獣娘の襲来です
「あんた、誰だっ。」
その人物は、村人と同じような服を着ている。
そして、その顔はお面で覆われて分からない。
それに・・・。
「獣の耳と尻尾!?」
その人物は、獣のような耳と尻尾が生えている。
その姿に、ドーセン達が驚くのも仕方ない。
「お前は人間なのか?」
もしかして、獣人? 獣娘?
でも、そんな話は聞いてないけど。
本来の人間には、決して生えてはいないものだ。
その姿は、まさに獣人と言っても良いだろう。
「おい。なんとか言ったらどうだ。」
そう聞くが、その人物は答えない。
代わりに、顔を俯いて肩を震わしている。
そして、息を吐いてドーセン達を見る。
「逆らってはいけない。」
「何だと?」
「逆らうなら、代わりに私が排除する。」
急に獣娘が前に踏み出した。
そして、ドーセン達に木刀を振るう。
「ぐっ。」
咄嗟にドーセンがそれを受ける。
しかし、いとも簡単に払われてしまう。
「なっ!?」
「ドーセン!」
獣娘の更なる追撃が来る。
しかし、それは間に入ったエイスが防ぐ。
「このっ。」
そこに、横からのリアの攻撃。
しかし、それは後ろに下がられ避けられる。
それでも、引き離す事は出来た。
「お前ら、助かったぜ。」
「問題ない。しかし、こいつの技。」
「えぇ。私達のと同じね。」
それは、フィーに教えられた技だ。
つまり、ヴァグナーが弟子達に教えた技。
それもそのはず。
「ふっ。見ない間に、精度を上げおったな。フォリア。大事な我が弟子よ。」
かつて、ドーセンが教えた弟子の一人。
共に、技を磨きあった大事な仲間。
だから、同じ技を使うのも当然だ。
「あんた、いきなり襲いやがって。俺達になんのようだっ。」
「私は使命を果たすだけ。ただ、それだけ。」
そう言って、再び獣娘が踏み出した。
更に、高く飛んで木刀を振り下ろす。
勢いのある木刀が、前にいるリアを襲う。
「きゃっ。」
リアがそれを防ぐものの吹き飛ばされる。
そして、続けざまにエイスに向かって木刀を振る。
「ぐっ。」
何とかエイスがそれを防ぐ。
そこから、三回剣を打ち合う。
その直後、獣娘が反対側に木刀を回して払い落とした。
「早いっ!」
その動きに、目が追い付かない。
気づけば、木刀の先がエイスの喉へと迫っていたが。
「ぼさっとすんなっ。」
ドーセンが、エイスを押し退けて代わりに剣で受ける。
しかし、急に割り込んだ為に体勢が悪かったのか一瞬で弾かれる。
そこに、容赦ない一撃が迫るが。
「へっ。よそ見厳禁だぜっ。」
ドーセンが勢いのままに後ろへ下がる。
代わりに、イグルとナンシーが現れて前に出る。
「させないよっ!」
「させないっ!」
獣娘に向けて、二人合わせての突きを繰り出す。
いきなりの登場に、獣娘は避けられない。
そのはずだった。
「はっ。」
ナンシーの剣を横から叩いてイグルの剣とクロスさせる。
そして、その間に木刀を入れて上へと弾く。
「なっ。」
「くうっ。」
そのせいで、二人はがら空きになってしまう。
そこに、獣娘の一撃が迫るが。
「させねぇっ!」
体勢を戻したドーセンが、剣で受ける。
更に、そこから踏み込んで獣娘を吹き飛ばす。
「どうだっ! やられてばかりじゃいられねぇよっ。」
ドーセン達とて剣の訓練をこなしているのだ。
きちんと踏み込む事が出来れば、優位に立てるのは当然だ。
「あんたが何もんかは分かんねぇが。取り合えず、眠っときなっ!」
吹き飛ばされた獣娘に、ドーセンが蹴りを繰り出した。
尻餅をついている獣娘には、避けられないだろう。
なので、木刀から出した黄色い聖火でそれを防ぐ。
「あちちっ。それは卑怯だろっ!」
あまりの熱さに、ドーセンが飛び退いた。
その隙に立ち上がった獣娘が、更なる聖火を叩き込む。
「くそっ。」
何とか後ろに飛び退いて、それを避ける。
しかし、木刀の先に灯された聖火はより強く燃え上がる。
「大丈夫かっ、ドーセン。」
「何とかなっ。それよりもだ。」
黄色い聖火は、強く輝いている。
確実に、こちらを燃やし尽くす程の熱量だ。
「まとめて、焼く気だわっ!」
「どうすんのさ、ドーセン。」
「避けれません。」
「それでも、避けるんだよっ!」
同期の五人が、黄色い聖火から逃げようと走り出す。
しかし、今さら逃げても意味がない。
獣娘が、その後ろ姿に向かって聖火を振るう。
「広いですっ!」
「やばいよ!」
「それでも逃げろ!」
大きな黄色い聖火が、同期達に向かう。
必死に逃げる同期達。
しかし、範囲が広いため避けられない。
「くそおおおーーーっ!」
波のように広がる黄色い聖火が同期達を飲み込む。
その直前だった。
「剣の勝負に無粋な奴だなっ!」
紫の聖火がそれを防ぐ。
フィーが間に入って紫の聖火を放ったのだ。
紫の聖火と黄色い聖火がぶつかり合う。
「止めたぞっ!」
「でかしたっ!」
聖火がぶつかり合って消えると、そこからヴァグナーが現れる。
そして、獣娘へと剣を振り下ろす。
「ほっ。」
「ぐっ。」
獣娘は咄嗟に木刀で受け止める。
そして、そのままお互いが押し合う。
「よくぞ、ここまで成長したな。しかし、卑怯な手を使えとは教えとらんぞ。」
「っ! 私は役目を果たすだけ。」
「役目じゃと? 仲間を斬る事がか?」
「・・・私の役目。それは、聖獣様の復讐を手助けする事っ。」
獣娘が木刀を強く押し込んで、ヴァグナーを離す。
ヴァグナーは、逆らわずに後ろへと跳んだ。
「じっちゃん!」
「お主らは引っ込んでろ!」
立ち上がろうとしたドーセンをヴァグナーが止める。
ドーセン達では、また剣が鈍るかもしれない。
なもで、ヴァグナーがけりをつけるようだ。
「嬢ちゃん達もだ。助太刀無用じゃ。」
「分かった。ここで、見ていよう。」
そうだね。
あとは、任せたよ。
「一体、お主に何が起きているのかは分からん。しかし、弟子が苦しんでいるのに師匠が何もしない訳にはいくまいて。」
「苦しんでなどいませんよ。私はただ、成すべき事を成すだけです。」
獣娘が握り直した木刀を構える。
それに対して、ヴァグナーも剣を構える。
「本当にやるんじゃな。」
「邪魔をするなら排除をするまでです。」
師匠と弟子。
お互いに戦う理由を持っている。
もう戦いは避けられない。
「聖獣様の遣いとして、あなたと戦います。」
「面白い。なら、どれだけ成長したか見てやろうかのう。」
いつか見た、稽古の光景。
何度もこうして、剣を向けあった。
しかし、これはお互いの信念をかけた真剣勝負。
全てを剣に乗せて、お互いが踏み込んだ。




