大蛇を倒しました
船に並走する大蛇に、フィーが飛び乗った。
まず、首を剣で斬って刺す。
さらに、刺して刺して刺す。
すると、大蛇が暴れだす。
「くっ、暴れるなっ。」
フィーは、剣に掴まりそれに耐える。
振り落とされないように必死に掴んでいる。
暴れる大蛇は、フィーを連れて水に潜る。
「嬢ちゃんっ。」
「引くのよあなた。」
「分かってらぁ。」
糸に引かれて、大蛇は潜れない。
そのまま大蛇が、勢いをつけて水面から飛び出た。
剣を抜いたフィーが、一回転して斬りつける。
水中に戻る際に、船に飛び乗る。
「もう一回っ。」
再び浮かび上がってきた大蛇に飛び乗ろうとした時だった。
炎の玉が現れて、フィーを押し返す。
当たる直前、剣で防いでいたので無事のようだ。
魔法か。
やっぱり予想は当たってたね。
「やはり、魔法を使って来たな。」
「船に当たったらやべぇな。防げるか?」
「当然だ。」
飛んでくる魔法を剣で斬っていく。
打ちもらしを、俺が蹴り飛ばす。
炎の玉が出来る度、こっちに飛んでくる。
今度は、氷のつららが降ってくる。
流石にヤバイね。
船には、一個も落とさせない。
俺は、つららへと飛ぶ。
氷のつららの横をポイントダッシュで蹴っていく。
蹴られたつららは砕けていく。
フィーが炎の玉で、俺が氷のつららだ。
「くっ、しつこいなっ。」
全くだよ。
少しは、休んで欲しいね。
相手の攻撃をさばいていく。
すると、大きな炎の玉が浮かび上がる。
「させるかっ。」
フィーが糸の上に飛び乗った。
今度は、雷が降ってくる。
それを剣で防ぐと、糸を蹴り高く飛ぶ。
「にゃんすけっ。」
にゃん。
呼ばれた俺が、フィーが構えた剣の側面に乗る。
さらに、そこからジャンプ。
向かう先は、大きな炎の玉の上。
にゃっ。
こんな物騒なもん。
返品するよっ。
下に向かって蹴りつける。
その際、接触面で爆発を起こす。
その勢いで、炎の玉が大蛇に落ちる。
「よし。流石に効いただろ。」
「おう。勢いが弱まったぜ。」
大蛇が大人しくなった。
しかしまだ、糸を引いているようだ。
フィーと俺は、船に着地。
「あれ、船が。」
「どうした? ミラン。」
「船の速度が落ちていくの。」
速度? ほんとだ。
遅くなっていく。
「一体、なにがっ。」
「おいっ。嬢ちゃん、下だ。」
「下だと?」
フィーと俺が下を覗く。
そこには、氷が浮かんでいた。
それがどんどん広がり船を囲む。
ついには、船が止まってしまった。
「やられたな。」
「あぁ、これじゃあ船を動かせねぇな。」
船は、完全に氷で固定されている。
動かすのは、まず無理だろうね。
すると、水面から影が飛び出した。
大蛇が、氷の上に乗っかった。
「来るぞっ。」
「させん。」
氷の上に降りたフィーが大蛇に迫る。
大蛇が、前へ炎の玉を飛ばす。
「はあっ。」
しかし、避けずに剣で打ち落としながら進んでいく。
今度は、上から氷のつららが振ってくる。
足が滑って左右にはかわせない。
「にゃんすけっ。」
にゃん。
代わりに俺が、蹴り飛ばしていく。
そのまま、目の前まで接近。
しかし、大蛇の口も迫るが。
「おらっ。」
ミランの父が糸を引っ張る事によって、大蛇の口が逸れる。
懐に入ったフィーが、大蛇の胴体を刺す。
剣を抜く際に、横に引っ張って首を裂く。
大蛇が、仰け反った。
「そこっ。」
胴体に足をかけジャンプして首を刺す。
さらに、下に引いて首を裂く。
すぐさま刺して横に引き裂く。
さらに刺す。
しかし、引き裂く前に大蛇が暴れて首を振り始めた。
にゃん。
させないよっ。
ぶっ倒れろっ。
俺が、大蛇の横顔を蹴り飛ばして大蛇を倒す。
体勢を立て直したフィーが引き裂く。
「おっと。」
刺したと同時に、大蛇がおきる。
フィーは、振り落とされないように、剣をしっかり掴む。
「はっ。」
大蛇の首に足を当て、体勢を整え引き裂く。
最後に一回転して、首を斬る。
「どうだっ。」
大蛇の首の斬り口から血が流れている。
大蛇が一吠えして地面に突っ伏す。
手数が増えているね。
しかも、体の動きもしなやかになってる。
後は、もう少し。
にゃん。
「分かっている。早くどどめをっ。」
駆け出したフィーが、大蛇の首に剣で斬りかかる。
しかし、剣が通らない。
「なんっ。」
何か言おうとした直後、大蛇の首から結晶が溢れてくる。
段々増えて、首を覆ってしまった。
そして、全身が結晶の色に変色していく。
「まだ、こんな力が。」
大蛇の魔法力が高まっている。
やばいっ。
大蛇を中心に吹雪が起こる。
その余波で、フィーと俺は飛ばされる。
さらに、雷も落ちる。
「無茶苦茶だ。」
ほんとにね。
天候まで操るなんて。
「しかし、行くしかあるまい。」
にゃん。
風の中、立ち上がる。
そして、大蛇に向かって駆け出す。
風に耐えながら進んでいると、前方から強力な風が吹いてきた。
再び後ろに戻される。
「くそっ。近付けない。」
風が強すぎるなんてもんじゃない。
もはや、風の壁だよ。
近づいた相手を強風で遠ざける。
しかも、大蛇の攻撃はまだ続く。
風で出来た雪の波が二人に迫ってくる。
「避けれないっ。」
無理だっ。
こんなのありなの?
「嬢ちゃんっ。」
あれに襲われたらお仕舞いだ。
覚悟して目をつぶる。
しかし、波はこない。
「嬢ちゃん無事か?」
目を開けると、マッチョの背中がそこにある。
ミランの父だ。
雪の波を受け止めたのだろう。
「なっ。大丈夫なのか?」
「聞いてるのはこっちなんだがな。心配すんな、あんなの対した事ねぇ。」
流石です。
頼りになります。
「で、どうなんだ?」
「見ての通り、近付けない。近付いた所で、この武器では通らない。」
「なるほどな。じゃあ、持ってきて良かった。」
「持ってきた?」
何を?
「おやっさん。持ってきたぜ。」
「おう、嬢ちゃんに渡しな。」
「うーす。」
後ろからマッチョがやって来た。
そこでは、マッチョ達が銛を肩に担いでいた。。
「嬢ちゃん。そいつで奴を突け。」
「私が? あなた達がした方が良いのでは?」
「俺達は壁役だ。あんたを届けるから思いっきり刺してくれ。」
マッチョの一人が、一本の銛をフィーに渡す。
フィーは、剣を捨てて銛を両手で持つ。
「良い奴を持ってきたぜ。」
マッチョが親指を立てる。
銛は重く、先が鋭い。
「行けるか?」
「あぁ。私は友の笑顔を守りたい。力を貸してくれ。」
「承知した!」
にゃっ。
俺も良いよ。
今度こそ最後だ。
「行くぜぇっ!」
「あぁ!」
にゃん!
マッチョ三人が前に出る。
フィーと俺が、後ろに続く。
「風だっ!」
「俺が行くぜ!」
一人のマッチョが前へ。
風を受け止め、後ろを守る。
吹き飛ぶマッチョを避けて前へ進む。
「次っ、波っ!」
「俺の番だっ!」
二人目のマッチョが前へ。
受け止めて、波を止める。
雪に埋まったマッチョを避けて前へ進む。
「ぐっ。最後は吹雪か。俺の後ろから離れるなよ。」
「分かっている。」
前方から、強力な吹雪が来る。
ミランの父は、それを体で受け止める。
耐えながら前へ。
「はっ。まさかこんなの事になるなんてな。」
「全くだ。だけど、悪い事ばかりじゃ無かった。」
「そうか? それを聞いて安心した。俺達のせいでって思ってたんだぜ?」
「受けたのは私だ。気にするな。」
そうだね。
全部、自分達で決めた事だからね。
「吹雪が強くなってきたな。これ以上は体力の限界だ。」
「分かった。ここから先は、私達で行こう。」
フィーと俺が、ミランの父の前に出る。
強力な吹雪。
でも、もうすぐだっ。
吹雪の奥に大蛇が見える。
平然としている辺り、あそこに吹雪はないのだろう。
「あとは、任せたぜっ。」
ミランの父が後ろに吹き飛んだ。
これで残るは、二人だけ。
前に進むと、風が無い場所に出る。
「こいつの周りには風が無いのか。」
台風の目。
見たいなもんだね。
大蛇がこっちを睨む。
それに対して、フィーが銛を構える。
地面は、雪がつもり過ぎて滑らなくなっている。
「終わらせよう。」
にゃん。
返事と共に俺が駆け出す。
まずは、一撃。
口が迫るが下を潜る。
大蛇に向かって、ドロップキック。
びくともしない。
「ならば、これでどうだっ。」
横から隙を見て、胴体に突き刺す。
びくともしない。
「もう一度っ。」
にゃん。
胴体、首にポイントダッシュ。
首を蹴り飛ばす。
続いたフィーが、胴体を刺す。
びくともしない。
「まだまだっ。」
もう一度、銛を刺す。
すると、ひびが入る。
「なるほどなっ。コツを掴んできた。」
慣れてきたね。
任せたよ。
顔を戻した大蛇が、フィーに迫る。
それをかわして、横顔を刺す。
さらに、ひびが入る。
結晶のひびが顔全体に広がる。
「よっと。」
また来る大蛇の口を、槍で逸らして反対の横顔に刺す。
さらに、押し込んで結晶の膜を砕く。
無理だと分かった大蛇が炎の玉を投げてくる。
させないっ。
それを、俺が撃ち落とす。
相殺した炎の下を、フィーが潜る。
「魔法は任せたぞ。」
にゃん。
フィーが、大蛇に迫る。
すると、フィーに尻尾が迫る。
にゃん。
「おっと、させないよっと。」
俺が教えると、フィーが気付く。
槍を斜めに構えたフィーが、尻尾を上に弾く。
そんなフィーに迫る炎の玉を、俺が撃ち落とす。
にゃん。
おっと、魔法は通さないよ。
絶対にね。
「合わせろ、にゃんすけ。」
尻尾に乗ったフィーを越えて俺が飛ぶ。
狙いは、大蛇の下の氷だ。
にゃっ。
大蛇の首、地面にポイントダッシュ。
かかと落としで氷を砕く。
それと同時にフィーが跳ぶ。
「これでっ。」
地面が割れて大蛇が落ちる。
沈んでまた浮かぶ。
それにより、フィーの目の前に大蛇の頭が来る。
やっちまえっ!
「おわりだっ!」
結晶は、さっきの突きで脆くなっている。
その結晶を砕いて、銛が刺さる。
「どうだっ。」
大蛇は、動かない。しばらくの硬直。
すると、大蛇の全身が力なく浮かんできた。
そして、辺りの吹雪が止む。