表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
呪われた村と堕ちた聖獣 フラリア王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/319

戦い前の一休みです

「よしっ。無事、潰せたようだな。」

「うん。もう、気配はないよ。」


 花が無くなった事により、黒い聖火も無くなった。

 黒い聖火で隠れていた空は、しっかりと見渡せる。


「んで、次は親分だな。」

「しかし、その親分は倒したのでは?」

「そのはずじゃ。」


 そうだよね。

 倒した相手をどうやって倒すの?


「・・・あのドクロは、聖獣樣じゃない。聖獣樣の子供のドクロだよ。」

「なんじゃと?」

「聖獣様が、聖火を注いで叩き起こした物だよ。」

「そうじゃったのか。なんとむごい事を。」


 そうだね。

 自分の子を、利用するなんて。


 聖獣のドクロでは無いので、倒しても終わらなかった。

 その正体は、大事な自分の子供だったのだ。

 その自分の子の亡骸を、復讐に利用していたようだ。


「じゃあ、その親玉は何処にいるんだ?」

「あそこ。聖獣様の住処がある場所。あそこから、強い気を感じる。」


 そう言って、フォリアが指したのは山の方角。

 フォリアが聖獣と交流していた場所だ。


「場所は、私が分かってる。案内するよ。」

「おっし。そんじゃ、行こうか。山に向かってしゅっぱーつ!」


 ついに、堕ちた聖獣との対決だ。

 聖獣のいる山に向かって歩き出す。


「しっかし、聖獣様の目的は何なんだ?」

「あれ、そこまでは思い出してないんだね。」

「まぁな。フォリアとセフィナさんがらみの事ぐらいだ。」

「そうなんだ。」


 思い出したのは、あくまで姉妹に関する事だけだ。

 聖獣の事や、毎晩行われていた事は思い出せていない。


「わたしもそうだよ。皆もだよね?」

「あぁ、そんな感じだな。それ以外は、曖昧な感じだ。」

「はい。記憶が途切れ途切れです。」

「なんか、ばらばらのパズルのピースが散らばってる感じかな。」


 中途半端に思い出したせいで、記憶が途切れてしまっているのだ。

 だから、上手く継ぎ合わせる事が出来ない。

 だから、何が起きているのか分からない。


「あー、やっぱり分かんねぇ。なんか、モヤモヤするなぁ。」

「無理に思い出す必要はないわい。知らない方が良いこともある。」

「そんなもんなのか?」


 そうだね。

 だって、消えた記憶の中には死ぬ記憶もあるからね。


 自分が死ぬ記憶、仲間が死ぬ記憶。

 しかも、数回だけの記憶だけではない。

 そんな記憶を一度に思い出したら、どうなるかは分からない。

 このような記憶など、思い出さない方がいいのだ。


「そういえば、セフィナさん置いてきちゃったね。」

「確かにな、早く聖獣様を倒して迎えにいってやろうぜ。」

「うん。・・・そうだね。」


 フォリアが言いづらそうに、言葉を詰まらせる。

 フォリアもまた、気づいているのだろう。

 聖獣を倒すと、全てが無くなると。

 そう思い出して落ち込んでると、急に尻尾を捕まれる。


「きゃっ。急になにっ。」

「あ、ごめんごめん。なんか、ふさふさして気持ち良さそうだったから。」

「だからって急に掴まないで下さいよ。リアさん。」


 尻尾を掴んだのは、リアだった。

 興味深そうに、尻尾を撫でている。


「少しだけ。少しだけね?」

「うぅ、はい。」

「やったっ。」


 リアが嬉しそうに尻尾を持ち上げ撫でている。

 そんなフォリアは、むず痒そうにしている。


「ふわっ。こそばゆいのでもっとゆっくりで。」

「あら、そうなの? ここかな?」

「ひゃっ。」

「リア、その辺にしておいた方が。」

「もう少し。ね? あ、ナンシーもどう?」

「え? むぐっ。」


 リアがナンシーの顔に尻尾を当てる。

 するよ、ナンシーも尻尾に顔を擦り付ける。

 意外と良かったようだ。

 しかし、フォリアはまたむず痒そうにしている。


「フォリア、元気になったね。」

「だな。こういう時は、やはりリアの出番だ。」

「俺達には、真似が出来ないからな。」


 男性陣が、声が届かない場所で話している。

 同期達は、フォリアが落ち込んでいる事を察していた。

 リアがやっている事は、そんなフォリアを励ます為のようだ。


「しかし、辛そうなんだが。止めなくて良いのか?」

「まあな。いつもの事だし。」

「うん、いつもの事だよね。」

「うむ、いつもの事だ。」


 いつもの事なんだ。

 でも、頼りになるよね。

 こういう存在って。


 同期達にとっては、いつもの事だ。

 いつだって、元気のない彼女を励ましてきた。

 大事な妹分だから。


「あの子が落ち込んどる時は、いつだってこやつらが励ましてきた。ワシも頼りにしておるよ。」

「困ったら見てやるのは当然だろ?」

「そうじゃのう。ほっほっ。」


 それでも、優しいね。

 ずっと、こうやって見てきたんだね。


 何かがあれば、同期達が見てあげる。

 年上として、仲間として、当たり前の事をしたまでだ。

 それほど、可愛がられていたという事だろう。


「そういえば、フィーさんには尻尾とか無いんだね。」

「確かにな、同じ力なんだろ?」

「さぁな。私の力は、契約による繋がりとかいうよく分からない物だからな。」

「分からないんだ。」

「分からんな。」


 分からないね。

 残念ながら。


 原理は分からない。

 しかし、同じ聖獣の力ではあるはずだ。


「それは、私の力が聖獣そのものだからだと思、ひゃん。」

「そのもの?」

「そうですよ。今の私は、聖獣そのものだから。」

「なるほどな。まとってるだけの私とは違うわけだ。」


 そういう事だね。

 通りで違うわけだ。


 まとっている力とその物の力。

 だから、違う所が出ている訳だ。

 それでも、同一の力には違いない。


「でも、同じ聖火には違いないよ。だから、二人の力が合わされば聖獣様を止めれるはずです。」

「おう。そん時は、頼りにしてるぜ?」

「はいっ。」「任せてくれ。」


 聖獣本体にも、相当な聖火が流れているはずだ。

 しかし、こちらには対抗できる力がある。

 恐れる事なく挑めるだろう。

 そんな話をしていると、前方に畑が見えてくる。


「ねぇ、畑が見えて来たよ。」

「もう少しだな。気を引き締めよう。」

「だね。敵もいるだろうし。」


 畑が見えるという事は、山もすぐそこと言う事だ。

 つまり、聖獣のお膝元になる。

 敵がいてもおかしくはない。


「着いたぞ。って、なんじゃこりゃっ!」

「どうなってんだ?」


 そこにある光景に、皆が驚く。

 なにせ、植えている植物が枯れ果てているからだ。


「枯れているね。」

「折角、皆で植えたのにな。」

「ひでぇことしやがる。」


 ほんとだね。

 見渡す限り全滅だ。


 昼に来た時は、辺りは植物の緑で染まっていた。

 しかし、今の光景は茶色に枯れた植物の色に染まっている。


「残っているのはないか。」

「この辺りは、黒い聖火の力が濃いから。強い気が渦巻いてる。」

「煽りを受けたんじゃな。」

「これじゃあ、俺達が植えたのも・・・。おい、見ろよ!」

「どうしたの? ドーセンさん。」


 ドーセンが指をさした方を見る。

 昼にいた、ヴァグナーの畑だ。

 そこには、少しだが緑が残っている。


「残ってる。師匠の畑が残ってるね。」

「良かったですね。」

「遠くだから、免れたんじゃな。」

「良かったな。じっちゃん師匠。そうだっ。」


 ドーセンが、その畑へと向かう。

 そして、実っているのを掴み取る。

 そのまま、口の中へと放り込む。

 俺も猫に戻ってから食べる。


「うん、いけるじゃねぇか。皆も来いよ。腹ごしらえでもしようぜ。」

「しようぜって。いいの? 師匠。」

「構わんじゃろう。皆も食うとええ。」

「やった。実はお腹が空いてたのよね。」


 他の者も畑へと向かう。

 そして、それぞれが自由に野菜を摘んでは食べていく。


「美味しいな。」

「さすが、師匠の育てた果物だね。」

「植えたのは俺達だけどな。」

「育てたのはワシじゃっ。もっと感謝して食えっ。」

「はいはい。してますよー。」


 そう言い合いしながらも、野菜を詰んでは食べる。

 それが、喉とお腹を満たしていく。


「疲れが取れますね。」

「フォリアも食べるの久しぶりしょ?」

「いえ、時々摘まんで食べてました。ごめんなさい。」

「ほっほっ、構わんよ。助けになったのならな。」


 生きてるから食事も必要だからね。

 仕方ないね。

 

「俺が摘まむと怒るくせに。」

「おやつついでに食べるからじゃ。反省せぇ。」

「ちぇっ。」


 拗ねるドーセンを見て皆が笑う。

 目的の場所の前とは思えないほどだ。

 いや、目の前だからこそだろうか。


「また植えなきゃな。」

「だね。無くなったら、また植えたら良いだけもん。」

「そのためには、守らなきゃね。」

「守りましょう。思い出をくれるこの畑を。」

「いくらでも、復活させてやるさ。俺達なら出来る。」


 植物はいくらでも植え直せばいい。

 しかし、その時はもうこない。

 そんな中、フォリアがヴァグナーの畑を見る。


「私も守るね。(この、畑だけでも。)」


 だけど、思いを繋ぐ者はいる。

 この畑を守る者はいる。

 全ての畑は無理でもと、フォリアが意思を固める。


「フィーも楽しみにしてろよ?」

「そうだな。待ってるよ、いつでも待っている。」


 約束だもんね。

 ずっと、待ってるよ。


 フィーに育った野菜を届ける。

 そう約束したから。

 それが叶わなくても関係ない。


「皆、充分堪能したな? そろそろ行くぞ。」

「うん。いつでもいいよ。」

「よし、行こう。」


 野菜のお陰で、体力も気持ちも完璧だ。

 これで、思う存分戦える。

 そう気持ちを新たに歩き出した時だった。


「おい、あれを見ろっ。」


 フィーが空の異変に気づく。

 そこには、黒い聖火が複数浮いていた。

 どうやら、向こうが動き出したようだ。


「お出ましか。わざわざ待っていてくれたのか? ありがたね。」

「んじゃ、いきましょうか。」

「おうっ。皆、出撃っ!」


 来るなら斬る。

 皆がいれば、負ける事はない。

 前に踏み出し、意気揚々と剣を振るが。

 剣を避けた聖火が、同期達の中に入っていく。


「なんだこれっ!」

「体の中にっ。」


 攻撃では無いようだ。

 ただ、体の中に入っただけ。

 ただ、心に黒い聖火が灯っただけ。


「っ! 皆っ、こっちにっ!」


 フォリアが黄色い聖火を飛ばす。

 しかし、既に手遅れだ。

 黄色い聖火が届く直前だった。


「「「「「あああああああああああっ!」」」」」


 同期の五人が雄叫びを上げる。

 そして、湧き出た黒い聖火がその体を覆う。

 そこに黄色い聖火が届くも、黒い聖火にかき消されてしまう。


「みんなああああっ!」


 フォリアが叫ぶも、届いていない。

 ただ苦しむように同期達が叫ぶ。

 ついには、体が黒い聖火に包まれる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ