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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
呪われた村と堕ちた聖獣 フラリア王国編

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畑を手伝いました

 駆け足で、同期の五人に追い付いた。

 五人は、どこかへと真っ直ぐ進んでいる。

 行き先が決まっているのだろうか。


「それで、これからどこに行くんだ?」

「狩りが無いなら畑の日だ。じっちゃんの畑を手伝いに行くぞ。」


 言ってたよね。

 これからそこに行くんだ。


「手伝いか?」

「うん。私達、師匠の畑を手伝ってるの。」

「修行の一貫だとさ。押し付けられてる用にしか見えないけどな。」


 本当に修行なのかな?

 でも、この人達って実際に強いしね。


「でもよ、剣の振りが良くなっただろ?」

「まぁ、言われてみればな。」

「はい。私も力仕事が得意になりましたよ。」

「ほらみろ。じっちゃんの言うことは確かなんだよ。」


 ドーセンが胸を張っている。

 なんだかんだ言って、ウァグナーの事を信頼しているのだろう。

 血が繋がっているだけはあるようだ。


「これがお前達の強さの理由という訳だな。」

「たぶん。最初は半信半疑だったけどね。」

「そうだね。詳しくは、師匠にしか分からないよ。」


 詳しい事は、同期達に伝えられてないのだろう。

 それでも、やり続けた事で


「なるほど。では、私もやってみようか。」

「えっ、お客さんにはさせられないよっ。」

「そうだ。見ているだけで良いんだぞ?」

「いや、お世話になりっぱなしなのもな。それに、興味がある。」


 そうだね。

 恩返ししなきゃ。


「うーん。そういう事なら、お願いしようか。頼んだぜ。」

「あぁ、私に任せてくれ。」


にゃー。


 任せてくれー。

 力になるか分からないけど。


 そうして、村の奥にある畑に着いた。

 山に囲まれるように、畑が並んでいる。

 ここで農作業をしているらしく、多くの村人がいる。

 その端の畑へと、俺達は向かう。


「人手も増えた事だし、新しいのを植えようか。」

「大変だからほっといたやつね。」

「そういう事だ。んじゃ、この間空いた所を耕し直すぞ。」


 畑の一部の何も埋まっていない場所へと向かう。

 そこには、枯れた植物の残骸が所々にある。

 枯れた植物を取って放置でもしていたのだろう。


「この間からそのままだね。大変そう。」

「だな。でも、今回は助っ人がいる。こちとら百人力だぜ。」

「いや、流石にそれはだがな。しかし、期待に応えれるよう頑張る。」


 凄く期待されてる。

 俺も頑張るよ。


 期待される程の結果は出せないだろう。

 しかし、気合いなら充分だ。

 早速、道具が置かれた場所へと向かうが。


「あれ? でも、フィーさんの道具ないけど。」

「いや、確か予備があったはずだぞ? どこにやったっけ。」

「それなら。奥の方にしまってあったよ。」

「あっ、本当だ。これだこれだ。ほれ。」


 ドーセンが奥の方に隠れていた鍬を取り出した。

 そして、先の方を持つとフィーに持ち手を向ける。


「ありがとう。ん?」


 フィーが鍬の持ち手を見る。

 よく見ると、使い込まれた用に変色をしていた。


「どうした?」

「いや、何でもないよ。」


 恐らく、古いやつだからだろう。

 そう思い、フィーが鍬を持ち直す。


「剣は邪魔だと思うから置いていった方がいいぞ。んじゃ、俺達も準備をするぞ。」

「言われなくてもやってるよー。」

「ありゃ、俺だけか。んじゃ、行こうぜ。」


 ドーセンとフィーが剣を置いて畑へと向かう。

 そこでは、すでに準備を済ませた同期が待っている。


「それで、私はどうすればいい。」

「まずは、畑を耕す所からだな。枯れてるやつは、リアとナンシーが集めるからほっといてくれ。」

「了解した。耕すだけでいいんだな?」

「あぁ、頼んだぜ。」


 それだけ言うと、男性陣で並んで耕し始める。

 フィーは、他の人の動きを見て同じように鍬を振る。

 俺もまた、同じように手で掘っていく。


「おっ。速いじゃねぇか、にゃんすけ。」

「うむ。才能があるかもな。」

「ははっ、村一のエイスが褒めるなんてね。僕も負けてられないよ。」


 そうなの?

 じゃあ、このまま行くよっ。


 男性陣が、鍬をしっかりと掘り始める。

 俺に対抗意識を持ったようだ。

 一方、女性陣が呆れたように男性陣を見る。


「はぁ、馬鹿らしい。フィーさん、ゆっくりで良いからね。」

「そうなのか?」

「はい、無理しても良くないですから。」


 無理をしても体を疲れさせるだけだ。

 なので、自分のペースでやるべきなのだが。


「どうだっ。村一番の振りはっ。」

「はっ。騎士を目指して鍛えている俺の振りにはまだまだだな。」

「大事なのは正確性だよ? それなら、僕が一番かな。」


 さすがの経験者だね。

 俺も負けてられないよ。


 勢いづく男性陣に合わせるように俺も掘り続ける。

 ずると、細長いのが顔に飛びかかってきた。

 それに思わず驚いてしまう。


にゃっ!


 なにっ!


「どうした? にゃんすけ。ん、なんだにょろか。」


 にょろ?

 なにそれ。


 エイスが、その細い何かを持ち上げた。

 それは、ミミズのようにくねっている。

 すると、興味を持ったフィーが覗き込む。


「それは何なんだ?」

「にょろという虫だ。新鮮な畑に住んでいる。」

「ほう、面白い見た目だな。」


 面白くないよっ。

 はぁ、いきなり現れるのは卑怯だよ。


 フィーが受け取ると興味深そうに見る。

 そして、俺へと見せてくる。


「ほら、にゃんすけも見てみろ。」


にゃっ。


 ひっ。

 近づけないで欲しいかなぁ。


「どうした? にゃんすけ。」

「もしかして、虫が苦手なのか?」


 苦手ではないです。

 直視は勘弁なだけです。


「やっぱり苦手そうだな。獣なのに。」

「そんな事もあるんだね。勉強になるよ。」


 中身は人なので。

 って、苦手ではないってば。


「でも、フィーさんは大丈夫なんだ。」

「あぁ。面白いよな、こいつ。」

「うむ。この良さが分かるとは中々だ。」


 へぇ、得意なんだ。

 こういうのって、知らない人ほど苦手意識がないもんね。


 そんな雑談をしながらも掘り進めていく。

 すると、フィーが腰を押さえ始めた。


「結構来るな。」

「大丈夫? フィーさん。」

「あぁ、少し腰が怠いだけだ。」

「そう? でも、無理は駄目だからね。」

「何かあれば言ってくださいね。」

「ありがとう。頑張るよ。」


 こうして、腰の疲労にも耐えて掘り進める。

 しばらくすると、女性陣と代わり耕していく。

 すると、そのお陰なのか端まで掘り終えるが出来たのであった。


「いよし、休憩にするぞ。」

「そうね。お疲れさま、フィーさん。休憩よ。」

「あぁ、分かった。」


 休憩だ。

 もうフラフラだよ。


 疲れた体を振り絞って、掘り出し地点へと戻っていく。

 すると、フィーが地面に落ちるように座る。

 その姿を見たドーセンが笑う。


「こんなんでへこたれるとはまだまだだな。」

「言ってくれる。でも、皆は良く平気だな。」

「そりゃあ、慣れてるからな。」


 慣れた動きだったもんね。

 疲れて無さそうだし。


「いつからやっているんだ?」

「小さい頃からやらされてるよね。」

「お陰さまでね。家の畑の分もあるって言うのに。」


 小さい頃からなんだ。

 凄いね。


「まぁ、良いじゃねぇか。俺は嬉しいぜ? なんていったって、騎士になる為に強くなれるんだからな。」

「じゃあ、ドーセン一人でどう?」

「それは、勘弁だな。」


 ドーセンの言葉に笑いが起きる。

 強くなれるといっても、頑張れる限度があるらしい。

 実際、この畑を一人でやるのは無理だろう。

 そんな話をしていると、ウァグナーが現れる。


「おや、耕しておるのか? あれほど、違う時期にやるのは面倒だと言っておったのに。」

「まぁな。人手も増えたしって事でやる事になったんだ。」

「ほう。手伝ってくれとるのか。ありがたい。」

「いや、お世話になっているからそのお礼だ。皆の強さの秘訣も知りたかったしな。」


 そうだね。

 ただのお礼だよ。


「そうか。興味あるんじゃな。本当にすまないのう。」

「ん? なんでじっちゃんが謝るんだ?」

「いや、こっちの話じゃ。そうなると、種を取ってこんとのう。」


 それだけ言うと、ウァグナーが去っていく。

 耕した畑にまく種を取りに行くようだ。


「変なじっちゃんだな。まぁいいや、種が来るまでに、残りも済ませておこうぜ。」

「まだあるのか?」

「あぁ、肥料をまいておかなきゃなんねぇんだ。フィーは休んでな。」

「いや。やらせて貰う。最後まで付き合うぞ。」


 付き合うぞー。

 俺も頑張るよ。


「そうか? その気力がいつまで続くのか見ものだな。」

「えっ。」


 えっ。


 にやりと笑うドーセンに、俺達は言葉を失う。

 他が止めない所を見ると、冗談ではないようだ。

 それから、肥料、種をまいて水をかける。

 終わった頃には、俺とフィーは疲れ果てていた。


「よし。終了だ。」

「っはぁ、ようやくか。」


 終わりだー。

 もう、疲れたよっ。


 あまりの疲れに、深く息を吐く事しか出来ない。

 体も怠く、立つのもやっとだ。

 しかも、全身が汗で濡れている。


「お疲れさん。頑張ったな。」

「最後の方は任せてしまったがな。」

「充分だ。初めてにしては頑張っていたぞ。」

 

 そう言ったエイスが額の汗を拭う。

 よく見ると、全員が汗で顔を濡らしている。

 それでも平気そうなのは、流石といった所だろうか。


「んじゃ、水浴びに行くか。」

「水浴び?」

「そう、労働の後のお楽しみだ。着いてこいよ。」


 水浴び?

 水は飲めるの?


 ドーセンを先頭に山の方へと歩き出す。

 その先には、大きな水溜まりがあった。

 そこにつくと、ドーセンが桶を取って水をすくい上げる。


「よーし。行くぞー!」


 そして、勢いのままに自身にかける。

 頭から被ったドーセンは、全身が水浸しになる。


「あぁ、染み渡るーっ。」

「おじさん臭いわよ。」

「そういう環境で育ったからなっと。」


 もう一度、ドーセンが水を掬い上げる。

 すると、今度はリアへとぶっかけた。


「ひゃっ。つめたっ。やったわねっ。」

「ははっ。おっと、ぼっとしてると危ねぇぞっ。」


 今度はフィーへと、容赦なく水をかける。

 フィーは避けられず、そのまま水を被る。


「ぐあっ。ぷはぁ。」

「ちょっ、大丈夫?」

「あぁ、ビックリしたのはたしがだが。以外に悪くない。」

「だろ? この為に、働いてる所もあるからな。」


 文句ありです。

 ちょっと、俺にも水が来たんだけど。

 まぁいいか。


「隙ありっ!」

「おっ、やるなっと。」


 リアがドーセンに水をかける。

 そして、ドーセンが返すと他の者に当たる。


「やったなっ。」

「うむ、受けてたつ。」

「えーと。ごめんなさい。」

「よっしゃっこい! って、そっち多いだろっ。」


 三人の水がドーセンを襲う。

 それから水の掛け合いが始まった。

 しかし、皆が笑顔だ。


 楽しそうだからね。

 いいんだよ。


 楽しく笑い合う光景に、責める言葉も流されるのだ。

 それから、落ち着いたのか桶を戻していく。


「あー、もう。びしょびしょ。」

「ほっとけば乾くだろ。いつもの場所でのんびり乾くのを待とうぜ。」

「そうね。さぁ、戻りましょう。」


 戻ろー。

 水も飲めたし、ばっちりだ。

 前より疲れた気がするけどね。


 それでも、動けない程では無くなった。

 畑に戻った俺達は、ウァグナーと合流する。


「んじゃな、じっちゃん。お先に。」

「あぁ、そうじゃな。後は、わしがやっておくぞ。」

 

 ウァグナーとも別れて畑を出る。

 そのまま、昨日の屋敷へと足を運ぶ。

 その途中、何かを叩く音が聞こえてくる。


「ん、なんだ?」

「さぁ、行ってみる?」

「だな。行こうぜ。」


 異論は出ないようだ。

 なので、音の方へと向かって行く。

 すると、そこにあったのは家だ。


「あそこか。」

「何か、叩いてるね。」


 どうやら、その音はそこで作業をしている人が出していたもののようだ。

 そこへ近づくと、向こうがこちらに気づく。


「何してんだ?」

「ん? あぁ、なんか朝起きたら扉が壊れていてな。」

「本当だわ、酷いわね。」


 その扉は、中心から割れていた。

 まるで、中から何かが突き破ったように。


「おいおい。これ、内側からじゃね?」

「あぁ、だから不思議なんだ。取り合えず、直してはいるけど。」


 壊れた扉に木を当て補強をしているようだ。

 しかし、直るのは無理だろう。

 その様子を、俺とフィーは唖然としながら見ていた。


 これって。

 まさか。


にゃ。


「あぁ、分かっている。分かって・・・いる。」


 その光景を、俺とフィーは知っている。

 何故なら、これを壊した犯人は俺達だからだ。

 そう、夢の中で壊したはずの物だ。


「夢では・・・無かったのか?」


 そうとしか考えられない。

 まさかの事実に、俺達は黙って見る事しか出来なかった。

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