私の好きなところ
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「学校、辛くない? あんなに陰湿な嫌がらせを受けてさ」
「んー、蓮と付き合ってた頃の方が大変だったよ」
「じゃあ、今が大変だな」
「今は偽でしょ、偽恋人!」
勉強が一段落した後、リビングに移動して蓮が淹れてくれたコーヒーを飲みながらゆっくりくつろいでいた。
蓮は嫌がらせの件を心配している。
私自身も先日のお弁当箱の一件がずっと心に残っていたから配慮が胸に沁みた。
「俺はお前に90パーセント以上の努力をしているけど、お前は10パーセントの努力をしてくれてる?」
「その10パーセントは学園祭の時に使ったでしょ。あの後は大変な目にあったけどね」
「実はまだちょっと残ってるとか……」
「残ってないっつーの」
「あはは、ざんねーん」
「でも、蓮は私のどんな所が好きなの? 私なんて何の取り柄もないのに……」
蓮の気持ちを冗談半分で聞いた。
偽恋人は蓮にメリットなんて一つもない。
それなのに、いつも身体を張って全力で守ってくれる。
すると、蓮はこの話になった途端ふざけた表情を急変させた。
「お前は、どうだったの?」
「えっ……」
「付き合ってた時、俺のどんな所が好きだった?」
そう言われた瞬間、急に胸がドキドキしてきた。
真っ直ぐに見つめてきた麗しい瞳に、心の中が見透かされてしまいそうな気がしてならない。
今更いきなりどんな所が好きだったかと言われても困っちゃう。
だけど、付き合っていた当時の蓮はいつも心を支配する王様だった。
他の人が丸っきり見えなくなるくらい、私の心を引き止めていてくれた。
それだけは間違いない。
でも、別々の道を歩んでる今はもう全てが無意味だから答える必要なんてない。
「ごめん、もう帰るね」
「梓っ……」
梓は返事をせずに席を立ち、荷物を持って逃げ出すように家を飛び出した。
どうして別れてから数ヶ月後の今になって、当時の気持ちを聞いてきたんだろう。
いま先生と交際している私に、過去の気持ちなんて聞いても意味がないのにね。
だけど、蓮の瞳を真っ直ぐに見つめた瞬間、胸の中の何かが渦巻いていた。




