黒幕が現れました
「てめぇ、舐めてんのかっ!」
「哀れなのはそっちだろうが! ただの魔物の癖に調子に乗んな!」
一方、ハンター達の怒りは高まるばかりだ。
見下されている事に腹が立っているのだろう。
しかし、それを見た森の王の態度は変わらない。
「ふむ。良い感じに盛り上がっておるな。では、もう一騒ぎ起こすかのぅ。」
何やらぼそりと呟いた。
しかし、ハンターの声でかき消されて聞こえない。
すると、森の王が声を張って叫ぶ。
「愚か者どもが! 哀れに叫ぶだけしか出来ぬ癖に調子に乗るな!」
「何だと! もう我慢ならねぇ。行くぞ!」
「おう! どっちが上か分からせてやる!」
ハンター達が駆け出した。
それに対して、森の王が笑う。
「ふっ、かかったな。」
ただ一言呟く森の王。
すると、体がどんどん縮んでいく。
地面に鏡を置くと更に小さくなる。
そして、人程の大きさの二足歩行へと姿を変える。
「はっ。こいつ、小さくなりやがったぞ!」
「わざわざ、やられやすい姿になるなんてなっ!」
そんな森の王にハンター達が流れ込む。
一見すれば、力の差は圧倒的だ。
それでも、森の王は怯えもせずに立っている。
「ふっ。小さくなったのがなんじゃって?」
その直後、森の王の前方が爆発を起こす。
「しまっ!」
気づいた所でもう間に合わない。
迫っていたハンター達が、巻き込まれて吹き飛んでいく。
「小さいから弱い。だれが言ったんじゃ?」
森の王は、一歩も動いていない。
ハンター達が落ちていく中、威風堂々と立っている。
そして大きな杖を取り出すと、火の玉を作り出す。
「凝縮して濃度を上げる。その威力、元の力より偉大なり。その身を持って味わえ。」
ただ冷酷に、杖の先の火の玉を投げた。
それが、ハンター達の中心に落ちる。
その時だった。
「させねぇ!」
一人の男が火の玉の前に飛び込む。
その男は、フォルだ。
翼を羽ばたかせ、火の玉を吹き飛ばす。
すると、それが関係ない場所へと落ちた。
その直後、そこから空高くへと火柱が上がる。
「ほぅ。面白そうなのがいるではないか。」
「くっ。派手にやりやがって。」
森の王のように、フォルもまた冷静に言っている。
しかし、心の奥では怒っている。
仲間が無惨に吹き飛ばされたのだから仕方ない。
それでも、相手の方が上手だと警戒を強めているのだ。
「おっと。先に襲いかかったのはそちらでは?」
「ほざけ。全部、てめぇの筋書きだろうが。下らねぇ演技なんてしやがって。」
すべては森の王の作戦だったのだ。
なので、それを察したフォルが前に出てきたのだ。
感情に任せた者では、また利用されてしまうから。
「それこそ。乗せられたお前達が悪いのじゃろ?」
「筋書きなのは隠さねぇのか。」
「ま、事実じゃからのう。久し振りに、昔の血がたぎったわい。」
もう隠すつもりは無いようだ。
楽しそうに、顎を撫でて愉悦に浸っている。
「そういえば、協力してくれたとか言ってたな。」
「そうじゃ。この騒動は、鏡を奪うための餌。まんまと総動員してくれたお陰で、容易く手に入ったわい。」
「ん? どういう事だ?」
フォルは、村で起こった事を知らない。
なので、疑問を持つのも当然だ。
代わりに、駆けつけたフィーが説明する。
「村に現れたリザードラの件だな?」
「な、何だと!」
フォルが驚いている。
それに対して、森の王がまゆ一つ動かさずに頷いた。
「いかにも。こっちでハンター達を集めている間に村を襲い鏡を奪うのが本命じゃ。掛かってくれて感謝するぞ。」
「くそっ。まんまと利用された訳か。」
全部陽動だったなんてね。
この数のリザードラを使い捨てにするなんて。
それも知らずに、ハンター達が乗ってしまい村の警備が手薄になった。
まさに、森の王の筋書通りになったということだ。
「お前達の目的はなんだ。鏡を奪って何をするつもりだ。」
「・・・大魔法じゃよ。」
「大魔法?」
大魔法?
魔法と違うの?
フィーの疑問に森の王がにやけながら答える。
まるで、自慢をしたい気持ちが抑えきれないようだ。
「そうじゃ、魔方陣を使った大魔法。長年の研究で作り上げる事が出来た。しかし、その発動には、基盤となる装置が必要じゃった。この鏡は、それを補う事が出来るのじゃ。」
だから奪ったんだね。
そこまでする大魔法って一体。
大魔法とやらを完成させるには、どうしても必要らしい。
その為に、村を襲って鏡を奪ったようだ。
「で、その大魔法とやらは何なんだ?」
「ふむ。説明してもよいが見た方が速いじゃろ。丁度、来たようじゃからな。」
「何がっ。」
森の王が空を見上げる。
何かを待っているようだ。
直後、それが降りてくる。
ウオオオオォォォン。
「この声は、コロっ!?」
空から咆哮が轟く。
それが聞こえた方からコロが現れる。
コロが地面に降り立つと、森の王を睨む。
「ようやくお出ましじゃな。よくもまぁ、長年邪魔をしてくれたものじゃ。じゃが、それも今日で終わりじゃ。」
唸るコロに、森の王は動揺一つしない。
その代わりに、森の王が杖を掲げた。
すると、草原全体が光を放つ。
「なんだ? 草原が光って。」
「いや、光っているのはリザードラだ!」
光っているのは、今だにひざまづいているリザードラ達だ。
森の王以外が見渡す中、光が眩しく高まり続ける。
「その通り。このリザードラ達は、魔方陣を作る為の道具でもあるんじゃよ。ほれ、魔方陣が出来上がっていくぞ。」
光が繋がり、地面に模様を描く。
リザードラ達は、戦いの為の存在ではなかったのだ。
そして、それに呼応して鏡が光る。
その目的はただ一つ。
「コロっ! 逃げろ! 罠だ!」
当然コロも気付いている。
慌てて空へと逃げようとするが。
「もう襲い! さぁ、発動せよ! わが大魔法よ!」
鏡から複数の鎖が伸びる。
そして、それらが逃げるコロへと向かう。
何とか一つを聖火で払うが意味がない。
その間にも、他の鎖がコロの足を掴む。
「掛かった!」
それに合わせて、他の鎖が巻き付いていく。
他の足、胴体、首へと巻かれる度に聖火が消えていく。
「まずいっ!」
にゃっ!
させない!
フォルと俺が鎖に攻撃する。
しかし、びくともしない。
「今すぐ止めろ!」
フィーも鏡を攻撃するが弾かれる。
鎖が剣を弾いたようだ。
「無駄じゃ! それっ、これで終いじゃっ!」
リザードラ達が燃え尽きていく。
そして、放たれた光が鎖に吸収されていく。
そして、全ての光が無くなった直後にコロが落ちてくる。
先程とは違い、小さな姿になっている。
「コロっ!」
コロは暴れているが、鎖がそれをさせない。
聖火も完全に消えてしまっている。
コロの力ではほどけないようだ。
「くそっ。助けにっ!」
「させん!」
コロの前に、森の王がワープする。
そして、自分をコロごと結界で包み込む。
「ははっ。成功だ。この瞬間をどれほど待ったか。」
「くそっ! コロを返せ!」
「断る。長年の研究の成果をむざむざ手放す訳がなかろう。」
フィーが結界を斬っている。
しかし、傷一つ付かない。
「ご協力ご苦労様じゃ。では、森でする事があるのでこの辺で。」
「待てっ逃がさん!」
それでも結界を切り続ける。
今度は力を込めて斬りかかるも、当たる直前に結界が消えてしまう。
「コロっ、コロー!」
ワープの魔法で消えたのだろう。
フィーが叫ぶが、その声は虚しく草原に響くだけだ。
こうして、相手の目的を完遂させられたのだった。




