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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

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フィーの怒り

「ユリーシャっ。どうして!」


 まさかの登場に、フィーは驚きを隠せない。

 そんなユリーシャは、静かに前に出る。

 その身に光を漂わせながら。


「コロを返してください。」

「言っている意味が分からんのう。」


 森の王は知らない振りをしている。

 ユリーシャが求めている者が聖獣だと理解した上で。


「コロを返してください。」


 それでも、ユリーシャがもう一度聞く。

 それ以外の答えは求めていない。


「コロを返してください。」


 しつこく同じ事を聞く。

 納得の答えを得られるまで。

 しかし、森の王は答える気はない。

 その代わり・・・。


「ん? その気、確か巫女の力じゃったかのう。まさか、孫か何かか?」

「コロを返してください。」


 それでも、ユリーシャが同じ言葉を繰り返す。

 会話は成立していない。

 するつもりはない。


「ふん、うるさいのう。まぁ、丁度良いか。貴様の先祖の怨み、貴様に返してやるわい!」


 どうやら因縁があるらしい。

 ターゲットをユリーシャに変えたようだ。


「ユリーシャ! 逃げろ!」


 今更言っても遅いだろう。

 それでも、少しでも安全な所に逃げて欲しい。

 しかし、ユリーシャは逃げない。


「コロを返してください!」

「ふん。くたばれっ!」


 ユリーシャに向けて緑の火の玉を放つ。


「ユリーシャーーーーっ!」


 その直前、緑の火の玉が拡散して消え去った。


「なにっ!」


 思いもしない光景に、森の王は驚いている。

 火の玉が消えたのは、それほど予想外な事なのだろう。

 しかも、鎧から少しずつ光が削れている。


「くうっ。調整が必要か。」


 何か異常が起きたようだ。

 鏡の場所までワープする。


「命拾いしたな。では、去らばだ。」


 更に、鏡ごと何処かにワープした。

 そして、静寂だけが残る。


「ユリーシャ。」

「フィーさんっ。」


 フィーが立ち上がるとユリーシャが駆け寄る。


「だいじょ・・・。」

「どうしてきたっ!」

「フィーさん?」


 フィーがユリーシャの肩を掴む。

 そして、怒りを込めた目でユリーシャを見る。

 

「どうしてっ。どうして、戦えないユリーシャがここに来た!」


 辺りは爆発で抉れ、植物の焦げた臭いが辺りに充満している。

 戦い方を知らないユリーシャが来て良いような場所ではない。


「だって、ギルドの職員さんがコロの事を言ってたので。」

「職員が?」


 今回の騒動は、当然村まで届いているだろう。

 その話を聞いてしまったようだ。


「くそっ。ギルドの連中め。」


 フォルがギルドに悪態をついている。

 ユリーシャがここにいるのはギルドの責任が大きいからだ。


「だからって・・・、だからって、来たところで何が出来る!」


 そう思うのは当然である。

 ユリーシャが来た所で何かが変わる訳でもない。


「だって、言ってたんです。私なら助けられると。私ならコロを救えると。」


 そう言われて、ここまで来たようだ。

 その言葉を信じて。


「だから、行きます。ごめんなさいっ。」


 ユリーシャが走り出した。

 森の王を追いかけるようだ。


「ユリーシャ。待てっ!」


 呼び止めるも聞く気がない。

 フィーの声に応じず、森の奥へと走っていく。


「ユリーシャ!」


 フィーが追いかけようとするも倒れてしまう。

 それもそのはず、先程の戦いのダメージは大きいからだ。

 それは、他の二人も同じ。


「行っちまいやがった。つーか、何で職員がそんな事知ってんだよっ。」

「さぁな。ただ俺達にはもう何も出来ない。どうする?」

「どうするっつったって。おい、あんた何してんだ。」


 気づけばフィーが立ち上がっている。

 そして、足を引きずりながら歩き出す。


「決まってるだろ。ユリーシャを追いかける。」

「追いかけるったって、あんたの傷も相当だぞ。」

「関係ないさ。ユリーシャは、友達だから。」


 だから助けに行く。

 友達だから、見捨てる事は出来ない。

 フィーがユリーシャを追いかけ走り去る。


「どいつもこいつもだな。で、あんたは行かないのか?」


 そう、俺は残っている。

 するべき事をするために。


 フィー、怒ってたね。

 でも、自分にでしょ?


 俺は、目の前のフィーの荷物を漁る。

 先程の戦いで落としたようだ。


 はっきりしたよ。

 フィーは、自分の才能に気づいていないね。

 だから、悔しいんだろうね。

 何もない自分に。

 友を助けられない、情けない自分に。

 でも、それは俺も同じだよ。

 だから。


 荷物の中から金塊を取り出した。



 一方、フィーが森の中を駆けていく。

 大事な友を守るために。

 しかし、その前にリザードラが立ち塞がる。

 その手には、ハンターから奪った物であろう様々な武器を持っている。


「邪魔をっ、するなぁっ!」


 一目散に近づいて斬り飛ばす。

 力は入らないがまだ戦える。

 しかし、無情にも複数に囲まれる。


「ぐっ。それでもっ!」


 迫る剣を逸らして斬る。

 更に逸らして斬る。

 その隙を狙って来た剣を、足で吹き飛ばしてから斬る。


「はぁっ。」


 足は重く、立つので精一杯だ。

 それでも、動く限り戦い続ける。

 しかし、相手は不死身なのだ。


「きりが、ないっ。」


 迫る棍棒を逸らして奪うと、相手の頭に叩きつける。

 次に来る短剣は、弾いてから本体を斬る。

 その飛んだ探検を掴むと、近くの相手に突き刺す。


「はぁっ、きついな。しかしっ。」


 だからといって、諦める訳にはいかない。

 迫る剣を、抜いた短剣で防いでから首を突き刺す。

 そして、そいつが持っていた剣を奪って二刀流に持ち変える。


「うおぉぉぉっ!」


 数が多いなら手数で応戦だ。

 逸らしてから、もう片方で斬る。

 更に来る剣を受けると見せかけ、一回転して避けてから斬る。

 次の剣は、あえて受け止める。

 そうして、蹴り飛ばして奥のに当てた後にまとめて突き刺す。


「ぐっ。ユリーシャはっ。」


 戦いながらもユリーシャを探す。

 しかし、どこにもいない。

 既に、先に向かってしまったようだ。


「早く追いかけ、ないと。」


 意識が段々遠のいていく。

 それでも、歯を食いしばって耐える。

 そして、新たな敵の剣を逸らして首を跳ねる。


「立ち止まってはっ、いられないっ!」


 残る気力を振り絞って前に出る。

 相手が振る前に近寄り首を跳ねる。

 それから、流れるように奥のを斬る。

 相手が振るうよりもこちらが先に斬りつける。

 少しでも先に進むために。


「うああああぁぁぁぁっ!」


 もはや、獅子奮迅の振る舞いだ。

 雄叫びを上げながら斬り進んでいく。

 しかし、無理に突破したせいで囲まれてしまう。

 すると、そこに大きな影が落ちる。


「なんだっ!」


 気づいた瞬間に飛び退く。

 すると、そこに大きな鉄の塊が振ってきた。

 鎖付きのハンマーだ。


「そんなものもあるのかっ。」


 沢山の種類の武器を取り扱うだけはある。

 そのハンマーの鎖を引っ張ったリザードラがハンマーを回し始める。


「食らったら終わりだな。」


 その鉄の塊は、人を軽く潰せる程の重さはあるだろう。

 それでも、両手の剣を握りしめる。


「そこをっ、どけぇぇぇぇっ!」


 そんな相手に、フィーが突っ込む。

 それに対して、相手が鉄の塊を振り降ろす。

 その鉄の塊が当たる直前、フィーは滑り込んで避ける。


「はあっ!」


 立ち上がる勢いのままに一回転。

 相手の首を跳ね飛ばす。

 しかし、ついに限界が来てしまう。


「ぐあっ。」


 回った勢いを制御できずに倒れてしまう。

 そして、剣も落としてしまう。


「ユリーシャ。」


 体に力が入らない。

 そこに向かってリザードラが集まってくる。


「負ける訳にはいかないんだ。」


 それでも、もう戦う力は残っていない。

 そんなフィーに剣が振り下ろされるが。


にゃっ。


 後方から飛んできた火の玉がリザードラを吹き飛ばす。

 それにより、フィーの周りのがいなくなる。

 そこに向かって俺が近づく。


「にゃん、すけ、か?」


にゃん。


 そうだよ。

 全く、世話の焼ける相棒だね。


 フィーの横に、契約札をくわえた俺が座る。

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