村の外に出ました
依頼の契約を交わし、ギルドハウスから出る。
向こうには知らせてあるので、伝えればいいとの事だ。
一度広い通路に出ると、入り口とは逆に向かう。
「確か裏口の門はこっちだったな。」
入り口の丁度逆だっけ。
合ってるはずだよ。
村の裏にも果樹園や畑がある。
そこへ直通する為の門だ。
しばらく進むと、それが見えてくる。
「あった。行ってみよう。」
門の向こうには、果樹園が広がっている。
あそこが裏口で間違い無さそうだ。
その門には、仮設の受付が設けられている。
そこに近づくと、受付らしき人に話しかける。
「すまない。ここがギルドの受付で間違いないか?」
「ああそうだぜ。お前さんが、ハウスの報告で言ってた奴か。」
「あぁ。早速依頼に移りたいんだが、説明を頼む。」
「まぁ、説明つってもこの辺を回るだけさ。敵を見かけたら斬る。んで、終わったら報告。そんだけだ。」
本当に簡単だね。
回るのなら、ついでに探索も出来そう。
「どこを見ればいい?」
「そうだな。取り合えず、森の周辺を監視出来る場所を回ってくれや。巣がある森さえ見てれば、被害は抑えられるだろうからな。」
「分かった。」
魔獣は、森から来てるんだっけ。
そこを押さえればって事だね。
「この依頼の報酬は、農家の人達が出した金だからな。しっかり頼むぜ? 特に嘘の報告とかしないようにな。」
「いや、そんな事をする奴はいないだろう。」
「それがいるんだよ。おかげでこっちは迷惑してるんだよなぁ。」
倒したって嘘付いてるんだね。
酷いハンターもいるもんだ。
「そうか、気を付けるとするよ。では、早速行くとしよう。」
「おう、気を付けろよ。」
受付から離れて歩き出す。
すると、フィーが止まり振り返る。
「ちなみに、魔獣の報告はあるか?」
「魔獣? そんなのねぇよ。むしろ、そんな可愛らしい奴なら大歓迎だぜ。」
受付の人が、わははと笑いだす。
やはり、現地でも見た事が無いようだ。
というか、魔獣って可愛いで済むのかな?
まぁ、魔物って強面だもんね。
嫌になるのも分かるけどね。
今度こそ現場へと歩き出す。
そして、果樹園の間の通路を歩いていく。
果樹園の面積はとても広そうだ。
そこで、多くの人が働いている。
「どれぐらいあるんだろうな。」
にゃ。
さぁね。
でも、特産品というからにはいっぱいかも。
他の村や街にも送っているのだろう。
だとしたら、決して少ない量では無いはずだ。
周りを見ながら歩いていると、前に農家の人が現れた。
「おや。ハンターさんかい?」
「あぁ。今、見張りに向かっている所だ。」
「そいつはお疲れさんだ。ほら、これでも食ってくれ。」
農家の人が、籠から果物を掴んでフィーへと投げた。
すると、とっさに取ろうと出した手に弾かれ顔面に直撃する。
「いたっ。」
「おっと、大丈夫かい?」
「あぁ、も、問題ないよ。」
あーあ。
ここでやらかしちゃったか。
フィーが笑いながら落ちた果物を掴む。
ポンコツを見られて恥ずかしがっているようだ。
そして、もう一つの果物を俺に投げる。
「ほい。あんたも。」
にゃ。
ありがたい。
動く前の腹ごしらえに丁度良いね。
俺は難なく掴み取る。
そして、一口。
口に広がる果汁が素晴らしい。
「これ、商品だろ? 良いのか?」
「まぁな。俺達もよく摘まんで食うから。」
「そうか。そういう事ならありがたく頂こう。」
お礼を言って、果物を食べながら歩き出す。
他にも、声をかけて来る人は沢山いる。
そうやって、現地の交流をしながら歩いていく。
「ん。どうやらついたようだな。」
いくつかの樹の横を抜けて歩いていると柵が見えてくる。
果樹園の端に着いたようだ。
そこから先は、ただの草原が広がっている。
そして、その奥に巨大な樹が集まった森がある。
「ふむ、あそこか。」
にゃ。
魔獣の巣がある森だね。
周りにハンター達が何人かいる。
「さて、他の人が見てなさそうな場所に行きたいが。」
そうは言っても、この辺の事は調べ尽くされているだろう。
となると、正面近くは意味がない。
「裏側か。まずは、街道近くの方を回って見るか。」
にゃん。
賛成だね。
もしかしたら、また街道に向かうのが出てくるかもだし。
そうと決まったら歩き出す。
街道側をぐるりと回って裏側へ。
森の監視もしっかりする。
「問題無しか。まぁ、そんなに頻繁には出ないんだろうな。」
森を見るも音沙汰無し。
あそこに巣があるか分からない程に平和だ。
それでも仕事なのでしっかり見張る。
「ここにもコロはいないか。どこに行ったんだろうな。」
にゃ。
そうだね。
村の中にもいない。
外にもいない。
「森の中か。いや、小さい魔獣一匹ならとっくに追い出されているか。」
にゃん。
常に住み着いてるらしいからね。
ただの一匹の魔獣じゃ歯が立たないだろうし。
「まてよ。本当に小さいのか?」
にゃ?
小さい訳ではない?
そういえば、いなくなったのは結構前の事だっけ。
「大きくなったから迷惑かけてしまう。だからいなくなった。そう考えられないか?」
にゃん。
確かに。
そう考える事も出来る。
出来るけど。
「もしそうなら、この辺にはいないだろうな。そうなると、探しようが無くなるぞ。」
にゃん。
そうなんだよね。
この広い大陸で、獣一匹探すのは不可能だよ。
「ユリーシャにどう説明しようか。いや、まだ決まったわけではない。探そう。それしかない。」
にゃん。
そうだね。
俺達が諦めたらおしまいだよ。
最後まで探そう。
そう、まだいないと決まったわけではない。
元々、見つけたらという話なのだ。
決めつけるのは早いだろう。
その直後、草原に声が響き渡る。
「敵襲だ! 多いぞ!」
「近くにいるやつ。手伝ってくれっ。」
声がする方を見ると、魔獣に襲われていた。
昨日見たリザードラだ。
やり返しているが、相手の数が多い。
このままだと押されるだろう。
「行くぞ、にゃんすけ!」
にゃっ!
任せて!
ぶっ飛ばすよ!
群れの一匹にハンターが剣を突き刺す。
それでもまた他が襲いかかる。
しかしそいつは、仲間のハンターに倒される。
それを繰り返して凌いでいく。
良い連携だ。
しかし、数が多い。
「早く! 誰か来てっ!」
しかし、周りに人は少ない。
距離もあるので助けに行くのは困難だろう。
ただ一匹を除いて。
にゃっ!
助けに来たよ!
こいつでも食らえっ!
空高くから、複数の炎の球を降らせる。
それらが、リザードラに着弾していく。
「なっ。魔法っ!? どこから!?」
いきなりの炎の球に驚いているようだ。
それらが、リザードラを吹き飛ばしていく。
しかし、効かない事は知っている。
にゃっ!
今だよ!
「ふっ、少しは手加減して欲しいなっ!」
全速力で駆けたフィーが銛を掴んで突っ込む。
そして、俺を見上げているのに突き刺していく。
気づいた相手には、突き刺したのをぶつけて吹き飛ばす。
それでも来た相手は、俺が上から吹き飛ばす。
「あんらは?」
「同僚だ。手助けする。」
「助かるっ。」
ハンター達が押し返し始める。
フィーと俺が吹き飛ばしたおかげで、余裕が出来たようだ。
これで形勢逆転だ。
「このまま押し返すぞ!」
「俺に任せろ!」
今度はこちらの番だ。
チームの大きいのがタックルをかます。
「今のうちだ!」
「おっしゃ!」「行くわ!」
吹き飛んだのを、二人の男女が突っ込み斬っていく。
そうして、次々と群れを減らしていく。
すると、フィーに三匹の相手が飛びかかる。
「危ないっ!」
「大丈夫だ。」
当然、フィーも気付いている。
迫る二匹の蹴りを逸らしてかわして一匹を突き刺す。
「にゃんすけ!」
にゃっ!
分かってるよ!
一匹を軽く蹴ってもう一匹にぶつける。
そして、振り向いたフィーがまとめて突き刺す。
すると、今度は四匹がフィーを囲む。
「ふっ。」
まずは、二匹が蹴りに来る。
それを逸らした所に、他の二匹が来る。
一匹の蹴りを受け止めると、次のに蹴り飛ばしまとめて突き刺す。
そこに、後ろから避けた二匹が来る。
「気付いてるさっ。」
振り向いて一匹の蹴りを受けながら下がる。
何度か払いながら下がると、横からもう一匹が来る。
なので、下がって銛の横で受け止めてから後ろで突き飛ばす。
そして、重なった所を突き刺す。
「綺麗。」
「確かにすげぇな。」
「あぁ、一つ一つの動きが派手だな。」
「うん。踊ってるみたい。でも。」
「強いな。っと、見とれていられねぇぞ。俺達も負けてらんねぇ!」
フィーに感化されたのか、チームのハンター達も攻め始める。
すると、さらに数が減っていく。
そうしていると、他の援軍が到着した。
「すまねぇ。遅れちまった。」
「おせぇぞ。つっても、そこのがほとんどやっちまったけどな。」
「本当にすまない。遅れを取り戻させて貰うぞ!」
こうなったら、一方的な蹂躙だ。
次から次へと数を減らしていく。
それから全滅するまで、時間がかかる事はなかった。
「よし。終了だ! 助かったぜ。」
「いや、まだ焼けただけのが。」
フィーが最初に吹き飛んだリザードラ達を見る。
炎の魔法が効かないのを知っているからだ。
しかし、動かない。
「どうしたんだ? あんた。」
「・・・いや、何でもない。」
不思議そうに見るも、吹き飛ばされただけの奴等はピクリとも動かない。
間違いなく死んでいるようだ。
「気のせいか? うん、気のせいだろう。」
首を振ってそう言い聞かせる。
そして、振り向いて目を逸らす。
疑問を残したまま。




