尋ねられました
祭りの時期なら人が集まる。
そうなると宿も埋まる。
当たり前の事だ。
「どうしたものか。ハンターギルドに頼るのもな。」
ハンターギルドだからって、宿を取れる訳無いもんね。
というか、素人を晒すようで恥ずかしいし。
「やはり野宿だな。以前はよくしてたから問題無いのだが。都合よく、食い繋ぐ食事もあるしな。」
それのせいでもあるんだけどね。
無いよりましだけど。
「しかし、この辺りは畑に囲まれてるからな。さすがに迷惑か。」
そりゃそうでしょ。
果物を取りに来たら人が倒れてるなんて驚かれちゃうよ。
「うーん。考えても埒があかない。取り合えず、広場に戻るか。」
にゃん。
そうだね。
動かない事には、何も始まらないし。
立ち止まっていても見つかる訳ではない。
何か見つからないかと広場へ戻る。
そこでは、今日は店じまいと片付けている人達がいる。
人通りも減っており、頼れそうな人がいなさそうだ。
「人がいないな。日が沈み始めてるからか。」
皆、宿で疲れを取ってるんだろうね。
あー、羨ましい。
それでもと周りを見る。
しかし、次々と人が減っていく。
建物からは明かりが漏れており、帰宅している事が伺える。
やっぱ無理だよね。
お邪魔するのも申し訳ないし。
「やはり野宿か。となると、場所探しをしないとな。」
やはり無理だったか。
人生初の野宿。
まさか、こんな事で経験するなんてね。
「それじゃあ行くか。」
「あの。少し良いですか?」
「ん?」
ん? 誰?
一人の女性が、フィーに声をかける。
何か用があるのだろうか。
そもそも、なんでこんな時間にいるのだろうか。
「あの。この辺りに小さい獣の子を見かけませんでしたか?」
「いや。見てないな。」
見てないね。
人しか見てない。
「そうですか。」
そう言って、女性がうつむいた。
しかし、落ち込むというよりもやっぱりかといった感じだ。
「君の契約獣か?」
「えーと、それは・・・。」
「違うのか。それなら村に入れないんじゃないか? 探すのなら外だと思うが。」
「えーと、その。そうですよね。すみませんでした。」
村に入れる獣は、人と契約したものだけだよね。
俺もそうだから契約したふりをしてるし。
頭を下げた女性は、とぼとぼと歩いていく。
何か物悲しそうな背中だ。
やはり何かがあるのだろうか。
すると、フィーがその背中を追う。
「待ってくれ。」
「はい?」
「よければ話を聞かせてくれないか?」
気になったのもフィーも同じようだ。
それを聞いた女性は、少し考えた後頷いた。
そうして、場所を変えて事情を聞く事になった。
広場の舞台へと場所を変える。
「昔、一緒に遊んでいた子がいたんです。」
「それがさっき言っていたのか。」
「はい。」
やっぱりいたのか。
なんで、はぐらかしたんだろう。
「その子はいつもこの時期に現れました。そして、一人寂しくいた私と遊んでくれたんです。でも、数年前に急にいなくなって。」
「それで探していたと。」
「えぇ。また現れるんじゃないかと、この祭りの時期になる度に探しているんです。」
ずっと探してたんだね。
今回こそはと。
「ではなんで最後はぐらかし・・・。そうか、知られたら不味いからか。」
「ばれたら問題になる。村に迷惑がかかるし、見つかったら狩られるかもって。」
誰にも言えなかったんだね。
そりゃそうか。
村に入る野良なんて駆除対象だろう。
それに、祭りが中止にもなりかねない。
そうなると、頼れる村人もいないだろう。
「でも、村人じゃない人なら協力してくれるかもしれないって思って。それに、似たような子を連れてるから詳しいかもって。」
「それで私に聞いたんだね。」
猫です。
藁をもすがる気持ちで聞いたんだね。
でも、結果は案の定だった訳だ。
「やっぱり迷惑ですよね。ごめんなさい。」
頭を下げて謝っている。
迷惑をかけたくない。
それでも誰かに頼りたい。
そんな気持ちで葛藤しているのだろう。
「分かった。私も探そう。」
「えっ?」
「一人より二人と一匹の方が良いだろう。」
にゃっ。
そうだね。
どうせする事もないし。
話も聞いちゃったしね。
「でも、あなたを巻き込むなんて。」
「いや。祭りを回るついでだよ。色々と見て回るついでに見つけたら報告する。それなら良いだろ?」
「それなら。はい。あ、ありがとうございます。」
慌てて頭を下げる。
先歩とは違い勢いが良い。
それほど嬉しいのだろう。
「お礼は見つけてからだよ。それで、その子の特徴は?」
「えーと。その子より鼻が長くて毛がふさふさです。」
俺のより?
ふさふささなら負けないよ?
「それと四足歩行ですね。後は・・・、顔の所どころに赤い模様があります。」
「赤い模様か。見れば分かりそうだな。」
「えぇ。それでも見つからないんですけどね。」
鼻が長いって、もしかして犬なのかな。
凄いいかつそうだけどね。
まぁ、分かりにくいより良いかもしれない。
「では、早速探しに行くか。」
「え、でももう遅いですよ。そこまでして貰うつもりは。」
「なに、今晩宿無しでな。寝れそうな所を探しているんだ。そのついでに探そうとな。」
「えっ、寝床が無いんですかっ!」
そうなんです。
無いんです。
って、驚くのも無理ないか。
「それでは、私の家にでもどうですか?」
「いや。しかし。」
「一緒に探してくれるお礼という事で。」
ほんとに?
野宿しなくて良い?
「でも、良いのか? 家の人とか。」
「はい。私の家って多くの人が出入りするので、一人ぐらい増えても構いませんよ。」
「そうか。なら、君の家でお世話になろう。」
やったね。
今夜も布団で寝れそうだ。
「では、ついて来てください。それと、私の名前はユリーシャです。」
「それはすまない。私はフィーでこっちがにゃんすけだ。よろしく。」
にゃん。
にゃんすけです。
よろしくです。
「はい、よろしくお願いします。では、行きましょう。」
挨拶を終えた所でユリーシャが歩きだす。
その後を、俺とフィーがついていく。
「そう言えば、フィーさん達って何してる人なんですか?」
「旅人だよ。行き先を決めずに来たらここに着いたんだ。」
「そうなんですか? だから、宿を取って無かったんですね。」
「ははっ、恥ずかしいな。まさか、こんな事になるなんて思ってなくてな。」
ほんとだよ。
こんなタイミングで来るなんてね。
運が良いのか悪いのか。
「この時期は人が一杯来るので、宿屋がすぐ一杯になりますからね。」
「祭りは初めてだから分からなかったんだ。本当に助かる。」
「ふふっ。お力になれて良かったです。」
楽しそうだね。
明るくなって何より。
「それより、にゃんすけさんってフィーさんの契約獣ですか?」
「あぁ、森で会ってな。息が合ったから、一緒に旅に出たんだ。」
そうだっけ。確か食事の為だったはず。
でも、そっちの方が格好いいからいっか。
「はぁ、良いなぁ。私もあの子と一緒にいられたら。」
「いられると良いな。」
「はい。そうなって欲しいと願っています。」
そう言って、胸に両手を当てる。
心から願っているのだろう。
「その子とは、どのような思い出が?」
「私が落ち込んでたら、舐めて励ましてくれたんです。それに、友達と会いに行く時間がない私と遊んでくれました。おいかけっことか一杯走ったなぁ。」
「そうか。良い思い出だな。」
「大事な思い出です。とても大事な。」
うん。聞いてて微笑ましいよ。
でも、どうしていなくなったんだろう。
仲が悪くなったとは思えないけど。
「あっ、見えてきました。私の家です。」
どれどれ。
って、ええっ!
「まさか、貴族だったのか?」
そう思うのも仕方ない。
目の前に現れたのは、横に大きい家だ。
一般の家を五つ繋げたであろう長さをしている。
そこでは、多くの人が忙しそうに出入りしている。
「そんなんじゃ無いですよ。ただ。」
「ただ?」
家の前にユリーシャが立つ。
そして、こちらを向く。
「私、この村の巫女なので。」
まさかの事実。
ユリーシャは、祭りで舞う巫女だったのだ。




