勘違い
「えっ! 蓮は病気じゃない?」
「お前、まだ知らなかったの? しかも、あいつはお前が勘違いしてる事を伝えてなかったんだ……」
「ちょっちょっ……ちょっと待って! それ、本当なの? 蓮が病気じゃないって。しかも、私が勘違いして接していた事も知ってたの?」
「どうして俺がわざわざ嘘をつかなきゃいけないんだよ。……あれ、ひょっとしてコレ言っちゃいけなかった?」
「ううん、大和が教えてくれて本当に助かった」
「やべぇ。もしかしてこの話は秘密だったのかな……」
梓は真実を耳にした瞬間、俯き加減でプルプルと握り拳を震わせていた。
大和は唯ならぬ雰囲気が伝わると、気まずい表情で慌てて手で口を塞ぐ。
病気で先が長くないと思っていた蓮が病気じゃない。
まぁ、病気じゃないのは一旦置いといて、私が勘違いしている事を知りながら隠していた。
嬉しい。
蓮が病気じゃないのはとても嬉しいんだけど……。
めちゃくちゃ許せない!!
安堵と引き換えに湧き上がってくるこの怒り。
揺れる拳のコントロールが利かない。
「おっおい……、大丈夫かよ。目から火が噴き出しそうだけど」
「大和は私が大丈夫そうに見えますか……」
「どうしていきなり敬語? そんなに怒るなって。あいつにはあいつなりの事情があったんだと思うよ?」
「大和はいつそれを知ったの?」
「んー。確か1ヶ月前には聞いていたような……」
「……そう、1ヶ月前ね。いや、1ヶ月も前ね。そんな大事な話をどうしてすぐに教えてくれなかったの?」
急に飛び火を食らった大和は思わず背筋が凍った。
ジーっと睨みつける梓には非常に答えづらい現状に。
「あはは……。言うのをすっかり忘れてた」
「すっかり忘れてたって……。蓮が病気だと知ってから、気が狂ったように心配してたのに……」
ワナワナと身を震わせながら手元の時計に目を向けると、昼休みは残り10分程度。
話を辿っていくと、蓮は私が病気だとカン違いしている事を知りつつも、1ヶ月間何も言わなかった。
しかし、ふと思い返してみると病気の割には病状らしきものがほとんど感じられなかった。
薄々おかしいなと思っていたけど、真実に目を向けようとしていなかった自分も悪い。
そう言えば……。
蓮は先生とのデート中に『具合が悪いから家に来て』とメッセージを送ってきた事があったよね。
あの時は、先生が当日限りのチケットを用意してくれていたから、二人でサーカスを観に行こうとしてたのに、蓮は私の気持ちを悪用して自宅に呼び寄せたよね。
それは、確実に私の勘違いを弄んでたって事だよね。
あいつめ……。
絶対許せない。
「貴重な情報をどうもありがとう。この話を本人に直接確かめてくる」
「おっ、おい……。蓮を許してやってくれ。悪気はなかったと思う」
礼を言って既に走り出していた私は、蓮を擁護する声など届いていない。
昼休みは残り10分。
この短い時間の中で、散々気持ちを弄んだ真意について追求しようと思った。




