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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
呪われた村と堕ちた聖獣 フラリア王国編

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聖獣の伝承です

 階段では、多くの人達が食べ物を持ち寄って食べていた。

 その横を抜けた俺とフィーは、一番下の階段に座る。

 前を見ると、オブジェの上に夕日が乗ったような景色があった。


「おぉ、良い景色だな。ここにいる人達は、これを見に来てたんだな。」


 みたいだね。

 映えスポット的な感覚かな?


 後ろを見ると、一部の人達がオブジェに指をさしている。

 この世界の住人にも、そういう文化があるようだ。

 そんな景色を堪能しながら、食べ物を取り出していく。


「さて、食べようか。」


にゃん!


 待ってました!

 どんな味かなっと。


 早速、肉を油で揚げたものを口に放り込む。

 すると、塩で引き立てられたお肉の味が口に広がる。

 フィーもまた、肉を挟んだパンをかじる。


「旨いな。塩の辛さが肉の味に合っている。」


 そっちも塩なんだ。

 あれ、こっちのは赤い?


 赤い粉がかかったお肉を口に入れる。

 すると、今度は香辛料の味がする。


「へぇ。基本は辛みなんだな。果物の甘さも良かったがこういう辛みも良いな。」


 だよね。

 胡椒が無いのが物足りないけど。


 どの料理も辛味のする物ばかり。

 久し振りの辛味を味わっていく。

 すると、フィーが粉が入った袋を見つける。


「ん? 香辛料が入った袋があるな。追加で足すようか? やってみるか。」


 袋を開けたフィーが、肉が乗ったパンに振りかける。

 そして、強く振ると大量の粉が出る。


「あ。」


 あ。


 思ったよりも大量に出てしまったようだ。

 こんもりとした粉を、フィーがじっと見る。


「にゃんすけ。」


にゃ。


 お断りです。

 自分で片付けてください。


 すがるようにフィーがにゃんすけを見る。

 しかし、我関せずとそっぽを向く。


「仕方ないか。・・・ごほっ。」


 覚悟を決めたフィーがパンをかじる。

 しかし、かなりきつかったようで口を押さえている。


「くはぁ。きついっ!」


 自業自得です。

 反省しなさいな。


 フィーは、涙目で次のパンを食べ始める。 

 そんな事もありながら、様々な辛さで味付けされたお肉料理を堪能する。

 そうして、一通り楽しむとフィーが本を取り出す。


「目的を忘れてはいけないよな。さて、見てみるか。」


 新しいパンを片手にしたフィーが本を開く。

 そこには、絵と文字が描かれていた。

 まさに、絵本そのものだ。


「えーと、精霊と魔物が争っていたと。まぁ、よくありそうな内容だな。」


 よくあるんだ。

 異世界っぽいね。


 物語としてはありきたり。

 なので、次のポイントまでページを捲る。


「お互いは互角。しかし、精霊のすみかが汚れてから一気に動き出した。」


 汚れ?

 魔物が何かしたの?


「魔物側の巧妙な罠か。すみかを汚された精霊は、力を失い地に伏した。ほう。」


 精霊って、その土地の力を使ってそうだしね。

 汚されたから、力も汚れたって事かな。


「精霊にとっては汚れは毒。瞬く間にも、魔物に攻め込まれたと。ふむ、精霊の負けか。」


 やっぱりね。

 力を失った精霊は無力か。


「無慈悲にも消されていく精霊達。そこで、精霊の長に残された者達が力を注いだ。」


 死ぬぐらいならって事ね。

 力を集めて抗おうとしたのか。


「すると、精霊の長は獣の姿へと変わった。それを、人は聖獣と呼ぶ。その聖獣は、魔物達を聖なる力で蹴散らした。聖なる力・・・。まさか、聖火か?」


 そうなるよね。

 じゃあ、聖獣って元は精霊って事?


「聖なる力は、精霊の命と祈りが反映された物だ。すみかを守りたい気持ちが作り出したものだろう。・・・気持ちか。色の濃さが違ったのもそのせいなのか?」


 ユリーシャと森の王の聖火って違ってたもんね。

 同じコロの力のはずなのに。


「聖獣は、精霊を汚す大地の汚れを許さない。魔物を倒した聖獣は、大地の汚れを治す旅に出た。時には子を作り、守らせながら、これからも大地を守っていく。子供?」


 子供を作ったの?

 すべてが精霊から生まれた訳じゃないんだね。


「これが、聖獣の祖と呼ばれる者のお話。聖獣の祖。まさか、にゃんすけも聖獣の祖から生まれたのか?」


にゃああ。


 残念ながら知りません。

 でも、可能性はあるかもね。


「そうか。まぁ、産まれた時の事なんて覚えてないか。」


 違う理由ですけどね。

 でも、何でこの体に入ったんだろう。


 記憶が無いのは他所から来たからだ。

 そこら辺の記憶がない理由はまだ分からない。


「その聖獣の祖に聞けば分かるのか? しかし、どこにいるかも分からないからな。それに、人間の事も嫌ってるんだったか。」


 人間もまたこの地を汚すから。

 確か、そう言ってたね。


 大地を汚すのは人も同じ。

 だから人に対しても、良い顔をしないのだ。

 だから、フィーでは会う事は出来ない。


「にゃんすけだけでも会えるといいが。ま、会えるとも決まってないけどな。」


 場所が分からないんじゃね。

 聞いても答えてくれるか分からないし。


 そもそも、聖獣は人の住む地には近づかない。

 そんな聖獣に会うには、不可能に近いだろう。


「近くに教えてくれそうな聖獣がいれば話は別だが。そもそも、聖獣って喋れるのか?」


にゃあ?


 さぁ?

 俺は無理だけど。


「そもそもそこからか。取り合えず、にゃんすけの出生の秘密が分かっただけでも充分だな。詳しい事は、旅の途中で見つかった時で良いよな?」


にゃん。


 そうだね。

 それを探す旅ってのも一興だ。


 無理に探しても意味は無いだろう。

 それに、折角各地を回っているのだ。

 探すのを目的に旅をするのも悪くは無いだろう。


「さて、日も落ちて来たし宿に戻るか。」


にゃー。


 戻ろー。

 お腹も膨れたし、ぐっすり寝れそうだ。


 既に辺りは暗くなっている。

 なので、フィーはゴミをまとめて立ち上がる。

 他に用事も無いので、宿屋へと真っ直ぐ帰る。

 その途中、フィーの荷物から本が落ちた。


「おっと。にゃんすけ、取ってくれ。」


にゃん。


 分かったよ。

 今度は気をつけて・・・っ!


 俺が本を取ろうとした直前、急に本が動き出した。

 風に煽られたように飛んでいく。


にゃっ。


 えっ、そんな重さじゃないよね?

 ちょっ、止まんない。


 拾おうとする度に、本が動く。

 まるで、こちらの動きに合わせているように。


「どうした? にゃんすけ。」


にゃん。


 本がっ。

 逃げるなっ!


 しびれを切らして本へと飛び込んだ。

 すると、本が逃げるように宙を飛んだ。

 当然、そのまま俺は地面に突っ込んだ。


ふにゃ!


「にゃんすけ!? 大丈夫か?」


にゃ!?


 いや、もう風のせいじゃないよねっ!?

 こうなったら。


 その本を追いかける。

 すると、その本もまた逃げる。


「にゃんすけっ!」


 フィーも俺の後ろを追いかける。

 そのまましばらく追いかけると、本が地面に落ちる。


にゃ!


 捕まえたっ!

 もう逃がさないよっ。


 もう逃げないよう、しっかりと前足で押さえ込む。

 しかし、もう動くような気配はしない。

 すると、フィーが追いついた。


「捕まえたか。一体、どうなってるんだ。」


 俺が離れると同時に、フィーが本を拾い上げる。

 そして、本を回して調べてみる。


「ただの本だよな。」


 至って普通の本だ。

 おかしい所は何もない。


「まるで誘導していたみたい・・・だが。」


 言い終わる直前、古ぼけた建物が目に入る。

 すると、そこに引かれるようにフィーが歩き出す。


「写真館?」


 上の看板の文字をフィーが読み上げる。

 そこには、確かに写真展と書かれている。


にゃ?


 写真館?

 何でこんな所に?


 建物を覗くと、沢山の写真が張られていた。

 しかし、暗くて見えない。


「にゃんすけ、明かりを頼む。」


にゃ。


 どうぞ。


 部屋が明るくなって、写真がはっきりと見えるようになった。

 そこにあるのは、どれも古そうな写真で年代を感じさせる。


「っ! これはっ。」


 その中の一つに目がいった。

 それは、炎を纏う獣の写真。

 しかし、ただの炎ではない。


「黄色い炎。・・・聖火。」


 聖火を纏った獣。

 その招待は一つしかない。


「聖獣か。」


 間違いなく聖獣の写真。

 聖火を纏う美しき姿が、そこに写っていた。


「お客とは珍しいのう。」

「えっ?」


 急に後ろから声がかかる。

 そちらを見ると、年老いた男性がいた。

 フィーの横に並んで写真を見る。


「聖獣について知りたいのか?」

「あぁ、興味があってな。」

「そうか。一日で二人も出会うとはな。珍しい事もあるものじゃ。」

「二人?」


 他にもいたの?

 聖獣を取り扱う事自体珍しいはずなのに。


「それで、なにが知りたいんじゃ?」

「知りたいというか、話をしてみたいんだ。だから、聖獣がいる場所をな。」

「そうか。だから、この写真を見てたのじゃな。」

「あぁ。見た事があるなら、場所も知っているんじゃないかとな。」


 そうだね。

 撮ったという事は、知ってるって事だもんね。


「そうか、それは残念じゃ。」

「残念? どういう事だ?」

「この写真を撮ったのはわしじゃ。だからこそ分かる。もう、聖獣はいない。」

「いない。つまり、近くにいたんだな。」


 そうなるよね。

 人里なのに。


 もし言っている事が本当なら、人の住む場所にいたという事だ。

 本来それは、あり得ない事のはずなのに。


「あぁ、いた。この写真を撮ったのも近くじゃからのう。」

「そうか。しかし、聖獣は人里に近づかないのでは?」

「らしいのう。でも、この近くの村に聖獣と交流していた村があった。そのお陰で、この辺りは守られていたんじゃ。」

「聖獣と交流か。しかし、口ぶりからするともういないと取れるが。」


 だよね。

 もういないって言ってたし。


「この辺りには、肉食の生き物があふれている。」

「あぁ、ここに来る時に見たよ。」

「しかし、数年前にはおらんかった。聖獣が追い払っておったからな。」

「そうか。じゃあ、肉食がいる今は聖獣がいないと。」

「そうじゃ。」


 なるほどね。

 分かりやすい。


 聖獣が肉食を追い払っていた。

 しかし、その肉食がまた現れた。

 つまり、それを追い払うものがいなくなった事を指す。


「どうして聖獣はいなくなったんだ?」

「さてな。本来、聖獣は人と相容れぬ存在じゃ。もしかしたら、見限られてしまったのかもしれないのう。もしくは、村が滅んでしまったか。」

「交流する相手がいなくなったと?」

「かもしれぬ。もうわしも年じゃからな。確かめるすべがないんじゃ。」


 どうなってるか分からないんだね。

 年なら仕方ないか。


「人と交流する聖獣・・・か。」

「気になるのか?」

「まあな。面白そうな話だが、いないんじゃあな。」


 だよね。

 いないとこに行っても意味が無いし。


「しかし、見てみる価値はあるか。村の場所は分かるか?」

「いや、場所は分からん。聖獣を撮った場所なら分かるが。まさか行くつもりか? 危険じゃぞ?」

「ハンターだから戦いの心得がある。まぁ、ただの暇潰しだから無理はしないさ。」


 まぁね。

 折角だし見てみたいよね。


 ただ、そこに興味があるだけだ。

 しかし、聖獣がいた場所なら何か情報があるのかもしれない。

 見てみる価値があるのかもしれないと考えているのだ。


「うーむ。そういう事ならいいかのう。こっちに来い。」


 そう言って、年老いた男性が移動する。

 その後を、俺とフィーが着いていく。

 そうして、地図のような場所の前で止まる。


「この辺の地図か?」

「そうじゃ、昔のじゃが大体変わってはおらぬじゃろう。」


 古く年季の入った地図だ。

 それでも、ないよりはましだろう。


「聖獣を見たのはこの辺じゃ。先程も言ったが、この辺りには人を襲う魔物が多い。無理はするでないぞ?」

「もちろんだ。危険を感じたらすぐに帰るさ。」


 そこまで深入りする必要ないもんね。

 興味があるだけだし。


「そうか。まぁ、ハンターならその辺の見極めは確かか。気を付けるんじゃぞ?」

「うむ、教えて頂き感謝する。」

「いや。安全に帰ってこれるよう祈っておるよ。」


 こうして、聖獣の手がかりになりそうな物を手にいれた。

 年老いた男性と別れて写真館を出る。

 そして、今度こそ宿屋への帰路につく。


「最後に良い収穫を得たな。にゃんすけ、村を探してみるが良いよな?」


にゃん。


 いいよ。

 何が待ってるんだろうね。

 楽しみだ。


 その先に何があるのか。

 もしかしたら、求めているものは無いのかもしれない。

 それでも、期待に胸を膨らませながら宿へと戻るのであった。

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