発覚
ーー先生が用具室を出てから3分経過。
扉からヒョイと顔を覗かせて目を左右にキョロキョロさせて人影がないかどうかを確認。
誰にも気付かれないように用心深く用具室を出た。
秘密の恋愛は、はっきり言って楽じゃない。
普段何気なく使っているこの用具室を出る事すら勇気が必要なのだから。
しかし、安堵により深い吐息をもらしながら両手で静かに扉を閉めた、次の瞬間。
ポンッ……
突然、背後から誰かに肩を叩かれた。
「えっ……」
緊張状態の身体は思わずビクッと揺れ動く。
と、同時に全身の血の気が引いていくのがわかった。
一瞬、心臓が止まりそうだった。
肩に乗せている誰かの手。
その気配に焦って身体が硬直する私。
そして、シンと張り詰めた空気。
もしかして、先生との関係がバレ……た?
まるで蛇に睨まれた蛙状態の脳裏に『退学』の二文字が過ぎった。
「梓。……あいつ、高梨だろ」
と、聞き覚えのある声。
しかし、秘密の恋に《安心》という二文字は存在しない。
ガタガタと身体を震わせながら、恐る恐る後ろへと振り返ってみると……。
そこには、奇しくも3年間同じクラスで高一の始めから半年前まで交際していた元彼 蓮が、ムスッとした表情で私をまっすぐ見ている。
「蓮……、どうして」
「正気? あいつ教師だろ」
彼の瞳の奥はイケナイ関係を続ける私を疑っている。
気まずさのあまり額に冷や汗を滲ませながら、目線を断ち切るかのように顔を背けた。
今までは世間の目ばかり気にしていたけど、今は過去に愛した彼の視線さえも冷たく感じる。
「蓮には関係ない」
「あいつとの関係バレたらお前っ、学校はどーすんだよ。退学になったら……」
「私の事は放っておいて。見なかった事にしてよ。お願いだから」
「はぁ? マジで言ってんの?」
私は蓮の心配を他所にパシンと勢いよく手を払いのける。
「蓮の方が最悪じゃん。私と付き合ってても浮気を繰り返していたし」
「そんなの若気の至りだろ。それに、浮気の件は何度も謝っただろ」
「はぁ? 何が若気の至りよ。笑わせないで。もう半年前に別れたんだから、もう構わないで」
心の傷が深かった分、気持ちの立て直しに時間が要したけど、蓮とは友達としてようやく話せるようになっていたところだった。
長く交際していた分、お互いの事はよく分かっているから、別れた今でも心配してくれるのだろう。
でも、人を散々傷付けたクセに自分のことを棚に上げて責め立てるのは虫唾が走る。