聖獣の力です
「効いて・・・、無いのか?」
「いんや。ちゃんと効いたぞ? 昔の巫女の一撃を思い出すわい。」
そうは言うものの、体はぴんぴんとしている。
どこからどう見ても効いているようには見えない。
「言ったはずじゃよ。収縮した力は元をも凌ぐとな。」
あの巨体の分が、あの小さな体に詰まっている。
その分、体の強度も上がっているのだ。
「くそっ。あれで無理なら、どうすればいいんだ。」
圧倒的な力の差に、どうする事も出来ない。
しかし、それだけでは終わらない。
「いい攻撃をくれたお礼に、こちらも良いものを見せてやろう。来い、聖獣よ!」
森の王が手を空へと掲げた。
すると、コロが森の王へと飛んでいく。
「ほっほっほっ。実はな、既に済ませておったのじゃよ。」
「どういう事だっ!」
「教えてやろう、強制契約じゃよ。」
「強制、契約。だと?」
強制契約?
もしかしてコロとっ!?
「見よ! これが聖獣との契約の力っ!」
コロが光となって森の王を包む。
『心裝!』
森の王を包む光が形を変えていく。
そして、鎧と化して森の王に装着されていく。
「なんだこれはっ。」
「あんた、本当に知らねぇんだなっ。裝身の上の力だ! 上位と契約した者が至れる力っ!」
「本当なら、心が通った者どうしがなれるはずだが。」
「じゃあ、コロがあいつを認めたという事か? そんなはずがっ。」
あるわけがない!
あんなのと!
「だから、強制なんだろっ。」
「無理矢理従わせた。と、いう事だな。」
「くっ、ふざけるなっ!」
ユリーシャとコロの気持ちを踏みにじる行為。
それに怒ったフィーが叫ぶ。
しかし、相手は興奮して聞いていない。
「これじゃっ。この為に我は全てを注いだのだ! 素晴らしい、これが聖獣の力っ!」
森の王から力が沸き上がっていく。
そして、溢れた力が聖火に変わる。
その緑の聖火が、森の王を包む。
「この姿を見れたお前達は幸せ者だな。」
「ふざけるなっ!」
「ほっほっほっ。気に入らぬか? ならば、来るがいい!」
フィーの怒りが限界に達する。
怒りのままに駆け出す。
「おいっ!」
そのまま距離を詰めて、剣で斬りつける。
しかし、鎧で防がれてしまう。
「無駄じゃよ。聖獣で作り上げた鎧は、世界でもっとも固いんじゃ。」
にやりと森の王が笑う。
まとう鎧には、聖獣の力がこもっている。
ただの人に切れるような代物ではない。
「くそっ、くそっ!」
何度も斬るがびくともしない。
あまりにも硬く、いかなる物も通さない。
すると、鎧に包まれた拳を振り上げた。
「危ねぇっ!」
にゃ!
危ない!
「しまっ・・・。」
フィーが気づくがもう遅い。
拳を振り下ろしたと同時に爆炎が起こる。
それを受けたフィーが吹き飛んだ。
「ぐぅっ。」
間に合わなかったっ。
駆けつける時間は無かった。
そのままフィーが、地面に叩きつけられてしまう。
あまりにも強力な威力だ。
しかも、相手は魔法は使っていないのだ。
「腕を振っただけでこの威力とはな。素晴らしい。」
聖獣の力に見惚れている。
全てを超越した力。
それこそが聖獣の力なのだ。
「おい。軽率が過ぎるぞ!」
「ぐっ、すまない。」
無事のようだね。
良かった。
何とかフィーが立ち上がる。
しかし、足が震えて限界のようだ。
「まだ生きておるのか。なら、今度は魔法をぶつけてやろう!」
森の王が緑の火の玉を作る。
そして、それを圧縮させる。
その塊が小さくなる度に、強く発光していく。
「くっ、間に合わねぇ。逃げるぞ!」
食らえば終わりだ。
森の王に背を向け走り出す。
「くらえっ!」
そんな背中に無慈悲にも火の玉が向かう。
直後、森に緑の大きな柱が空へと登った。
俺達は、なんとかその範囲から抜け出せる事は出来たが。
「ぐあっ!」「っ。」「ぐっ!」
にゃ。
爆風を受けて地面に投げ出された。
完全に回避する事が出来なかったのだ。
ダメージは大きい。
しかも、無慈悲はまだ続く。
「もう来ないのか? なら、こちらから行かせてもらおうかのう!」
煙の中から森の王が飛び出した。
そして、杖を大剣に変えて振り上げる。
緑の聖火をまとわせながら。
「ふざけんなっ!」
あんな物を受けれるはずもない。
しかし、もう逃げる事は出来ない。
「させんっ。」
受けるぐらいならと、ウィルが蛇を伸ばして森の王に斬りかかる。
それが森の王に向かうが鎧に弾かれる。
「無駄だっ!」
「いやっ。充分だぜっ!」
攻撃は弾かれたものの、相手も攻撃を中断している。
その隙にフォルが斬りかかるが、大剣に防がれる。
「おらっ! くらいなっ!」
「無駄だといっておるっ!」
押し込んでは見るものの、あっという間に吹き飛ばされる。
力の差に抗う事すら許されない。
しかし、それでいい。
「にゃんすけ!」
にゃ!
あいよ!
二人の攻撃を払った事により、相手はがら空きだ。
まずは、俺が相手の大剣を蹴って押さえる。
そして、フィーが相手の顔に剣で突きかかる。
「あまいっ!」
こちらの動きは読まれていたようだ。
剣の先を、おでこで受け止める。
すると、フィーの剣が押し返されてしまう。
「鎧が無い場所とでも思ったか。しかし、無駄じゃよ。自前の固さにも自信があるからのう。」
「くそっ!」
元々の固さも充分あるのだ。
鎧はあくまでその補強に過ぎない。
「おい、あんたも装身しろっ。生身では勝てねぇぞ!」
「いや、出来ないんだ?」
「は? 何言って。」
装身とやらは出来ない。
何故ならば。
「私達は契約してないからだ。」
「なっ、そうか、そういう事か。どうりで知識がねぇ訳だ。」
「すまない。」
そう契約をしていない。
だから、まとう力も使えない。
すると、相手が緑の火の玉を作り出す。
「今度はこっちから行くぞ!」
「ちっ。逃げろ!」
直後、再び緑の柱が上がる。
しかも、剣の聖火の余波で至るところが爆発している。
更に続けて爆炎を起こす。
リザードラ達が巻き込まれるのも気にせずに。
「ほっほっほっ。素晴らしい。これなら世界も奪えるのも容易かろうて。」
笑いながらその力を振りかざす。
己の力に酔っているようだ。
その力に、こちらは逃げるので精一杯だ。
「あいつ。わざとはずしてやがるっ!」
「俺達で試してるんだな。」
「くっ、なにか方法は無いのかっ!」
向こうは当ててはこない。
この状況を楽しむべく当てないようにしているのだ。
それなのに、こちらは避けるだけで近づけない。
近づいた所で攻撃は通らない。
「ちぃっ。もう一回魔法を撃たせれたらなっ。」
「よく分からんが、魔法を撃たせたら良いんだな?」
「出来るか?」
「何か策があるならなっ。」
ウィルが飛び出した。
爆炎を避けて、森の王に急接近する。
「おっ。まだ実験に付き合ってくれるのか?」
「これが実験感覚とはな。恐れ入るっ。」
剣で斬りかかるが受け止められてしまう。
すると、煙に紛れ込んだフィーが横から迫る。
「はっ!」
「ふん。くだらんのうっ。」
ウィルをはねのけた後に、大剣を振り下ろす。
それにより起こった爆炎が二人を襲うが。
「そこっ!」
煙の中から蛇が飛び出した。
森の王に向かって剣で斬りかかる。
「小賢しい。」
あっさりとはねのけられてしまう。
そして、緑の火の玉を作り出す。
「もうよいじゃろう。実験は充分じゃ。今度こそ当てて終わりにするっ!」
もう飽きたのだろうか。
とどめをさすべく緑の火の玉を投げる。
「かかった。」
「確認したぜ!」
すると、火の玉は地面に落ちずに空へと舞う。
そして、フォルの周りをくるっと回る。
「なんじゃ!」
「返すぜ! お前らどきなっ!」
フィーとウィルが頷きあって離脱。
そして、そこに向かって緑の火の玉が向かう。
「ほう面白い! まだその実験があったか!」
「なっ。避けやがらねぇっ!」
迫る緑の火の玉を両手を広げて迎え入れる。
逃げる事も避ける事もしない。
ただ、自身の魔法を受け入れる。
そして、森の王を中心に緑の柱が上がる。
「あいつ、わざと受けやがったっ。」
「自滅したと願いたいが。」
あの強力な魔法を直に受けたのだ。
普通ならただですまないのだが。
「素晴らしい。これを受けても問題ないとはのう。」
煙の中から森の王が現れる。
鎧にはひび一つ入ってない。
更に、仕返しとばかりに爆炎を飛ばす。
直撃を受けた俺達が、吹き飛ばされる。
「はっ、もう何でもありじゃねぇか。」
これが聖獣の力なのだ。
もはや、止められる者はいないであろう。
「お前たちには本当に感謝するぞ。準備を手伝ってもらい、実験にも協力してくるとはな。お陰で、この力の素晴らしさを確認する事が出来たわい。」
もはや、勝てないのは明らかだ。
ただ見ているだけしか出来ない。
そんな俺達を見て緑の火の玉を作る。
「今度こそ当てる。此度のお礼に苦しむ事なく死なせてやろう。」
今度こそ確実に当ててくるつもりだ。
しかし、地面に倒れたまま動けない。
立ち上がれたとしても、あの範囲の攻撃を避ける体力は残っていない。
「これで終わりだっ!」
緑のひの玉を投げる。
その直前だった。
「止めて!」
森の入り口の方から声が聞こえる。
その声は、フィーと俺に聞き慣れた声。
「まさか。」
にゃ。
まさか。
「ユリーシャ?」
声のする方を見る。
そこには、剣を構えたユリーシャがいた。




