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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

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ユリーシャの本心です

「それで、次の仕事は何なんだ?」

「子供達に果物を配りに行きます。」

「果物?」

「はい。村の子供達にです。」


 この村にいるなら、果物を食べるのは当たり前だろう。

 それなのに、わざわざ配るというのだ。

 疑問に思うのも仕方ない。


 なんか特別なものかな?


「どうしてまた、改めて配るんだ?」

「果物といっても、巫女の力を込めた果物です。健康の意味を込めて食べるんですよ。」

「なるほど。祭り特有の物か。」

「はい。その通りです。」


 果物というより、神聖な力を取り込むわけか。

 本格的な祭りって言ってたもんね。


「もしかして、村の人や客人にもか? 魔力が足りないだろ。」

「いえ。大人のには母が力を込めます。」

「あぁ、流石だな。うん。」


 本当に流石だよ。

 どうなってんのさ。


 そんなこんなで次の目的地へ。

 近づく度に、果物の匂いがしてくる。


「着きましたよ。」

「一杯あるな。確か、外で見たやつだな。」


 外で育てている奴の一つかな?

 でも、匂いは一つだ。


 配る果物を一つに決めているのだろう。

 何か縁起のある果物なのかもしれない。

 中を覗いたユリーシャが、近くの人に声をかける。


「あの、村長さんいますか?」

「あ、ユリーシャちゃん。村長なら奥にいるわよ。」

「ありがとうございます。さ、行きましょう。」


 果物が積まれている横を抜けて奥へ向かう。

 そこには、職員に指示を出しているお年寄りがいる。

 その人物にユリーシャが声をかける。


「村長さん。来ましたよ。」

「おぉ、こっちじゃ。来なされ。」


 あの人が村長なのだろうか。

 ユリーシャを手招きして呼んでいる。

 それに答えてユリーシャが近づく。


「よく来てくれたな。ん? そっちの方々は?」

「護衛ですよ。仕事に付き添ってもらってます。」

「おぉ、そうか。村の代表として感謝するよ。」


 やはり、村長のようだ。

 村長自ら現場で指揮しているようだ。

 フィーに向かって頭を下げる。


「いや、勝手にしているだけさ。それより、ここにある果物は?」

「祭りで配るものじゃよ。まずは、巫女さんの家族に力を入れて貰うんじゃ。」

「種類が一つしかないのは?」

「この果物が聖なる果実と呼ばれておる品種だからじゃよ。」


 そうなの?

 確かに、あまり姿はみないね。


 フィーが果物を見る。

 ここにあるのが、全てそうだというのだ。

 村長に代わりユリーシャが説明する。


「この果物は、私の祖先が持って来た物らしいんです。」

「らしい?」

「昔の事ですから。詳しくは子孫の私達でも分からないんです。」


 昔に伝えられた物のようだ。

 それを、今もこうして守っているのだ。

 そんな話をしていると、職員が籠を持って来た。


「村長、持って来ましたよ。」

「ありがとう。ユリーシャちゃんへ渡してくれ。」

「分かりました。ユリーシャちゃんどうぞ。」

「はい。巫女として、受け取らせて頂きます。」


 頭を下げたユリーシャが籠を受け取る。

 とても重そうだ。


「持とうか?」

「いえ。私の仕事ですので。」


 フィーの提案を断った。

 こういった事も、巫女として大事にしているのだ。

 だから、他の人には譲れないのだろう。


「では、いってきます。」

「気を付けてな。いってらっしゃい。」


 ここで村長とはお別れだ。

 籠を重そうに抱えたユリーシャが歩き出す。


「重そうにしているが大丈夫なのか?」

「はい。普通の人よりは力持ちなので。」


 それも巫女の力なのかな?

 大丈夫なら良いんだけど。


 二人の心配をよそに、ユリーシャが歩いていく。

 建物を出てから、数軒横の建物へ。

 その先から、子供達の声が聞こえてくる。


「あそこか。」

「はい。仕事に出た親が預けているんですよ。」

 

 託児所的な?

 ここの親って忙しそうだもんね。


 常に果樹園か畑にいるなら子供に手をつけれないだろう。

 そんな親たちの為に作った場所という事だ。

 その場所に着くと、子供達がこちらに気付く。


「あっ、巫女様だ! 先生、巫女様来たよ!」

「あら、じゃあ皆で迎えましょうか。皆、集まって!」


 ここの子供達が集まって列に並ぶ。

 数十人はいるだろうか。

 手を振って、ユリーシャを迎え入れる。


「せーの。」

「「「巫女様、いらっしゃい!」」」

「ふふっ、ありがとう。」


 ユリーシャが手を振り返す。

 そして、先生の元へとたどり着く。


「果実、持って来ましたよ。」

「ありがとう。じゃあ、皆を並べるわね。」

「お願いします。」


 ユリーシャの前に、生徒達が並んでいく。

 子供達は、利口に先生の言葉を聞いている。


「じゃあ、配りますね。」

「前の人から受け取って行ってね。巫女様に迷惑かけないように。」

「「「はーい。」」」


 まずは、ユリーシャが果実を一つ取る。

 そして、手で包んで魔力を込める。

 それにより、光を帯びた果実を子供に配っていく。


 大丈夫かな。

 子供、多いけど。


「はい次。」

「ありがとー。」


 一個ずつ、しっかりと光を与えては配っていく。

 その分、大量の魔力を使っているはずだ。

 辛くない訳は無いだろう。

 しかし、ユリーシャは辛い顔を一つも見せない。

 そんな様子を、俺とフィーが見守る。


「はい、これで最後ですね。」

「ありがとう。」


 ついに、全ての果実を配り終えたようだ。

 子供達は、美味しそうに配られた果実を食べている。

 それを、ユリーシャが微笑みながら眺めている。


「ユリーシャ、大丈夫か?」

「はい。まだまだいけますよ。」


 ほんとかな?

 顔色は悪くなさそうだけど。


「巫女様。ありがとうございます。」

「はい。皆さんの笑顔が見れて良かったです。」


 心からの言葉だろう。

 いつだって、誰かの為に頑張っているのだ。

 すると、食べ終えた子供達が集まってくる。


「ねぇ、巫女様。遊ぼ?」

「ふふっ、遊びましょう。」


 え、遊ぶの?

 意外とハードだね。


「いつもごめんなさいね。巫女様疲れてるから、激しい遊びは駄目よ。」

「分かってるよ。じゃあ、去年と同じく釣りで。」

「さんせー。巫女様、行こ?」

「はい。行きましょう。」


 ユリーシャは、子供達と共に建物の前にある川へ向かう。

 そこで一緒に魚を釣って楽しんでいる。

 その一部の子供がこちらに興味を持つ。


「ねぇ、この子触って良い?」

「どうする? にゃんすけ。」


にゃん。


 仕方ないね。

 ユリーシャの為だから。


「良いってさ。」

「わぁい。」


 子供達が俺を触っていく。

 時には、顔を押されて変な顔になる。

 それを見て、ユリーシャや子供達が笑っている。


 たまには良いかもね。

 こういうのも。


 それからフィーも釣りに加わり、ユリーシャと大きな魚を釣った。

 俺も川に入って、魚を誘導する。

 そうして、楽しい時間が過ぎていき別れの時が来た。


「「「ありがとうございました!」」」


 子供達が手を振って見送ってくれる。

 ユリーシャと俺達も手を振り返した。


「じゃあね! また来年!」

 

 空の籠を抱えて子供達と別れた。

 そして、後ろからの声が聞こえなくなる。

 すると、ユリーシャが前に出てこちらを振り向く。


「今日はありがとうございました。」

「いや、楽しかったよ。ユリーシャの格好いい姿も見れたし。」

「えへへ、恥ずかしいなぁ。もう。」


 照れた顔を隠すように、再び前を向いて歩く。

 片方の手で顔を押さえている。

 それでも、夕日に照らされた赤くなった顔が横から見えている。


「巫女って大変なんだな。辛くないのか?」

「辛いなんて思った事がないですよ。大変ではありますけど。」


 そうなんだね。

 凄いよ、ほんと。


「私思うんです。この力は、皆に分ける為にあるって。この力を分けて、それで皆が笑顔になって、そんな姿を見るのが嬉しいんです。」

「確かに、皆に愛されてたな。」

「はい。ありがたいことに。」


 行く先々で会った人達は、ユリーシャに親しく接していた。

 それは、ユリーシャが頑張ってきた証拠だ。


「本当なら、コロも笑顔になって欲しいけど。」

「不安じゃないのか?」

「不安ですよ。正直、今すぐ駆け付けたい。でも、そうした所で何も出来ない。」


 駆け付けた所で何が出来るというのだろうか。

 それを知ってるから、不安な気持ちを押さえ続けているのだ。


「だから私は祈るんです。この気持ちが届くように。この力が届くように。皆と同じくコロにも笑顔になって貰えるように。」


 出来るのは祈るだけ。

 それが届かなくても祈り続ける。

 何故なら。


「私は巫女だから。続けていけば、必ず届くって信じてる。もちろん、この村にいる全ての人達にも。」


 彼女の望みはただ一つ、皆を笑顔にしたい。

 巫女として頑張れば、いつか叶うと信じているのだ。


「私は、皆を笑顔に出来るこの力が嬉しいんです。だから、これからも巫女として頑張るんです。」


 皆の為にこの力を使いたい。

 だから彼女は、巫女として頑張れるのだ。


「私は。」


 そう言って、ユリーシャが走り出す。

 そして、立ち止まってこちらを向く。


「私はっ、巫女に生まれて良かった!」


 飛びっきりの笑顔でフィーと俺に言った。

 フィーは、一瞬驚いた顔でユリーシャを見る。

 しかし、すぐに笑顔になる。


「強い子だ。」


にゃ。


 そうだね。

 凄いよ。


 その心は、誰よりも強く美しい。

 それに心を打たれる、俺とフィーだった。


「なら。本番、頑張らないとな。」

「はい。届けて見せます。絶対に。」


にゃ。


 頑張ってね。


 決意を新たに歩き出す。

 一人の少女の願いを込めて。

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