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可能性


✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼




「話がある」




ーーある日の昼食後。

蓮は机の中を整理している私の前に現れてそう言うと、強引に手を引いて教室から連れ出した。


現役教師と交際という弱みを握られているから無抵抗のままついて行ってしまったけど、連れて行かれた先はどういうつもりか先生との密会で使っている体育館の用具室。



今日の蓮は少し元気がない。

普段なら朝からしきりに付いて周るのに、今朝から耳にイヤホンを挿したまま机に寝そべっていた。

しかも、ここに来るまでずっと無言。


そして、今はただ黙って背中を向けている。

用具室には無人の体育館に風が吹き抜けていく音だけが聞こえていた。




「話って……、何?」




重苦しい空気の中、私から先に口を開いた。

こんな雰囲気になったのは、先生との恋愛が発覚した日以来。

大事な話があるという事だけは察している。


すると、蓮は背中越しに言った。




「10パーセント……、あるって言ったよな」


「へっ?」



「俺達が付き合う可能性だよ」


「えっ……あ、うん」




蓮と付き合う可能性は今でも0パーセントに変わりない。

そう答えた時は、紬に先生との関係をバラされたくなかったし、蓮を中途半端に傷つけたくなかったから。

でも、あの時の口先だけの返事をバカみたいに信じていたなんて。



蓮は用具室に到着してから一切表情を伺わせなかったけど、ゆっくりと振り返って目を合わせた。


私は哀愁漂う瞳を見た瞬間、胸がズキっと痛くなった。




「俺はこれから残りの90パーセントを頑張る。だからお前はその10パーセントの努力をしてくれないかな」


「えっ! 10パーセントの努力って? 何言ってるのか……」



「頼む……」


「蓮、わかってるでしょ。私は先生と……」

「頼むから」




反論を遮って深く頭を下げる蓮。

その本気度は浮気の謝罪をしていた時以上だった。




『私達、もうとっくに終わったんだよ……』




蓮の心境にどんな変化があったかわからないけど、先日まで厳しく浴びせていたそのひと言さえ口に出来なくなるほど、根気強さが伝わってくる。


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