オルファン帝国の危機 離婚の計画Ⅲ 浪費家の皇太子妃 薬草園の造園
宮殿に帰ってきた皇太子夫妻。
またもフロレンティーヌの離婚計画を立て始めて。
私の傷が癒えた頃、港町を去り帝都へ帰る。
結局宮殿を出てから三ヶ月が過ぎていた。
あぁ~嫁いでからトータル六か月無駄にした。
何をしていたんだ私……反省しきり。
呆れられて、離婚を言い渡されるところか皇太子は帰りの馬車でも楽しそうだ。
私はバツが悪くてどうしていいのかわからない。
しきりに外を向いたり、天井を向けたり、瞳をせわしなく動かしながら落ち着きがない。
嫌われるどころか…居心地が悪すぎる。
かばって刺し傷まで出来てしまった。
切りつけた少年は逮捕されたが、未成年で親もおらず。
金目当てに知らない人物に指示された為、孤児院の院長預かりになったと聞いている。
そんな少年に悪事をさせる大人を取り締まってほしいと皇太子に訴えた。
何故か皇太子は嬉しそうな、満足そうな、しかしそれでいて満ち足りないような影のある微妙な笑いを見せた。
私はその笑い方が嫌だ。
時々大人ぶった表情が私はまだ世間擦れしていない子供と言っているように感じるから。
本当にこの皇太子調子が狂う。
苦手かも。
いや本当に苦手だ。
今までいなかったタイプ。
帰りの旅路は行きとはうってかわり何事もなかった。
あの騒動の数々が物語の中の話のような気がするが。
入浴の時に見る名誉の負傷が現実だと実感させる。
そしてようやく帝都へ久しぶりの宮殿に到着する。
宮殿に帰って来てからは皇帝皇后両陛下のお呼び出しが絶えず、一日中旅の話をする日々が続く。
伯母様は私と皇太子殿下の旅の話を聞きながら頬を染めながら輝いた瞳で嬉しそうだ。
「本当にフロレンティーヌと一緒に行ってよかったわ。
でも危ない目にあわせてヴィクトールやアレキサンドラに合わせる顔がないわ」
沈んだ伯母様の顔を見るときゅんとなる。
「でも名誉の負傷です。
私も女将軍の愛娘ですもの」
その言葉が伯母様の心を打ったらしく。
涙を瞳にためながら、私の頬にぷくっりした唇を重ねて髪を撫でてくれる。
その後は両陛下共興味深げに私と皇太子の話を聞いている。
そして二人とも嬉しそうに私を見つめて、愛おしそうに手を撫でて抱擁してくる。
私はその愛情表現に少しのぎこちなさと戸惑いを胸に抱えその温もりに沈んだ。
いつも今だけ。今だけと。いい訳しながら。
そんな日々が過ぎた頃…
駄目だあたし………。やっぱり私………。
駄目よ。嫌われなきゃ!!
ああ~~ホームシック、迷子作戦駄目だった。
駄目なばかりかお株を上げてしまった。
絶対絶対100%駄目なのは何??
何だったら?即OUTなのか?
もうどうしたらいいのか?
どうするのか?
そう今までは自分のやりたい事ではなかった。
やりたい事が出来て嫌われる。呆れられる。
そして…。
私何をやりたいのか?
ドーパミンが脳内を駆け巡る。
何をしないといけなのかしら?
私のしたい事!
あれ!
そうアレやりたい。
そうあれよ。あれ!!
そういって嫁入り道具の奥にしまい込んだ論文の束と手紙の数々を漁り始める。
これよ!これ!これ!これ!
翌日からは私室の一室に籠った。
必要な論文やフェレイデン時代のコネクションをフル活用して早馬で手紙を出しまくった。
さてその作業を終え皇太子と伯母様と正式に面会を申し出、二人にこう切望した。
「私、帝立薬草園を造園したい。
郊外の帝室の薬草園がありますよね。
さらに研究所を改修して、それと優秀な人材がほしい。
貿易が盛んなオルファンは急激な発展に対して衛
生、医療が追いついてません。
早急に対処しないと
とんでもない事が起こります。
絶対にしたい。
しないといけません」
血走った瞳は睡眠不足だから、ただ逆に説得力が増す様で。
二人とも呆気にとられつつも、真剣な顔で私の話を聞いている。
皇太子に私の考えたかなり分厚い薬草園造園計画書を無理やりに近い勢いで手渡した。
ぽか〜んと浮いたような顔をしたかと思うと、渡された書類の重さにアタフタしている。
が、伯母様と二人意外と真剣にその論文を読み始めてくれている。
二人が論文中の同じ場所で瞳を静止させじっと黙って何度も何度もその数字を読み返している。
そう予算表だ。
その中でも人件費と研究用の機器の費用にとんでもない額を計上しているからだ。
「絶対にここは譲れません。
人は最大で必須のいわばこの事業の中核を担いま
す。
もしここを削減して中途半端な物は造っても意味
がないでしょう。
なら造らない方がましです。
帝国の薬学の歴史に汚点を残すでしょう。
絶対に未来に必要な施設です」
私の押した人材には自信がある。
と同時にとてつもない額の予算が必要なのだ。
私の学者魂に火が付いたもう離婚はついてくる。
そうこれでいい。
これがしたい。
これしかない。
「つまり薬学の研究が国政を左右する事態をさけるだけのものだというのね」
伯母様の瞳がきらりと光る。
いつもとは違う政治家の仮面に変わった瞬間だった。
燃える様な瞳が二人に伝わったのか。
伯母様は仕方ないとばかりふ~とため息をついて皇太子を見ている。
皇太子はようやく予算表から瞳を外して、母と目を合わせて不敵に微笑えむ。
「善処しましょう。
私の意見ではなんとも出来ない額です。
陛下とご相談しないといけません。
国家予算を再度見直さないといけない額です。
ハインリッヒは陛下を説得できるだけの説明の準
備をなさい」
伯母様はそうは言ったものの何か考えがあるのか。
再度論文を読み始め、手を顎に乗せて何か考えている。
殿下も何度も何度も私の論文と薬草園の構想図と予算表を読み返しながらあれこれペンで手直ししている。
「確かに必要だな。オルファンの人口は鰻登り。
確かに衛生上の問題は捨てていられないか。」
その表情はまさに皇太子に相応しいものだった。
伯母様はすぐに陛下に進言し、了承をとりつけたものの、大臣達と有力貴族で構成される太政官会議の賛成が必要だった。これが一筋縄ではいかない。
半分は伯母様の持参金で賄い。
後の必要経費はオルファンの貴重な鉱物を中立国に売りさばき得た利益をまわす算段だ。
目くじらを立てて反対したのがメディルス公爵一派だ。
皇帝皇太子は説得するも、なかなかなんくせをつけて首を縦に振らない。
そこに珍しくダルディアン大公の一言で動いた。
「現在の国家予算を減らす訳ではない。
中立国への輸出は今後の外交カードに使える
無茶な要求ではないさ。
なんなら資金が入るまで、後期の建築費をあてた
らいい。」
話を聞いて力強い一言だ。
これでダルディアン大公派の大臣を巻き込めて予算が通った。
予定を過ぎて終了した予算会議は薬草園改修の了承で幕を閉じたという話を聞いて歓喜した。
ありがとうダルディアン大公殿下。
私は速攻会議や講演会で知り合った薬学の教授で有能ではあるが、人付き合いが苦手で出世出来ないのでいる人。能力はあるが金がないため研究を十分出来ない人。上司受けがわるいが、ずば抜けて公衆衛生学に精通している。薬学の権威に真っ向から挑む将来有望株をスカウトしますり。あらゆるツテを頼り手紙を書きまくった。
高額の収入、ほぼ無制限の研究費の使用、そして国籍取得を約束された永住権。
入国すると即座に返信が返ってきた。
忙しくなるわ!
急いで専門家を招き郊外の薬草園に行き、構図とにらめっこした後早速、関係者を連れて訪問した。
郊外にあった薬草園はこじんまりしつつも、ある程度の規模た。
しかも綺麗な小川が流れて育成には問題なさそうだった。
大抵の代表的な薬草は元気に育ってあり、あとは研究用の珍しい草を移植したらいい。
最も重要なのは環境だ。研究者に集中して研究してもらないと。
施設は古さの問題点はあるものの、改修工事で済みそうだ。あとは増築して生活の場所を提供して、娯楽施設もいるだろう。
ワクワクな気持ちを抑えられない。
だから忘れてた皇太子が一緒に来てる事を。
設計士と改修工事の担当者とひたすらしゃべっていたらしい。
反省でも、まぁ。
これで嫌われるのもいいかなぁ。
でも隣の皇太子は怒るでもなく、不満そうでもなく、呆れているどころか。
嬉しそうな様子だ。
何が嬉しいのかなぁ?
私完全しかとしてましたよね。
流石に気がついたらほっとけない。
「皇太子殿下。
楽しくないでしょ。
お先に帰ってもよろしいですよ」
殿下は少し困ったような、少し悲しいような顔を見せて言った。
「君が嬉しそうだから楽しいよ。
そして君が僕の名前で呼んでくれたら最も嬉しい
けどね。」
ニヤリとした笑いは意地悪だ。
私はとにかく恥ずかしかった。
手を後ろで交差させながら、いわゆる挙動不審状態だ。
でも今回の薬草園の改修は皇太子殿下の力もあるし。またには聞いてあげよう。
「えっぇぇ。
ハインリッヒ殿下」
横を向いて赤い顔を隠す。
ちらりと見たハインリッヒはすごく嬉しそうに太陽のように笑う。
「次は殿下抜きでお願いしたいな。」
周りが見たら、仲睦まじい新婚夫妻だろう。
きっと……。
しばらくはこの薬草園の仮簡易施設で寝泊まりする。
殿下は時間が空いた時折、訪問している。
改修工事は順調に進み、私の招集した研究者たち達も揃った。
皆さっそく各自の作業に没頭した。
まだ研究施設は使用出来ないので、仮の簡易施設で持参物を広げての研究だ。
畑は土も良く栄養十分で、どんな薬草も育つと育成者に太鼓判をもらっている。
各国からもちよった薬草を移植する作業も始まった。
首尾よく全てが始まった。
ここから。
次回は薬草園の危機!
どう頑張るのかフロレンティーヌ
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