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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

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笑顔でお別れしました〈完〉

「ほら、起きなさい!」

「うわっ。」「ひっ。」


にゃうん! きゃうんっ!


 唐突な声に、俺達は眠りから覚める。

 声の主は、ユリーシャの母だ。


「ご飯出来たわよ。」

「はい、今行きます。」

「世話になる。」


 ユリーシャの母がいなくなると同時に起き上がる。

 窓の外を見れば、既に太陽が登っている。


「寝坊か。初めてだ。」

「はい。私もです。」


 俺はいつもの事だけどね。

 それにしても、こうも簡単に俺を起こせるとは。

 恐るべし、巫女の力。


 ご飯が冷えてはいけない。

 なので、急いで支度を済ませて部屋を出る。


「じゃあ、行こうか。」

「はい。行きましょう。」


にゃー! わうっ!


 行こー!


 部屋を出ると、そのまま食堂へ。

 その際、いつもより人が少ない事に気づく。


「あれ、誰もいないな。」

「祭りが終わりましたから。皆さん、自分の家に戻ったんでしょう。」

「そういえば、作業場な役割もあったんだったな。」


 祭りが終われば、役員もまたいなくなる。

 なので、いつもの人の声が聞こえない。

 静まり返った通路を歩いて食堂に着く。

 そこには、ユリーシャの両親がいた。


「おはよう。」

「おはようさん。」


 こちらを見ると挨拶をしてきた。

 ユリーシャの父もまた帰って来たようだ。


「おはようございます。」

「おはようだ。」

「さぁ。ご飯置いてるから食べちゃって。」


 机の上に、ユリーシャとフィーの分。

 そして、低い机に俺とコロの分。

 席について、最後の食事を食べ始める。


「私達の食事、随分と多いな。」

「最後だからね。サービスしておいたよ。」

「ありがとう。堪能させて貰うよ。」


 俺の分までありがとー。

 お腹一杯食べるぞっと。


 この家にいるのは最後だ。

 そして、最後の食事もまた最後。

 なので、しっかりと噛み締める堪能する。


「コロちゃんはどう? 美味しい?」


わん!


 元気良く返事する。

 満足したようだ。


「ふふっ、これから一緒に住むからね。気に入ってくれて良かった。」

「だな。楽しくなりそうだ。」


 ユリーシャの両親が、食事をするコロを眺めている。

 どうやら、この家に住むようだ。

 

「そういえば、あっさりと受け入れたんだったな。良いのか?」

「えぇ、こんなに可愛い子を拒む必要はないもの。」

「新しい家族だからな。思いっきり歓迎してやるつもりだよ。」


 ユリーシャの家族は、コロを歓迎しているようだ。

 新たな家族の一員として、これから共に過ごしていくのだろう。


「でも、フィーちゃんとにゃんすけちゃんも同じよ。またこの村に来た時は、いつでも寄って頂戴ね。ユリーシャも喜ぶわ。」

「はい。いつでも来て下さいね。」

「了解した。その時は、よろしく頼む。」


にゃ。


 よろしくね。

 ここ、居心地いいし。


「そうだ。今度は、鏡作りに参加しないか?」

「鏡作りか。面白そうだな。次来た時は、役員として参加するのも良さそうだ。」

「じゃあ、力比べにも参加しますか?」

「いや、それはなぁ。武器禁止だろ?」


 じゃあ、無理だね。

 武器ないとポンコツだし。


 既に、次来た時の話で盛り上がる。

 こうして、最後の食事をユリーシャ一家と過ごした。

 そうして、荷物を持って家の外へ出る。

 そんな俺達を、ユリーシャの両親が呼び止める。


「それじゃあ、私達はここまで。」

「本当は見送りに行きたいが、仕事の後片付けがな。」

「いや、充分だ。世話になった。ありがとう。」


にゃ。


 ありがとーございました。


「それはこちらの台詞よ。じゃあね。」

「例の件、考えといてくれよ。じゃあな。」

「じゃあ、また会おう。ユリーシャ、行こう。」


 ユリーシャの両親に見送られながら歩き出す。

 その後を、ユリーシャとコロが着いてくる。

 そのまま、広い通路へ出た時だった。


「フィーさん。少し寄る所があるので、先に行ってて下さい。」

「ん? 分かった。」


 ユリーシャが走って行く。

 その後をコロが追いかける。

 残されたフィーは、言われた通りに歩き出す。

 すると、目の前から騒がしい声が聞こえてくる。


「お、あんた、丁度出た所か? 行き違いにならなくて良かったぜ。」

「おぉ、フォルか。それに皆も。」


 共に戦った村のハンター達が現れた。

 フィーを見つけて寄ってくる。


「やっぱ、今日行くんだな。」

「あぁ。お前達にも世話になった。」


 昨日の祭りでハンター達にも言ってある。

 なので、見送りに来てくれたようだ


「なに言ってんだ。こっちの台詞だぜ。この村を救ってくれてありがとな。」

「気にするな。しかし、これから忙しくなるんだろ?」

「まぁな。森の王がいなくなったせいで雑魚が来るそうなのは確からしい。」


 これも昨日聞いた話だ。

 今までは、森の王のせいで弱いのが近づかなかった。

 その森の王がいなくなったので、わんさかと来るらしい。

 しかし、それに怯える者達ではない。


「ま、そんな奴らぐれぇ、叩き潰してやる。」

「だな、俺達も負けてらんねぇ。」

「何が来ても負けはせぬ。」

「でも、来るならリザードラ以外で。しばらくは見たくないわ。」


 ハンター達が盛り上がる。

 そんな事で落ち込むような者達ではない。


「おぉ、凄いやる気だな。」

「ずっとこんな調子でな。リーダーとしては、もう少し冷静に動いて欲しいけど。」

「おっと、次のリーダーは俺かもよ?」

「抜かせ。力比べに勝ってから言うんだな。ったく。」


 騒がしい身内に呆れている。

 しかし、フォルもまたこの状況を楽しんでいる。


「そんな訳だ。だから、俺達の事は気にすんな。」

「おうよ。この村の平穏は任せろ!」

「指一本触れさせん。」

「また、その子触らせてね。」

「気を付けていけ。」

「あんたらの事は忘れねぇ。またいつか会おうぜっ。」


 フォルが指二本を額に当てる。

 別れの挨拶だろう。


 最後まで格好つけか。

 俺達も忘れないよ。


「またいつかな。では、またなっ。」


 手を振って騒がしい連中に別れを告げる。

 あれなら、この村の安全は大丈夫だろう。

 そして、今度こそ馬車の乗り合いにたどり着く。


「さて、次はどこ行こうか。」


にゃ。


 どこでも良いよ。

 でも、ご飯が美味しいところで。


「うん、分からん。取り合えず、上以外のを適当に買うか。」


 やっぱりそうなるか。

 何があるかなんて知らないもんね。


 行き先を知らない旅だ。

 だから、今回もまた放浪旅。

 フィーが適当に切符を買う。

 すると、見慣れた風呂敷の男がいた。


「ん? あんたも出るのか?」

「あぁ、昨日は世話になったな。」

「こちらもな。お陰で売り切る事が出来た。」


 そうなんだ。

 って、怪我してたよね?


「まさか、あの後も売ってたのか?」

「いや、商人だから金は受け取らないって言ったら、ギルドがまとめて買ってくれた。」

「なるほど。ギルドも太っ腹な事もするもんだな。」


 まとめて何てね。

 まぁ、雑貨だからギルドでも使えそうだからかな。


「それで、あんたはどちらに?」

「えぇと。六番だから西だな。」

「適当だな。ちなみに俺は東だ。」


 正反対だね。


「なら、あんたともお別れだな。」

「あぁ。でも、また会えそうな気がする。商人の感だがな。」

「そうか。では、その時はまた。」

「機会があればな。今度も良いものを揃えておく。ではな。」

「じゃあ。って、高いのは買えないからな!」


 もう無いからね。

 契約札で使い切ったし。


 軽く笑ってから、自分の乗る場所へと歩いていく。

 商人として大陸を渡るなら、また出会う事があるだろう。


「ま、助かったのは事実だ。また会った時は、何か買ってやろう。」


にゃん。


 だね。

 また会えると良いね。


「じゃあ、私と会った時は何してくれるの?」

「うわっ、出たっ。」


にゃっ。


 出たよ。


 急にキュリアが現れた。

 それにより、俺達は驚いてしまう。


「あはは。面白い反応だね。って、ユリーシャは?」

「さぁ、どこか寄るらしい。それより、会ったらって言ってたが。」

「そりゃあ、世界を守る仕事をしてるからね。その内、会えるでしょ。」

「そ、そうか。」


 会うんだ。

 気が乗らないけど。


「まぁ、しばらくは残ってユリーシャと一緒にいるけどね。」

「ユリーシャの事、頼んだ。」

「ほーい。頼まれたよ。でも、心配ないでしょ。強い子よ?」

「だな。」


 そうだね。

 誰よりも、ね。


 ユリーシャは、誰よりも芯がある。

 だから、フィーがいなくても大丈夫だろう。

 そんな話をしていると、当の本人がやって来る。


「フィーさん、お待たせしました。」

「噂をすればだね。」

「えっ、どんな噂ですか?」

「内緒だ。」「なーいしょ。」


 内緒だね。

 恥ずかしがりそうだし。


「えぇっ。気になります。」

「まぁまぁ、で、何してたの?」

「あっ、そうだ。これをフィーさんに。」


 はぐらかされたユリーシャが、鞘に収まった剣を渡す。

 それは、祭りの舞台でユリーシャが持っていた物だ。


「これ、儀式の剣。良いのか?」

「大事なのは鏡の方なので。武器、無いんですよね? これ、どうぞ。」

「そうか。そういう事なら頂こう。」

「はい。フィーさんの旅の安全をお祈りしています。」

「ありがとう。ユリーシャも巫女、頑張れよ。」


 ユリーシャから剣を受け取って抜く。

 昨日のような光はない。

 しかし、それ以上の気持ちがこの剣に宿っている。


『六番。六番の馬車の方はお乗りください。』


 そんな事をしていると、馬車のアナウンスが聞こえてくる。

 フィーと俺が乗る馬車だ。


「おっと。では、お別れだな。ユリーシャ、元気でな。」

「フィーさんもお元気で。」


 フィーと俺が馬車へと向かう。

 その途中、ユリーシャが呼び止める。


「フィーさん! にゃんすけさん!」

「ん?」

「約束ですからね。また会いましょう!」


 そう言って、ユリーシャがとびっきりの笑顔をする。

 昨日の約束だ。

 それに対して、俺達も笑顔を作る。


「あぁ! また会おう!」


にゃん!


 また会いに来ようね。

 絶対に。


 そうして、再び馬車へと向かい乗り込む。

 すると、しばらくしてから馬車が動き出す。

 とうとう、この村とのお別れだ。

 しかし、ここでの出会いはなくならない。

 宝物として、俺達の中に残っている。


「さぁて、次はどこに着くんだろうな。」


にゃ。


 さぁね。

 でも、楽しみだね。


 馬車が村を出る。

 そして、次の目的地に向かって進んでいく。

 この先に、何が待っているのかは分からない。

 それでも先に進んでいく。

 俺達の放浪旅は、これからも続くのだ。

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