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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

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大事な友だから

「巫女による舞の儀、ご覧いただきありがとうございました。続きまして、力比べの儀をご覧ください。」


 司会の言葉に、再び観客が盛り上がる。

 舞台を見ると、ユリーシャの代わりに複数の力自慢の者達が登っていく。


「終わったか。ユリーシャに会いに行こう。」


にゃん。


 ユリーシャに挨拶だね。

 行こー。


 ユリーシャが降りていった方へと向かう。

 そこにはテントがあり、中でユリーシャが座って休んでいる。


「ユリーシャ、お疲れ。」

「あっ。フィーさん、にゃんすけさん!」


 フィーと俺を見るやいなや立ち上がった。

 疲れもなんのそのと、こちらに駆けてくる。


「おっと、座ったままでいいんだぞ?」

「いいんです。座ってると落ち着かなくて。」


 ユリーシャがフィーの手を掴む。

 激しく動いたせいで体温が上がっているのか温かい。


「んーっ。今までで一番緊張しましたっ。」

「でも、良かったぞ。な、にゃんすけ。」


にゃん。


 良かったよ。

 お疲れさま。


「ありがとうございますっ。」


 フィーがぴょんぴょんと跳ねている。

 気持ちが溢れて落ち着かないのだろう。

 コロもまた、その周りを飛び跳ねる。


「取り合えず落ち着け。ほら、深呼吸。」

「は、はいっ。」


 おちつけー。


 ユリーシャが深く息を吸って吐く。

 落ち着いたのか胸に手を当てる。


「はぁ。それにしても、良く間に合いましたね。寝てたので間に合わないかと。」

「まぁ、どこぞの誰かに叩き起こされたからな。いや、潰し起こされたか。」

「えぇっ。誰がそんな事を?」

「誰だろうねぇ。全く、酷い人がいたもんだ。」


 その犯人がテントの中から現れた。

 しれっと会話に混ざってくる。


「おい、犯人。どうしてそこにいるんだ?」

「何でって、先に行っとくって言ったよね?」

「言っていたが。まさか、こんな所で会うとは思わなかった。」


 そうだね。

 ふつう、関係者しか入れないはずだけど。


「ふっふーん。ちゃんとおばさんから許可は貰ったよ?」

「おばさんって、ユリーシャの母か? 本当に?」

「本当よ。私が許可を出したわ。」

「えっ。」


 いつの間にか、ユリーシャの母が立っていた。

 どうやら嘘ではないようだ。


「キュリアちゃんには、手伝いをお願いしたのよ。」

「そう。そんで、ユリーシャに水とかあげたりしてたんだよん。」

「ねー。」「ねー。」


 仲良くなってるよ。

 いつの間に?


「二人は知り合いなのか?」

「そうよ。そもそも、森の調査をお願いしたの私だし。」

「えっ、お母さんが?」


 まさかの事実。

 真の真の黒幕がいたって事か。


「人選間違えてないか?」

「そんな事ないわ。頼れる人なんて、知り合いの彼女しかいないし。」


 元々知り合いなんだ。

 だから、お願いしたと。


「えっと。どういう関係なんですか?」

「友達の娘よ。この子の母とは良く遊んでたわ。確か、今は学校の先生だったかしら?」

「合ってるよん。学校で魔法を教えてるよ。そういう家系だからね。」


 家系ぐるみで魔法の研究してるんだね。

 生徒の教養が心配だけど。


「で、その親の友達の村を吹き飛ばそうとしたと。」

「仕方ないよ。そういう次元の存在だったからね。あれ。聖火に溺れてくれなかったら、魔法でどんぱちしてた所だし。」

「そうか。結構危ない橋を渡ってたんだな。」

「そういうこと。」


 魔法任せに動かれてたらやばかったと。

 凄かったもんね。


「じゃあ、どうして今まで紹介してくれなかったの?」

「キュリアちゃん、忙しそうだったからね。会わせる機会が無かったのよ。」

「そうそう。こう見えて、世界を守る組織の一員なんだよ?」

「想像がつかんな。」


 つかないね。

 取り締まられる方じゃないの?


「そんな訳で、改めてよろしくね?」

「は、はい。よろしくお願いします。」


 帽子を取ったキュリアが、ユリーシャの瞳を見る。

 そんなユリーシャは、緊張しているのか視線を合わせられない。


「ふふっ。私からもよろしくね。これからもユリーシャと仲良くしてあげてね?」

「も、もう。恥ずかしいよ。お母さん。」


 照れ隠しなのか、母親に詰め寄っている。

 しかし、その気持ちは嬉しさでいっぱいだろう。

 だけど、いつまでも一緒にはいられない。


「その事なんだが。ユリーシャに話がある。」

「どうしたんですか? フィーさん。」


 ユリーシャが不安そうにフィーを見る。

 落ち着いた雰囲気に異常を感じたのだろう。


「私達は、明日にこの村を出る。」

「えっ。」


 フィーの言葉にユリーシャが固まった。

 思わぬ言葉に、理解が追い付かないようだ。

 そんな娘に代わりに母が聞く


「あら、ずいぶん急なのね。」

「すまない。だが、兵士に顔を知られたく無いものでな。」


 だから、兵士がいるこの村にはいられない。

 知られる可能性が増えるから。


「事情は分からないけど、兵士に会いたくないのね?」

「そうだ。先程見かけてな。」

「そういえば、ギルドが呼んだんだっけ。」

「事が事だしねぇ。これからもっと増えると思うわよ。」


 相手が相手だ。

 しかも、森の調査も必要だ。

 当然、兵士も増えるだろう。


「そういう訳で、村を出る事にした。だから、世話になるのは今日までだ。」

「それは分かったけど。ユリーシャは?」


 ユリーシャは、何も言わない。

 先程からずっと固まっている。

 その様子をコロが心配そうに見上げている。


「ユリーシャ? どうしたの?」

「え、うん。そうだね。分かったよ。」


 何とか意識を取り戻す。

 しかし、まだ上の空だ。


「ふぅ、仕方ないなぁ。ほら、最後なら遊んできなよ。後の事はやっておくから。」

「良いわねぇ。遊んできなさいよ。」

「え、でも。」

「ほらほら。ユリーシャをお願いね。」


 そうして、テントを追い出されてしまう。

 二人と二匹が立ち呆ける。


「と、追い出されたのはいいが、どこに行こうか。」

「・・・。」

「ユリーシャ?」

「えぇと、川に行きたいです。良いですか?」

「構わないよ。」


 ユリーシャのお願いもあって川へと向かう。

 喧騒な場所から離れる度に、辺りが静かになっていく。

 その間、一言も喋らなかった。

 そうして、見慣れた川へとたどり着く。


「着いたぞ、ユリーシャ。」

「はい。」


 それでもユリーシャは、フィーを越して前に出る。

 そして、少し先で立ち止まる。


「ユリーシャ?」


 返事はない。

 しばらくしてから、ユリーシャが振り向いた。


「覚えてますか? この川で言ったこと。」

「当然だ。」


 忘れる訳がないよね。

 そのお陰で頑張れたんだから。


「あの時の願い、叶えれました。」

「良かったな。無事、本番が出来て。」

「はい。両親や村長が頑張ってくれたらしいんです。」


 そんな事が。

 流石だね。


「主にお母さんがですが。皆さんを一声で従えさせたとか。」

「ふっ、想像できるな。」

「ふふっ、ですよね。」


 そうだね。

 逆らえなさそうだもん。


「コロもね。お母さんに言ったら、あっさりと受け入れてくれました。」

「良かったな。」

「はい。」


 一つ返事だったんだろうね。

 器の大きい人だし。


「でも、一番のお陰はフィーさん。あなたです。なんども血が出るまで戦って。」

「当然だろう。友を守るのは当たり前だ。」

「友達。言ってましたからね。とても、嬉しかったです。」

「そうか。私も嬉しいよ。こうやって守れたからな。」


 そうだね。

 頑張ったかいがあったよ。


「お陰でコロも守れました。本当にありがとうございます。でも・・・。でも、その友達を置いていくんですね。」

「っ! すまない、どうしてもな。」


 行かなきゃならない。

 俺達は、ここの住人ではないから。


「はい、分かってます。私は村の巫女で、あなたは旅人。いつか、こうなるのは分かってました。それでもっ。」


 ユリーシャが駆け出した。

 そして、フィーに抱きついた。


「どうして、すぐなんですか。どうして。終わったらしたい事が一杯あったに。どうして。」

「・・・すまない。」


 ごめんね。

 俺達もそうしたいけど。


「ずっと考えてたんです。友達が出来たらしたい事。だから、祭りが終わったら、フィーさんと一緒にしたいって。今回のお礼もしたかったんですよ?」

「すまない。」


 ユリーシャもフィーと同じ。

 ずっと、友達が欲しかったんだね。


「でも、いなくなってしまうんですね。」

「すまない。」


 もう、謝る事しか出来ない。

 それでも、考えは変わらない。


「・・・わがまま、良いですか?」

「なんだ?」

「また、来て下さいっ。来て、くれますか?」


 声が消えそうになっている。

 それでも、最後まで言いきった。

 それだけ、勇気を振り絞ってだした。

 フィーの後ろに回した腕が強くなる。


「来るよ。」

「本当ですか?」

「本当だ。」

「じゃあ、約束をして良いですか?」

「良いよ。約束だ。」


 友としての約束。

 とても大事な約束。


「本当の本当にいいんですか?」

「良いよ。私は約束を破らないからな。」

「そう、ですよね。守ってくれましたもんね。」


 ユリーシャを守るという約束。

 フィーにとって大事な物だから。

 だから、フィーは破らない。


「信用します。フィーさんのこと。」

「ありがとう。」

「それはこっちの台詞です。」


 ユリーシャがフィーから離れる。

 そして、直ぐに後ろへと振り向いた。


「ごめんなさい。顔、見ないで下さい。」


 泣いているのだろう。

 両手を目に当てている。


「分かった。それならっ!」

「えっ!」


 直後、フィーがユリーシャと共に川へと落ちる。

 そこは浅いので溺れる事はないが。


「ちょっ、フィーさん!」

「あははははっ。でも、もう隠すものはないよな。」


 ユリーシャは怒っている。

 しかし、フィーは満足そうに横になる。


 なにやってんだか。

 ねぇ、コロ。


「なぁ。私からも、わがままをいいか?」

「・・・何ですか?」

「明日は笑って見送ってくれ。」

「えっ?」


 驚いたユリーシャが聞き返す。

 しかし、フィーは気にしない。


「ユリーシャの笑顔が好きだからな。だから、最後は笑顔を見て別れたい。」

「はい。そういう事なら。」

「約束してくれるか?」

「はい。約束です。」


 そうして、二人は笑い合う。

 心の底から楽しそうに。

 すると、舞台の方から歓声が聞こえてきた。


「盛り上がってるな。」

「そうですね。」

「じゃあ、行こうか。最後だしな、うんと楽しんでやろう。」

「はいっ。」


 こうして、再び祭りへと戻る。

 そして、遅くなるまで楽しんだ。

 この時の事しか考えられなくなるまでに。

 俺とコロも一緒に楽しんだ。


 次の日の朝、フィーとユリーシャは初めての寝坊をした。

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