探しに行きました
目が覚めると朝になっていた。
とはいっても、朝日は少ししか顔を出していない。
まだ、夜が明けたばかりだろう。
「あ、おはようございます。」
「うん、おはよう。早いな。」
既にユリーシャは起きていた。
机で何かを読んでいる。
「はい。早く起きるのは得意なので。」
「そうか。では、私も起きるとしよう。」
フィーも起きて一伸びする。
朝が得意なのはフィーも同じだ。
寝ぼけるような事は全く無い。
布団を畳むと、未だに寝ている相棒を見る。
「にゃんすけは、まだか。相変わらずだな。」
「ぐっすり眠っていてかわいいです。そのまま寝かせてあげましょう。」
「そうだな。お腹が空いたら目を覚ますだろう。」
フィーにとっては、いつもの光景だ。
気にせず、朝の準備に取りかかる。
俺が起きたのは、それからしばらくの事だった。
「あら、起きました? おはようございます。」
んにゃー。
おはようございま、ぐぅ。
眠いです。もう少し寝てたいです。
「ふふっ、ゆっくりでいいんですよ?」
そうはいってもいられないよ。
自分だけ寝てるのはね。
眠気と戦いながらも起き上がる。
そして、前足をピンと立てて体を伸ばす。
それから、布団に座ってぼーっとする。
その途中、紙の擦れる音が気になりユリーシャを見る。
何してるんだろう。
読書かな?
気になって、ユリーシャの横へ顔を出す。
そして、机の上にあるのを覗きこむ。
「ん? 気になりますか?」
特に隠そうともしないので見てみる。
そこには、この世界の文字が並んでいた。
全然分からん。
「これは、近くの村や町の長から頂いた祝辞です。当日に来る方々にお礼をする為に読み込んでるんですよ。」
なるほど。
起きてからも仕事なんだね。
なんか、大変そうだなぁ。
巫女の仕事は沢山ある。
偉い人への挨拶もその一環なのだろう。
特にする事も無いので、その光景をただ眺める。
机に顎を乗せてのんびりしていると扉が開いた
「にゃんすけ、起きたのか。おはよう。」
にゃー。
おはようです。
どこかに行っていたフィーが戻ってきたようだ。
にゃんすけえお見るなり挨拶をする。
「先程起きたんですよ。」
「だろうな。目がまだ閉じてる。」
仕方あるまいて。
二人と違って朝には弱いのでね。
「ユリーシャ、良いシャワーだったよ。」
「それは良かったです。」
「まさか、お湯まで浴びれるとはな。にゃんすけもどうだ?」
にゃむ。
お断りします。
この体での水にまだ慣れないので。
「そうか。相変わらず水が苦手なんだな。汚れないらしいから気にしないんだが。」
「それならコロもそうでしたよ。最近の獣はそうなんですね。」
獣に、昔も今もあるのかな?
まぁ、自分でもよく分かんないけどね。
それから、ゆっくりと寛ぎながら時間が過ぎるのを待つ。
すると、扉の向こうから声がかかった。
「ユリーシャ。起きてる?」
「はい。起きてますよ。」
ゆっくりと扉が開かれる。
そこにいたのは、ユリーシャの母親だ。
「あら、旅人さんも起きてたのね。どう? ゆっくり眠れた?」
「あぁ、お陰さまでな。」
「それは良かったわ。是非、ご飯も食べて行ってね。」
「良いのか? お世話になるつもりは無かったんだが。」
「えぇ。一人でも百人でも増えた所で対した事無いわよ。準備が出来たらいらっしゃい。」
百人でもて。
でも、出来そうな圧をしているからなぁ。
ユリーシャの母親が、台所へと戻っていく。
用事は、ご飯の事で呼びに来ただけだろう。
「良いのかな。」
「大丈夫ですよ。その気になれば、村中の人の食事も作れる人ですから。」
「そ、そうか。なら、世話になろうかな。」
どこまで凄い人なんだろうね。あの人。
でも、ご飯を食べられる。
こうしちゃいられない。
勢いよく飛び上がる。
そして、一足先に扉に向かう。
「ほら、言った通りだろ?」
「ですね。」
呆れて見るフィーと、口に手を当て笑うユリーシャ。
なんの事やら。
それはともかく食事だ。
さぁ、行こう。
それから、長机が沢山並ぶ部屋へと向かった。
そこには、沢山の人達が座っている。
部屋に入ると、人の横を通る度に声がかけられる。
「あら、ユリーシャちゃん。おはよう。」
「お、ユリーシャちゃん。今日も元気そうだな。」
「はい。おはようございます。」
どうやらユリーシャは人気らしく、多くの人が挨拶をする。
ユリーシャは、その都度挨拶を返していく。
そして、食事を済ませて部屋へと戻る。
「では、行こうか。にゃんすけ。」
「どうか、よろしくお願いしますね。」
「あぁ、見つけたら知らせるよ。」
家の用事があるユリーシャとは一旦お別れ。
荷物を持つと、早速外へと向かう。
朝早いからか、人は少ない。
で、どこ行くの?
「まずは、この辺を歩きながら探すぞ。人が多いから顔を出さないかも知れないからな。」
なるほど。
それはあるかもね。
「では行こうか。」
にゃー。
行こー。
コロ探しに出発だ。
まずは、人通りが少ない裏の道を探す。
時折、家の隙間も探す。
家の少ない広場も探す。
しかし、いない。
「探す場所が違うのか?」
にゃ?
さぁ?
でも、一通り探すしかないよ。
それからも、人がいない場所を探していく。
もしかしたら隠れているのかもと物影も探す。
そもそも地上にいないかもと屋根裏も探す。
しかし、いない。
「やはり、無理か。」
にゃん。
無理かな。
そもそもいたら誰かが気づくだろうし。
人がいないからといっても、ほったらかしとは考えにくい。
必ず誰かがみているだろう。
それでも見つからないとなると。
「まさか。狩られたか?」
にゃー。
可能性は、あるかも。
だって野良だし。
でも、そんな事考えたくないよ。
「仕方ない。聞いてみるか。」
獣が現れたとなれば、騒動になっているはずだ。
ならば、村の人達なら知っているはずだろう。
一度、人のいる場所へと戻る。
そして、出店の準備をしている人へと声をかける。
「すまない。」
「なんだい? 嬢ちゃん。」
「この村で、獣が現れたなんて話はあるか?」
「いや、ないよ。そもそもこの辺には、リザードラみたいな魔物しかいないからね。」
「そうか、ありがとう。」
「いやいや、構わんよ。祭り、楽しんでってくれな。」
お礼を言ってから離れる。
どうやら、獣が現れる事すらあり得ないようだ。
「もしかしたら、村の中にいないのでは。」
にゃん。
かもね。
それなら、見つからないのも当然か。
「そうなると外か。なら、ハンターギルドに訪ねたら方がいいな。」
にゃん。
そうだね。
この辺の情報なら何でもありそうだし。
ハンターギルドなら、この辺の生態系に詳しいだろう。
もしかしたら、何か知っているかもしれない。
「良し。そうと決まったら行くか。」
にゃー。
行こー。
今度こそ、情報があるといいな。
探すのは一旦やめてギルドハウスへ向かう。
そこなら何か手がかりがあるかもしれない。
大通りの通路を進んで横道へ。
昨日向かったギルドハウスに着く。
早速中に入ると、昨日と同じ受付の人がいた。
「あら、昨日の。依頼ですか?」
「どうも。出店まで暇でな。何があるか見せてくれないか?」
「それなら、横のボードへどうぞ。」
「分かった。」
案内された横のボードへと移動する。
そこには、複数の紙が張ってある。
依頼書で間違いないだろう。
「さてと。」
さてと。
・・・見えません。
足を伸ばしても届かない。
そもそも読めないけどね。
ここは、フィーに任せるしかないだろう。
しっかりと、一つ一つ探していく。
しかし、どこを探しても魔獣の討伐依頼だらけだ。
「ん? 魔物の討伐依頼しかないな。」
「えぇ、そうですよ。この先の森で繁殖しているんです。なので、依頼も基本魔物関係ですね。」
「倒しにはいかないのか?」
「年に一度、討伐しに行きますよ。でも、倒しても倒しても湧くんですよ。残念ながら。」
まるで虫だね。
巣を叩いても、他所から来るのかな。
「それ以外はいないのか?」
「いませんね。残念ながら。」
「一度もか。魔獣もなのか?」
「はい。それ以外となると、暑くなると虫の討伐が増えるぐらいですかね。」
じゃあ、討伐された訳じゃ無いんだね。
良かった。
でも、これで振り出しか。
ハンターギルドに来ても進展は無し。
結局、振り出しに戻る事となった。
「どうしようか。」
「そんなに暇なんですか? それなら、警備にいかれてはどうでしょう。」
「警備に? 確か、昨日言ってたな。」
「はい。この時期になると、魔物が増えるんですよね。しかも、要人が集まるこの時期に限ってです。なので守りもしっかりと、ハンターが見回っているんですよ。」
なるほど。
要人を怪我させられないもんね。
「そういえば、昨日倒したな。あれもそうなのか?」
「恐らくそうかと。そこまで出るのは珍しいですけどね。」
運悪く、遠出したのと会ってしまってたって事か。
それでもかなりいたはずだけど。
「うーむ。このままここにいるのもあれだしなぁ。」
村で探しても無駄だもんね。
探すのなら外に出るしかないか。
「よし決めた。私も参加するよ。」
「そうですか? では、話を通しておきますね。」
「頼む。」
受付の人が奥へと引っ込んだ。
考えるぐらいなら動いた方が良いと思ったのだろう。
こうして、外へ探しに行く事が決まったのであった。




