協力を頼みました
森の王がいなくなって数十分後。
怪我を追ったハンター達が治療を受けている。
幸いにも、命を失った者はいない。
「こっちに回復班!」
「今行きます!」
回復魔法が使える魔法使いが走り回っている。
相当な怪我人がいるらしい。
「くそっ。こうしてる間にも、相手は準備をしてるってのにな。」
「怪我をしているのはリーダーもなんだから、大人しくしてくれよ。」
「言われなくても分かってるぜ。」
フォルもまた、仲間に付き添われていながら治療を受けている。
どうやら彼も怪我をしていたらしい。
「おい、あんた。」
「ん、私か?」
あれから、フィーはずっと項垂れている。
呼ばれた事で、ようやく顔を上げて聞き返した。
「それ以外にねぇだろ。あんた、村で何があったのか知ってんだろ? 教えてくれ。」
「あぁ、それか。少し前の事だが。」
フォルに事情を伝えていく。
襲撃にあった事。
鏡が無くなった事。
そして、犯人を見つけたと思ったらギルドが呼んだ学者だった事。
話が進む度に、フォルの口がひきつっていく。
「あの黒い服の奴か。まさかスパイだったとはな。ギルドめ、とんでもねぇのを呼びやがったな。」
「リーダー。といっても、俺達だって分かんなかった訳だからな。」
「まぁ、それを言われるとな。ほんと、忌々しいぜ。ちくしょう。」
まさか、呼んだ学者がスパイだなんて誰も想像できないもんね。
ほんとに、忌々しいよ。
しかも、スパイを中に呼んだのは自分達だと言うのだ。
その上、主導権も手渡すという体たらくぶりだ。
「じゃあ、こっちの情報は筒抜けだったんすね。」
「そうなるな、向こうからすれば自由にこっちを操れる。」
「全ては、向こうの手のひらだった訳っすね。」
ここにいる全員が計画のコマな訳だね。
そりゃ、上手くいったのも頷けるよ。
「だな。でも、過去の事に引きずられても仕方ねぇ。今は目の前の問題だ。あんたらはどうするんだ?」
「どうするって?」
「森の王とやらの事だ。こうしている間にも、なんかの準備をしてるだろうよ。」
だろうね。
さらって終わりなんてないと思う。
「私は・・・分からない。」
「でも、聖獣の奴と知り合いなんだろ? さらわれたままで良いのかよ。」
良くは無い。
良くは無いけど。
すぐには、フィーは答えない。
何かを悩んでいるようだ。
しばらくしてから口を開く。
「守る約束をしていた。でも、出来なかった。」
「なら・・・。」
「でも、助けに行ったとて助けれるとは限らない。」
気にしてたんだね。
コロを助けれなかった事。
「じゃあ、このままほっとくのかよ。」
「・・・いや。私は引くつもりはない。でも、このまま行くと返り討ちだ。」
すべてを手のひらで転がす頭脳。
そして、多くのハンターを吹き飛ばす力。
たったの一人と一匹でどうにかなるとは思えない。
「だから、力を貸してくれ。頼む。」
フィーが頭を下げる。
すると、フォルが目を見開いた。
そして・・・。
「ぶはっ、あっはっは。」
思いきり笑いだした。
しかも、お腹を抱えている。
「な、なぜ笑うっ!」
「あひゃひゃ。いやぁ、てっきり落ち込んでいるとばかり。」
「全く失礼な奴だ。」
俺も思ってたよ。
でも、もう次を見てたんだね。
「そうそう、けっこう失礼なとこあるんすよ。うちのリーダー。でも、良い人なんで勘弁してくれな。」
「今言うことかよっ。ま、そういう事なら話は早いな。」
回復が終わったのか立ち上がる。
そして、森に向かって睨み付ける。
「じゃあ。」
「当然だぜ。こっちも借りがあるんだ。黙ってなんていられねぇよ。」
周りにいるのは、怪我だらけの仲間達。
フォルもまた、一連の事件の借りを返したいのだ。
「そうだ、俺達に任せとけよ!」
「いや、あんたらはお留守番だ。」
「えっ。」
フォルが盛り上がる仲間達を止める。
それにより、仲間達が固まってしまう。
「当たり前だろ。何があるか分かんねぇんだからよ。」
「で、でもよ。あまりにも数が足りねぇぜ。」
ほとんどのハンターは負傷している。
動ける状況では無さそうだ。
「たしかにそうだな。でも駄目だ。お前達では危険すぎる。」
「それはリーダーもだろ?」
「そうだ。でも、忘れたか? 奴は俺達がいない村を襲ったんだ。またしないとも限らねぇぞ。」
相手の目的は分からない。
だから、また村を襲いに来るかは分からない。
「じゃあ、俺達に村を守れと?」
「そうだ。重要な役目だぞ。」
「仕方ねぇ。そういう事なら俺達に任せてくれ。」
「あぁ、信じてるぜ。お前ら。」
お互い信頼し合っているのだろう。
だからこそ、任せ合えるのだ。
「でも、数が足りねぇのは事実。どうしたもんか。せめて強者が一人いたらな。」
「強者か。そうだ、村に戻るなら連れてきて欲しいのがいる。」
強い知り合いなんていたっけ?
あっ、まさか。
「強いのか?」
「先の襲撃で共に戦った相手だ。実力はある。」
「そうか。でも、協力してくれるのか?」
「間違いない。祭りが中止になるのは、嫌だと言ってたからな。」
祭りが無くなると商売も出来ないと協力してくれた。
ならば、祭りを守るためなら協力してくれるだろう。
「あんたが言うならな。じゃあ、お前ら連れてきてくれ。」
「箱を広げた商人だ。頭になにか被っている。任せたぞ。」
「おうよ。伝えておくぜ。」
もし受け入れてくれるなら、こっちの戦力も強力になるね。
力を貸してくれるのを祈ってるよ。
「さて、順番は逆になったな。にゃんすけ、お前も協力してくれるよな。」
にゃん。
もちろんだよ。
俺も約束したからね。
約束したのに、コロを守れなかった。
だから、今度こそ守りたい。
そう思うのは、俺も同じなのだ。
その数分後、風呂敷を担いだ男が現れる。
前に一緒に戦った男で間違いない。
よく見ると、肩から蛇が顔を覗かしている。
その男が目の前に立つと、笠をかぶり直す。
「急に声がかかったと思ったらだ。面倒な事に巻き込まれているな。」
「全くだ。それで、ここに来たということは、協力してくれるって事で良いんだよな?」
「さっきも言ったが、祭りが中止になると困るからな。」
協力してくれるようだね。
良かった。
「なるほど、あんたも契約獣持ちか。」
「ん? そうだったのか?」
「まぁな。さっきは休ませてたからいなかっただけだ。」
そういえば、この蛇の首に何かが巻かれてる。
契約した証って奴だね。
「でも、荷物重くねぇのか?」
「問題ない。常にこれで移動しているからな。」
だから、荷物を背負ってでも戦えると。
凄いね。
「ま、契約獣持ちなら相当なはずか。俺はフォルだ。頼って良いんだな?」
「ウィルだ。商売の為だからな。本気で行かせて貰う。」
「私はフィーで、こっちがにゃんすけ。よろしく頼む。」
自己紹介を済ませると森を見る。
そして、森に向かって歩きだす。
それぞれの思いを果たす為に。




