町を歩きました
その町には、レンガで出来た建物が多くある。
色とりどりなレンガでお洒落に出来ている。
その中を、俺とフィーが歩く。
「なんだか懐かしい感覚だな。来た事が無いはずなのに。故郷に似てるからか?」
確か、フィーがいた所もこんなだったもんね。
最近は村ばかりだったから、懐かしく感じるんでしょ。
久し振りの景色を、フィーが堪能している。
やはり、慣れ親しんだ景色には感慨深いものがあるのだろう。
それが、嫌なものだとしてもだ。
「町には嫌な思い出しか無いはずなんだが安心してしまうな。慣れとは恐ろしいものだ。」
知っている場所に行くと、安心しちゃうみたいな?
悩まなくて良い分、気が楽になるんだよね。
「ともあれ、まずは宿屋だ。同じ過ちは勘弁だからな。」
あっ、覚えてた。
フィーも成長してるんだね。
前回は、宿屋が満杯で泊まれないという事があった。
それを覚えていた事での判断だろう。
そんなこんなで、宿屋へと向かう。
「私の町だと、こういう場所にあるはずだが。あった。」
建物には宿屋の文字がかけられている。
慣れているだけあって宿屋探しもスムーズだ。
早速、中に入って受付へと向かう。
「泊まりたいんだが空いてるか?」
「えぇ、空いてますよ。どの部屋に泊まります?」
「そうだな。道沿いの部屋で。」
当然、部屋を取るのも手慣れたものだ。
鍵を受け取り部屋へと向かう。
扉を開けると、そこにはベッドと机があるだけの質素な空間があった。
そして奥には、町が見える窓がある。
ここに泊まるんだね。
ベッドもふかふか。
「ふふっ。まだ寝るなよ? さてと。」
部屋に入ったフィーが真っ先に窓を開く。
そして、そこに手をついて町を見渡す。
見下ろした先には、多くの人や建物がある。
「良い眺めだ。当たりだな。」
にゃん。
そうだね。
町が見渡せるよ。
「ここから、ある程度の店を覚える。景色が同じとはいっても店の場所まで同じとは限らないからな。」
そこまで考えてたんだね。
いつものポンコツが嘘のようだ。
「町の宿屋にいた時に、家族がいないかを見て出てたからな。こんな所で活かせるとは思わなかったが。」
重いよっ!
せっかくの良い景色なんだから明るくいこ?
「さて、見える範囲だと食べ物のお店か。宿屋の近くだから仕方が無いんだが。」
お肉以外にもあるのかな?
楽しみだ。
「聖獣の事を調べたいから本屋を見つけたいんだが。」
無いね。
食べ物ばかり。
「もっと居住区の方か。まぁ、宿屋の人に聞けばいいかな。じゃあ、行こうか。」
にゃん。
行こー。
そろそろ限界だしね。
確認も済んだので宿を出る。
その際、本屋の事も聞いておく。
場所も分かったので再び町の中へ。
「お店は明日な。今は、出店でつまめるものが欲しい。」
にゃん。
どっちでもいいよ。
食べ物には違いないし。
本を読みながら食べたいのだろう。
なので、お昼は片手間で食べれる物を買うようだ。
お店は一旦無視して、人通りの多い方へと向かう。
「あった、本屋だ。にゃんすけ、行くぞ。」
しばらく歩いた先に、宿屋の人から聞いた本屋が見えてくる。
その辺りには、雑貨のお店が多く出店もある。
ぶらりと立ち寄って買い物が出来る店が集まっているのだろう。
俺とフィーは、目に入った本屋へと入る。
「いらっしゃーい。」
俺達を見て店員が声をかけてきた。
その横を通って、本棚を見ていく。
「こっちは小説か。これは写真の本か?」
面白そうな本ばかり。
見たいけど文字が読めないんだよね。
フィーにばっかり言ってないで、俺も調べたいんだけど。
近くの一冊を手に取ってみる。
しかし、本を開こうとするも出来ずに終わる。
にゃー。
そもそも本を開けません。
猫なので。
「聖獣についての本か。学術書の方が見つかるかな。」
にゃ。
言ってたよね。
習うはずだって。
学校で習うのなら、そこで取り扱う本に書いてあるだろう。
なので、そこの本棚へと向かって探してみる。
「魔法、薬学、・・・無いな。」
どこを見ても、専門的な物の絵が書かれた本しか無いね。
異世界だから、教科よりも優先順位が高いんだろうね。
「精霊学でもあればな。」
あるかもしれないけどね。
でも、専門的だから学ぶ人も限られてそう。
それからも本を調べていく。
しかし、聖獣について書かれた本は見当たらない。
それこそ、専門過ぎる話だろうから仕方がないのだが。
「聖獣、聖獣。うーん、無いか。」
無いね。
やっぱり、マニアック過ぎるのかな。
「仕方ない、諦めるか。」
ここまで探しても見つからないのだ。
いつまでも探す訳にはいかない。
そう判断し、本棚から離れようとした時だった。
「君、聖獣について、調べて、いるの?」
「ん? そうだが。」
小柄な男の人がフィーに声をかけてきた。
先程からの呟きを聞いていたのだろうか。
自信無さそうに、ポツリポツリとアクセントを多く入れて喋っている。
そして手には、これから買うであろう本を複数持っている。
「聖獣について、知りたいなら、伝承が書かれた、本を、調べた方が良いよ。」
「伝承か。しかし、そういうのに詳しくなくてな。」
「じゃあ、これとか、どう?」
手に持っていた本の内の一つを差し出す。
その表紙には、大きな獣の姿が描かれている。
「ここに描かれているのは聖獣か?」
「うん。昔いた、聖獣の、話。絵本、だから、読みやすい、よ。」
まずは、どんな事をしていたかって事ね。
確かに、専門的な話をされるよりも分かりやすそう。
「そうか。では、ありがたっ。」
フィーが本に触れた瞬間に手を離した。
そして、不思議そうに手を見ている。
どうしたの?
本になにか?
「今、何かが。」
「あぁ、分かるんだ、ね。気にしなくて、いいよ。悪いのじゃ、無いから。」
「そ、そうか。では、ありがたく買わせて貰おう。」
影響は特に無いらしい。
なので、今度こそ本を掴んで受け取る。
「うん。聖獣の、話、面白いよ。気に入ったら、他のも、見て、ね。」
「助かった。そうさせて貰うよ。」
「うん。じゃあ、人、待たせて、るから。じゃあ、ね。」
そう言って、先に受付へと向かう。
そして、勘定を済ませて本屋から出ていった。
「変な奴だったな。でも、助かった。」
そうだね。
お陰で、必要な物が手に入ったしね。
「それにしても、さっきのどこかで感じたような。いや、気のせいか。」
ただの勘違いだろう。
そう思ったフィーは、頭を振って意識を切り替える。
そして、フィーもまた受付に向かって勘定を済ませる。
「よし。今度こそご飯だ。流石に、私もお腹が空いたからな。」
にゃっ!
やった!
俺はとっくに腹ペコです。
店を出て出店へと向かう。
そこに近づく度に、香ばしい匂いが漂ってくる。
出店を覗けば、肉を使った料理ばかりが並んでいる。
「適当に選ぶがいいな?」
にゃん。
いいよ。
どれも美味しそうだし。
フィーが適当に選んだ物を買っていく。
色々な物を楽しめるよう、幅広い物を選んでいく。
「よし、こんなもんだろう。近くに食べれそうな場所があるといいが。」
見渡すと、その先に広場が見えた。
そこだけ地面が下がっており、その周りは階段で囲まれている。
そして、真ん中に変なオブジェが置いてある。
よく見れば、食べ物を持った人たちが集まっているようだ。
「なるほど、広場の階段で食べてるんだな。行ってみよう。」
階段に座って買った食事を堪能しているようだ。
それに倣うべく、俺達もまた広場へと向かう。




