心配されました
「行っちまいやがった。どうすりゃ良いんだ? これ。」
「さぁな。わかんねぇ事だらけだぜ。」
事情を知らない二人には、疑問しか残らないだろう。
知っているのは、いまだにコロが去った空を見ている俺とフィーだけ。
「おい、あんた。詳しく教えてくれねぇか?」
「さっきも言ったが、知り合いの知り合いだ。」
「確かユリーシャっつってたな。確か、巫女さんの名前がそうだったはずだが。」
「あぁ、昨日から世話になってる。さっきのは昔の友人らしい。」
「巫女さんの友人・・・か。」
うん、そのはず。
聞いてたよりも大きいけど。
でも、名前に反応したから間違いないはずだよね。
名前に反応した事こそがコロである証拠だ。
しかし、聞いていたよりもサイズが大きい。
「魔物の友人ねぇ。」
「魔物かどうかも分かんねぇけどな。空飛んでたし。」
「炎も吹いてたしな。しかも、色付きの。」
「だよなぁ。だとしたら、ただ事じゃすまねぇだろうぜ。」
そういえば、赤じゃ無かったよね。
緑だっけ。
「色つきがどうしてそうなるんだ?」
「ん? なに言ってんだ。色付きの炎っつったら、聖獣の聖火だろ。」
「聖獣? なんだそれは。」
「おいおい。契約獣連れてて知んねぇのかよ。基礎だぞ? 基礎。」
そんなに有名なの?
聖獣って。
呆れている所を見ると有名らしい。
すると、そのハンターの男の翼が取れて鳥の姿になった。
そのまま、男の肩に乗る。
「契約出来る種族は複数いる。例えば、俺が連れてるこの魔物とかな。でも、中には精霊と契約したりする奴もいる。んで、精霊には位があって、その上位が聖獣だ。」
なるほど。
なんか凄そう。
「契約の勉強の時に真っ先に習う事なんだがな。」
「あぁ、そういえば、なんか習った気がするな。うん。」
目が泳いでる。
絶対、嘘だね。
「頼むぜ? ほんと。で、聖獣の特徴といえば、空を駆けながら色の付いた炎を吐く。」
「まんまあれと同じという事だ。」
「つまり、コロがその聖獣なんだな。」
「あぁ、間違いねぇぜ。」
コロがそんなに凄いだなんてね。
巫女と聖獣。
なんか、深い繋がりがありそうな組み合わせだ。
「そういえば、ただ事じゃすまないと言ってたな?」
「まぁな。奴らは基本、人の地に来ない。異常な事が無い時以外な。」
「異常?」
「そう。世界を汚す奴が現れた時だけ現れる。この意味が分かるか?」
「この場所がまさにそうだという訳か。」
「正解だ。」
つまり、この地で何かが起きている。
そういう事だね。
まさに、この場所を汚す何かが起こるというのだ。
村の住人からすれば、ただ事じゃすまないだろう。
そんな話をしていると、村の方が騒がしくなる。
「やばいな。村人にさっきのを見られたか。騒ぎになるぜ。」
「そうさせないのがギルドの仕事だ。急いで戻って上に話す。」
「出来るのか? 前まで俺達の事を信じてくれなかっただろ。」
そうだったね。
大丈夫なの?
「・・・それに関してはすまないと思っている。だから、何とかして見せるさ。すまないが、お前達は援軍が来るまで見ててくれ。」
「分かった。」
「報酬は、追加でよろしくな。」
「あぁ、言っておく。」
そう言い残し、ギルドの男が馬を走らせ去っていく。
それから森を見張るが、何かが出る事は無かった。
その数十分後に、人の群れが村から現れた。
ギルドからの援軍だろう。
フィーと俺と男が村へと戻ったのは、それを見届けてからからだった。
「フィーさん? にゃんすけ?」
「ユリーシャ? どうしてここに。」
村の入り口には、多くの人だかりがあった。
その中に、ユリーシャがいた。
フィーと俺を見つけると近づいてくる。
「それはこっちの話ですよ。どうして、外から。もしかして、怪物と戦ったハンターさんって二人の事だったんですか。」
「正確には、この男とな。」
「えっ?」
ユリーシャが横の男を見た。
フィーに言われて、ようやく気付いたらしい。
その男が前に出た。
「お初にお目にかかります。と言っても、こちらは初じゃないけどな。」
「は、はぁ。」
この村の住人なら、巫女を知っているのは当然だろう。
しかし、話したのは初めてらしい。
なので、一方的に知っている事になる。
って、行儀良いぞ?
この男。
「ちゃんと礼儀よく話せるのだな。ただのやんちゃな格好をした男では無かったか。」
「礼儀に関しては言われたくねぇよ。って、この格好もお洒落じゃねぇぞ。」
「そうなのか?」
「あぁ、空飛んでるとさみぃからな。っと、こんな話をしてる場合じゃねぇか。」
いきなり話をぶった切った。
何か用事があるようだ。
再び、ユリーシャと向き合う。
「あんた。でっけぇ魔物と知り合いだそうだな?」
「いいえ。小さいのですけど。」
「あれ? あんた、一体どうなってんだ?」
「別に大きさについては言ってないが。」
言ってないよね。
聞かれてないし。
「そうだったか? まぁいいか。それについて話があんだが。」
「ちょっと待ってくれ。」
「ん? どうした?」
「その話、私からさせて欲しい。だから、しばらく私達だけにしてくれ。」
頼まれたのは俺達だからね。
ちゃんと報告しなくちゃ。
ハンターの男は、しばらく黙り込む。
何か、考えているようだ。
しばらくしてから頷いた。
「んじゃ、後でギルドハウスで。俺も仲間達と合流しないといけないからな。」
「大丈夫か? ユリーシャ。」
「はい。仕事はもう終わったので。」
その言葉に満足したのか男が背を向けて歩きだす。
その際、手を上げて挨拶をする。
格好つけてる。
やっぱり、やんちゃなんじゃ?
あの格好も絶対に気に入ってそう。
「さぁ、行こうか。」
ここは人が多すぎる。
なので、場所を変えて話すようだ。
場所は、村を流れる橋の上だ。
「あの、フィーさん。それで、コロがどうしたんです?」
「コロ、いたよ。」
「えっ、本当ですか?」
それから、何があったかを話していく。
その度、顔に影を落としていく。
友達が見つかったというのに、嬉しくなさそうだ。
「と、いう事だ。」
「聖獣。コロが?」
フィーが頷いて答える。
しかし、ユリーシャは俯いたままだ。
「どうした。嬉しく無いのか?」
「嬉しいですよ。原因は分からないけど、無事ならそれで充分です。」
「では、どうして。」
「そこまでして調べてくれたのが、嬉しくないんです。」
「えっ?」
どうやら、フィーの事で怒っているらしい。
ユリーシャが、フィーの手を持ち上げて見る。
割れた銛を束ねて持った手は、血で滲んでいる。
「私のせいでこんなに。無理はしないって言ってくれてたのに。」
「無理はするつもりは無かったさ。でも、ああするしか出来なかった。」
「それでも。いえ、戦うのが当たり前ですもんね。フィーさん。」
「あぁ、ハンターだからな。」
ハンターにとって傷は当たり前だ。
しかし、それを知らないユリーシャには堪えたようだ。
それが自分のせいなら尚更だ。
「でも、治療は受けてくださいね。絶対ですよ?」
「約束するよ。」
にゃ。
大丈夫、俺が治療させるよ。
「にゃんすけもです。しっかりと見てもらって下さいね。」
にゃ、にゃー。
は、はい、分かりました。
謎の威圧が。
流石、あの母の子。
謎の威圧に頷くしかなかった。
その俺の反応に、ユリーシャが笑った。
しかし、心配してくれたのが嬉しい。
そう思い、フィーと俺も笑う。
「さて、ギルドハウスだったな。」
「でしたね。向かいましょう。」
「場所は、って流石に分かるか。」
「この村の住人ですから。それに、祭りの挨拶にも行きますし。」
だろうね。
知らない訳無いよ。普通。
村人に場所を聞くのは野暮なようだ。
早速、ギルドハウスに向かった。




