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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
呪われた村と堕ちた聖獣 フラリア王国編

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全てを込めた一撃です

 まず、先に動いたのは聖獣だ。

 ヘドロと聖火に包まれた前足を、二人に向かって降り下ろす。

 そして、それをフィーが剣で流す。


「任せたっ。」

「うんっ。」


 その落ちた前足を、フォリアが勢いよく叩き斬る。

 すると、前足が滑り顔が落ちてくる。

 そこに向かって、二人が踏み出る。


「合わせるぞ!」「合わせるよ!」


 聖獣の顔に接近した二人は、そのまま首を突き刺す。

 すると、聖獣が首を上げてもがき出す。


「よし、効いてるぞ。」

「みたいだね。」


 もう怖くないみたいだね。

 このままいっちゃおう。


 恐れによって、動きが止まる事も無い。

 問題なく、渾身の一撃を叩き込む事が出来た。

 それでも、聖獣が再び手を振り下ろす。


「学習能力の無い奴め。もう一度だっ。」

「うんっ。」


 その手を、フィーが受け流しフォリアが斬る。

 すると、先程のように降ってくる。

 なので、二人も先程のように迫るが。


「っ! 聖火が来るっ。」

「なにっ!」


 落ちようとする聖獣の口から、黒い聖火が吐きだされる。

 どうやら、同じ攻撃が通用する相手ではないようだ。

 しかし、二人も負けていない。


「こちらもっ!」

「聖火だっ!」


 黄色と紫の聖火が、黒い聖火を押し返す。

 そして、そのまま二人が踏み出る。


「はっ!」「ふっ!」


 二人が黒い聖火を突っ切ると、支え直した手に接近する。

 そして、二人合わせての突きを叩き込む。


「もう一度っ。」

「落ちてくださいっ。」


 突かれた手は滑り、聖獣の顔が落っこちる。

 すると、その下に二人が潜り込む。


「今度はっ!」

「こちらからっ!」


 落ちてくる聖獣の顎に向かって二人が踏み出る。

 そして、勢いのままに剣で突き刺す。

 すると、聖獣が暴れてもがき出す。


「やりましたね。」

「順調過ぎて逆に怖いがな。」

「確かに、相手も動いてないから。」


 そうだね。

 相手は聖獣。

 これで済むとは思えないよ。


 聖獣相手に、有利に動けているのに不安を覚える。

 実際に、相手は穴から出てきていない。


「さて、次はどう来る?」


 もがいている聖獣。

 相手の動きが分からない以上は、無理に動けない。

 そう身構えていると、黒い聖火が塊になって襲ってくる。


「先程の獣だよ。」

「直接は無理だと悟ったか。しかし、この程度ならっ。」


 迫る漆黒の獣を避けては斬る。

 今更、このような敵にやられる訳はない。

 勿論、向こうも承知しているはずだ。


「あっさり過ぎるな、時間稼ぎか?」

「そうみたい。聖獣様を見て。」


 フォリアに言われて聖獣を見る。

 改めて見ると、下半身が骨のままだ。

 時間を稼いでいる間に、甦生を完成させる気だろう。


「なるほどな。なら、骨の部分を斬れば動きを封じられるか。」

「うん。こちらが有利になるのは確かだね。」


 甦生を完成されると、機動力が増してしまうだろう。

 そうなると、戦いは困難を極める。

 そうならないよう、下を切り取る必要がある。


「迷ってる必要はないな。」

「甦生される前にっ!」


 迫る獣を斬り払って踏み出る。

 しかし、穴へと跳ぼうとすると獣が前を塞ぐ。


「読まれてるっ。」

「構わんっ、跳べっ!」


 相手が弱点を守るのは当然の事だ。

 それでも、立ち止まる理由はない。

 構わず、穴へと飛び込んだ。


「はあっ!」「ふっ!」


 そして、獣の頭を踏んづける。

 更に、そこを踏み込んで奥へと跳ぶ。


「行くぞっ!」

「うん!」


 いっちゃえっ。


 そのまま、剣を振り骨へと叩きつける。

 しかし、剣を振り抜けない。


「固いっ。」

「どうしてっ。」


 あまりの固さに、ひびすら入らない。

 そして、弾かれて穴へと落ちる。

 そこに、聖獣が黒い聖火を吐き出す。


「まずいっ、逃げろっ!」

「うんっ!」


 急いで穴から飛び出す。

 そして、急いで森の樹に隠れる。

 そのお陰で、聖火から免れる事が出来たが。


「攻撃が通らないなんて。」

「どうしたものかな。」


 ほんとだね。

 間に合わなくなるよ。


 こうしている間にも、下半身の甦生は進む。

 攻撃が通らなければどうしようもない。


「気配が全身から。もしかして、聖火が守ってる?」

「そんな事も出来るのか?」

「うん。聖火はどんな形にもなるし、固さも変えられる。しかも、聖獣様の力だから。」

「強力と言うわけだな。」


 聖獣そのものの聖火だ。

 決して、半端な力では無い。

 未熟な二人の力では歯が立たないのだ。


「にゃんすけを解除できれば。」

「駄目ですよ。黒い聖火に焼かれます。」

「だよな。」


 二人が黒い聖火を受けても平気なのは、聖獣の力で守られているからだ。

 その力を解除してしまえば、どうなるかの保証はない。


「相手の聖火をどうにかしないとか。・・・待てよ。」

「どうしたの?」

「相手に流れる聖火を、私達ので追い払えないか?」

「追い払うか。」


 なるほどね。

 相手に聖火を使わせなくさせればいいもんね。


 黒い聖火が相手を守っているなら、それをどかせばいい。

 そうすれば、相手が自身を聖火で守るのは不可能だ。


「やってみる価値はあるかも。」

「決まりだな。相手に聖火をぶつけて焼く。」

「そして、弱くなった所に突き刺して流す。」


 やる事は決まった。

 頷き合った二人が樹から飛び出す。

 すると、周りに浮かぶ獣が襲いかかる。


「邪魔だっ!」「邪魔ですっ!」

 

 相手をしている場合ではない。

 更に、踏み込んで加速する。

 そして、迫る獣を掻い潜っていく。

 それでも無理な時は斬り払う。

 

「まずは、腕を突く。」

「近い方だね。」


 獣の群れを抜けると、聖獣の腕へ聖火を飛ばす。

 それが聖獣の腕に流れている間に、一気に飛び込んで突き刺す。

 

「今だっ!」「今だよっ!」


 刺したと同時に聖火を流し込む。

 すると、相手が暴れて両手を払う。

 そして、支えを無くした上半身が落ちてくる。


「危ないっ。」

「しかし、好機だっ!」


 飛び退いた二人が踏み出た。

 落ちた顔を避けて首に突き刺す。


グオオオオォォォン。


 その聖火で、聖獣が苦しむような呻き声を出す。

 どうやら、効いているようだ。

 急いで顔を上げようとするも、両手の力が入らない。


「良いぞ、この調子だ。」

「うん。」


 良い感じに流れてるよ。

 もっと流し込んじゃおう。


 順調に聖火が流れている。

 このままいくと、押し流すのもすぐだろう。

 その直後、何かに聖火が止められる。


「ぐっ、何かがっ。」

「押し戻される!」


 聖獣の中から、何かが二人の聖火を押しているのだ。

 何とか押し続けるも、完全に押し負けてしまう。


「耐えろっ!」

「無理です!」


 頑張るも無意味のようだ。

 完全に、何かに押されて吹き飛ばされた。

 その代わりに、傷口から黒い聖火が吹き出された。


「くそっ、まだ来るぞっ。」

「聖火を止めないで。」


 その力は、黒い聖火だった。

 押し流すつもりが押し流されてしまったのだ。

 そして、それが二人に襲いかかる。


「ぐうっ。」

「きついっ。」


 何とか、自身の聖火をぶつけて耐える。

 しかし、それで精一杯。

 黒い聖火の力を甘く見ていたようだ。


「これが聖獣様の聖火っ。」

「こんなのありかっ。」


 聖火を当て続け、しばらく耐える。

 しかし、ついに吹き飛ばされてしまう。


「ぐわっ!」「きゃっ!」


 吹き飛ばされたお陰で、聖火の範囲からは逃れた。

 しかし、吹き出した聖火はまだ残っている。

 そして、強力な壁へと変わる。


「しまったっ。これでは近づけん。」

「近づいたとしてもだよ。やっぱり聖獣様には勝てないの?」


 これが聖獣の本来の力。

 精霊の上位に君臨する力。

 未熟な二人の力では、到底太刀打ち出来ない。

 その力が、二人へと襲いかかる。


「ぐうっ。」「それでもっ。」


 再び聖火を出して、それを受け止める。

 しかし、長くは持たないだろう。


「力があれば。もっと力を。」


 力が無いから止められない。

 聖獣を助けたいのに助けられない。

 フォリアが祈る。

 その時、フォリアの視界が白に染まる。


『力ならあるよ。』

「え、誰?」


 フォリアの祈りに返事が返ってくる。

 その声が、フォリアの頭に流れる。



『君は、知ってるはずだよ。』

「・・・うん、知っている。聞いた事がある。」


 その声は、昔に聞いた事がある。

 それは、フォリアに流れる力の持ち主。


「聖獣様の子供だよね。」

『正解だよ。』


 聖獣様の子供。

 フォリアに力を与えた本人だ。


「ごめんね。私のせいで。」

『ううん、僕が悪いんだ。勝手についていったりしたから。』

「それでもっ。私がいればっ。」


 フォリアがいれば止められた。

 だから、一番責任を感じているのだ。


『違うよ。』

「えっ?」

『誰も悪くなんて無いんだよ。』


 聖獣の子は、誰も恨んではいない。

 自身を殺した村人さえも。


「でも、聖獣様は。」

『うん。ママは許さなかった。』


 自分の子が殺されたのだ。

 許す訳がない。


『肉体を無くして精神だけで浮いていた時に、ママが怒る姿を見た。だから、君だけを助ける為に君に乗り移ったんだ。』

「私のために?」

『うん、そうだよ。』


 フォリアを助ける為に。

 その為に、取り付いて守ったのだ。


『君は、ママの力だって勘違いしてたけどね。』

「ごめん、気づかなくて。」

『良いよ。気づいてくれたお陰で君と一つになれたからね。』


 フォリアが力の正体を知った。

 だから、取り付いていただけから一つになれた。


『だから、僕も君の力を手伝える。』

「聖獣様を助けれるの?」

『うん。その代わり、君が死ぬけどね。』

「私が死ぬ?」


 聖獣を助けられる。

 フォリアの命の代わりに。


『どうする?』

「・・・やるよ。それしかないなら。」

『そう。ごめんね? 僕にもっと力があれば。』

「それは、私も同じだよ。一緒に聖獣様を助けよう。」


 フォリアの覚悟は決まっている。

 聖獣様の為に。

 そして、皆を解放する為に。


『分かったよ。一緒にママを助けよう。』



 そうして、意識がはっきりする。 

 すると、黄色い聖火の勢いが増していく。


「その力は?」

「気にしないで。それより、私が道を切り開く。だから、あなたが。」

「しかし、聖火に押し戻されるぞ?」

「私の聖火を貴方の剣に注ぐから大丈夫。」

「なるほど。二人の力を合わせてか。」


 二つの力を重ねれば良い。

 それなら、強い力にも対抗できるだろう。


「じゃあ、行くよ?」

「あぁ、いつでも構わない。」

「分かったよ。はっ!」


 フォリアが聖火の力を更に上げる。

 そして、黒い聖火を押し返す。


「凄いな、押している。」


 聖獣の力を押し返しているのだ。

 その中を、フィーが突き進む。

 そして、フォリアの口から血が流れる。


「ごふっ。もって、私の体っ!」


 更に火力を上げる。

 すると、押し返す力も上がる。

 そして、ついに黒い聖火を押し込む。


「よし、届くぞ!」

「剣に力を注ぎます!」

「頼んだぞ!」


 フィーの剣に黄色い聖火が灯る。

 そして、紫の聖火と絡むようにまとわりつく。


 感じる。

 何かが流れてくる。


「後はお願い!」

「任せろっ!」


 そのまま、聖獣の下へたどり着く。

 すると、聖獣の牙がフィーに迫る。


「やらせんぞ。っと。」


 フィーが剣で顔を逸らせながら横に踏み出す。

 そして、相手の首に向けて剣を突き刺す。


「食らえぇっ!」


 そこから、ありったけの聖火を流す。

 それでも、黒い聖火が抗う。


「ぐうっ。なら、圧縮してっ!」


 流す力を細く強く。

 すると、黒い聖火を押し流す。


「うおおおおぉぉっ!」


 そのまま、黒い聖火を突破して中へと流し込む。

 そして、奥へ奥へと駆け巡る。


「そのままっ、頑張って。」


 フォリアがその姿をみて応援する。


(そして、皆を解放して。)


 薄れゆく意識の中で。


「いけーーーーっ!」


 いけーーーーっ!


 そして、ついに黒い聖火を押し流す。

 その勢いは増していき、聖獣の体のあちこちから二色の聖火が溢れ出す。

 

グオオオオォォォン。


 焼かれゆく聖獣の体。

 そのまま威力を増やすと、首を一直線に聖火が貫く。


「やった。」


 フィーが剣を引き抜く。

 聖獣は倒れて動かない。

 体の中で暴れる聖火に苦しんでいるのだ。


「やったぞ!」


 作戦は成功した。

 振り向いたフィーがフォリアに知らせる。


「はい。良かった、で。」


 フォリアの言葉は最後まで続かない。

 言い切る前に、体が傾いていく。


「フォリア?」


 そのまま、地面へと倒れてしまう。

 その体はピクリとも動かない。

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