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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
引き離された親子と闇潜む闘技場 フラリア王国編

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牧場に着きました

 一同を乗せた馬車は、再び牧場へと走り出す。

 その際、ウィロが懐から何かの容器を出す。

 その蓋を開けると、中に指を入れる。


「ココル、捻った足を出して。」

「はーい。」


 ココルが足を出すと、ウィロが容器から出した液体を塗っていく。

 その液体からは、薬品のような臭いがしてくる。

 その二人の様子をフィーが眺める。


「それ、いつも持っているのか?」

「怪我をして歩けなくなるのが一番怖いからね。」

「へー。」


 へーって、あなたも同じハンターでしょ。


 他人事のフィーに呆れる俺。

 それに構わず、フィーは二人を見続けている。

 ウィロは、手慣れた手つきで塗っていく。


「これでよしと。無茶をするのもほどほどにな。」

「今回はたまたまだもん。いつもの相手ならこんな事にはなってないもん。」

「はいはい。」


 子供のようにふてくされるココル。

 そんなココルを適当に流しつつも、容器の蓋を閉めるウィロ。


「いつもありがとうね。」

「い、いえいえ。慣れてますので。ははっ。」

「慣れてって、それじゃあ私がいつも怪我してるみたいじゃん。まぁ…してるけど。」


 してるんだね。


 よくあるやり取りのようだ。

 手慣れているのもそのためであろう。


「でも、ココルの言う通りでもあるわ。あんな魔物を見るのは初めてよ。」

「えぇ。本来なら人里にいるような奴では無いんですがね。」

「そうなのね。」


 真剣な眼差しになるウィロ。

 今まで様々な各地へと向かった二人でも見た事がない相手だ。

 それほど、見るのは珍しい相手のようだ。

 その事に、ココルが疑問を持つ。


「ねぇ、どうしてそいつら人里に来ないの?」

「襲う必要が無いからさ。人を襲うのは、獣すら狩れない雑魚だからね。そうでもない大物は、人間と事を構えてまで餌に飢えてないから引きこもっているんだ。」


 人を襲えば、返り討ちにあってしまう可能性がある。

 餌には困って無いので、そこまでする必要がないのだ。

 だが、それを聞いたフィーが前の出来事を思い出す。


「いや、人里で大物と戦った事があるぞ?」

「え? 本当かい?」

「あぁ。」


 うん、確かにあったね。


 それは、初めて事件に巻き込まれたものだ。

 先程のものよりも大きなゴブリンの上位種。

 それらが現れたのは、間違いなく人里だ。


「その事を詳しく聞いても?」

「あぁ。その時は、知恵と力を着けたゴブリンが自身の上位種を率いてたな。」

「なるほど。上位種を率いてね。」


 本来のゴブリンは、使役される立場の雑魚だ。

 それが、知恵と力を得た事により逆転したのだ。

 これもまた、異常と言えば異常だろう。


「先導者がいる。その線もあるかな。」

「今回の事もか?」

「可能性があるってだけだよ。でも、そう考えるには充分だと思う。」


 同じ異常と考えれば、原因も同じの可能性がある。

 あくまでその一つだが、無視をする訳にもいかないだろう。


「ま。何だとしても、師匠なら大丈夫だよね?」

「他人事だと思って。でも、牧場に手を出すなら黙ってはいないよ。」

「ひゅー、格好いいー。」

「茶化すなっ。ほら、牧場はそろそろだろう?」


 ウィロが慌てて話を変える。

 話を振られたと気づいて恥ずかしくなったようだ。

 しかし、牧場が近づいたのは事実で…。


びゅーーーっ!


 一陣の風が荷台の中を駆け抜ける。

 その風から、髪を押さえて耐えるフィー。


「んむっ。ん? この匂いは?」


 その時、風に混ざった匂いに気づく。

 そして、匂いのする方を向くと…。


「ほう。」


 反射した太陽できらめく大きな池。

 沢山の野菜や果物を生やした畑。

 辺り一面に青々しく生える草原。

 その中を、自由気ままに過ごす生き物達。

 まさに、牧場と呼べるものがそこにあった。

 その光景に、感心するフィー。


「思ったより大きいな。」


にゃ。


 うん、大きいね。


 手前から、奥の見えなくなる方へと牧場は広がっている。

 その規模は、一つの小さな町なら軽く越える程だろう。


「我ら自慢の牧場は。この大陸の中でも、一番か二番を競える程だよ。」

「乳製品から野菜まで何でもござれ。ようこそ、私達の牧場へ。ってね。」


 ココルとマレーヌの親子による、牧場の紹介だ。

 実際に、それに恥じぬほどの大きな規模なのは間違いない。


「お腹が空いてるんじゃないか? ここのご飯は美味しいから楽しみにしているといいよ。」

「そうなのか? それは楽しみだ。」


にゃ。


 そうだね。

 牧場ご飯、楽しみだよ。

 じゅるり。


 多くの食べ物の材料が出来る場所。

 そんな場所ともなると、美味しいものが食べられるだろう。

 期待に胸を膨らませつつ、牧場にある建物へと馬車が向かう。

 その建物を囲う柵の門の前に立つと…。


「あ。僕が開けますね。」

「ありがとう。」


 荷台から降りたウィロが、柵の門を開ける。

 一定の大きさに開くと、そこから馬車が中へ。

 そのまま風車が回る小屋を抜け、小屋のような建物の前に止まる。


「到着ね。お疲れさま。降りて大丈夫よ。」


 マレーヌに促され、荷台を降りる一同。

 すると、建物で作業をしていた人物がこちらに気づく。


「ママさん、お疲れさま。」

「えぇ。何か異常はない?」

「ありませんよ。皆、順調に作業を進めてます。」

「そう。良かったわ。」


 従業員と報告し合うマレーヌ。

 帰宅した時の挨拶みたいなものだ。

 すると、従業員がマレーヌの後ろの俺達に気づく。


「あら、ウィロさんも来ているのね。それと、そちらの方は?」

「お客さんよ。しばらくここにいて貰う事になったから。」

「そうなの? よろしくね。」

「あぁ、そこで拾われてな。よろしく頼む。」


にゃー。


 よろしくねー。


 俺達もまた、従業員と挨拶を交わす。

 意外とあっさり受け入れられたようだ。

 そんな事をしていると、周りから小さい子供達が現れる。


「あ、ウィロさんだ!」

「ほんとだ。ウィロさーん!」


 一人の子供の声に気づいて集まってくる子供達。

 その子らは、あっという間にウィロを囲む。


「おぉ。皆、元気だったか?」


 ウィロもまた満更では無いようだ。

 子供達の相手をする。

 その様子を、不思議そうにフィーが見つめる。


「人気だな。」

「よく子供達の相手をしてくれてるからね。ほら、外堀からってやつ。」

「あー。なるほどな。」

「って、おーい。変な事を教えるんじゃなーいっ!」


 なるほどねー。

 意外と策士だねぇ。


 ココルの言葉に納得する俺達。

 こちらに怒りながらも、子供と戯れるウィロを見続ける俺達。

 すると、マレーヌが軽めに手を叩く。


「はいはい。お客さん来てるから後でね。ほら、作業に戻ってね。」

「「「はーい。」」」


 マレーヌの指示で、子供達は持ち場へ戻っていく。

 この子供達も、ここの作業員なのだろう。


「そういう事で。近くの人と馬車を片付けてくれる?」

「はい。ごゆっくりしていって下さいね。」


 俺達に頭を下げた従業員を残して、別の建物へと移動する。

 その際、歩きながら牧場の中を見るフィー。


「この牧場、子供が多いな。」


にゃ?


 え?

 言われてみれば。


 見渡す限りでは、作業をしているのは子供だけだ。

 先程の子供達と同じ年齢ぐらいの子供ばかり。

 大人はいても、だいたい二十前半ぐらいだろうか。


「大人はいないのか?」

「いますよ。流石に子供達だけでは無理な作業もありますから。」

「そうか。にしては多いが…。」


 子供達だけで出来る事ではない。

 大人達は、見えない場所にいるだけだろう。

 不思議そうに見ているフィーに、ココルが説明をする。


「えーっとね。この子達は、従業員が連れて来た子供達だよ。元々ここの従業員って、貧しい所から来た人ばかりだからね。ついでに子供のご飯って事で働いて貰ってるの。」


 へぇ。

 子供達に食べさせる為でもあるんだね。


 家族の分の食事代を稼ぐのは難しい。

 そこで、どうせならと子供達も一緒に働かせているようだ。

 その子供達は、ウィロの名を呼び手を振っている。

 それに対して、ウィロが手を振り返す。


「ほんとはね。僕が仕事で見つけた人達なんだよ。襲われた村の人を匿って連れて来たんだ。でも、僕ではどうする事も出来なくてね。」

「そこで、ママが引き取ったって訳。」


 あちこち移動すれば、そういった人と出会う事もあるだろう。

 しかし、ただのハンターの男一人で見るのは不可能な事だ。

 そこで、現れたのがマレーヌだ。


「優しいんだな。」

「そんな事は無いわ。丁度、人手も欲しかったしね。まさか、ママなんて呼ばれるとは思わなかったけど。ふふっ。」


 そう言いながらも、マレーヌは嬉しそうだ。

 ママと呼ばれるほど、世話をしてあげたのだろう。

 その呼び方からは、マレーヌへの愛情を感じる。


「でも、それで私達は救われたよ。皆も感謝してる。」

「そうだと嬉しいんだけどね。さ、着いたわよ。」


 そんな話をしていると、横に広い建物へとたどり着く。

 そこからは、作業用の建物とは違い人の済む形跡が感じられる。

 ここで、生活をしているのだろう。


「いらっしゃい。我がホームへ。歓迎するわ。」


 そう言って、マレーヌが一同を招き入れる。


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