森の王の終わりです
「くそっ。ワシの力が。長年の研究が。」
「なんだ、まだやるのか。諦めたらどうだ?」
「ふざけるなっ。こんな結末など許さぬっ!」
しぶといねぇ。
もう終わりでしょ?
「もう戦う力も無いはずだが。」
「ふん。こうなったら、生命力で補ってやるわい!」
森の王が火の玉を作る。
そして、こちらに向けて投げ飛ばす。
「くたばれっ!」
「まったく、空気を読めない奴だ。にゃんすけ!」
にゃん。
邪魔はさせないよ。
後ろに一回転してからお面に変わりフィーのもとへ。
そして、それを被ると同時に火の玉を弾く。
それにより、空で爆発が起こる。
「ここから先へは通さない。」
再び、紫の火が炎が剣に灯る。
体調も万全だ。
邪魔はさせぬと森の王の前に立つ。
「忌々しい。なら、こうじゃっ!」
複数の火の玉がフィーへと向かう。
しかし、威力はない。
回っては斬るを繰り返して打ち消していく。
「本命はこっちじゃよ!」
今までのは囮だ。
フィーが振り終えた所に、収縮したのが来る。
しかし、更にフィーが回る。
それと同時に、剣を当てて上へと流す。
「くそっ。これなら、・・・ぐはっ。」
また火の玉を投げようとしたのだろう。
しかし、口から血を吐いてしまう。
そのせいで、貯めた火の玉も分散する。
「限界、か。」
もう、体は動かない。
それでも、森の王が立ち上がる。
「どうしてそこまでして戦う。」
「・・・誇りじゃよ。かつての覇者としてのな。それが、今やこの姿。」
この強さだからね。
プライドも相当だろうね。
「はぁ。悔しい。たかが人間一人にその地位から落とされた。そして、利用しようとした人間に利用されていた。こんな屈辱があるかっ!」
「知らんな。興味もない。」
ただの、わがままだよね。
どうでもいいよ。
「諦める訳にはいかない。それだけ全てを注いで来たのじゃ。だからっ!」
森の王が強く光りだした。
そして、口から溢れる地も増える。
「残りの生命力をっ、ここにぃーーっ!」
ありったけの生命力を魔力に変換しているのだ。
そうしてまで返り咲きたいのだろう。
力で全てを支配していた昔の姿に。
「死ぬ気か?」
「再び強くなれるなら本望じゃ。」
プライドさえ取り戻せればいい。
それで死んだとしても良いというのだろう。
終わりさえよければだ。
「フィーさんっ!」
「ユリーシャ? 危ないから下がって・・・。」
「いえ。私も戦います。」
直後、コロが光りだす。
そして、ユリーシャを包む。
すると、ユリーシャが綺麗な衣に包まれた。
「これは?」
「心装、だね。交わった力が大きいほど固くなる。」
「つまり、私の力が弱いから。」
「でも、充分なはずだよ。分かるよね?」
「はい。」
ユリーシャが祈るように拳を重ねる。
すると、ユリーシャから緑の火が溢れ出す。
「出来ました。」
「暖かい。奴とは違う綺麗な火だ。」
うん。
綺麗だね。
薄い緑の聖火。
同じ色でも、心によって澄んでいくのだ。
その火が辺りを癒す。
「ぐっ。忌々しい姿を見せるなぁ!」
しかし、その姿を森の王はよしとしない。
手から離れた力を見せびらかされているのだ。
見る事自体が、屈辱を意味する。
「消え失せろ!」
火の玉を作って投げつける。
フィーがそれを流して前に出る。
「終わりにしよう。」
「ふざけるなっ!」
フィーが森の王へと剣を振る。
それを、森の王が腕で防ぐ。
すると、ついに剣が折れてしまう。
「どうじゃ。」
森の王の目に、飛んでいく刃先が移る。
その瞬間、フィーの手が現れ刃先を掴む。
そして、そのまま刃先を森の王へと突き刺した。
「ぐあっ。」
更に、刃先から紫の火が流れ込む。
すると、森の王の口から血と共に紫の火が溢れ出す。
「あががががっ。」
そして、ついでとばかりに斬り飛ばす。
「はっ!」
「あがっ!」
吹き飛んだ森の王が転がった。
何とか立とうとするも、支えの肘が折れてしまう。
「こひゅー、こひゅー。」
内蔵が焼かれたのか、上手く呼吸が出来ていない。
一方、血が溢れるフィーの手が緑の火に染まる。
「暖かい。ん? 傷が。」
直ってるね。
もしかして、ユリーシャが?
剣を掴んだ事で出来た傷が塞がっているのだ。
これぞ、ユリーシャの心装の力なのだ。
「ユリーシャらしい力だな。」
「そんな事言っても誤魔化されませんよ。もう、無茶な戦い方ばかりして。」
「体がそう勝手に動くもんでな。」
そう言いながらも、ユリーシャが照れている。
褒められて嬉しいのだろう。
「ぐうっ。なぜじゃ、これほどまでに力を引き出したのに。」
「もう、無理だろう。終わりにしよう。」
「そうじゃな。もう終わりじゃ。だけど。」
森の王が、火の玉を作り出す。
そして、段々大きくなると姿を変える。
それは、大きな槍の姿。
「ここに残りの全てをつぎ込んだ。逸らすことも流すことも出来ぬ。どうせ死ぬなら、お前たちも道連れじゃ!」
槍が大きく強く光り出す。
この力で道連れにするようだ。
死ぬ前に、一矢報いるために。
「共に死のうぞ! 人間どもよ!」
森の王が足を踏ん張りこちらに駆け出した。
そして、槍の重さに身を委ねて突っ込んでくる。
「フィーさん! 剣を!」
「助かる!」
ユリーシャが持っていた剣をフィーに投げる。
それを受け取ったフィーが、森の王に向かう。
「どうする人間! 流す物なら流してみな!」
まともに受ければ、どうする事も出来ない。
ただ無慈悲に体を貫かれるだけだ。
なら、受けなければいいだけだよね?
「悪いが。」
迫る槍に対して、フィーが斜め前へと飛んで避ける。
そして、無防備な胴体へと剣を振る。
「こういう事も出来るのでな。」
そのまま、森の王を斬る。
すると、森の王の上半身が空へと舞う。
「ワシの、ワシの。」
空を舞う中、ユリーシャの衣を見る。
全てを費やし望んだ物がそこにある。
そこに向かって手を伸ばす。
しかし、その腕が紫の火で染まる。
そして、衣を写した目もまた紫に染まる。
そうして、数百年の思いと共に森の王が燃え尽きた。




