敵の総戦力です
フィーが振った剣が何かを吹き飛ばす。
その直後、どさりと地面に何かが落ちた。
「嬢ちゃん、今のはっ。」
「見えないなら聞けばいい。どうやら、音までは消せないようだからな。」
斬り飛ばしたのは、見えない敵のようだ。
刃物を振る音に、フィーが反応したらしい。
「確かに、避けた時に何かの音がしてたのう。それで気づいたのじゃな?」
「あぁ、そういう事だ。もういけるな?」
「勿論じゃ。」
場所さえ分かればだね。
反撃開始だよ!
相手を認識する術があれば、見えなくても関係ない。
しかし、それで相手が黙って見ている訳がない。
「来るぞ!」
「分かっている!」
ドクロの蜘蛛が、俺達に突っ込んでくる。
それを避けたヴァグナーとフィーが、相手の後ろ足に回り込む。
「嬢ちゃん、ちびっこ。ワシに合わせろっ。」
「何とか、やってみよう。」
にゃん!
頑張るよ!
後ろに回ったヴァグナーが、そのまま駆け抜ける。
その後を、俺とフィーが追いかける。
そして、ドクロの蜘蛛もまた追いかけてくる。
「来とるな。このまま、角まで誘うぞ。」
「分かった。」
そのまま駆けて角を曲がる。
しかし、それは振りだ。
「曲がったと見せてからのっ。」
曲がったと同時に急反転。
来た道を戻っていく。
その前には、追いついてきたドクロの蜘蛛。
「ほっ!」
「はっ!」
にゃん!
曲がった事により、遠心力がかかったドクロの蜘蛛の足下へと迫る。
そして、そのまま足を叩き斬る。
すると、相手は横へと転んでしまう。
「もう一丁!」
ドクロの蜘蛛の下を潜って急反転。
傾いたドクロの蜘蛛の下に潜る。
「押し込めっ!」
「はあっ!」
にゃん!
二本の剣と俺の足を、ドクロの蜘蛛の下に叩き込む。
その勢いで、相手はひっくり返る。
「よしっ、このまま止めを!」
倒れている内に止めをさす。
その為に、上に登ろうとした時だった。
背後から、ひゅんという音が聞こえた。
「ぐうっ。」
咄嗟に、フィーが剣を後ろに振る。
すると、キンという音が辺りに響く。
「追いつかれたか。」
「嬢ちゃん、そのまま止めておけるかっ。」
「やってみようっ。」
感触を頼りに剣を回す。
そして、相手の武器を押さえ込む。
「今のうちだっ!」
「うむ、分かったぞっ!」
その隙に、ヴァグナーがドクロの蜘蛛の上へ。
そして、晒されたお腹に向かって剣を突き刺そうとするが。
ヴァグナーの頭上で、ひゅんと音がする。
「ぐぬっ!」
ヴァグナーが見えない所に剣を振る。
すると、キンという音と何かがぶつかる感触がする。
「どうしたっ!」
「新手じゃっ! 家族の一人で間違いないっ。」
それは、ドクロの蜘蛛を守る家族の一人。
しかも、ヴァグナーを押さえる程の力を持つ。
「この力は、父親かっ。今まで姿を見せんと思ったらっ。」
今までは、一人の相手しか見なかったのだろう。
だから、二人目の存在に気づかなかった。
「ぐうっ。不味いのうっ。」
どうやら、ヴァグナーが押さえ込まれているようだ。
このままでは、押し負けてしまうだろう。
にゃん。
いま、助けるよっ。
俺がヴァグナーの前の敵に火の玉を投げる。
すると、見えない何かに直撃して爆破を起こす。
その時だった。
「なっ。」
にゃ!
あれはっ!
煙が晴れると、そこには布を被った何かが浮いていた。
その手には、大きな鎌を持っている。
「何なんだ、こいつは。いや、それよりもっ!」
そいつは、腕で顔を防いでいる。
その隙を狙って、ヴァグナーが剣で斬りつける。
すると、遠くへと吹き飛んだ。
「よし、邪魔者は消えたっ!」
邪魔をするものはいない。
後は、お腹を斬るだけなのだが。
「ぐぬうっ!?」
ドクロの蜘蛛が起き上がる。
さすがに、ずっとひっくり返ったままではないようだ。
ヴァグナーが急いで飛び降りる。
「ちいっ、無理じゃったか。」
「大丈夫か?」
「うむ、問題ない。」
「そうか。しかし、厄介が増えたな。」
「そうじゃな。」
ただでさえ、苦戦している所に相手の増援だ。
こちらの攻撃はままならない。
「しかし、悪い事だけでは無いぞ? のう、ちびっこよ。」
「どういう事だ?」
にゃん!
こういう事だよ!
俺が両手を大きく開く。
すると、辺りの視界が鮮明になる。
霧を晴らす時に使った魔法だ。
「これはっ!」
夜なのにも関わらず、昼のようにしっかりと見える。
そして、フィーが押さえている相手の姿も明らかになる。
上で見たのと同じ、布を被った何かが現れた。
「何が起きてるんだ?」
「上にいた奴に、ちびっこの魔法が当たると姿を表した。詳しくは分からんが、魔法で見えるようになるらしいの。」
にゃん。
みたいだね。
当たってて良かったよ。
原理は分からない。
しかし、姿が現れたのは事実だ。
「さて、終わらせるとしようかの。」
「だなっ。」
押さえてる鎌を払ったフィーが、相手を斬り飛ばす。
そして、再びドクロの蜘蛛へと迫る。
「家族が四人。もう二人いないのが気がかりじゃが。」
「見えるなら問題あるまい。」
「じゃなっ。」
見える相手なんて怖く無いもんね。
相手が見えるなら、奇襲に怯える必要はない。
まずは、目の前の敵を叩くのが先決だ。
しかし、同じ手を喰らうほど相手は甘くない。
迫る二人に対して、後ろへと跳んだ。
「随分と動けるのう。」
「しかし、無意味だ!」
下がられたのならば、その分詰めればいい。
しかし、ドクロの蜘蛛と入れ替わるように布の相手が前に出る。
「にゃんすけ!」
にゃんっ。
あいよっと。
俺が火の玉を飛ばしてぶつける。
そこに、ヴァグナーとフィーが斬っていく。
そして、そのまま横を過ぎて駆けていく。
「一気に詰めるぞ!」
「逃がしはせん!」
逃げる前に斬る。
ただそれだけだ。
相手の前足へと剣を振る。
その直前、何かが前に現れた。
「ぬっ。」
「なっ。」
咄嗟に剣を引く。
何故ならそれは。
「村人か。」
「そういえば、静か過ぎるとは思っておったけどな。」
昨晩と同じ、村人だったものだ。
普通なら、これだけ音がすれば出てくるものだ。
しかし、誰一人姿を現さない。
何故なら、既に狩られていたからだ。
「敵は全てここにいるはず。いや、まだおったの。」
ここにいる敵には、村人は襲えない。
しかし、まだ姿を現していないものがいる。
「見ろ、上だっ!」
「うむ、ここで来たか。」
それは、上から降ってきた。
大きな鎌を持った者。
「姿を現さなかったのは、こやつらを集める為か。」
「だろうな。」
俺達を倒すために?
随分と、用意周到だね。
俺達が戦っている間に、用意したようだ。
俺達を倒すために。
邪魔者を消すために。
そうしていると、先程の二人が後ろに来る。
「囲まれたか。」
「数が多いな。どうしたものか。」
圧倒的な数に、どうする事もできない。
次の動きを待っていた時だった。
「なら、こちらも数を増やせば良いだけだろっ!」
「なっ!」
急に現れた五つの影。
前に飛び出すと、村人だった者を斬り飛ばしていく。
「お前たちっ、何故っ!」
「何故って、助けに来たんだよっ!」
現れたのは同期の五人。
俺達を助ける為に、駆けつけて来たようだ。




