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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
呪われた村と堕ちた聖獣 フラリア王国編

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村の真相

「死んで・・・いる? でも、皆はあそこにいるぞ?」


 何とかフィーは、声を振り絞る。

 しかし、その声は震えている。


「・・・その前に、嬢ちゃんに話さないといけない事がある。確か、聖獣と交流する村を探しておるんじゃったな。この村がそうじゃ。」


 どこから見ても普通の村。

 しかし、こここそがフィーが探していた村だと言うのだ。


「しかし、聖火の色が違う。」

「濁ったのじゃよ。とある事が原因でな。」

「原因だと?」

「そう。その前までは、とても綺麗な黄色をしておった。」

「それって。」


 写真で見た奴だ。

 間違いないよ。


「どうやら、当たりのようじゃな。」

「・・・原因は?」

「ワシらが聖獣を裏切った。そのせいじゃよ。」


 裏切った?

 どうして?


「仲違いしたのか?」

「いいや違う。仲は良かったんじゃよ。ただ、すれ違いが起きてな。」

「すれ違い。一体何が起きたんだ?」

「それはのぅ、それは。」


 ウァグナーが言いよどむ。

 どうやら、あまり言いたくは無いようだ。

 しばらく沈黙してから話し出す。


「殺したんじゃよ。」

「え?」

「殺してしまったんじゃ。聖獣の子をな。」

「っ!」


 再びの衝撃に声が詰まる。

 それがどういう事なのか、分からない俺達ではない。


「なんで、そんなことを。」

「村に聖獣の子が紛れ込んだ。しかし、ワシらからすれば一匹の獣。すると、どうなるか分かるじゃろ?」


 殺したって事だね。

 普通の獣と間違えて。


「その時はな、誰も知らなかったんじゃ。聖獣に子供がいた事なんてな。だから、野良の獣が混じったと思って殺してしまったらしいんじゃ。」


 知らない獣が混じったのなら対処をしないといけない。

 そうしないと、村人が襲われてしまうから。


「しかし、そんな事をすれば親が黙っていないだろう。」

「その通りじゃ。子を殺された事を知った親が現れた。そして、黒く濁った聖火で焼きつくしたんじゃ。村も村人もな。」


 子を殺された怒りで、全てを焼きつくしたのだろう。

 負の感情で濁ったその聖火で。


「では、私が見ているのはなんだ? その焼きつくされた筈のものはこうしてある。一体、これらは何なんだっ!」


 そうだよね。

 これそのものが夢だというの?


「これらはな、聖獣が自信の力で直したんじゃ。」

「・・・どうしてだ?」

「同じ思いをさせるためじゃよ。壊して恐怖に陥れてはまた直す。それが毎晩じゃ。」

「毎晩? じゃあ、昨日の事だけでは無かったんだな。」

「そうじゃ。」


 そうなんだ。

 なんか、悲しいね。


 その事件の日から毎晩同じ事が起きているらしい。

 同じ苦痛を与える為に。

 自らの子を殺された怨みを晴らすために。


「ならば、村から逃げるという手もあったのでは?」

「勿論、そうする者もいた。ワシもその警護に着いた事もある。しかし、無理じゃった。逃げようとした者達は、黒い聖火に包まれ岩と化した。お主らも見たはずじゃ。」

「あぁ、見たな。」


 まさか、森で見たのって。

 そういう事だよね。


「では、皆の記憶が無いのは?」

「黒い聖火が消しているからじゃ。自信に関する記憶すべてをな。知ったらいつかは恐怖を感じなくなるからな。」 

「なるほどな。しかし、あんたは知っている。どうしてだ?」

「記憶を消せるのは、夜に肉体を失った者のだけじゃ。ワシとあんたらは無事じゃった。だから、記憶があるんじゃよ。」


 肉体がある者の記憶は消せないようだ。

 そうして、恐怖に慣れさせないようにしているのだろう。

 諦めてしまえば、恐怖なんて感じないのだから。


「肉体を奪って記憶を消す。それを成すのが昨日のドクロか。まさか、あいつが聖獣か?」

「恐らくな。ドクロが村人を殺す事によって化け物となる。そして、それが他の村人を襲って化け物となる。」


 なるほど。

 村人を殺す存在がいないと成り立たないからね。


「では、あいつを先に倒す事が出来れば。」

「解決はするのう。しかし、次の晩に繰り越されるだけじゃ。それに、あやつは守られておるからのう。嬢ちゃんも見たはずじゃ。」

「・・・皆を斬った奴か?」

「うむ、そうじゃよ。」


 確かにいたね。

 正確には見えなかったけど。


 ドクロの蜘蛛を倒した直後に現れた奴の事だ。

 正体は見えなくても、間違いなくそこにいた。

 でなければ、同期の五人は殺されていない。


「あいつらはなんだ?」

「聖獣との橋渡しを担っておった者じゃ。子を守ってくれなかった罰として使われておるんじゃろう。」

「そうか。では、私が見た姉妹と言うのは。」

「そう。その家族の子供で間違いないじゃろう。」


 一番近い存在だからこそ、一番の罰を与えられたのだろう。

 そうして、ドクロの蜘蛛を守らせる事によって村への罰を遂行させていたのだ。

 これが、この村で起こっている事の全て。 


「どうすれば良い?」

「どうもせんでいい。ワシらの為に、命をかける必要は何処にもない。外の獣が消え次第、この村を出るんじゃ。」

「しかし、この村はどうなるっ。」

「それが、この村の責任じゃ。聖獣の子を殺した責任なのじゃよ。」


 全てを背負っていくつもりなんだね。

 申し訳ないと思っているから。


「もう一つ聞きたい。その妹は、鈴のような物を着けていたか?」

「着けておったが、それがどうしたんじゃ?」

「そうか、それで充分だ。」


 フィーが目を閉じた。

 そして、深く息を吐いてから目を開ける。


「すまないな、ウァグナー。私はこの村を助けるよ。」

「なっ、どうしてじゃっ。お主には関係が無いじゃろう!」

「関係ならある。もうあるんだよ。いいな? にゃんすけ。」


にゃん。


 そう来ると思ったよ。

 いいよ、協力する。


「ふふ、ほっほっほっ。なるほどのう。あやつらが気に入る訳じゃ。」

「ん? どういう事だ?」


 どうしたの?

 いきなり。


「お前さん、あやつらと同じ目をしておる。」

「そうか? よく分からんが。」

「しておるよ。分かった、もう止めはせん。その代わり、条件がある。」

「条件?」


 条件?

 なんなの?


「ワシの稽古を受けよ。それに合格すれば、もう止めぬよ。」

「合格しなかったら?」

「するじゃろ。あやつらと同じ目を持つお主ならな。」


 なんか、自信たっぷりだね。

 そんなに信頼しているんだね。


「それに、知りたがっておったじゃろ。どうして、ワシらが強いのか。」

「あぁ、興味ある。分かった、稽古を受けよう。」

「そう来なくちゃな。ほっほっほっ。」


 ウァグナーが大声で笑いだす。

 そして、自身の剣を抜いてから見る。


「約束、果たせそうじゃな。ワシには無理でもこの嬢ちゃんなら。」


 その目は優しい目をしている。

 誰かを見守るような暖かい目だ。


「どうした? ウァグナー。」

「何でもないわい。それと、ワシの事は師匠と呼べ。」

「分かった、師匠。」

「それでよい。ほっほっ。」


 満足したのか、ウァグナーが再び笑いだす。

 すると、軒先の方から音がする。


「うるせぇな。こっちは寝てんのによう。」


 どうやら、ドーセンが起きたようだ。

 それに合わせて、他の者達も起き出す。


「こりゃっ、いつまで寝ておるつもりじゃ。稽古の時間じゃぞ。新入りの前で恥ずかしく無いのかっ!」

「新入り? それって、まさか。」


 ドーセンがウァグナーの横を見る。

 それから分かるのは一つだ。


「フィーが新しい弟子に?」

「あぁ、そうだ。」

「おっ、まじかっ。起きろお前ら! 稽古の時間だ!」

「ふあぁ、起きてるよ。本当に元気ね。でも。」


 同期の五人が軒先から降りる。

 そして、俺達の所へと集まってくる。


「フィーさんと一緒は嬉しいよ。」

「はい。私も嬉しいです。」

「だね。新しい仲間だ。」

「困ったらいつでも言ってくれ。」


 同期の五人がフィーを囲む。

 あの夢の中の時のように。


「んじゃ、じいちゃん。早速、稽古だ!」

「言われんでも分かっとる。後、ワシの事は師匠と呼べっ!」


 こうして、ウァグナーの稽古を受ける事になった。

 来たるべき時に向けての準備が始まる。

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