大蛇と戦いました
大蛇だ。
間違いなく、自分が知っている蛇だ。
しかも、大きい。
「もう中身は出来上がっていたのか。」
悔しそうだね。
なにせ、今までの事が無駄だった訳だから。
大蛇を見ていると、魔法使いのゴブリンが前に出た。
大蛇の目に前へと歩いていく。
「素晴らしいお姿です。大蛇様のお誕生、心からお待ちしておりました。」
魔法使いのゴブリンは、大蛇へと頭を下げる。
大蛇は、その姿を見ている。
「さぁ、我々と共に国を作りましょう。そして、人間共に・・・。大蛇様?」
大蛇は、全く動かない。
ただひたすら、魔法使いのゴブリンを見ている。
どうしたんだろ。
なにか、あったのかな?
「大蛇様。なにか、返事を。」
両手を上げて、言葉を待っている。
すると、大蛇が動き出した。
魔法使いのゴブリンに向かって口を開く。
「何を、大蛇様っ。」
飛んでかわしたが、大蛇が追いかける。
そして、下半身をくわえた。
「なぜですか。私は、あなたに力を頂いた者です。」
暴れている。
しかし、逃げる事が出来ない。
「もしかして、力を貰ったのではなく奪った?」
「そんなわけ無いっ。私が卵に触れた瞬間、不思議な力が流れ込んだ。間違いなく頂いた物だっ。」
そんな事を言われても。
どっからどう見ても、力を取り返そうとしているようにしか見えないんだけど。
段々、魔法使いのゴブリンの体が沈んでいく。
抵抗しているようだけど、無理そうだ。
「たっ、助けっ。助けて下さいっ。」
そして、とうとう飲み込まれた。
大蛇の喉がふくれて、下へ流れる。
これで、最後の一匹がいなくなった。
完全に飲み込まれちゃった。
もう助からないよね。
「哀れなものだ。勘違いとはいえ、守ってきた物に命を奪われるとはな。」
そうだね。
しかも、とんだ置き土産を残していきやがって。
今度は、大蛇がこっちを見る。
お互いの目が合った。
「さて、敵か味方か。」
考えるまでもないけどね。
もし味方なら、なんて思っちゃうけど。
「来るっ。」
期待を裏切るようにこっちに来る。
大きく開いた口が迫る。
ですよねっ。
全く容赦なし。
「避けろっ。」
にゃん。
大蛇の口を左右に別れてかわす。
そして、俺の方へ追いかけてきた。
爆発を蹴って、追撃をかわす。
やっぱり。
どうせそうだろうと思ったよ。
「にゃんすけ。無事か?」
にゃん。
危なかったけどね。
さっきのを見てなかったら、かわせなかったかも。
振り向いた大蛇が、またこっちを見る。
そして、再び迫ってくる。
「かわすのは厳しいな。にゃんすけ、一か八か攻めるぞっ。」
にゃん。
あいさー。
って、効くのかなっと。
ジャンプした俺が、大蛇に突っ込む。
それに対して、大蛇が口を開く。
食べられる前に、爆発を蹴って下へかわす。
にゃん。
地面を蹴って、再びジャンプ。
ポイントダッシュで、蛇の首へ飛ぶ。
そして、目の前の首を蹴りあげる。
大蛇の首が上を向いた。
「いいぞ。にゃんすけ。」
顔が上を向いた事で晒された胴体に、フィーが斧を振り下ろす。
しかし、刺さりはしたが振り下ろせない。
「固い。いや、ただ分厚いのか。」
蹴りも重かったし、そうなんだと思う。
こいつの体、物凄い肉厚だね。
顔を下ろした大蛇が、そのまま地面に叩きつける。
それを、かわした俺達についばむように噛み付いてくる。
さらに避けるが、尻尾が迫る。
「かわせないっ。」
俺も無理。
ぶつかるっ。
どうする事も出来ずに直撃した。
そのまま、入り口まで吹っ飛んでしまう。
すぐさま立ち上がって、体勢を直す。
「にゃんすけ、受け取れっ。」
声のする方を見ると、フィーが剣を投げ込んだ。
その剣は、俺の近くに落ちる。
なるほどっ。
これを使えとっ。
にゃっ。
爆発を蹴って、迫る剣に飛び掛かる。
剣をくわえて、さらに爆発を蹴る。
相手の口を飛び越えて、目に剣を刺す。
にゃっ。
まだまだっ。
剣を押し込むように蹴ってジャンプ。
入り口の上と横にポイントダッシュ。
最後に、大蛇の横顔へドロップキック。
にゃあっ。
食らえっ。
今度こそ押し込む。
大蛇を入り口の横の柱に叩きつけた。
「よしっ。」
効いただろっ。
俺が、大蛇から飛び降りる。
その直後、大蛇が暴れだした。
入り口を破壊してその下敷きに。
「今のうちだっ。」
フィーが、大蛇に飛び乗った。
剣を引き抜いて横顔を斬る。
さらに、一回転して斬る。
そこから、縦に斜めに斬っていく。
「顔の肉は、大したこと無いようだな。」
実際、胴体の時とは違い傷がついていく。
斬る度に、その傷が増えていく。
「はあっ。」
最後に頭を突き刺した。
骨に当たるが押し込んでいく。
その時、足元が揺れ始めた。
「これ以上は無理か。」
諦めたフィーが、飛び降りる。
その直後、大蛇の首が引っ込んだ。
無事抜け出せたようだ。
「どう来る?」
さぁて。
何してるんだろうね。
二人で神殿の様子を伺う。
すると、神殿にひびが入り広がっていく。
激しい音と共に、大蛇が神殿を突き破って出てきた。
ゴブリンが、苦労して作った神殿がっ。
どれぐらい苦労したか知んないけど。
「まさか壊されてしまうとは。つくづく不運な奴だ。」
もはや、ゴブリンからの信仰すら踏みにじる行為だ。
どこまで行っても、力を奪われただけの相手なのだろう。
「おいあれ見ろよっ。」
「大蛇が復活したんだわ。」
「無理だったのか。」
「もう終わりなのか?」
後ろの戦場から、悲しみに満ちた声が聞こえる。
村人達も、大蛇の存在を認知したようだ。
「なに言ってんだ。まだ、戦ってんだろうが。」
「そうだ。まだ、諦めてねぇぞ。あいつら。」
俺とフィーの存在にも気付いたようだ。
マッチョ達は、二人を信頼しているようだ。
好き勝手言ってるね。
で、どうする?
「参ったな。そこまで言われるとやるしかないよな。」
にゃん。
大蛇に向かって走り出す。
瓦礫を飛び越え、崩れた神殿内へ。
大蛇と睨み合う。
そして、大蛇が動いた瞬間だった。
「しまった、地面がっ。」
にゃ。
ぬわーーーっ!
地面がっ。
地面が崩れて落っこちる。
どうやら、大蛇の重さで崩れてしまったようだ。
そのまま落ちて、下のフロアに叩きつけられてしまう。
「くそっ。低くて助かったが。」
ほんとだね。
下まで落ちてたら死んでたよ。
そう言って、辺りを見渡す。
そこには、ただの広い空間があった。
その真ん中で、共に落ちた大蛇が起き上がる。
「思ったより平気そうだな。」
俺達が平気だったからね。
大蛇ぐらいなら問題はないでしょ。
人が落ちて無事な穴で、大蛇が倒れるとは思えない。
実際に、勢いよくこちらに突っ込んできた。
「くそっ。」
フィーが咄嗟に斧で防ぐ。
しかし、飛ばされてしまう。
体の大きさの違いに耐えられないのだ。
「ぐっ、どうしたものかな。」
全くだよ。
何かないの?
俺が広間を見渡す。
すると、広間の端に階段があるのが見えた。
恐らく、下のフロアに繋がっているのだろう。
にゃっ!
あそこ!
階段だよっ。
「ん? 階段か。ここにいてもあれだからな降りよう。」
俺の声で階段を見つけたフィーが駆け出した。
すると、そこに大蛇が迫る。
「邪魔っ、するなっ。」
フィーが斧で受け流す。
それで少し体勢が崩れたが、直ぐに持ち直して階段に向かう。
それでもまた、大蛇が迫る。
「急げっ!」
にゃ。
追いつかれちゃうっ。
大蛇に追いつかれる直前に、階段へと飛び降りた。
そして、大蛇は階段に衝突して弾かれる。
「間に合ったか。このまま降りよう。どうせ来るだろうからな。」
通路が狭いので大蛇は追って来ない。
しかし、それで獲物を逃すような相手ではない。
階段を降りていると、横の通路を突き破って大蛇が現れる。
「ほらなっ!」
にゃっ。
しつこいよっ。
その前で静止して、大蛇を見る。
すると、こちらに向かって突っ込んでくる。
「来いっ!」
突っ込んでくる大蛇をフィーが斧で受け止める。
相手の体勢は悪い。
なので、なんなく防ぐことが出来た。
「どうしたっ、勢いがっ、無いぞっ!」
フィーが大蛇の顔を払いのける。
そして、斧を振るって大蛇の顔を横の壁にぶつける。
すると、大蛇が穴に引っ込んでいく。
「これで終われば良いんだがなっ。」
にゃ。
無理でしょ。
完全にこっちを狙ってるよ。
壁の向こうで物音がする。
もう一度、こっちを狙っているようだ。
「足場が悪いな。急いで降りよう。」
そうだね。
階段での戦いは、足場が悪いのでこちらが不利だ。
なので、急いで階段を駆け降りる。
すると、再び大蛇が現れた。
「下を抜けるぞ!」
にゃん。
了解。
相手との距離は近い。
なので、今度は大蛇の下を潜り抜けた。
すると、大蛇はまた穴へと戻る。
「また来る、このまま走り抜けるぞ! 」
にゃん。
分かった。
無視だ無視っ!
再び現れるも、そのまま走ってやり過ごす。
すると、下のフロアへとたどり着く。
しかし、相手はまだ追ってきている。
「しつこいな、ここで迎え撃とう。」
にゃ。
了解。
来るなら来い!
このフロアは、とても狭い。
相手は自由に動けないと考えての事だ。
少しだけ走ってから立ち止まる。
すると、大蛇が壁を突き抜けて現れた。
「先手は貰うぞ!」
飛び出た直後の顔に、フィーが斧を叩きつける。
壁の向こうの音で、大蛇が来る方を予測していたのだ。
「もう一撃だ!」
さらに、晒された首へと斧を叩きつける。
すると、俺が壁を蹴って威力を上げる。
「にゃんすけ!」
にゃん。
分かってるよっ。
くらえっ!
大蛇の頭に向かってポイントダッシュ。
それが、大蛇の脳天に直撃する。
すると、地面が割れて落っこちる。
「合わせろっ!」
にゃん!
ポイントダッシュエアで再び加速。
そして、フィーもまた斧を振り上げる。
「くらえっ!」
にゃ!
くらえっ!
落ち行くなかで、大蛇の顔へと叩き込む。
そして、そのまま地面に叩きつける。
しかし、大蛇が首を振って俺達を飛ばす。
「くっ。しかし、だいぶ効いただろ。」
にゃん。
効いたと思うけどね。
でも、まだ向こうはやる気だよ。
大蛇がこちらを見ると、突っ込んでくる。
まだまだ相手は動けるようだ。
「ならばっ!」
斧を横に構えたフィーが、大蛇の突っ込みを逸らす。
そのまま一回転すると、大蛇の首に向かって振り下ろす。
大蛇がそれを払うが、その勢いで一回転したフィーが再び振り下ろす。
「今だ! にゃんすけ!」
にゃっ。
ポイントダッシュで、俺は大蛇の上に回り込んでいたのだ。
そのまま、斧を振り払った大蛇の頭上へと蹴りを叩き込む。
すると、再び地面が割れて落っこちる。
「もう一度だ。合わせろっ!」
にゃん!
合わせるよ!
先程と同じ行程をして、大蛇へと叩き込む。
そして、先程のように大蛇を地面に叩きつける。
「よし、これならっ。」
大蛇へのダメージは相当だろう。
しかし、その衝撃で斧が割れてしまう。
「しまった。」
斧から解放された大蛇は、直ぐに俺とフィーへと顔をぶつける。
それにより、体を掬われた俺達は後ろへと吹っ飛んだ。
そこに、大蛇が突っ込んでくるが。
ずどーーーん。
大蛇の上に瓦礫が落っこちる。
間一髪の所で救われたのだ。
「神殿が崩れている?」
みたいだね。
ここも危ないかも。
大蛇が暴れたせいで、神殿が崩れているのだ。
神殿の瓦礫があちこちに落ちてきている。
「早いとこ私達も逃げた方が良さそうだが。」
フィーが自身が握る割れた斧の持ち手を見る。
早く大蛇を倒そうにも、武器がないのだ。
他には無いかと探すと、大蛇の目に視線がいく。
「上で刺したのがあったな。あれしかないか。」
上での戦いで、大蛇の頭に突き刺した剣だ。
どうやらまだ残っていたらしい。
しかし、取るのはそう容易くない。
「にゃんすけ、誘導を頼む。」
にゃん。
任せてよ。
ジャンプして相手の前に。
迫り来る口を、爆発を蹴ってかわす。
その間に、フィーが飛び乗った
「返して貰うぞ!」
乗ったと同時に剣を抜く。
そして、降りる際に一回転して首を斬る。
その一撃は、斧で開いた傷を裂く。
「よし、攻撃が通ったぞ!」
斧で叩いた箇所は、剣が通るようだ。
しかし、喜んでいる場合ではない。
飛び降りたフィーに大蛇が迫る。
「無駄だっ。」
口を潜り抜けて胴を蹴る。
そのまま飛んで、蛇の首に剣を刺す。
さらに、そこから剣を引っ張り体を反転させる。
「よっと。」
逆になったフィーが、首に足をかけて踏ん張る。
そして、首を裂くように剣を抜く。
「そこっ。」
落ちる際に、首を蹴って一回転。
首を斬って離脱する。
着地と同時に、大蛇から離れる。
その大蛇は、首を振ってもがいている。
「にゃんすけっ。」
フィーが振り返って、長包丁の鞘を抜いた。
端を持ってスイングの構えを取る。
「あれ、行くぞっ。」
にゃん。
あれだね。
初めて決めたあの大技。
俺は、鞘に向かって飛び降りる。
先に着地して準備完了。
「行くぞっ。」
にゃん。
いつでもどうぞ。
遠慮はいらないよ。
「行けっ。」
にゃにゃっ。
フィーが鞘をフルスイング。
その勢いで俺が飛ぶ。
体勢を変えて、キックの構え。
線を描いて、大蛇の首へ衝突する。
にゃにゃにゃにゃっ。
耐える大蛇。
しかしそれは、一瞬の事。
受けた大蛇が吹き飛んだ。
勢いに押され、奥に倒れる。
もちろん俺は、華麗に着地。
「どうだっ。」
大蛇の首からは、血が吹き出している。
全く動かない。
「死んだか。」
フィーが剣を下ろした。
次の瞬間、大蛇が起き上がった。
「まだ生きてたか。なら同じ事をするまでだ。」
にゃん。
その通り。
いくらでもぶちこんでやる。
もう一度跳ぼうと、足に力を入れる。
すると、大蛇が背中を向けて走り出した。
胴体をくねらせ、神殿の奥へ行く。
「どこに行くっ。」
もしかして、逃げるつもり?
でも行き止まりだよ。
間の前には、崩れず残った壁。
それでも構わずと、大蛇は直進。
そこを破壊して、外へ出る。
「私達も行くぞっ。」
にゃっ。
俺達も大蛇の後を追いかける。
すると、そこには海が広がっていた。
どうやら、底まで落ちてきていたらしい。
「見つけた。」
その先で、大蛇が海へと向かっていた。
それを追いかけるがもう遅い。
そのまま、大蛇は海に飛び込んだ。
「くそっ、待てっ!」
俺達も地面につくが、それ以上は行けない。
大蛇の背中を見送る事しか出来ない。
「駄目だったか。」
海に逃げられたんじゃね。
追い付くどころか、追う事すら出来ないからね。
二人して、海を見ながら立ち尽くす。
すると、どこからか声が聞こえてきた。
「おーい。お前達じゃないか。」
何処かで聞いた声。
もしかして。
声のする方を見てみると、一隻の船が近付いて来ている。
あれは、エプロンマッチョ!
船が目の前に来た。
その上から、エプロンマッチョが顔を覗かせた。
「よう。元気そうで何よりだ。」
他にも何人か乗っているようだ。
エプロンマッチョが、俺達に向かってにかっと笑った。