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「お前っ……、どうして泣いてるの」


「泣いてなんかない! 目にゴミが入っただけ」



「ひょっとして、少しは気持ちが傾いてくれたんじゃ……」


「私には先生という最高に素敵な彼氏がいるし、浮気をして別れた蓮なんてとっくに関係ないんだからぁ……」



「お前はそうやっていつも俺を責めるけど、お前は俺に対して何一つ非がないの?」


「何がよ?」



「まだ気付いてないの? 俺は散々悩んでいたのに……」


「浮気したクセに偉そうにしないでよ。……もう帰る」




梓は息が出来なくなるほど苦しくなってその場から離れようとして手を振り解いたが、蓮は再び手首をガッシリと掴んだ。


蓮は梓の感情がグラついてる事を確信すると、今が話し合いのチャンスだと思った。




「行かせない。まだ話は終わってないから」


「離して! 話はもう半年以上前に終わってるの」



「高梨とコソコソ会うような関係で本当に楽しい? 本当にそれで幸せ? 自分の胸に手を当てて聞いてみろよ。校長室で散々な目にあっただろ」


「蓮には関係ないから」




蓮は復縁を願うばかりに気が立っている。

一方の私は、今にも何かが壊れてしまいそうな予感がして怖くなって突っぱねた。




「俺なら一番近くで守れる。人目を気にせずに付き合える。声を大にして好きって言える。世間の目ばかり気にし続けてる高梨(あいつ)じゃなくて、俺にしとけよ………バーカ」




お互いの感情をぶつけ合う中、蓮は左親指の腹を私の頬に触れてキスをした。


唇を強く押し当てる、数ヶ月ぶりのキス。

私の心を支配する……、王様。

ギュッと濃縮された気持ちが唇越しに伝わってくる。



先生のキスとは違う。

足が動かない。

身体が拒まない。

それどころか、唇を受け入れている自分がいる。



だけど、いま自分が置かれている状況を思い返した途端、ふと我に返って蓮の身体をドンッと力強く突き放した。




「ダメっ! こんな事しないで……」


「梓……」



「調子いい事ばかり言わないでよ。人を散々傷付けたクセに。蓮と別れたあの日から別々の道を歩んでるんだよ。蓮が私を想っていても、私は蓮の事なんてこれっぽっちも思ってないんだから……」




自分でもビックリするほど声が震えていた。

高梨先生の恋人としては正解なのに、何故か無性に胸が締め付けられている。




「……本当に俺の事これっぽっちも思ってない?」




蓮は寂しげな瞳で問うが、梓は顔を向ける事が出来ない。




「思ってるよ……」




嘘……。

本当は思ってない。

蓮がどうでもいい存在なら、友達でいる必要がないし、クリスマスにこうして二人きりになる事も無い。

本調子が狂ってしまうのが怖いから、こうやって固い殻で覆うしかなかった。




「わかった。お前が俺の所に戻ってくるまで信じ続けていたけど、そう言うなら仕方ない」


「蓮……」



「偽恋人解消してやるよ」




蓮は沈痛な面持ちでそう言うと、背中を向けて暗闇に向かって行った。



別れた直後は許せない気持ちが先行していて話す事が出来なかった。

でも、お互いが距離を縮めるようになって、最近ようやく友達レベルまで関係回復したのに、私は自らの手で再び突き放してしまった。



他に言い方はあったはず。

だけど、溢れ返る感情を抑える事が出来なかった。


辛い時はいつも傍に居てくれたのに。

困った時は力になってくれたのに。

蓮がこの世から居なくなっちゃうと思ったら、耐えられなかったのに。


私はどうしていつも素直になれないんだろう……。




「蓮……。これっぽっちも思ってないなんて嘘だよ……」




涙で視界を歪ませながら静かに消えて行く後ろ姿にそう呟いても、蓮の耳まで届かない。

だけど、これが私達のボーダーラインだと思ってる。


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