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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

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鏡を盗まれました

「この声は。まさか、ユリーシャの母か?」

「ふふっ。おばさんで良いよ。フィーちゃん。」


 後ろからユリーシャの母親が現れた。

 そして、何故かしゃもじを担いでいる。


「ユリーシャはと・・・。にゃんすけちゃんと逃げてるのかい? ありがとね。」

「いや、しかしこいつに戸惑ってな。申し訳ない。」

「なるほどね。やっぱりこいつなんだね。」


 ユリーシャの母が相手を睨む。

 すると、一度怯んだ後に飛び込んできた。


「へぇ、やるかい?」

「おい。危ないぞ。」


 笠の男の注意を無視して突っ込んだ。

 そして、敵の剣をしゃもじで受け止める。


「無駄だよ!」


 そして、剣ごと相手を吹き飛ばす。

 その剣が折れる程の衝撃で、相手が何度も跳ねていく。


「凄いな。」

「はっはっはっ。何十人分のご飯をかき回すのに比べたら対した事ないさ。」


 何とか相手が立ち上がる。

 そして、折れた剣をくっ付け直す。

 しかし、付かない。

 折れた部分が、腐るように枯れているのだ。


「どうなっているんだ。」

「まさか、神聖な力のせいか?」


 巫女の力は、聖獣を惹き付ける程だ。

 しかも、ユリーシャの母はそれを遥かに凌ぐ力を持つ。

 それが弱点ならば、攻撃が効いたのも頷ける。


「全部この人でいいのでは?」

「そうしたいけど、刃物は振り回さない主義でね。だから、フィーちゃん。頼んだよ。」

「しかし、私の攻撃は通らないぞ?」

「なら、分けてあげようかね。」


 ユリーシャの母が、フィーの剣に手を添える。

 すると、剣が光だした。

 ユリーシャが果物に力を込めた時と同じように。


「はい。どうぞ。」

「確かに、これなら。」


 聖なる力がこもった剣なら敵を倒せる。

 それは、先程試した通りだ。

 その剣を、フィーが構え直す。


「行くぞ。」

「なら、今度は俺が先に出る。」


 笠の男が駆け出した。

 それに対して、相手が剣を捨てて殴りにくる。

 しかし、それを避けて腕を斬り落とす。

 すると、今度は蹴りが来る。


「足も邪魔だな。」


 蹴りを避けると、もう片方の足に滑り込んだ。

 そして、立ち上がると同時に足を斬り落とす。


「次いでだ。」


 最後に首を跳ね落とす。

 これでもう相手は動けない。


「これで良いか?」

「充分だ!」


 笠の男が避けると同時にフィーが前へ。

 入れ替わるように懐に入ると、剣を突き刺した。


「今度こそだっ!」


 そして、横に引いて胴を裂く。

 その勢いで、相手が後ろに倒れた。

 すると、斬った箇所から腐るように朽ちていく。

 そして、体中へと広がっていく。


「これが聖なる力か。」


 フィーが見守る中、完全に崩れ落ちる。

 今度こそ倒せたようだ。


「やったじゃない。フィーちゃん。」

「いや、あなたのおかげだ。」

「だから、おばさんでいいって。私はただ力を貸しただけだよ。」


 ユリーシャの母は、大きな声で笑っている。

 しかし、お陰で倒せたのは事実だ。


「さて、俺は戻る。荷物をほったらかしてるからな。」

「あぁ、助かった。」


 笠の男が、お店の場所へと帰っていく。

 それと入れ替わるように、ユリーシャと俺が現れる。


「あれ、お母さん? どうしてここに。」


 ユリーシャが近くに来ていた。

 もちろん俺の監視つきで。


「あなたがこっちにいるって聞いてね。遊びに来たのよ」

「遊びにって。」


 実際の所、遊び感覚で来たのだろう。

 当然、娘が心配だったのもあるのだろうが。


「怪我はない?」

「うん。にゃんすけさんがついててくれたから。」

「そうなの? ありがとね、にゃんすけちゃん。」


にゃん。


 見てましたとも。

 残しておく訳にもいかなかったし。


 何が起こるか分からない状況で、一人にする訳にはいかなかったのだ。

 たとえ、そのせいで戦況が不利になったとしてもだ。


「そういえば、私の事聞いたっていってたけど。」

「そうよ。もういいから来なさい。あんた達。」


 母が呼びかけると、観衆が逃げ込んだ方から人影が現れた。

 同じ服を着ている所から、職員達だと分かる。

 その先頭のユリーシャの父が近づいてくる。


「ユリーシャ。無事か?」

「お父さんこそ。無茶しちゃ駄目だよ。」

「見られてたか。でも。」

「でももないよ。」


 ユリーシャは怒っている。

 台車を庇う父のやり取りを見ていたようだ。

 その父の服の首根っこを母が掴む。


「はい、そこまで。説教なら私がしとくから。」

「ひいっ。」


 父が口の端をひきつらせている。

 どうやら、母に頭があがらないようだ。

 そんな家族の団欒を楽しんでいる時だった。


「あっ、ないっ! 鏡が無い!」

「な、何だと!」


 叫んだのは、台車の蓋を開けた職員だ。

 台車の中が無事なのかを調べていたのだろう。

 確かに、真ん中に置かれていた鏡が無くなっている。

 それを見たユリーシャの父が駆け寄った。


「本当だ。無い。一体どうしてだ!」

「襲撃で咄嗟に締めた時は確かにあったのに。」

「くそっ。閉めている間に持ち去られたとでもいうのかっ?」


 そんなまさか。

 でも、それ以外にないか。


 台車の周りが慌ただしくなる。

 横を覗いてみたりしているが、見つかる訳がない。

 まるで、最初からそこに無かったとしか思えない程に綺麗に無くなっている。

 すると、見覚えのある馬が近づいてきた。


「ここか。魔物が現れた場所は。」

「あんた、ハンター長じゃねぇか。来るのがおせぇぞ。」

「すまない。ハンターは今出払っていて。」

「関係あるか! 俺達を守るのが仕事だろ!」


 ギルド長らしき人が職員達に問い詰められている。

 本来の仕事をこなせなかったのだから仕方ないのだが。


「本当に申し訳ない。裏門を突破されたとの情報は無かったもので。」

「ふざけんなよ。そもそも何でハンターを一人も連れてないんだ。」

「すみません。部外者には言えない決まりなので。」

「おいおい。こっちは被害者なんだぞ。」


 話の通じないギルド長に、村人達が呆れている。

 確かに、どうして現場にハンターを連れずに来たのだろうか。

 フィーが村人の代わりに聞く。


「今、リザードラの巣を叩いているはずだ。何かあったな?」

「どうしてそれを?」

「私はハンターだ。よそのだけどな。でも、大体の話は聞いている。」


 確かそんな話だったよね。

 そういえば、どうなったんだろう。

 すると、ユリーシャの父親も問い詰める。


「どういう事か教えて貰おうか。」

「・・・実はな、先程襲撃があったんだ。」

「なに?」

「昨日から不死身の相手に苦戦しててな。膠着状態が続いたと思ったら、急に一斉に現れたんじゃ。」


 不死身の敵による襲撃。

 それの対処で、ハンター全員が出払っているというのだ。


「しかし、裏門は突破されてはいない。それだけは確実だっ。」

「そんな事を言われてもな。襲われた事実は変わらないぞ。」

「本当に申し訳ない。」


 もう謝る事しか出来ていない。

 ハンターギルドとしても、どうすれば良いか分からないのだろう。


「そもそも急に消えたり現れたりって、ワープでもしたのか?」

「いや。ワープの魔法は、運べる物に限度がある。そもそも、上級魔法だから使える物も限られる。」


 確か、強いゴブリンが使ってたよね。

 ワープ魔法ってそんな代物なんだ。


「上級か。そんな物を使えるとしたら・・・。あっ。」


 どしたの?

 急に固まって。


「ユリーシャの母。」

「おばさんね。で、どしたの?」

「少し、ユリーシャから離れます。」

「うん、分かったけど。」


 それだけ言うと、急いで走り出す。

 どうやら何かに気づいたらしい。

 その際に、俺を呼ぶ。


「にゃんすけ。行くぞ!」


にゃ、にゃん。


 一体、何事なのさ。


 ただ走るフィーの後を追いかける。

 そのまま広場に着くと更に奥へ。

 そして、広い通路から外れて裏路地へ。

 すると、目の前を黒いスーツの女性が走っているのが見えた。


「追い付いたっ。待てっ!」


にゃん。


 まさか、この人が?


 どうやら、こちらから逃げているようだ。

 そのまま追いかけると、村を囲う柵に着いた。

 黒いスーツの女性が、柵を飛び越えた。


「続くぞ!」


にゃん。


 えぇい。

 今は、フィーを信じるしかないっ。


 柵を飛び越え果樹園に突入。

 その奥からは叫び声が聞こえてくる。

 ハンター達が戦っているのだろう。

 しかし、向かうのはその真逆だ。


「どこまで行く気だっ?」


 向こうは答えない。

 ただ果樹園を走り抜けるだけだ。

 そして、果樹園を抜けた。

 すると、黒いスーツの女性が止まる。

 その後に続いて、俺達も止まる。


「はあ、ようやく止まったか。」


 返事はない。

 それに、息切れ一つしていない。


「単刀直入に聞こう。犯人はお前だな?」


 それでも返事はない。

 しかし・・・。


「ふふっ。あははっ。」


 急に笑いだした。

 そして、こちらを振り向いた。


「せいかーい。鏡を盗んだのはこの私。」


 そう言った直後、黒いスーツの女の影から鏡が現れた。

 紛れもなく、祭りに使う鏡だ。


「だよん。」


 帽子を被り直してにやっと笑う。

 楽しそうにこちらを見る。

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