悲しみのキス
ーー今日は、昨日先生と会えなかった分のデートの日。
昨日は蓮が家に来なければ先生とのデートをすっぽかさなかったし、蓮が不治の病だと知る事もなかった。
実に調子が狂った1日だった。
先生は家の近所で車を停車させて私を車に乗せると、高速道路のサービスエリアに車を停めた。
シートベルトを外した途端、昨日から我慢させていた感情を一気に爆発させた。
先生は唇を優しく挟み込むようにふんわりとキスをする。
普段は自分から手をつなげないほどシャイだけど、今日はびっくりするほど積極的。
先生と交際するようになってから、唇の弾力や体温、タイミングや呼吸などを自然と知るようになった。
だけど、今日は唇の圧が少し強いような気がする。
強引というか……。
いや、むしろ強引は好きなんだけど、唇からは心配の気持ちがじわじわと伝わってきた。
ごめんね、先生。
今日は先生の事をだけを考えるから、昨日の私を許してね。
梓は高梨の首元に両腕を回してから自分の唇を重ねて気持ちに応えた。
二人は車を降りてサービスエリア内のカフェに入って腰を落ち着かせると、高梨はカフェのロゴが入ったマグに指をかけて軽くまぶたを伏せたまま言った。
「この前、生徒の落とし物を探しに体育館へ行った時に梓を見かけたんだけど……」
「えっ、この前っていつ?」
「……あ、いや。何でもない」
先生はそう言うと、誤魔化すような表情でコーヒーを一口ごくりと飲んだ。
今日は顔を合わせてからずっと溜息を連発している。
一方の高梨は、先日体育館で蓮のジャージを着た梓が蓮と一緒に歩いている姿を思い浮かべていた。
だが、それを口にしても自分にメリットが生まれないと思って言うのをやめた。
先生は昨日連絡が取れなかったから寂しくてすねちゃったのかな?
まずは心配かけた事を謝らないとね。
「昨日はごめんなさい。丸1日連絡しなかったから心配したでしょ。先生の連絡先がわからなかったから連絡のしようがなくて……」
「仕方ないよ。でも、見つかって本当に良かったね。次は落とさないように注意しないとね」
「先生にはいっぱい寂しい想いをさせちゃったから申し訳なくて……」
「大丈夫、僕はいつでも梓を信じてる」
先生は心配したり寂しい思いをしてたのに、文句も言わずに柔らかい笑顔で私の髪をくしゃりと触った。
先生は嘘を信じてる。
だから、余計に昨日の自分を責めたくなる。
でも、その一方で、蓮の体調を心配している自分もいた。




