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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
大蛇祭る隠れ村 フラリア王国編
21/287

村人達の戦いです

 霧に包まれた空間の空に、二匹の被り物をしたゴブリンが現れた。

 先程まで、神殿の上にいたゴブリンだ。

 ワープの魔法でここまで飛んできたようだ。


「来てるな。間に合ってよかった。」

「えぇ、その通りです。まったく、余計な時間を取ってしまいましたねぇ。」

「まぁ良い。今は、目の前の駒共を迎え入れようではないか。」


 二匹のゴブリンがいる所に沢山のゴブリンが歩いてくる。

 四方八方、見渡す限りのゴブリンの群れ。

 中には、オークも数匹いる。

 しかし、一部の場所からは来ていない。


「おかしい。なぜあの場所から来ていないんだ。」

「あそこの場所は、海があるので迂回しないと行けないのです。恐らく、そのせいなのかも知れないでしょう。」

「ふむ、ならば仕方あるまい。今は、こやつらの歓迎といこうか。」


 ゴブリンの群れの前まで近付いていく。

 前に出た被り物のゴブリンが手を開くと霧が晴れていく。

 気付いたゴブリンの群れがそちらを見る。


「諸君、我らの声に従い集まってくれた事に感謝する。我らの目的は一つ。我らで大国を作る事。人間共から領土を奪い、国を大きくする。その為に、皆の力を貸して欲しい。」


 ゴブリンの群れは首を傾げて話を聞いている。

 まだ、言っている事が分からないのだろう。


「困惑するのも仕方あるまい。要するに、忌々しい人間共に復讐するという事だ。巣を奪われたり、仲間を殺されたりした者もいるだろう。今度はこっちの番だ。今まで受けた仕打ちをそっくりそのまま返してやろう。」


 ゴブリンの群れから歓声が上がる。

 その声は、段々広まっていく。


「あの山を見よ。あそこにある神殿には我々を導いてくれる大蛇様が眠っておられる。」


 ゴブリンの群れが山を見る。

 霧が晴れたことにより、ゴブリンの群れにも見えるようになったのだ。


「さぁ、我らと共に戦おうぞっ。」


 歓声を受けながら、手に持った杖を掲げる。

 次の瞬間、神殿の方から土の柱が空へと上がった。


「えっ?」

「えっ?」


 被り物のゴブリン二匹が振り返った。

 神殿から上がる土の柱が、その目に映る。


「し、しんでーーーーーーーーーーんっ!?」

「し、しんでーーーーーーーーーーんっ!?」


 驚愕のあまり、目を開いて叫んでしまう。

 演出だと思ったのか、ゴブリンの群れは更に盛り上がる。


「い、い、い、一体何がっ。」

「まさか、あの人間と獣が? まさか、どうやって。」


 土の柱が収まると、山の土が崩れその場所に吸い込まれていく。

 被り物のゴブリン二人は、見ている事しか出来ない。


「ど、ど、ど、どうしましょう。」

「慌てるな、我々にはこの軍勢がいる。こいつらに襲わせている間に、神殿を引っ張り上げる。指揮は任せたぞ。」

「は、はいっ。」


 被り物のゴブリンの一人が消えた。

 もう一人の被り物のゴブリンが、ゴブリンの群れに指示を出す。


「我は、お前達を率いる役目を与えられた者だ。まずは、目の前の村から奪う。人間は、大蛇に捧げる為、殺さず生かせ。」


 ゴブリンの群れが、武器を掲げて声を上げた。

 被り物のゴブリンが、それを見て指示を出す。


「さぁ。奪いつくせっ。」

 

 ゴブリンの群れが村に向かって走り出した。

 すると、村の門が閉まった。

 中には、武器を持った村人達が。


「来るんじゃねぇっ。」

「そうよ。ここは私達の村よ。」

「来るなら殺すっ。とっとと消えなっ。」


 村人達は、迎え撃つつもりだ。

 それに、被り物のゴブリンが怒る


「ふざけんなっ。貴様ら、そんなに大蛇に食われたいかっ。」


 いつもの脅し文句。

 でも、村人達はいつもと違う。


「あぁ、そうだ。どうせ食われるんなら、皆で一緒に死のうってな。」

「村を守る。それが無理でも最後まで戦う。」

「我々は、この村と共に死ぬっ。」


 決意は固い。

 これだけの軍勢を見ても引くつもりはない。


「ふっ。無駄な事を。オーク、門を破壊しろっ。」


ぐぉーーっ。


 オークが門の前に立つ。

 棍棒を構えて振り下ろした。

 門は、あっという間にバラバラに破壊されてしまう。


「いけぇーーーっ。」


ふぎゃーーーっ。


 ゴブリンの群れが、村になだれ込む。

 すると、左右から大量の油が巻かれた。

 村の入り口は油まみれになり、ゴブリン達を転ばせる。


「ざまぁねぇな。」

「おらっ、くたばりなっ。」


 油をまいた村人は、炎を撒いて立ち去る。

 油に落ちた炎が燃え上がり、滑り込んだゴブリンを焼いていく。


「おらっ。油と樹を持ってこいっ。」

「おぅ。村中から集めたのがあんぜ。持っていきなっ。」


 どんどん油や樹を継ぎ足していく。

 止まれないゴブリンが炎の中に入っていく。

 止まろうとするのもいるが、後ろから押され炎の中へ。

 被り物のゴブリンが、さらに怒る。


「ひきょうなっ。」

「はん。誰も真正面からやり合うなんて言ってねぇぞ。」

「ばーか。ちょっとは頭を使いなっ。」

「くそっ。俺も魔法が使えたらっ。」


 オークもゴブリンも、炎の前で立ち尽くしてしまう。

 しかし、いつまでも燃えているわけではない。


「馬鹿はそっちだっ。わざわざ、入り口を広げおって。行けっ、行けーっ。」


 炎が消えると、改めてゴブリンが来る。

 村人達は、武器を構える。


「見えづらかったからなっ。ここからが、本番だっ。お前達、死ぬ準備は出来たかっ。」

「当然出来たさ。最後に良い思いをしたからなっ。」

「あぁ、あの団子で俺達はまた一つになれた。これ以上望む物があるかっ。」


 迎え来るゴブリンの群れに村人達が立ち向かう。

 ゴブリンの群れが村に入った瞬間、沢山のフルーツが降り注いだ。

 先頭が転んだ事により、前進が止まる。


「馬鹿言ってんじゃねぇよ。勝つんだろ。」

「あんたらっ、大蛇に食われたんじゃ。」

「まだ、卵。らしいぜ。それに騙されて、まんまと奴隷として扱われてたんだ。」


 現れたのは、山に連れていかれた村人達。

 フルーツを持って、ゴブリンに投げていく。


「それ、本当なのか?」

「さぁな。でも、獣を連れたねぇちゃんが教えてくれた。」

「獣? まさか、使いの人か。じゃあ、さっきの山の柱は。」

「多分な。破壊するっつって、行きやがったから。」

「そうか。」

「って、言ってる場合じゃねぇっ。来るぞっ。」


 立ち上がったゴブリンが駆け出した。

 今度こそ、村人とぶつかる。

 目の前のゴブリンを村人達が斬っていく。


「数が多かろうが、しょせんゴブリン。」

「押せっ、囲まれる前にやれっ。」


 ゴブリン達が減っていく。

 すると、ゴブリンの一部が逃げて向かってくるゴブリンと衝突。

 ゴブリンの群れが大混乱におちいる。

 被り物のゴブリンが叫んだ。


「くそっ。オーク、やれっ。」


 オークが村人の前に現れる。

 棍棒を振り上げるが。


 チッチッチッ、ちゅどーーん、と村の空が爆発した。

 その爆発から、オークまで一直線の線が向かう。


「なんだっ。」


 村人の誰かが叫んだ。


にゃっ。


 猫です。

 村人達に手出しはさせんっ。


 ポイントダッシュエアで飛んだ俺が、オークに急接近する。

 そのまま、オークの顔をドロップキック。


「あとは、任せろっ。」


 倒れるオークをかけ上がったフィーが、剣をゴブリンの首に突き刺した。

 そのまま、斬り払ってオークを倒す。


「お前達はっ。」


 被り物のゴブリンが驚いている。

 急に現れたのだから仕方がない。


 どうも、また会ったね。

 邪魔しに来たよ。


「ふっ、はははははっ。わざわざ来るなんてなぁ。罠とも知らずに。」

「知ってるさ。私達を引き付けて起きたいんだろ?」

「知った上で来た。」


 そうだ、あいつらの目的なら知っている。

 その上でこっちを選んだ。

 何故なら。


「守るべき村人がいなくなっては、戦う意味が無いからなっ。」

「馬鹿なっ。こうしている間にも、大蛇が復活するかも知れないんだぞ。」

「皆を守る。それだけだっ。」


 フィーが剣を振る。

 かわしたゴブリンが、後ろと衝突。

 そこを、フィーが斬る。


 あれなら、フィーでも行けるかな。

 なら、こっちはこっちで暴れるよっ。


にゃんっ。


 火の玉を作って拡散させる。

 それを、ゴブリンに降らせていく。

 ゴブリン達は、さらに大混乱。


ふぎゃーーーっ。


 そんなに密着するからだよ。

 ほらほら、もっとっ。

 

 炎の玉を降らせていく。

 その間に前に出て、群れを蹴り飛ばす。

 それを見た被り物のゴブリンが炎の玉を作る。


「くっ。ならば私がっ。」


にゃんっ。


 先に投げて阻止。

 させないよっ。


「くそっ。もっとゴブリンをっ。」


 ゴブリンの群れが数を減らしていく。

 一割は減っただろうか。

 すると、村人の一人がある方向を指さした。


「おい。あっちから誰か来るぞっ。」


 先程、ゴブリンが来なかった方角。

 そちらを見ると、何かの群れがこっちに向かっている。

 いつのまにか接近していたようだ。


「来たかっ。早くっ。協力してく、れ?」


 被り物のゴブリンがそっちを見て固まった。

 それもそのはず、その群れは遅れてきたゴブリンではない。


 あのマッチョ、まさかっ。

 港村のっ。


「漁師のみんなっ。どうしてっ。」

「どうしても何もねぇだろ。助けに来たんだよ。」


 一番前にいるマッチョが、にかっと笑った。

 群れの前で止まる。


「何故っ。ゴブリンはっ?」

「あぁ、あれね。邪魔だからやった。」

「え?」

「だーかーらー。全員まとめてすり潰したって言ってんだよ。」


 さすが。

 頼りになる。


「おぅ。嬢ちゃんも生きてんなっ。時間が来ても全然現れねぇからって、おやっさんが心配してたぜ。」

「すまない。見ての通り巻き込まれてな。」

「いや。元気なら良いんだ。んじゃあ、終わらせるか。行くぜっ。」


 後ろのマッチョが武器を上げて声を上げる。

 そして、ゴブリンの群れへと突っ込んだ。

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