絆の力です
「一体何なんだよ。」
「あれは、聖火で作った種。」
「種?」
「見てれば分かるよ。」
フォリアに言われて、黒い何かを見てみる。
すると、黒い塊は一輪の花へと変わる。
そして、そこから小さくて黒い何かが大量に飛び出してきた。
「黒い聖火の火玉。あの種が生んで操ってる。」
「操るって誰がなの?」
「聖獣樣だよ。私達を直接倒しに来たの。」
コントローラー的な?
それにしても、聖獣って倒したんじゃないの?
倒したはずの聖獣が生きている。
そして、見えない所からあれを産み落としたのだ。
復讐を完遂させる為に。
「よく分かんねぇけど、あれ潰して親玉をぶっ飛ばせば良いんだな。」
「そうだよ。それで全部の方がつく。」
全部、ね。
それで、終わるんだね。
「しかし、ドーセン。数が多いぞ。」
「無限に出てきています。」
「あんな数、どうしたらいいのさ。」
こんな話をしている間にも、黒い何かが出てきている。
もはや、空を埋めつくそうとしている程だ。
しかし、ドーセンは楽しそうに剣を振る。
「なに言ってんだ。余裕だろ、あんなの。だって、皆が揃ったんだからな。」
ここには皆がいる。
共に鍛え合った最高の仲間が。
「皆がいれば無敵だ。あんなのには負けねぇよっ。だろ?」
その言葉に、皆が頷いた。
嬉しそうに、照れくさそうに。
「あぁ、見せてやろう。」
「私達だって、強いんだから。」
「そうだね。心配は杞憂だったよ。」
「はい、私達なら負けません。」
同期の五人は、やる気に満ち溢れている。
皆が同じ気持ちのようだ。
「さぁ、フォリア。一緒に戦おうぜ。」
「うんっ。」
フォリアが嬉しそうに同期達に並ぶ。
いつもは、遠くから見ていた場所。
そこに、並ぶ事を認められたのだ。
「フィーさんとにゃんすけも頼むぜ。」
「当然だ。私も力になろう。」
力になるよ。
頑張ろうね。
フィーもまた、共に鍛え合った一人。
すると、後ろからヴァグナーもまた並ぶ。
「全く、師匠をほっぽって団結するでないわ。」
「もちろん忘れてねぇよ。んじゃ、いつもの出撃指令。頼んだぜ、師匠。」
「そうじゃな。皆のもの、出撃じゃっ!」
ヴァグナーの指令に、皆がおうと答える。
そして、種へと向かって走り出す。
「目的は、あの種って奴だ。気合い入れて行くぜ。」
「言われなくてもっ。」
村の真ん中で、今も何かを産み出している種。
そこに向かって走り出す。
すると、黒い何かがこちらに来る。
「見つかった。来るよっ。」
「おっしゃっ、暴れるぜ!」
そんな事で、怯えるようなもの達ではない。
こちらに来る黒い聖火。
先程の村人の姿を、小さくしたようなのが来る。
「先陣は、貰ったぜっ!」
開戦の狼煙を上げたのはドーセンだ。
その黒い聖火を叩き斬る。
それを合図に、沢山の相手が振ってくる。
「ほんと、多いわね。でも!」
リアもまた、その後に続く。
その踏み込みに、恐れはない。
「引く理由なんてどこにないよねっ!」
イグルが、相手の下に潜って突き上げる。
逃げる理由など、何処にあるのだろうか。
「私達の力が合わさればっ!」
ナンシーが舞うように跳ぶと、軽やかに剣を振る。
共に戦ってきた絆があるから。
「負ける事などあり得ない。」
一斉に来る相手を、エイスがまとめて叩き落とす。
どこまでも、同期の五人を突き動かす。
「凄いな。」
凄いね。
圧倒的だよ。
相手の数なんて関係ない。
絆の力で減らしていく。
その姿を、フォリアが見る。
「そうです、凄いんですよ。あの姿をずっと見てきた。でも、今回は私もあの中に。」
見慣れた後ろ姿。
憧れた背中。
その中に入る事を認めてくれた。
「私だって!」
フォリアが踏み出して、同期の中に入り込む。
そして、黒い聖火を叩き斬る。
「このままいくぜっ!」
数を減らしていく六人。
その姿をヴァグナーが見ている。
「ほっほっ、咲いたわい。ワシが育てた種が咲いたわい。これ程、嬉しい事があるかいのう。」
小さい時から見てきた大切な種。
枯れぬように育ててきた絆の種。
まさに、育てた種が育った時の喜びそのものだ。
その光景に、ヴァグナーの目から喜びの涙が溢れる。
「泣くのはまだ早いぞ?」
「そうじゃな。では、どちらの花が綺麗か。特等席で見せて貰おうかのう!」
ヴァグナーが弟子の後に続いて踏み出した。
素早い剣撃で黒い聖火を斬っていく。
「じっちゃん師匠っ! 負けねぇぞ!」
「ほっほっ。越えて見せろ、出来るならなっ!」
ドーセンとヴァグナーが前に出る。
そして、争うように斬っていく。
「まったく、こうしていつも、私達も巻き込まれるのよねっ。」
「でも、今回ばかりは気分がいいよ。」
「だな。」
「自信が付きますよね。」
「はいっ、私の憧れですっ。」
他の者達も、二人に引かれるように斬っていく。
こうして今までやって来た。
これこそが、本当の皆の姿なのだ。
「遅れを取ったな。私達も行こう。」
がたがた。
そうだね。
負けてらんないよっ。
フィーもまた、その後に続いて相手を斬る。
皆の姿に、気持ちが高まっていく。
まるで、熱い絆の炎が燃え移るように。
「その戦い、私も混ぜて貰おうか。」
「おもしれぇっ、盛り上がってくるぜっ!」
そうして、相手を斬っていく。
止まる事なく進んでいく。
その勢いは増していく。
そのお陰で、目的の花の近くへと来る事が出来た。
「見えて来たっ、もう少しだっ!」
「って、敵が前に集まるよっ。」
「構わねぇよっ。このまま突っ込め!」
その前を防ぐように、黒い聖火が立ち塞がる。
それでも、止まる事などあり得ない。
速度を落とす事なく突っ込んだ。
「吹き飛びなあっ!」
壁のような黒い聖火を叩き斬る。
そして、そのまま突っ込んだ。
壁は吹き飛び、その向こうへと飛び出した。
「おっし、到着だ!」
「やってみるもんだな。」
「当然だろ? 俺達に出来ない事なんてねぇよっ!」
「だな。後は。」
「あれをどうにかするだけだっ。」
目の前には、黒くて大きな花がある。
出し尽くしたのか、黒い聖火は出ていない。
飛び出したドーセンが、その花を斬るが。
「あちっ。」
剣が触れた瞬間、少しの聖火が流れ込む。
それにより、ドーセンが飛び退いた。
「大丈夫? ドーセン。」
「問題ねぇよ。でも、これじゃあ斬れねぇな。」
斬れば聖火が燃え移る。
だから、下手に斬る事は出来ない。
「聖火の力が強すぎる。斬れば、こちらもただでは済まないよ。」
「じゃあ、どうすんだ。」
「勿論、こうするのっ。」
フォリアが木刀を掲げる。
すると、その先から黄色い聖火が燃え上がる。
「聖火には聖火で。花の聖火が移らないようにします。でも、足りるかどうか。」
「なら、私の聖火も貸そう。」
「はい、お願いしますっ。」
黒い聖火は、それほどまでに強力なのだ。
しかし、二人分の聖火が合わさればどうにかなるだろう。
フィーもまた、剣を掲げで紫の聖火を燃え上がらせる。
「では、私達の聖火に続いてっ。」
「おっし。じゃあ、じっちゃん師匠。合図は任せたぜ。」
「いや、ドーセンがやれ。リーダーはもうお主じゃよ。」
「っ!」
弟子達は、立派な花に咲いたのだ。
もう、自分が率いる必要はない。
ドーセンに、それを託したのだ。
「おっしゃあっ。んじゃ、俺が合図を出すぜっ!」
皆の異論はない。
皆もまた、ドーセンをリーダーとして認めているのだ。
代わりに、武器を構えて足に力を込める。
「ぶち込めえっ!」
「はっ!」「はあっ!」
まずは、フォリアとフィーが花を斬る。
すると、黄色と紫の聖火が広がる。
「続けえぇーーーっ!」
「「「「「おーーーーっ!」」」」
残りの者達が、その聖火の上から突き刺す。
黒い聖火は、燃え移らない。
二人の聖火が守っているのだ。
すると、黒い花にひびが入っていく。
「その調子だっ!」
皆の踏み込む足に力が入る。
すると、黒い花のひびが広がっていく。
「「「「「「「「いけえぇーーーーーっ!!」」」」」」」」
いけーーーーーっ。
そして、ついに花を貫く。
ぱりーーーん。
何かが砕ける音と共に、黒い花が砕け散る。
そして、そのまま前に飛び込んだ皆の上に花びらが降り注ぐ。
黒い花は、跡形もなく砕け散った。
絆の前に、敗北したのだった。




