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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
森の精と嘆きの巫女 フラリア王国編

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仕事に着いて行きました

 今日もまた、ユリーシャの家に泊まった。

 今晩は、食事も頂く事になった。

 その後には、屋台で買ったゲームを楽しむ。

 よく分からない木の板を使う奴だ。

 そして、そのまま時間が過ぎて寝る事となった。

 そうして日が変わり、翌日の朝だ。


「おはよう。今日も早いな。」

「おはようございます。習慣なので。」


 今日もまた二人は早い。

 起きて直ぐに、朝の準備に取りかかる。

 しかし、当然俺は夢の中だ。


「にゃんすけは、まだ寝てるか。」

「そういえば、体調はどうですか?」

「問題ないよ。疲れもない。」


 昨日の事を気遣ってくれているのだろう。

 しかし、実際に疲れはない。

 そんな話をしていると、俺が顔を上げる。


「あっ、起きました。おはようございます。」


にゃー。


 おはよー。


 伸びをしながら大きく欠伸をする。

 そして、顔を振って眠気を取る。

 やはり朝は苦手なのだ。

 

「にゃんすけさん。もしかして、疲れているのでは?」

「いや、眠たいだけだろ。昨日もそうだったろ?」


にゃ。


 その通り。

 朝は弱いんです。

 猫なのに。


 何はともあれ全員起床。

 ユリーシャの母が来た事により朝食へ。

 それも終わって、外へ向かう事になるが。


「さて、今日は何しようか。」


 やる事は特にない。

 だらだらと祭りを回るだけだ。

 とりあえず外に出ようと靴を履いてる時だった。

 ユリーシャの母に声をかけられる。


「フィーちゃん。それなら、ユリーシャに付いててくれる?」

「ん? どういう事だ?」

「だってほら、昨日の事があったじゃない? だから、守って上げて欲しいのよ。」


 昨日あった、リザードラの襲撃の事だろう。

 原因はこれから調べるから、何が起こるか分からない。

 なら、ユリーシャが巻き込まれないとも限らない。


「そういう事なら構わないよ。でも、仕事場に行くんだろ? 迷惑になると思うが。」

「大丈夫よ。だって、今日行くのは身内の所だしね。」

「そういう事なら、今日一日、ユリーシャを護衛しよう。にゃんすけもいいな?」


にゃん。


 もちろん。

 断る理由が無いもんね。


「じゃあ、今日もまた一緒に回れるんですね。」

「喜ぶのもいいけど、迷惑をかけないように。」

「迷惑なんてかけてないもん。そうですよね?」

「あぁ、お世話になっているよ。」


にゃ。


 なってます。

 道案内とか現地の人がいると助かるよ。

 昨日の提案とか、ユリーシャが殆どだったし。


 とにかく目的が決まった。

 二人と一匹が並んで扉に向かう。


「気を付けて、いってらっしゃいね。」

「「いってきます。」」


にゃ。


 いってきます。


 挨拶を済ませて外へ出る。

 今日も朝早いので誰もいない。

 人通りの少ない道を歩いていく。


「それで、どこにいくんだ? 身内の所だと言っていたが。」

「お父さんの所です。鏡が完成するので見に行くんですよ。」


 確か言ってたね。

 儀式で使う奴だっけ。


「今日出来るのか、結構ギリギリなんだな。」

「えぇ、ただの装飾じゃないですから。技術が使われている分、毎回遅くなるんです。」


 当日になって使えないんじゃいけないもんね。

 それだけ、職人さんも本気って事か。


 大事な道具故に、職人も力をいれているのであろう。

 それが例え、本番直前になったとしてもだ。

 そんな話をしていると、目の前に黒い服装の女性が現れた。


「やーやー、君達。申し訳ないんだけど、ギルドハウスってどこだい?」

「えっ、それなら広場近くの道から川の方ですが。」

「そうかい? 助かるよ。よく分かんなくてね。」


 その女性は、黒のお洒落なスーツを着ている。

 下はズボンだが、そこにスカーフを巻いてスカートの様に見せている。

 そして、頭には女性の帽子。

 ちぐはぐだが、姿勢がよく紳士的な格好だ。


「この村は初めてですか?」

「うん。昨日呼ばれたからね。こう見えて学者だから。」

「昨日と言うと、リザードラの事か。」

「いかにも。出現地点の魔法の痕跡を調べて欲しいんだって。」


 へぇ、学者を呼んだんだね。

 確かに、その方が早いもんね。


 早速ギルドが動いているようだ。

 まずは、動く植物を動かす魔法を調べるらしい。


「そうか。専門家が動いたのか。ならば、尚更出番は無いな。」

「うん、私に任せてくれたまえ。こう見えて、魔法には自信があるんだよ。」


 その黒い服の女性は、自信満々に胸を叩いている。

 よほど詳しいという事だろうか。


「詳しいんですか?」

「もちろんさ。魔法を始め、人ならざる者とかね。例えば、この子みたいなのも。」


 そう言った黒い服の女性が、俺の前にしゃがんだ。

 そして、両側の頬を引っ張る。


 あの。

 ここに来て、いじられるんですけど。

 一体頬っぺたに何が。


 そうして満足したのか、俺の耳に顔を近付けて呟く。


「君、どうして契約獣の振りをしてるんだい?」


 ひっ。

 何か背筋がぞわってしたっ!


「ん? どうしたんだ? にゃんすけ。」


 どうしたと言われても。

 ・・・何でも無いです。


 何事も無かったかのように首を横に振る。

 ここにはユリーシャもいるから、あまり大事にしたくはない。

 そもそも伝えられないが。


「おっと、もうこんな時間だ。では、教えて頂き感謝するよ。では、機会があればまた会おうね。」


 帽子を外して頭を下げた。

 そして、教えた方へと歩き出す。


「変な奴だったな。」

「そうですか? 誠実そうな人ですが。」


にゃ。


 見た目はね。

 でも、奥底でヤバイ何かを感じる。

 出来ればもう会いたくはないよ。


 もう出会わない事を祈るばかりだ。

 気を取り直して再び歩き出す。

 今度こそ、目的である工房に着く。


「ここです。入りましょう。」


 見た目は、ユリーシャのような家の姿。

 しかし、大きさ的には他の家と同じぐらいか。

 ユリーシャが、扉を横に引いて開いた。


「お父さん、いる?」

「おぉ、ユリーシャか。上がってきな。」


 髭が生えた男に言われて中へと入る。

 俺達も、その後に続く。


「あれ、そっちのは嬢ちゃんは?」

「護衛ですよ。お母さんが頼みました。」

「フィーとにゃんすけだ。よろしく頼む。」

「そうか? 娘をよろしくな。」


 ユリーシャの父は、明るい性格のようだ。

 俺達の事をあっさりと受け入れられる。

 挨拶を済ませながらも、奥へと進んでいく。


「お父さん、鏡は?」

「今朝出来た所だ。後は、ユリーシャの魔力が馴染むかだけだよ。」


 もうすでに、出来ていたようだ。

 工房を歩いていくと、ある部屋の前で止まる。


「おーい。ユリーシャ、来たぞ。」


 そう言って、扉を開けて中へと入る。

 そこには、ユリーシャの父と同じような格好の男性が四人いた。

 彼らもまた、鏡を作る職人らのだろう。


「おっ、ユリーシャちゃん。早いね。」

「おじさん、おはよう。」

「おはよう。早速で悪いけど、鏡を見てくんねぇか?」

「うん、分かった。」


 男達を避けて、ユリーシャが前に出る。

 そこには、人の大きさほどの円盤があった。

 真ん中に綺麗な玉があり、そこから線が伸びている。

 そして、様々な形の紙で装飾されている。


「では、始めます。」


 すると、ユリーシャが鏡に手を翳した。

 それを見た男達が、固唾を飲んで見ている。

 その時、この場が異様な雰囲気に包まれた。

 次の瞬間だった。


「おっ、来たっ!」


 真ん中の玉が光った。

 その光は、周りの線へ伝線していく。

 そして、鏡全体が輝いた。


「成功だ!」

「いよっしゃあ! 今年も上手くいったぞ!」

「本当に間に合って良かった!」

「あぁ、後は本番を待つだけだ!」


 職人の男達が涙を流して喜んでいる。

 そんな中、手を離して一息ついたユリーシャが振り向いた。


「今年もありがとうございます。無事出来た事を、巫女として確認いたしました。」


 そう言って、ユリーシャが頭を下げた。

 そして、ユリーシャの父が近づいた。

 先程の明るい姿とは違う。


「工房の長として、鏡を巫女に謙譲いたす。」

「はい、ありがたく受け入れます。」


 お互い、とても真剣な顔をしている。

 しかしそれは一瞬の事。

 すぐに先程の明るい顔に戻って、ユリーシャの頭に手を置いた。


「後は本番だ。頑張れよ、ユリーシャ。」

「うん、頑張る。任せて。」


 親子の絆を感じられる光景だ。

 周りの職人達も暖かい目で見ている。


「んじゃ、俺達の仕事は明日運ぶだけだ。それまでゆっくり休んでくれ。」

「「「「うっす!」」」」


 職人達が解散していく。

 今までの疲れを取るのだろう。

 そんな中、ユリーシャと父がフィーの元へと来る。


「ユリーシャはこれからどうする?」

「私はまだ仕事があるから。」

「そうか。んじゃ、また明日な。」

「うん。それまでに、綺麗にしといてよね。」

「はは、分かってるよ。巫女の親が小汚ないと示しがつかないからな。」


 親子とも笑い合っている。

 そうして別れを告げたユリーシャがフィーの横へ。


「フィーさん、にゃんすけさん、行きましょう。」

「分かった。」


にゃん。


 うん。

 行こー。


「どうか、娘の事守ってくれよ。どうやら、最近物騒らしいからな。」

「もちろんだ。約束する。」

「気を付けるのはお父さんもでしょ。じゃあね。」

「じゃあな。」


 こうして、ユリーシャの父と別れる。

 親子のやり取りに心を温めながら工房を出た。

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