じゃあ離婚されて帰ってきます
ヴィクトールとアレキサンドラの長女フロレンティーヌの物語
残忍皇帝は10人目の皇后に敵国の皇女を娶るとのコラボです。
愛あり、笑いあり、涙あり是非ご愛顧くださいませ。
「私フロレンティーヌ・ディア・フォルディスは
皇太子殿下を愛する事は絶対にありません」
広い夫婦の寝室の壁際に照らされた蝋燭の柔らかな光に夜の闇がわずかに陰るその部屋に響く若い女性の声がいやに響き渡る。
その一撃は相手の胸を貫いたはずだった。
何故なら今日はオルファン帝国皇太子夫妻の初夜だ。
そしてこの一言を放ったのはまさに皇太子妃であり、言われた人物は皇太子その人だったからだ。
ふかふかのベットの上で正座して座る若い女性はいくつだろうか。
十代後半淡いナチュラルブロンドが緩いウエーブを描いて薄いナイトドレスの裾に流れている。
やや薄いライトブルーの瞳が完全に死んでいる。
腐っているといっていいかもしれない。
生気がない。
その女性が放った一言は明らかにおかしかった。
何があったのだろうか?
時間をさかのぼろう。
ここはフェレイデン帝国フォルディス大公家の居間
「お父様。
お祖父様は私を伯母様が嫁がれたオルファン帝国
の皇太子妃として嫁げと?
今おっしゃいましたか?」
「………」
だまりこんでいる父、顔中縦線だらけだ。
表情は疑問符が顔に書いているようにどう言おうか迷っているようだった。
「だから!お父様!!
聞いてます?!」
ややトーンの高い声で畳み掛ける。
お父様は身体を小さくして、目線を外して目が泳いでいます。
その手は通じません。
隣でお母様が困ったという顔をしてため息をついてます。
ようやくお父様の重い口が開く。
「あのな。フロレンティーヌ。
皇室には甥っ子の年にあった適齢期の女子がいないんだ。
なによりエリザベート伯母様が御前がいいと
引かなくてね」
私はその適齢期がその言葉に敏感になります。
私の地雷です。
目でお父様が死んでしまうと思うくらいに睨みます。
「適齢期??
勝手に合わせてください。
私は関係ありません。
叔母様達の子供がいるではありませんか!
皇太子の叔父様にも皇女様が
大体私がなんの為に帝国大学院を出て勉学に励んていたと思われますか?
くだらない結婚を避けるためですよ。
自分の力で生きていきたい!
私からは外してください。
この際誰でもいいでしょ。」
「年が違いすぎるだろ
まだ皆乳飲み子もいるからな。
年齢的に御前しかいないんだよ」
「お父様がそれを言いますか?」
私の両親は母が十歳年上の姉さん女房です。
しまった!
我が家の禁忌話題だった。
今年お父様は33歳、お母様は43歳
お母様がギョッとし凍りついたような顔をしたかと思うと泣き出してしまった。
「フロ…ティ……わぁ〜」
しまったと思ったがもう遅い。
あ〜〜しくじった。
話が変わる完全変わる!
「フロレンティーヌ!
お母様になんてことを 御前は!!」
駄目だ。
駄目だ。
やっちゃった。
お母様の地雷踏んだっちゃぁった。
もう両親と話は出来ない。
「はぁ〜もういいです。
私がお祖父様とお祖母様に直談判しますから」
たんかを切ってスカートをくるりと後ろに回して居間を出て行く。
「セバスチャン!馬車を。
皇宮に行くわ。
はやく!」
セバスチャンは私の後を曲がった腰でそそくさとついていく。
馬車の中で、海よりも深い溜息をつきながらお祖母様攻略法を模索している。
お祖父様はなんとか泣き脅してすませられても。
お祖母様には通じそうにない。
確かに私を溺愛しているが、それとこれとは別だというタイプだ。
なんせ伯母様も残忍皇帝と噂のルードヴィヒ三世へ嫁がせたといういわくの人物です。
私を無理やり馬車に括り付けてもいかせかねないわ。
馬車の中では頭を思考を絞り出しきろうとクルクル廻り続ける。
ん~~こたえが……。
好きな人がいる!
関係ない。誰連れてきなさい。☓
遊びまくってます。
妊娠しました。☓
宮廷医長に見破られる。☓
仕事に邁進したい。
皇太子妃も仕事。☓
醜女にメイクする。
顔は関係ない。☓
美形な男しかだめ
孫は美形☓
金持ちの国じゃなきゃ。
オルファンは金持だ☓
どうしたらいいの!
なんだかんだと思いつく事を並べたが、良い答えはまったく浮かばない。
勢いでお祖母様の居間に来たもののどうしたらいいか。
未だに思いつかない。
広い居間に沈黙が怖い。
「フロレンティーヌ?
聞いてます?」
あ!沈黙じゃなかったの?
お祖母様とソファーで座ってた事をすっかり忘れていました。
ここまでどう来たかもまったく覚えていない。
今はお祖母様の居間でソファーに座っているようだった。
お祖母様はフェレイデン帝国歴代皇后の中でぐんを抜いて出来る女なので、私はいやうちの一族は全く頭が上がらない。
唯一別格なのは叔母様くらいでしょう。
お父様の唯一の妹で、高祖父上皇帝陛下と暮らしておられる方。
それは高祖父様とだんな様と二人の娘と五人で離宮で暮らしていらっしゃてます。
高祖父様に溺愛されて育てられた。
天使のように無邪気な方です。
「あ!はぃお祖母様」
「じゃあそれでいいわね」
目が丸くなる。
それでいい?
どれでいいの?
お祖母様!
「やっぱり聞いてない」
深いため息が漏れる。
「すみません」
お祖母様はふっと勢い良く息を吐き出して慎重な面持ちで一言いい放った。
「結婚は承諾しなさい。
但し御前があちらに離縁されたら、帰るしかありませんね。
あなた次第です。
嫌われて帰ってきなさい。
でも最低一年は我慢しなさいな」
お祖母様から予期せぬ提案。
ちょっと身体が固まる。
頭もついていないが、とにかく結婚は避けられないが。離婚前提なら可?
最低一年は我慢?
いいましたね。お祖母様。
「本当に?それでいいのですか?」
お祖母様は不服そうではあるが、ぶっきらぼうに言い放つ。
「ええ。但しオルファン皇室には言いませんよ
そしてフェレイデン帝国に傷のつかないような理由で離婚されてきなさい。
あなたからでなく、あちらからね。」
べこの様に何度も頭を下げる。
もちろんです。
お祖母様!
「陛下にはそれで了承をとりつけています
準備がありますからあちらに行くのは一年後ですよ。
それまでオルファンについて知識と教養を身に着けていなさいな。」
「はい!お祖母様。
フェレイデンの恥にならぬよう。嫌われて帰ってきます!」
お辞儀をそうそうに足早に帰宅する。
「思うようにいくかしらね。
相手はあのエリザベート。
しかも名指し指定ですしね」
隣に立つメヌエット女官長はにこやかに笑い。
「全ては女神の采配ですね」
「そうね。
なるようになるわね」
その日から心を入れ替えたようにオルファン語、風俗、歴史、慣習の勉学に励み八ヶ月が過ぎた。
皇宮でなんとか結婚せずにすむ方法を模索するフロレンティーヌ
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