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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

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式の準備を見に来ました

 今日の仕事は終わりらしい。

 なので、籠を返して帰る事になった。

 広間に出た時に、とある違和感に気付く。


「人少ないな。」

「そうですね。」


にゃん。


 確かに。

 本番が近いっていうのにね。


 本番まで後わずか。

 本来なら、人がごった返してもおかしくはない。

 すると、通りかかる人の話し声が聞こえてくる。


「聞いたかよ。例の件。」

「リザードラの件だろ? 俺の同僚の奴は来ねぇってよ。」


 リザードラに関する悪い噂が流れている。

 それほど浸透してしまったという事だ。


「なるほど。ギルドでは抑えきれなかったのだな。」

「仕方ないです。でも、少し寂しいですね。」


 そうだね。

 だからといって無理強いは出来ないし。


「ま、やるべき事をやるだけだ。そうだろ?」

「はい。精一杯やらせて頂きます。」


 心強いね。

 俺達も負けてらんないよ。


 何が起きてもやることは変わらない。

 ただ巫女として護衛として、全力で挑むだけ。

 覚悟も決めた所で、家へと帰る。


「今日は疲れただろう。早めに休もう。」

「そうさせて頂きます。」


 帰る時には、既にユリーシャは眠そうにしていた。

 今日の疲れもあって、時間を潰す事なく床に着く。

 そんなこんなで次の日だ。



「すみません。寝坊しちゃって。」

「それほど疲れてたんだろう。じっくり寝れたのは良いことだろ?」


 フィーが起きた時には、ユリーシャは寝ていたのだ。

 疲れを取る為に、深く寝入ったのだろう。

 それに、そこまで遅かった訳ではない。


「まぁ、にゃんすけより早く起きれたから寝坊でもないけどな。」


にゃん。


 だよね。

 恥ずかしい事ながら、朝は遅いのです。


 そんな会話をしながら食堂に着く。

 すると、いつもより人が少ない。

 昨日と同じように。


「まさか、ここの人達も?」

「いいえ。今日は、祭事に使う道具を運ぶ日なので準備に出てるんだと思いますよ。」

「そういえば言ってたな。」


 言ってたね。

 鏡を運ぶとか何とか。


「じゃあ、ユリーシャも行くんだな?」

「勿論です。見届けるのも巫女の仕事ですので。だから、フィーさんとにゃんすけさんも付き添いお願いしますね。」

「了解した。任せてくれ。」


にゃー。

 

 任せてくれー。

 まぁ、一緒に見守るだけになると思うけど。


 張った胸に拳を当てる俺とフィー。

 食事も済ませて外へと出る。

 やはり、人は少ない。

 代わりに、スタッフらしき同じ服の人を多く見かける。


「人は少ないが慌ただしいな。」

「開催が午前だからですよ。」

「そうか。それまでには、人が増えて欲しい所だが」

「そうですね。さ、私達も急ぎましょう。」


 早い時間なら、急いだ方が良さそうだ。

 目的の場所へと歩き出す。

 そこは、昨日向かった鏡を作る工房だ。

 そこに向かう際、フィーが広場の方を振り向いた。


「気になったが、何でわざわざ遠くに作ってあるんだ? 」


 確かに。

 いっそ広間に工房を作れば良いのに。


「それは、運ぶ人を楽しませる為です。」

「祭りの意味とかとは関係が無いんだな。」

「えぇ。あくまで演出の為らしいです。」


 そうなんだ。

 祭りを盛り上げる為に、色々工夫しているんだね。


 本格的な儀式とは言っても観客はいる。

 なので、観客を楽しませる事も考えてあるのだ。

 しばらく歩くと、多くの人が集まっているのが見えてくる。

 目的地へ着いたようだ。

 そこに近づくと、ユリーシャが見回す。


「お父さんは・・・いた。」


 父親を見つけるやいなや、ユリーシャが駆け出した。

 俺とフィーも、その後に着いていく。

 ユリーシャの父親は、誰かと話しているようだ。


「おとーさーん。おはよう。」

「おはよう、ユリーシャ。間に合ったな。」

「うん。村長さんもおはようございます。」

「うむ。おはようユリーシャちゃん。」


 どうやら話をしていた相手は村長のようだ。

 話を中断してユリーシャを迎える。

 父親は、昨日と違ってさっぱりしている。

 約束通り、整えたのだろう。


「お父さん、ちゃんと綺麗にしてるね。」

「娘に恥はかかせれねぇからな。」

「ほっほっ。何度も周りの人間に確認して貰ったかいがあったのう。」

「村長、それは言わないでくれよ・・・。」


 隠し事を村長にばらされた父親が恥ずかしそうにしている。

 そんな父親を見て、ユリーシャが笑う。


「ふふっ。大丈夫だよ、お父さん。ちゃんと出来てるから。」

「そうか。なら、良かったよ。」


 確かに、昨日の面影が無いほどだ。

 娘の為に頑張ったのだろう。

 今は、巫女の父親と呼ぶに相応しい格好だ。

 そんな父親が、俺とフィーに気付く。


「そっちのお二人さんもどうも。今日もよろしく頼むな。」

「あぁ、任されたよ。」


にゃ。


 任された。

 頑張るよ。


「さて、そろそろ台車が来るな。仕事に戻るから離れてなさい。」

「うん。フィーさん行こう。じゃあね、お父さん。頑張って。」

「おうよ。ユリーシャこそ気を付けろよな。」


 これから作業に入るようだ。

 邪魔にならないよう俺達は離れる。

 そして、集まって来た見物客へと紛れた。

 すると、まさに神輿のような物が引かれてくる。


 おぉ、神輿っぽい・・・かな。

 でも、あれほど派手じゃないけど。


 茶色の台車に、白や緑の装飾がされたのが乗せられている。

 金色のような明るすぎる色は使われていない。

 かと言って、暗く地味な色も使われていない。


「あれが台車か。」

「はい。あそこに舞いにに使う道具が並べられます。」

「舞いに使う道具? 鏡だけではないのか?」

「見てれば分かりますよ。」


 しばらくすると、台車の上にある物が開いた。

 そこには、服と装飾の着いた短剣が置いてある。

 間に何かを置けるように、離されて置かれている。

 それが現れた事により、観客が盛り上がる。


「なるほど。確かに必要な物だな。」

「はい。あれらを使って当日に舞います。そして。」


 工房の奥から大きな鏡が出てきた。

 ユリーシャの父親の指揮で運ばれていく。

 すると、一際大きな歓声があがった。


「あの鏡を乗せれば準備完了です。」

「ほう? 興味深いな。」


 三種の神器って奴かな?

 あれらにも何かの歴史があるんだろうね。


「ユリーシャはいかなくて良いのか?」

「はい。私の出番は広場での引き継ぎ式からですよ。」


 そうしているうちに、鏡が台の真ん中へと置かれた。

 それと同時に、観客から拍手が上がる。

 勿論俺達も。


 なんか、興奮しちゃうよね。

 始まるぞって感じで。


「して、いつから向かうんだ?」

「これからの事を確認してからですね。もうちょっとかかると思いますよ。なので、先に広場に向かいましょう。」


 広場で出番なら、ここにいる必要もない。

 ユリーシャの準備も必要だろうと先に行く事になった。

 観客から離れ、広場へ向けて歩き出す。


「おっと、人が増えて来たな。」

「そうですね。式を見に来たのでしょう。」


 歩けば歩くほど人が増えていく。

 流石に大事な式となると、危険でも見に来るのだろう。


 杞憂だったね。

 沢山の人が来そうで良かったよ。


「とうとう明日か。」

「はい。明日です。」

「緊張しないか?」

「してますよ。とても不安です。」


 色々あったからね。

 コロの事とか、魔物の事とか。


 いつもとは違う祭りの風景。

 のしかかる物も沢山あるだろう。

 しかし、違うのは悪い事だけでは無い。


「大丈夫。私が守ってやるさ。」

「フィーさん?」

「全部、私が追い払ってやる。だから大丈夫だ。」

「はい、信じますね。」


にゃん。


 俺もいるよ。

 守って見せる。


「はい、にゃんすけさんもですよね。信じますよ。」

「どんと信じてくれ。」


にゃん。


 一緒にいた仲だしね。

 絶対に守る。

 何があってもね。


 ただ一緒にいたわけでは無い。

 短い間でもしっかりとした絆がある。

 ならば、守るだけだ。

 それが友達なのだから。

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