方はわかりません」
バラディン公爵は軽くため息を吐いた後に手を二発叩いた。
その合図に奥の扉が開く。
「ディルラ伯爵
皇太子妃殿下の傍へ」
中からディルラ伯爵が現れた。
「皇室の裏切り者として公爵派に忍ば諜報活動をさせておりました」
深くお辞儀をしてディルラ伯爵は皇太子妃に礼を尽くす。
「あなた!
そう離宮で監視役をしていた。」
申し訳そうに下を向き言葉は震えていた。
「誠に恐れ多く。
数々の不敬をお許しください。
落ち着きましたらいかなる処罰もお受けする所存
でございます」
私は震え頭の中は混乱するばかりだ。
「バラディン公爵の依頼によりメルディス公爵に寝
返ったふりをして諜報活動をしておりました。
摂政殿下は大公の別邸に監禁されておいでです。
すぐに出立いたしますので。摂政殿下を開放し伝令をお出しいただけるようにいたします。
まずは摂政殿下を救出いたしましょう」
ようやく次の手が打てて胸を降ろす。
「お願いします。ディルラ伯爵
いやな屈辱的な役割でしたね。
お気持ち察しています」
ディルラ伯爵は感無量で涙が流れそうになるのをやっとの思いで押さえる。
バラディン公爵はこの皇太子妃の一言にオルファンの未来が明るい事を知った。
バラディン公爵は騎士団の至急の召集とイスファハンへの出立を夜間にひそかに行った。
まだ避暑地にいる貴族達にも連絡を取り、各騎士団の召集も叶った。
全ては整えられたのだ。
バラディン公爵の協力を得たフロレンティーヌ公爵直属の騎士団の応援を得て、ハインリッヒを救出に向かう。二人は再び出会う事は出来るでしょうか?
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