契約しました
「にゃんすけ。はぁ、もう体が動かない。約束は果たせない。」
にゃむ。
見れば分かるよ。
よく頑張ったね。
「ははっ。なんで私は弱いんだろう。なんで何もないんだろうな。」
にゃ。
あるのはある。
でも、知ったところで何かが変わる訳でもない。
「どうしてっ!」
悔しそうに地面を叩く。
そして、涙がこぼれる。
やっぱり。
自分自身に怒ってたんだね。
じゃあ、これを。
フィーの前に契約札を落とす。
「これは、私と、契約、しろと? 良いのか?」
俺は何も答えない。
黙ってフィーを見る。
それで伝わるはずだ。
「ふっ。とっとと決めろって顔をしているな。」
どうしたい?
「そんなの決まっているっ。」
フィーが勢いよく札を取る。
直後、辺りが白に染まっていく。
「ここは?」
そこは夢うつつな世界。
おぼろげで意識ははっきりしない。
そこに、俺とフィーが立っている。
フィー。
「誰だ? もしかして、にゃんすけ?」
そうだよ。
「言葉が、伝わる、のか?」
どうして、そこまでして戦うの?
「約束、したからな。」
そんなになってまで?
「当然だ。だって。」
だって?
「数少ない友達だからな。・・・ははっ、恥ずかしいな。」
大事にしてるんだね。
「町にいる時はなかったからな。ああして話すの。だから、特別なんだ。」
でも、フィーと違って才能を持ってるよ? 嫉妬とかしないの?
「するもんかっ、するはずがない。あんなのを見せられたらな。」
良い笑顔だったよね。
「あぁ。だから、守ってやりたいんだ。もちろん、今までの旅で会ってきたみんなもな。」
そうなんだ。
「だから、私は戦うよ。才能が無くてもな。にゃんすけも一緒だと良いんだが。」
そんなの決まってるよ。だから、一緒に。
再び視界が白に染まる。
そして、意識も消えていく。
そんな中、一言呟く。
いるんだよ。
そう言い残して、すべてが白に染まっていく。
ここのやり取りは記憶に残っていないだろう。
それでも、確かな気持ちがここにある。
その直後、森が紫の火で染まる。
その少し前の事。
森の王の前に、ユリーシャがたどり着く。
そして、森の王へと剣を向ける。
「コロを、返してください。」
「しつこいのう。そのしぶとさ、ワシと戦った巫女のとそっくりじゃ。」
「戦った? もしかして、私の先祖と?」
「なんじゃ、知らんのか。伝えぐらいはあるじゃろう。」
やはり、因縁があるようだ。
森の王が、呆れるようにユリーシャを見る。
「確か、この地域に伝わる魔物を倒したって。」
「ふん。しっかり残しておるじゃないか。その魔物がワシじゃ。」
「っ! じゃあ、先々代が倒したのがなんでここに。」
「ほう、もうそんなにたったか。時が経つのは早いのう。」
質問には答えずに、昔を懐かしんでいる。
人間のとは、時の流れが違うようだ。
「質問に答えて!」
「ほっほっ。怖いのう。なに、話は簡単じゃ。やられる前に蘇生魔法を自身に撃ったまでよ。だいぶ力を失ったがの。」
蘇生魔法を撃った事により、死ぬのを免れたようだ。
しかし、その魔法には大きな欠点がある。
「はらただしい事に、残された力は虫一匹も殺せないほどじゃ。ここまで戻すのにどれだけかかったか。」
生き返る代わりに、かなりの力を失ったようだ。
そうして、巫女に気づかれないよう力を戻したのだ。
「それじゃあ、コロを狙ったのは何でなの?」
「そんなの当然じゃろう。力が欲しかったからじゃ。誰にも負けない力がな。だから、力を戻すついでに研究を始めた。その結果、聖獣との強制契約にたどり着いた訳じゃ。」
強い力を我が物にする。
自身の強い力と合わせれば、更に強くなれる。
そうして、強制契約の研究を始めたのだ。
「どうして、そこまでして強くなりたいの?」
「惨めな目に合ったからのう。もうそんな事がないようにと思うのは当然じゃろ。」
巫女に敗北した事でプライドが踏みにじられたのだ。
だから、もう同じ目に合わないよう力を欲したのだ。
「私達を苦しめてまで?」
「先に苦しめたのはお前達だろう!」
「その前に、人間を苦しめたのはあなただ!」
先に森の王が暴れた。
それを止める為に巫女が戦った。
「我々が人間から奪うのは自然の摂理じゃ。」
「違う! 私達の生活は私達のためにある! あなたのものじゃない!」
お互いにお互いの言い分はある。
それが正義か悪かはともかくだ。
「どうやら、話は通じないようじゃ。」
「私は話をしに来たわけではありません。コロを返して。」
ユリーシャが剣を構えて森の王を睨む。
しかし、森の王は動じない。
「なら、やって見るがいい!」
森の王が種を巻くとリザードラに変わる。
そして、ユリーシャへと向かう。
「やられません!」
ユリーシャが目をつぶる。
すると、光が広がっていく。
そして、迫るリザードラ達を止める。
「ほう。さすがの巫女の力か。弱いがそれでも脅威じゃのう。」
「くうっ!」
リザードラが光に抵抗している。
しかし、巫女の力がリザードラを崩していく。
「ほっほっ。良い力じゃ。でも、限界があろう!」
森の王が種を追加する。
すると、光に向かうリザードラが増えていく。
「いつまで続くかのう。」
「もちろん、コロを取り戻すまで!」
光でリザードラを止める。
しかし、その光が小さくなっていく。
「ほら見たことかっ。ついでじゃ。もっと行け!」
森の王がリザードラを追加する。
リザードラは減っているが光の量も減っている。
「コロ、コロっ! 目を覚まして!」
「無駄じゃ無駄じゃ! 聖獣はワシのコントロール下にある! 声など聞こえまい!」
「コロっ。コローーーーっ!」
ユリーシャが必死に叫ぶ。
その声に合わせて光が強くなっていく。
コロへの気持ちが、光の力を高めているのだろう。
光が広がると、すべてのリザードラを崩れさせる。
「ほほっ。やるのう。しかし、もう光が出ないようじゃ。」
「くうっ。」
リザードラ達を退ける事は出来た。
しかし、それで力を使い果たしたのか光が無くなってしまった。
「それでも。」
「ほう? 今度は剣で戦うのか? 握り方がなっておらんがのう!」
そう言って、森の王が新たなリザードラを出した。
それを見たユリーシャが剣を構える。
「負けない。手下に任せる卑怯ものにはっ!」
「ふっ、言ってくれる。なら、直接我が下そうぞ! 下がれ!」
せっかく出したリザードラを引っ込める。
代わりに森の王が前に出る。
「この聖獣と仲が良さそうじゃのう。なら、直接その力で死なせてやる。嬉しいじゃろ?」
「コロ、今助けるからね。」
森の王が剣を振り上げた。
そして、その先に緑の火をたぎらせる。
「大丈夫だから。私が助けるから!」
必死にコロに呼び掛ける。
鎧の中に眠る友達に向けて。
「下らんのう! 届かないと知りながら!」
「そんな事ない! 友達だからっ。何度も言えばいつかは通じる!」
「その友達とやらの力で死ぬんじゃ! いい加減にくだばれっ!」
ユリーシャに剣が振り下ろされる。
それでもユリーシャは立ち向かう。
友を助けるために。
「コローーーーっ!」
ユリーシャに剣が落ちる。
その直前、紫の火がそれを止める。
「なっ、聖火じゃと!?」
紫に灯る剣が、相手の大剣を受け止めている。
「なら、私も混ぜてもらおうか。」
その剣を握る人物が、ユリーシャに声をかける。
「フィーさん!」
剣を受け止めているのはフィーだ。
祭りで売っているような猫のお面を頭にかけている。
それを見たユリーシャが笑顔になる。
「ユリーシャ。約束を果たしに来た!」
そうして、しっかりと剣を握りしめる。
友への強い思いと共に。




