表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/355

犯人と戦いました

「お前は一体。」

「私はキュリア。以前言った通り、ただの学者だよん。」


 あっさりと名を名乗る。

 正体を隠すつもりは無いようだ。

 鏡に手を当てながらこちらを見る。


「その学者が何故こんな事を。」

「おっと。その前にっと。」


 キュリアと名乗った女性が、複数の何かを巻いた。

 それらが地面に着くと、蔦が伸びてリザードラに変わる。


「まさか。村の中に現れたのはこれなのか?」

「そうだよ?」


 村に現れたのも、こうやって種から生まれたのか。

 なら、急に現れたのも頷けるね。


「まさか黒幕が人間だったとはな。」

「いいや。私は協力してるだけだよ? 黒幕は奴等で間違いないのであしからず。」

「じゃあ、魔物と手を組んだというのか。何故だ。」

「どうしてかって? そんなの簡単だよん。」


 キュリアが両手を広げた。

 そして、空を見上げる。


「私は未知の物を知りたい! この世界のすべてを! だから手を貸したのさ。彼らのしている事に興味があったからね。」


 ただそれだけ。

 それだけで、魔物にだって手を貸すのだ。


「そんな理由だけでか。」

「いつだって、私は未知の味方なのさ。」


 フィーと俺の背中に寒気が走る。

 まさに狂気。


「さて、そろそろ話をやめようか。さ、運んで頂戴ね。」


 リザードラが鏡を担いだ。

 そして、森に向かって運び出す。

 しかし、それを黙って見てるフィーではない。


「させん!」


 駆け出すと共に剣を抜く。

 そして、鏡を運ぶリザードラに向かうが。


「させないよん。」


 フィーの目の前に、氷の棘が地面から現れる。

 それに阻まれたフィーは、攻めを止めて下がった。


「くっ。」

「させる訳が無いよね? 取り返したければ私を倒してごらん。」


 そう言って、キュリアが杖を取り出した。

 その先に光を灯す。

 完全に邪魔をする気のようだ。


「言っておくけど、さっきのはわざと外したからね。次はないよ?」


 ならば上からっ。


 空に向かって俺が飛ぶ。

 そして、上空から火の玉を投げる。


「無駄無駄っ。風よっ!」


 風を飛ばして火の玉を防ぐ。

 しかし、火の玉は逸れて前の氷へ。


 狙いはそこっ!


 火の玉は、爆発を起こし氷を砕く。

 そこからフィーが飛び出した。


「へぇ。やるじゃん。」

「貰った!」


 氷の魔法を作られる前に攻撃を与えればいい。

 その為の誘導だ。


 しかし、剣を突き刺した瞬間に相手が氷のように砕けた。


「ほい残念。」

「なっ!」


 上にいた俺は見ていた。

 剣が刺さる瞬間に、氷の分身を作ってから本体が下がったのだ。

 分身の向こうから見える相手がにやっと笑った。


「氷よ。」


 杖を出した直後に、フィーの頭上に複数のつららが現れる。

 そして、体勢を立て直す前のフィーに降り注ぐ。


にゃん!


 危ない!


「くっ!」


 それに対して、フィーが前転で避ける。

 更に、その勢いで相手に迫るが。


「雷よっ!」


 今度は、雷がフィーに迫る。

 それにより、攻めを止めて剣で受ける。


「風よっ!」


 次に来たのは、先程の風の魔法。

 フィーの動きを止める。


「爆発よっ!」


にゃっ!


 爆発っ!


 動けないフィーに迫る爆発を、俺が撃ち落とす。

 相殺された爆発が視界を防ぐ。

 すると、相手が氷を作ったのが見えた。


「氷よ!」


にゃっ!


 危ない!


 フィーの前に降りた俺が、煙から飛び出すつららを撃ち落とす。

 しかし、それでもいくらかはすり抜ける。

 それでも数は少ない。

 残りのものをフィーが剣で受ける。


「あはっ。あはははははっ。良いねぇ。ここまで防がれるなんて。」


 攻撃を防がれたというのに笑っている。

 悔しがる素振りは微塵も感じない。


「随分と楽しそうだな。」

「言ったでしょ? 未知が好きだって。だから、思うようにいくのがつまらない。だから、自分の勝手が通らないのが堪らない!」

「狂ってる。」


 狂ってるね。

 とんでもないのに関わっちゃったよ。


 身悶えながら笑っている。

 ただただ笑っている。

 自分の攻撃を防がれるのが、楽しくて仕方ないのだ。


「その通り。狂ってるんだよ。だから、誰が苦しもうとも構わない。でも、君は違うんでしょ? じゃあ、止まってる場合じゃ無いよね? なら、早く続けちゃおうよ。私も本気を出すからさぁ!」


 キュリアの頭上に、大きな岩が現れる。

 そして、それが俺達へと降ってくる。


「まずいっ。」


にゃん!


 横には避けれない。

 ならっ!


 火の玉をぶつけて爆発させる。

 そして、ポイントダッシュエアで迫って貫く。


「良くやった!」


 砕けて降る瓦礫にフィーが迫る。

 それを逸らしたりして避けていく。


「良いねぇ。良いねぇ。じゃあ、これはどうっ!」


 瓦礫の次は果物が降ってくる。

 それが雪崩のように、迫ってくる。


 魔法以外も出せるのっ!


「追加の水っ!」


 魔法で果物が濡れていく。

 流石の量に避ける事が出来ない。


「くうっ。」


 にゃにゃにゃっ!


 痛い!痛い!痛い!


「雷よっ!」


 果物に紛れて雷が迫る。

 それが、濡れた果物に伝わっていき広がっていく。


「くっ。にゃんすけっ! 地面!」


にゃっ!


 なるほどっ!


 地面を爆発させて土を巻き上げる。

 それにより、出来た壁に身を隠す。

 その壁にぶつかった果物と雷が、俺達を避けて流れていく。


「ふぅ。危なかっ、いたっ。」


にゃ?


 どしたの?


「いや、唇が切れただけだ。・・・まさかな。」


 汗を拭う時に切れたのだろう。

 そんなフィーは、周りを見回し始める。

 その間にも、果物が止まる。


「あっは。これも避けるんだ。」

「ふっ。魔法で果物まで作れるとはな。農家泣かせにも程がある。」

「残念。流石にそんなの作れないって。これは私の魔法で出したの。」

「ん? どう違うんだ?」


 魔法でも果物のようなものは作れない。

 しかし、魔法に関するものらしい。

 相手が手を前に出すと、そこに果物が現れる。


「私が開発した魔法。固定空間に隠す。そして、それを自由に取り出す。数も量も自由。って、訳でもないけど、かなりの量を運べるよん。」

「じゃあ、鏡を持ち出せたのは。」

「せいかーい。ワープで近づいて隠したんだ。あれをワープで飛ばすのは無理だったからさ。」


 隠してしまえば質量も重さもない。

 だから、簡単に持ち運ぶ事が出来たようだ。


 要するに、ゲームでよくある道具入れ?


「荷物運びに便利そうだな。こんな事辞めて商人でも目指したらどうだ?」

「残念だけど興味ないよ。それに、この魔法の真骨頂はこっからだよん。」


 そう言うと、相手の杖の先に光が吸収されていく。

 周りの光を隠しているのだろうか。


「実はね。無機物だと自由な形で取り出せるの。」


 完全に光の玉が無くなった。

 そして、再び光の玉が現れる。


「こんな風にねっ!」


 現れた光の玉から光の線が伸びた。

 それが、俺達が隠れる土を吹き飛ばす。


「なっ!」


 まさかのレーザー!?


 直撃する直前、俺達は飛び出していたので無事だ。

 しかし、隠れていた土が跡形もなく吹き飛んでいた。 

 後ろを見ると、地面が縦に割れていた。


「なんて威力だ。」

「ね? これ、凄いでしょ。」

「あぁ。だが、準備させなければ良いだけだっ。」


 準備には時間がかかる。

 ならば、その前に止めれば良いだけだ。

 急いで駆け出すが、すでに次の準備を始めていた。

 

「もう遅いっ! 今度は当てるよ!」


 フィーに向かってレーザーが伸びる。

 

「そうくるとっ、思ったぞっ!」


 それに対して、フィーが斜めに飛んだ。

 レーザーは、その横を抜ける。

 前に出たふりをしてレーザーを誘っていたのだ。

 そして、相手に向かって踏み込んだ。

 

「やるねぇっ。でも、氷がある事を忘れずにっ。」

「嘘だな。もう作れないはずだっ!」


 構わずフィーが突っ込んだ。

 氷の棘が来ないと知っての事だ。

 その証拠に。


「くっ。風よっ!」


 相手が氷の代わりに風で防ぐ。

 それに対して、フィーが剣を地面に立てて耐える。


「あれーっ。どうしてばれちゃったのかな?」

「周りが乾燥しているからだ。大方、隠す魔法で集めた水分で氷を作ってたんだろ!」


 唇が切れた時に気付いたのだ。

 周りの空気が乾燥している事に。

 そして、果樹園の葉が萎れている事に。


「さっすが。正解だよん。でも、どうするつもり? それじゃあ、近づけないよね?」


 そう言って、光を集め始める。

 確かに氷は来ないが、近づけないのは変わらない。

 だから、レーザーの準備も止めれないのだが。


「後ろががら空きだぞ。」

「えっ。」


 風が吹いているのは前だけだ。

 なので、上から後ろに回った俺が参上。

 それと同時に、火の玉を投げる。


にゃ。


 吹き飛べ!


「ちょっ。風よっ!」


 レーザーの準備を止めて後ろにも風を飛ばす。

 そのせいか、火の玉が消えてしまう。


 無理か。

 でも、後ろががら空きだよ!


「まさかっ。」


 俺が笑った事によって気づいたようだ。

 すぐに前を向き直す。

 そこでは、フィーが鞘を抜いて構えていた。


「今気づいても遅いっ!」


 前に踏み出し鞘を突き出す。

 相手に十分届く距離だ。

 風を貫くように鞘が突き出される。

 その時、相手は笑っていた。


(なっ、まだ何かがあるのかっ!)


 何か策でもあるのだろうか。

 しかし何もする素振りはない。

 ただ嬉しそうに、その結果を迎えようとしている。

 そして、相手に直撃する直前だった。


 影が飛び出し鞘を掴んだ。


「なっ。」


 がっつりと鞘を掴んで離さない。

 そして、風が止んだ。


「あらら。別に良かったんだよ? あれを受けても。むしろ、受けたかったんだけどなぁ。」


 相手が脱力するように地面に座る。

 しかし、フィーはそれどころではない。


「なんだこれはっ。」

「私の契約精霊。君の子と同じだよ。」


 彼女と契約した精霊という事だ。

 つまり、まだ奥の手はあるという事だが。


「ふっ、まだ戦うという事か。時間が惜しいというのに。」


 戦い始めてから時間がたっている。

 けっこうな距離を運ばれているはずだ。

 しかし、相手は動かない。


「影姫、戻って。」


 そう言うと、影が鞘から離れて戻っていく。

 キュリアは、座ったままだ。


「いいよ。私の負け。」

「どういう事だ?」


 どうやら、戦う気はないらしい。

 杖もいつの間にか消えている。


「間違いなく、君の鞘は私に届いていた。これ以上、情けない姿は晒すつもりはないよ。それに、役目はもう果たしたし。」

「なら、行って良いんだな?」

「どうぞどうぞ。お気になさらず。」


 時間は無い。

 なので、もう動かない相手と戦う必要はない。


「そういう事なら。行くぞ、にゃんすけ。」


にゃん。


 行くしか無いよね。

 ・・・本当に大丈夫?


 一応警戒しながら、鏡を追いかける。

 しかし、本当になにもしてこない。

 キャリアは、静かにこちらを見送っている。

 そして、一言呟いた。


「面白いもの、見つけちゃった。」


 俺達が謎の悪寒に襲われたのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ