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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
呪われた村と堕ちた聖獣 フラリア王国編

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悪夢でした

 相手はまだ遠い。

 しかし、相手はこちらよりも早い。

 その距離は縮まっていく。


「追いつかれる。曲がるぞ!」


にゃん!


 あいよっ!


 追い付かれる瞬間、角を曲がってやり過ごす。

 すると、相手もまた角を曲がる。

 その際、黒い聖火を撒き散らす。


「追いかけてくるぞっ!」


にゃん!


 知ってるよっ!


 相手は確実にこっちを追っている。

 ならば、目的はどうあれ逃げるしかないだろう。


「このっ!」


 しかし、曲がり角で距離を離しても追い付かれてしまう。

 それでも曲がって距離を離す。


「一体、こいつは、何なんだーっ!」


にゃーっ!


 知らないよーっ!


 追いつかれては曲がる、また追いつかれては曲がる。

 やけくそに叫びながら逃げるしか出来ない。

 そう思った直後、後ろからの音が消える。


「ん? まいたか?」


 ほんとに?


 こちらを諦めたのだろうか。

 振り向くと、ドクロの蜘蛛はいなくなっている。


「よし、このまま離れるぞっ。」


にゃん。


 再び見つかる前に離れないといけない。

 そのまま止まらず走り続けるが・・・。


ずしーーーん。


 目の前に、ドクロの蜘蛛が降ってきた。

 どうやら、飛んで先回りしてきたようだ。


「ぐっ。しつこいぞ!」


にゃ、にゃーっ!


 そうだ、そうだー!

 しつこいぞー!


 そう叫んではいるが、伝わるような見た目をしていない。

 ドクロの蜘蛛は、ゆっくりとこちらを見る。


「くっ、やるしかないかっ。行くぞ!」


にゃん!


 いいよ!

 やってやる!


 逃げれるような距離はない。

 ならば、立ち向かうまでだ。

 俺達は、ドクロの蜘蛛に向かって駆け出す。


「合わせるぞ!」


にゃ!


 あいよっ!


 そのまま、相手の下に潜り込む。

 そして、相手の顔に向かって剣と蹴りを叩き込む。

 しかし、びくともしない。


「くっ、固いっ!」


 固すぎる。

 それに重い。


 こちらの攻撃は、全く効いていないようだ。

 むしろ、相手に弾かれてしまう。


「うわっと。」


ふにゃっ。


 危なっ。


 そのまま地面へと落っこちた。

 何とか着地出来たが、そこに相手が突っ込んでくる。


「ぐっ、まずいっ!」


 避けれないっ!


 落ちた直後で動けない。

 避ける余裕はない。

 そのまま、俺達にドクロが落ちる直前だった。


「ちょいやーーー!」


 一つの影が飛び出すと、手に持った物を相手に叩き込んだ。

 そして、そのまま相手を押し飛ばす。


「なっ、あんたはっ!」


 突き飛ばした相手はウァグナーだ。

 地面に着地すると、フィーの前に立つ。


「大丈夫か? 嬢ちゃん。」


 そう言って、ウァグナーが剣を構える。

 すると、同期の五人組がその周りに立つ。

 リアとナンシーもいるようだ。


「もう大丈夫だぜ。安心しなっ。」

「ふっ、また助けられたな。」


 そうだね。

 ありがたい。


 これで、二回目だ。

 この者達がいなければどうなっていた事か。

 俺とフィーが感謝をしつつ立ち上がる。


「何処に行ったかと思ったが、皆と合流してたのか。」

「うん、ごめんね。フィーさん疲れてるかもって、起こさなかったの。」

「心配かけてごめんなさい。」

「いや、無事なら良いんだ。無事ならな。」


 ほんとだね。

 無事で良かったよ。


 疲れているフィーを起こす訳にはいかない。

 だから、フィーを起こさずに家を出たようだ。


「それで、この村に何が起こっているんだ?」

「さぁな。起きたらこのありさまだ。」

「うん。こっちが聞きたいぐらいだよ。」


 知らないんだね。

 一体、何なんだろう。


 ここに住む者達ですら、原因が分からないようだ。

 つまり、初めての襲撃という事になる。

 フィーが来たタイミングでだ。


「まさか、私が来たせいか?」

「いや、違うだろう。あんなのが来たのなら、気づいていたはずだ。」

「だな。つまり、ずっとこの辺りに住んでたって事だ。あんたのせいじゃねぇよ。」

「そうです。だから、自分を責めないで下さいね。」


 同期達がフィーを擁護する。

 確かに、あんなのが動けば気づく事も容易いだろう。

 しかし、実際は村の中に入られるまで気づく事が出来なかったのだ。

 そんな話をしていると、ドクロの蜘蛛が立ち上がる。


「お前ら、いつまでも話してんなよ。」

「おっと。すまねぇ、じっちゃん。」


 ウァグナーは、じっちゃんと呼ばれても怒らない。

 ずっと、気を張っているのだ。

 それだけの相手なのだろう


「それで、僕たちはどうすれば良いの?」

「お前達は、あやつの足を狙うんじゃ。ワシの攻撃でも倒せんという事は、お前達では無理じゃろうからな。」

「分かったぜ。行くぞ、お前らっ。」


 攻撃が来る前にと、ドーセンが駆け出す。

 そしてその後を、頷いた他の同期が続く。

 狙うは、ドクロの蜘蛛の前の足だ。


「おらっ、倒れろっ!」


 まずは、足を叩いて滑らせる。

 そして、付け根を叩いて相手を前に倒す。 


「おらっ、じっちゃん。」

「言われんでもっ。」


 ウァグナーが落ちたドクロに剣を叩きつける。

 しかし、相手はびくともしない。

 あまりの固さに、刃が通らないのだ。


「はっ、やりおるわっ。ならばっ。」


 ウァグナーが着地と同時にドクロの下を突き上げる。

 すると、相手は上へと体が傾く。


「後ろ足じゃっ!」

「言われるまでもねぇよっ。」


 相手が傾いている内に、後ろの足に剣を叩き込んでいく。

 すると、それによって相手が支えを失った。

 その隙に、ウァグナーが相手の下を剣で突く。


「ほいっ!」


 さらに、相手に剣を叩き込んで胴体を押し込む。

 すると、相手は垂直に傾いた。


「まだまだっ!」


 その胴体をウァグナーが駆け上がる。

 そうして、てっぺんまで登り剣を叩き込む。


「倒れなっ。」


 相手はお腹を見せつけひっくり返る。

 それにより、ウァグナーが宙へと浮いてしまうが・・・。


「ほいっ。」


 一回転してから剣を下へと向ける。

 そのまま、お腹へと落下していく。


「くらえっ!」


 そのまま落ちて胴を突き刺す。

 すると、お腹から激しく黒い聖火が溢れ出した。

 重ねた攻撃で、胴体が砕けたようだ。


「強いっ。」


 強すぎるよ。

 この人。


「だろ? 内のじっちゃんは世界一だぜ。」

「ふん。これぐらい、なんともないわい。」


 ドーセンがウァグナーを褒めるが気にしない。

 しかし、その強さは圧倒的だ。

 ウァグナーが、相手のお腹から剣を抜いてから降りる。


「しかし、これを倒すとはな。」

「なぁに。腰の踏ん張りさえ鍛えれば容易いものよ。」


 腰の踏ん張りでどうにかなるものなの?

 俺も鍛えた方が良い?


「それで、結局こいつは何なんだろう。」

「確かに、虫なのは間違いないだろうが。」


 倒せたものの、正体は分からずじまいだ。

 蜘蛛なのは間違いないが、蜘蛛らしいのは足だけだ。

 顔や蜘蛛の胴体のような物はない。

 しかし、一つだけ分かる事がある。


「恐らく、聖獣だな。」

「聖獣? 確か、フィーさんが言ってた奴だっけ。」

「あぁ。聖獣は、聖火と言う色のついた炎を扱う。間違いない。」

「なるほど、色のついた炎か。」


 ドクロの蜘蛛からは、黒い聖火が流れ出している。

 これが、聖獣で間違いないだろうが。


「でも、聖獣っつったってよ。こいつ、虫だぜ?」

「だな。しかし、聖火を扱うなら聖獣のはずだが。」


 そうなんだよね。

 獣以外にもいたって事?


 聖獣だからといって、獣ではないのかもしれない。

 実際に、虫のような聖獣が転がっているからだ。


「まぁ、倒せたんだから良いだろ? それより、村の皆を助けようぜ。」

「賛成ね。まだ誰かいるかもだし。」

「あぁ、無事を祈ろう。」


 そうだね。

 皆を助けなきゃ。


 こうしている間にも、村の者達が消えているかもしれない。

 ならば、立ち止まっている訳にはいかないのだ。


「よし。じっちゃん、行こうぜ。」

「そうじゃの。村を守るのがワシらの役目。行くぞ!」

「おしっ!」


 ドーセンが真っ先に前に出た。

 やる気は充分だ。

 その後を、他の同期が追いかけようとするが・・・。


 その直前、ドーセンの首が跳ね飛んだ。


「えっ・・・。」


 えっ。


 前に出ようとした足が止まる。

 いきなりの事で、思考が止まったようだ。


「・・・。」


 その場所が、時が止まったように静まり返る。

 その中で、ドーセンの体が地面に倒れた。

 そして、ドーセンの頭が地面に落ちた音を合図に時が動き出す。


「ドー・・・セン、ドーセーーーンっ!」

「いやぁーーーーーっ!」


 あまりの事態に、混乱が広がる。

 目の前の現実に、取り乱す事しか出来ない。


「くそっ、誰だっ! 誰がやった!」


 もはや、考える余裕もない。

 怒りのままに、エイスが前に駆け出した。

 しかし・・・。


「待てっ、待つんじゃ!」


 ウァグナーが叫ぶも、その声はエイスに届かない。

 直後、エイスの首が跳ね飛んだ。


「嘘っ、やだっ。どうしてっ!」


 身を守るために、リアが剣を構える。

 しかし、それも虚しくリアの首が跳ね飛んだ。


「くそっ、にゃんすけっ!」

「駄目じゃ! 嬢ちゃん!」

「しかしっ!」


 助けないとっ。

 皆がっ!


 ウァグナーがフィーの服を掴んでいた。

 俺もまた、行っては行けないと本能が叫ぶ。

 そのせいで、俺とフィーは前へと出れない。

 その直後、ドクロの蜘蛛から黒い聖火が燃え広がる。


「くそっ。道が!」


 黒い聖火は、俺達の前へと広がった。

 同期達と分断するように、道を埋める。

 助けに行くには、黒い聖火をどうにかするしかない。


「くそっ、それでも!」

「駄目なのじゃ。絶対にっ。」

「どうしてだっ!」

「思い出したのじゃ。全て。あぁ、なんという事じゃ。」


 もう、こちらの声は聞こえていない。

 弟子の死を見て、何かを呟いているだけだ。


「何がどうなって・・・。」


 その間にも、イグルの首が跳ね飛んだ。

 何が起こっているのか、分からぬままに死んでいく。


「いやっ、助けてっ!」


 最後に残ったナンシーがこちらに走ってくる。

 しかし、無慈悲にもその首が跳ね飛ぶ。

 これで同期は全滅だ。


「ぐっ。なぜ、止めるっ!」

「・・・。」


 もう何も答えすらもしない。

 驚いたように、目と口を見開いているだけだ。


「おいっ!」

「・・・逃げるんじゃ。」

「えっ。」

「逃げるんじゃ! 早く!」


 ウァグナーがフィーを引っ張って走り出す。

 しかし、その前にも黒い炎が燃え広がる。


 囲まれたっ。

 逃げれないっ。


「あぁ、もう終わりじゃ。」

「何がどうした! 説明を!」

「また、繰り返される。」

「えっ。」


 ウァグナーがそう呟いた。

 その直後、視界が黒い聖火に包まれる。


「はっ。」


にゃっ。


 次に意識を取り戻したのは、布団の中だった。

 急いで、上半身を布団から起こし上げる。

 俺もまた、布団から飛び出る。


「皆はっ・・・。」

「都会、うへへ。」

「っ!?」


 声のした方を振り向いた。

 そこでは、リアがよだれを流しながらナンシーにしがみついている。


「うーん。」


 そのナンシーは、寝苦しそうにしている。

 まるで昨日の事が無かったかのように、二人は布団で寝ている。


「生きてる? どうして。」


にゃん。


「にゃんすけ、あれからどうなった?」


 さぁ。

 何がなんだか。


 聞かれても答えられる訳がない。

 周りを見渡すと、リアの部屋なのが分かる。

 それから判断出来ることは一つ。


「夢、だったのか?」


 夢、だったの?

 

 呟くが、返事はない。

 全ては夢。

 悪い夢。

 そう思うしかないのだった。

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