Re.start
「蓮……」
「ん?」
「勘違いだったけど、蓮が死んじゃうと思ったら、蓮の事以外考えられなくなってた。その時に、この気持ちが恋なんじゃないかなって気付いたんだ」
蓮は素直に気持ちを語った梓の身体をそっと離すと、優しく髪を撫でながら言った。
「ならもっと早く言ってくれれば良かったのに。俺はその言葉をずっと待ってたよ」
「えへへ……。遅くなってごめんね。……でも、蓮は私のどこが好きなの?」
「内面が強くて真っ直ぐな所。どんな苦難に直面しても、切り抜けようとする精神力が半端なくカッコよくて。でも、それはお前のデメリットでもあったから、苦しみになかなか気付いてやれなかった」
「……ううん。そんな事ない。蓮には沢山助けてもらったから」
「俺と付き合う女は必然的に嫌がらせに遭うんだ。それが原因で長続きはしないんだけど、お前だけは違った。お前は泣き虫だからいっぱい泣いていたけど逃げなかった。そこに心を打たれたのかもね」
そう言って恋する瞳を向けた蓮は、安心したように笑みを浮かべた。
「俺……、卒業を機にお前が高梨と結婚したらどうしようと思い始めてから、毎日が本当にシンドくて。恋をすると人って変わるんだな」
「うん、そうかもね」
「あと、ケンカをしている間に守ってやれなくてごめん。別れている間も嫌がらせが続いてて辛かっただろ」
「ううん、大丈夫。紬、大和、奏が蓮の代わりに守ってくれたよ。でも、やっぱり蓮が傍にいてくれないと心がどっかに彷徨っちゃうみたい」
「もう二度とお前の心が彷徨わないように、これからもしっかり守っていくから」
と言って、蓮は梓を再び強く抱きしめた。
自分の元から離れて行かないように。
そして、もう二度と手放さないように……。
梓は力強さと温もりが伝わると、蓮の背中に腕を回して胸の中に顔をうずめた。
胸の中で蓮の香りを嗅いだ瞬間、窒息しそうなほどの幸福感に満ち溢れていた。
「俺、こんなに人を好きになったのはお前が初めてだよ」
そうやって耳元で囁く彼は、学校一のアイドル的人気を持つ超イケメンだけど、中身は至って普通の男子高生。
恋だってする。
ヤキモチも妬く。
意地悪だってする。
時には子供みたいに困らせてくる。
誰もが見惚れるほど容姿端麗だけど、別に特別な人間じゃない。
だけど、私にとってはスーパーマン。
どんな嫌がらせに遭っても精一杯守ってくれる。
二人の間に浮気という障害はあったけど、彼と離れてからようやく存在の大きさに気付かされた。
どんなに周り道をしても、私にはやっぱり彼しかいない。
気持ちが彷徨ってしまっても最終的に辿り着く場所。
蓮は私の心を支配する王様だ。
二人は黒板に背中を向けると、後夜祭の借り物競走の時の事を振り返った。
ステージ上で蓮が梓に突然告白をして会場はちょっとした騒ぎになり、モノではなくて人間を連れて来た事によって失格になってしまった。
「もし、あの時の借り物が人間でもOKだとしたら、私達は優勝出来たかな?」
「いや、俺らは確実に負けてたな」
「え、どうして?」
「だって、お前は借り物じゃなくて元々俺のモノだから」
そう言って、蓮は左親指の腹を私の頬に触れた。
一つに重なったばかりの人影を映し出している黒板に書き残した私の最後のメッセージ。
《蓮の全部が大大大好き♡》
そして、私のメッセージのすぐ下には、蓮が先ほどまで書いていたメッセージ。
《お前の心は俺のモノ 俺の心はお前のモノ》
蓮は結構ズル賢い。




