表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
大蛇祭る隠れ村 フラリア王国編
23/287

フィーの才能

 フィーが、槍を左に引く。

 それによって、目の前に現れた相手の腕を掴む。

 その腕を右に引っ張り、肩に槍を刺す。


「ぐぁっ。」

「お前の武器貰うぞ。」


 力が緩んだ所で、相手の手首を捻って武器を奪う。

 とっさに振ってきた相手の剣を、奪った剣で弾く。

 蹴飛ばして距離を取る。

 

「くそっ、返せっ。」

「断る。」

「ならば奪い取るまでっ。」


 剣使いのゴブリンが、剣で斬りかかってきた。

 それをフィーが防ぐ。


「このっ、このっ。」


 何度も来る剣をさばいていく。

 手数が増えるが、フィーは手の動きだけで逸らしていく。


「余裕ぶってんじゃ、ねぇっ。」


 今度は、剣を突いてきた。

 それを待っていたのかフィーが動いた。


「そこっ。」

「何っ。」


 相手の剣をすくって、跳ね上げた。

 そして、相手の空いた方の横に出て一回転。

 その際、横のお腹を切り裂いた。

 

「何、が。」


 剣使いのゴブリンは、気付くことなく絶命。

 お腹の横から血を噴きながら倒れる。

 フィーは、剣を振り上げたポーズで止まっている。


「あっ、父さん母さんっ!」

「危ない。」


 気付けば、双子の親の後ろにゴブリンが迫っていた。

 後ろを向いた二人にこん棒が迫る。


「うわっ。」

「きゃっ。」


 次の瞬間、二人の前に出たフィーが一回転。

 ゴブリンを切り裂いた。

 双子が叫んだ時に、フィーが駆け出していたのだ。


「た、助かった。」

「二人はあの子達を。」

「えぇ、助かりました。」


 二人がフィーに向けて頭を下げた。

 フィーは、そっちを見ずに戦場を見ながら返事をする。


「いや、こっちこそだ。」


 そう言って、フィーが駆け出した。

 次々とゴブリンを斬っていく。


「まさか、あれほどまでの剣の才能を隠していたとは。」


 いや、違うね。

 彼女が与えられた才能は芸術に関する物。

 剣の才能にしては無駄が多いし。

 ならあれは。


 実際にフィーの動きは、回ったりステップを踏んだりしている。

 斬るときは、手首を回したりと必要のない動きが多い。

 まるで、戦いではなく戦場を舞っているように。


 そんな事より。ね?


「はっ。」


 魔法剣士のゴブリンの肩に手を置いた。

 それで、相手が固まった。


 もう動いて良いよね?

 じゃあ、遠慮なく。


「しまったっ。」


 振り向こうとするが、もう遅い。

 隙だらけの背中を蹴り飛ばす。

 剣を手放し、吹っ飛んだ。


「くそっ。」


 ジャンプした俺に、炎の玉を投げてくる。

 それを、ポイントダッシュエアでかわしていく。


 返品っ、するよっ!


 こっちも炎の玉を作って、相手に投げる。

 直撃して爆発。


「あつつつっ。」


 熱いで済むかなっ。

 

 着地して蹴り上げる。

 こっちも飛んで相手の頭上へ。


 ポイントダッシュメテオ。

 のミニぐらいっ。


 魔法剣士ゴブリンを巻き込んで、群れに突っ込む。

 地面についてもさらに進む。

 そして、沢山のゴブリンを吹き飛ばしながら進んでいく。


「来たか。にゃんすけ。」


 にゃん。


 フィーの隣で止まった。

 気を失ったゴブリンから降りてフィーと並び立つ。


「行くぞっ。」


にゃん。


 フィーが、ステップで急接近して突く。

 そのまま蹴飛ばして、空間を作る。

 その中に入って一回転。

 

 俺は、蹴って吹き飛ばす。

 他のゴブリンを巻き込みながら倒れた所に炎の玉をぶつける。

 さらに、爆発もプレゼント。


 フィーにこん棒が迫る。

 それを、逸らして首を斬る。

 その振りの勢いで、一回転。

 奧のゴブリンを斬る。


 だんだん分かってきた。

 フィーの動きは、剣の才能によるものではない。

 だけど、間違いなく剣に関する才能の動き。

 そう、彼女の持つ才能は。


【剣舞】


 ・・・なんだ。

 ちゃんと貰ってたんじゃないか。

 フィーだけの才能を。


 フィーにオークが迫る。

 こん棒をかわして、腕を蹴り、胸に向かって飛ぶ。

 その胸を、縦に一回転して斬りつける。

 着地と同時に、横に一回転して首を斬り裂いた。


 今までは、合わない剣で才能が発揮出来なかったんだろうね。

 たぶんポンコツも、才能が暴発したからかも。

 いや、それはないか。


「よぉ嬢ちゃん。順調じゃねぇか。」

「あなた達ほどでは無いがな。」


 気付けばマッチョ達のいるところまで進んでいたようだ。

 マッチョが開けた空間に飛び込んでフィーが一回転して斬る。


「がっはっはっ。そのわりには楽しそうじゃねぇか。見てるこっちも盛り上がってくらぁ。」

「それは何よりだ。」


 彼女の才能は、芸術だからね。

 見ている周りにも影響を与えるんだね。

 自分もさっきから盛り上がってるよ。


「おらっ。」

「はっ。」


にゃん。


 マッチョが飛ばしたゴブリンの群れをフィーが斬る。

 そこに俺が炎を飛ばす。

 ゴブリンの群れは、さらに減っていく。

 

 あと、四割位かな。

 だいぶ減ったね。

 まぁ、逃げたのも結構いるけど。


 次の瞬間、地響きが。

 出所は山だ。

 どんどん盛り上がっていく。


「嬢ちゃんとにゃんすけだっけか。行きなっ。」

「あぁ、行くぞっ。にゃんすけ。と、その前に。」

「え?」


 フィーは、双子の家族を見る。

 すると、不思議そうにフィーを見返す。


「もう手を離すなよ?」

「「はい!」」

「よし、行くぞ!」


にゃー!


 行こー!


 ここは、任せてしまっても良いだろう。

 進んだ道を、また戻っていく。

 その際、前に割り込んだゴブリンを、斬ったり蹴ったりとどかしていく。


「急ぐぞ。」


 村に入ると、そのまま直線。

 一気に山の前まで走っていく。

 山が盛り上がると、土が崩れていく。


「山がっ。どうなっている。」


 山の入り口に到着。

 それと同時に、土が完全に落ちきった。

 その全貌が明らかになる。


 まさかこれって。


「山全体が、神殿だったのか。」


 その部分だけ、山が切り取られたような空間が空いている。

 そこに、神殿がドンと立っている。

 目の前には、卵がある場所に向かって階段が延びている。


 まさかの事実。

 自分達が訪れたのは、神殿の先っぽだったと言う訳だね。

 

「その通り。よくぞここまで荒らしてくれやがったな。しかも、仲間も全滅してやがる。」


 最後の被り物のゴブリンが現れた。

 しかし、肩で息をしている。


「どうした? 随分と辛そうだな。」

「誰のせいだとっ。神殿に駆け付けた時は、真っ二つに割れてたんだぞっ。」


 わざわざ作り直した訳か。

 ご苦労さんだね。

 謝るつもりは無いけど。


「おっと。他の場所も、頂上と同じ強度の結界を張ってるから壊そうと思わん事だ。」


 神殿にも、結界が張ってあるんだね。

 しかも、山の結界の分を回した訳か。


「それだけでは無い。見よっ。そして、拝め。これが本当の神殿だっ。」

 

 神殿の側面が剥がれていく。

 そして、光が漏れていく。

 全て剥がれて現れたのは、全体が金ぴかの神殿。


 金! お金!

 眩しいっ。

 取り合えず拝んどこう。


「にゃんすけ。何で、拝んでるんだ。」


 だって、お金だよ?

 欠片一個で、旅の資金が手に入るんだよ?

 だからそんな呆れた目で見ないで。


「どうやらちびすけは、この良さが分かるようだな。」


 猫です。

 分かるので一部下さい。


「神殿が固くなった所でどうしたっ。こっちは卵さえ割れれば良いんだ。行くぞっ。」


 フィーが階段を駆け上がっていく。

 俺もその後をついていく。


「させると思うかっ。ゴブリンよっ。」


 神殿の柱の影から、ゴブリンが八匹飛び出して来た。

 フィーが、そのうちの一匹に斬りかかる。


「ただのゴブリンだ。」

「どうかなっ。」


 ゴブリンがフィーの攻撃を防いだ。

 そのフィーに、左右から二匹が斬りかかる。

 後ろに下がってかわす。


「こいつらは、私の魔法で強化されたゴブリンだ。全ての能力が上がっている。ただのゴブリンだと思うと痛い目にあうぞっ。行けっ。潰してしまえっ。」


ふぎゃあっ。


 被り物のゴブリンの命令で、ゴブリン達が来る。

 それに対して、フィーが前に出た。


「いや、ただのゴブリンだ。」


 一匹をかわして後ろから斬る。

 次のゴブリンのこん棒を逸らして斬る。

 次のゴブリンのこん棒も逸らして斬る。


 確かに他のゴブリンより早い。

 攻撃力もあるんだろう。

 でも、受けなければ問題ない。

 それに、手首を生かしたフィーの攻撃は通るようだ。


「何をしているっ。まとめてかかれっ。」 


 今度は三匹。

 真ん中が先頭に出て来たが。


にゃん。


 俺が押し込んで奥へ。

 それにより空間が出きる。

 中に入ったフィーが一回転。

 三匹まとめて切り裂いた。


「なんだっ、こいつ。さっきと全然っ。早く、やってしまえっ」


 残り二匹が来た。

 同じようにこん棒を逸らすが。


ふぎゃっ。


 フィーの攻撃を下がって回避。

 にやりと笑って、もう一度こん棒を振り下ろす。


「ふっ。」


 剣をこん棒の根元に当て、跳ね上げる。

 そして、首を突き刺す。

 

ふぎゃあっ。


 そんな隙だらけのフィーに、最後の一匹が迫る。

 ゴブリンがこん棒を振り下ろすが。


「はあっ。」

 

 一回転してこん棒の横を蹴って逸らす。

 そのまま、足で抑え動きを奪う。

 そして、抜きとった勢いのまま剣を振り、目の前のゴブリンの首をはね飛ばす。


「なんだ、お主。一体何が。」

「覚悟っ。」


 被り物のゴブリンにフィーが迫る。

 炎の玉を投げて来るが、俺の炎の玉で撃ち落とす。


「くそっ。」

「はあっ。」


 被り物のゴブリンに剣が迫る、その時だった。


うがぁーーーっ。


 強力な雄叫びが辺りに響き渡る。

 声の主を探していると、それが降ってきた。


「お前はっ。」

「そうか、まだお前がっ。」


 フィーの前に着地した存在。

 それはかつて、フィーとにゃんすけを苦しめた存在。

 そう、初めて戦った、あの斧使いの被り物のゴブリン。


 こいつっ。 

 なんて時にっ。

 

 目を血走らせ、口から涎を垂らしている。

 そして、だらんと下げた斧を上に挙げて、もう一度雄叫びを上げた。

 焦点が合っていない目がフィーとにゃんすけを捉える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ