昔の思い出です
辺りが薄暗くなる。
夜が近づいているのだ。
空を見上げて剣を納める。
「そろそろ終わろうか。」
「そうだね。誰かさんに付き合わされたからヘトヘトだよ。」
「良いじゃねぇか。お陰で今日はぐっすり寝れるだろ?」
ドーセンがにっこりと笑った。
良い運動をしたとばかりに、腕を伸ばして筋肉を伸ばす。
「野菜スープの残りがありますよ。冷えてますけど。」
「それぐらいで良いんだよ。貰うな。」
カップに入ったスープを持ったナンシーが渡していく。
それを、受け取った者から飲んでいく。
「ぷはー。火照ったから体に染み渡るっ。」
「染み渡るって、そんな訳ないでしょ。」
「例えだよ、例え。んじゃ、そろそろ帰るぞ。」
ドーセンが門へと向かう。
その後を、他の者達が着いていく。
「フィーさん。ドーセンに困らされたらいつでも言ってね?」
「力になろう。」
「おーい。聞こえてるぞー。」
ドーセンが振り向いて突っ込んでくる。
それに対して、他の四人が笑う。
「お前達は、仲が良いな。」
「そんなもんなのか? 昔っからこんな感じなんだけどな。」
「うん。普通過ぎて意識した事が無いわよね。」
でも、軽口を叩けてるからね。
仲が良くないと出来ないよ。
「昔からいるのか?」
「うん。物心がつく頃からだな。」
「ずっと五人だったよね。」
「うん。・・・五人で。だったっけ?」
言っている途中に、ドーセンの言葉が詰まる。
そして、俯いて考え出す。
「どうしたのドーセン。ボケたの?」
「うるせぇ。ちょっと、ひっかかっただけだっ。」
「ひっかかった? 何に?」
「それは、その。いや、やっぱ気のせいだ。忘れてくれ。」
「ん? 変なドーセン。」
それでも何か不服そうにしている。
しかし、それは一瞬の事だ。
すぐに顔を振って切り替える。
「んじゃ、また明日な。」
「うん、明日。」
手を振りあって、自分達の家へと帰っていく。
それを見送ると、リアが俺とフィーに声をかける。
「じゃあ、私達も帰ろ?」
「分かった、行こう。」
リアに言われて、俺達も帰る事になる。
なので、来た道を歩いてリアの家へと向かう。
その道中の事だ。
「賑やかだったでしょ。うるさくなかった?」
「まさか、楽しそうで良かったよ。」
「そう? それなら良いんだけど。」
うん、楽しそうだったよね。
ずっと笑ってたよ。
「でも、二人も楽しそうだったぞ?」
「まぁね。あいつらといると飽きないわ。ナンシーもでしょ?」
「はい。充実した毎日を送らせて貰っています。」
あんなに賑やかならそうだろうね。
見てて羨ましいって思ったよ。
なんだかんだ言っても、賑やかなのが好きなのだろう。
そんな話をしていると、リアの家が見えてくる。
そのまま家に着くと、扉を開いて中に入る。
「ただいまー。帰って来たよ。」
「おかえりなさい。夕飯出来てるわよ。」
「やった。フィーさん行こう?」
リアが家の中へと駆けていく。
その後を、俺達が追いかける。
部屋に入ると、机の上に食べ物が置いてあった。
沢山あるね。
良い匂いだ。
「お母さん、多くない? 嬉しいけど。」
「だって、久しぶりの大勢での食事だもの。張り切っちゃったわ。」
「流石、お母さん。ほら、皆も早く。」
「まずは、手を洗いなさいね?」
「はーい。」
リアの母親に促されて手を洗う。
そうして、それぞれ席へと座る。
「さぁ、沢山食べてってね?」
「ありがたくいただこう。」
「ありがとうございます。おばさま。」
にゃん。
いただきます。
基本は、野菜中心の食事になっている。
それでも、色々な野菜があって飽きが来ない。
「どう? 美味しい?」
「あぁ、良い味付けだ。」
「まだまだあるから堪能していってね。」
リアの母親が、俺とフィーの皿に追加を入れていく。
そうして、会話を交わしながら食事を堪能する。
食べ終えた頃には、お腹が一杯になっていた。
ごちそうさまでした。
満足、満足。
「はぁ、旨かったな。」
「はい。おばさまの料理は美味しいです。」
お腹が一杯になったのだろうか。
フィーが、地面に寝転んだ。
行儀悪いよ?
「そう言ってくれるのは嬉しいわね。」
「自慢の母親ですから。」
「はいはい。言ってないで、寝る準備でもしなさい。」
「はーい。」
その後は、順番にお湯を浴びて一日の汚れを落とす。
そして、そのままリアの部屋へと向かう。
「じゃーん。私の部屋だよ。って、なにもないけどね。」
藁の地面に布団が敷いてあるだけだ。
寝るだけの場所なのだろう。
その布団の上に、リアが突っ込んだ。
「人と寝るなんて楽しみ。ナンシーが泊まったのもかなり昔の事だもんね。」
「うん。私がまだ小さい時だよ。確か、畑作業で帰れなくなった時かな?」
「そうそう。畑に連れていく年でもないからって。大きくなってからは無いよね。」
小さい子供を、一人残す訳にはいかない。
なので、リアの家に預けられたのだろう。
これもまた、同じ場所で過ごす事での思い出なのだ。
「昔と言えば・・・。ねぇ、フィーちゃん。窓開けてみて。」
「窓? こうか?」
リアに言われて窓を開ける。
すると、空一面の星空が見えた。
星が沢山。
凄い綺麗。
「ほう。良い眺めだな。」
「でしょ? 昔、ナンシーが泊まった時に並んで見てたよね。」
「うん。あの時と同じ景色。覚えてるよ。」
そう言って、二人が空の星を眺めている。
昔のように、懐かしそうに眺めている。
「確か、お母さんの歌を聞きながらだよね。どんな話だっけ。」
「うーん。覚えてないなぁ。聞いてる途中に寝ちゃったし。」
「私もだよ。お母さんがいないから、寂しくてそれどころじゃ・・・。あれ、お母さんの歌を聞いてたんだからいないのは可笑しいか。記憶が混ざっちゃってるね。あはは。」
照れくさそうに、リアが頬をかく。
昔の事だから、詳しい話は覚えてないのだろう。
それでも、大事な思い出なのは間違いが無いのだろう。
「ねぇ、フィーさん。フィーさんの住んでる場所には星があるの?」
「あったよ。私もよく寂しい時は見ていたな。」
「だよね。星を見ていると心が暖かくなるんだ。」
「うん、分かるかも。」
良い景色を見ると気持ちが楽になるよね。
どこでも一緒なんだね。
異世界だろうが関係ない。
どこであろうが、良い景色は人の心を動かすものだ。
きっと、この二人もこの景色に救われてきたのだろう。
「さて、フィーさん。昼の話しは覚えてる?」
「あぁ、外の景色の事だったな。良いぞ。」
それからは、リアの質問に答えていく。
主に、どのような建物があるかとかの話だ。
よっぽど、外の景色に憧れがあるのだろう。
「いいなぁ。見てみたいなぁ。」
「行かないのか?」
「まぁね。この村を放っておくわけにはいかないし。」
自分の知らない世界を見てみたい。
でも、村を離れる気はない。
この村もまた大事だから。
「ふぁ、あ、ごめんなさい。」
「眠いの? ナンシー。」
「うん。ちょっと。」
「なら、話しは明日だね。私も眠いから。」
「そうだな。では、窓を閉めるぞ?」
ちなみに俺も眠い。
今日はいっぱい走ったもんね。
もう夜になってから、しばらくが経っている。
眠くなるのも仕方がないだろう。
フィーが窓を閉めると、布団に入り込む。
「明日もまた話してくれるよね?」
「リア、わがままは良くないよ。明日、村から出るかもしれないんだし。」
そうだよね。
肉食が落ち着くまでの話だし。
「そうだな。でも、明日も出れないときは、また話そう。」
「本当?」
「本当だ。」
「じゃあ、約束ね。それじゃ、おやすみ。」
「あぁ、おやすみだ。」
「うん。おやすみ。」
にゃ。
おやすみなさい。
挨拶をして目を瞑る。
すると、あっという間に眠りに入る。
山を駆けた疲れが溜まっていたのだろう。
それから、夜が深くなった時だった。
「誰か、助けてええええっ。」
唐突な悲鳴で、俺とフィーが目を覚ます。




