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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
聖なる宝と古き英雄 ヴィオリズ王国編
199/283

奥へ奥へです

「どうだ? 見下される気持ちはよう。」

「く、くそー。」


 いえーい!

 ザマーミロー!


 悪顔の男は、悔しそうにローグを睨む。

 こちらと向こうが完全に入れ替わったのだ。

 形勢逆転と言って良いだろう。

 そんなローグを、フィーが感心する。


「凄いな。こうなる事を予測してたのか?」

「いいや、ただの予感だ。もしかしたらと、こいつらに話してtzのが上手く刺さったってだけだな。」


 それでも凄いよ!


 ハンターとしての勘なのだろう。

 こうなる可能性も考えて、仲間と対策していたようだ。

 そんなローグは、再び悪顔の男を睨む。

 

「という事だ。持ってる情報寄越せや。」

「ぐ、ぐう。そ、そうだ! 俺達と協力しないか? 案外良い関係になれると思うんだけどなぁ?」

「あ?」

「ごめんなさい!」


 はやっ!?


 もはや、先程までの悪質な顔はなりを潜めている。

 逆転された事が、相当に堪えているようだ。

 そんな悪顔の男をローグが睨み付ける。


「んで? 情報は?」

「ね、ねぇよ。」

「本当か?」

「本当だ! じゃなきゃ、こんな事してねぇだろぉっ。…し、してませんよぉ。へへっ。」


 情報を集める事すら出来ないからこその罠だ。

 そうなると、当然情報など持っている筈はない。


「そうか、それは残念だ。そうするとだ。こいつら、どうしようか。」

「極刑だ! 俺達にしようとしたみたいに海に流そうぜ。」

「いや。縛り付けて、囮に使おうぜ。」

「良いねぇ。それ賛成。」


 物騒な言葉が次々と湧いてくる。

 その度に、悪顔の男が震え上がる。


「ひ、ひぃ。見逃してくれねぇか? 謝るからよう。な? な?」

「それだけは嫌だ。でも、死なせるのもなんだかなぁ。こいつらと同じになるのは嫌だからなぁ。」


 我々は、極悪非道の集団ではない。

 命を奪う行為は、目の前にいる男と同レベルになってしまうのだ。

 だからと、処分に悩んでいる時だった。


「何か来てるな。」

「何かだと?」

「人ではない。でも、大群という事らしい。」

「ほう?」


 魔物の蛇の声を代弁するウィル。

 蛇が言うからには、本当に来ているのだろう。

 ただ、その何が来ているのかが重要なのだが。


「この島で大群って事は魔物だな。さっきの騒動で気づいたか。丁度良い。こいつらに押し付けるか。」

「え? マジで?」

「マジだ。良かったな。これぐらいで済んで。」


 今までの案に比べると、まだ生き残る可能性はあるだろう。

 だからと言って、ただで済む話ではなさそうだ。

 それを聞いた相手の仲間から文句の声が上がる。


「おい! 見捨てるのか!」

「ふざけるな! 死んだらどうする!」

「一緒に戦ってくれて良いだろ!」


 あまりの扱いに怒りが噴出したようだ。

 しかし、元はと言えば相手がまいた種だ。


「うるせぇ! てめぇらも戦士なら自分達でどうにかしろ! おら、お前ら行くぞ。」


 ローグの言葉に、次へと目指す一同。

 周りからは、沢山の足音が聞こえてくる。

 そんな一同へと、悪顔の男が叫ぶ。


「お前ら! 本当にこの先はヤバイんだぞ! ほんとなんだぞ! どうなっても知らないからなぁ!」


 脅しのような言葉が聞こえてくる。

 しかし、今更そんな言葉に怯える者達ではない。


「そんなの、とっくに覚悟してんだよ。」


 そう吐き残したローグと一同は、島の奥へと進んでいく。



 そうして、再び魔物を狩る道が続く。


「お前ら! どうやらこの先が本番みたいだ! 気ぃ引き締めてかかれよ!」

「「「おおおおおおおおっ!」」」


 返事と共に、迫る魔物を狩っていく。

 戦闘は続くも、衰えるような素振りはない。

 そして、それはフィーと俺も同じ事だ。


「はあっ。…っと、それで、次はどこを目指す?」

「あいつらの言葉を信じるなら、この先に強い奴らが集まってると思うのが自然だろうな。って事は、情報も集まってるってこった。」

「なら、目指すのもそこか。」

「だな。今はただ奥を目指すのみだ。お互い頑張ろうぜ。」

「勿論だ。」


にゃ!


 頑張ろうね!


 進めば進む程、険しくなる。

 それでも一同は、止まる事なく進んでいく。

 そんな一同の前に、再び大きな魔物が現れる。


「デカブツだぁ!」

「来たか。今度はどっちに逃げるんだ?」

「いや、逃げねぇよ。逃げる場所なんてもうねぇよ!」


 逃げた所で、また大きいのと遭遇するだろう。

 逃げる場所なんて存在なし。

 ならば、どうするか。


「こっから先は進む番だ! 作戦赤!」

「「「おう!」」」


 その言葉と共に、数人がデカブツに接近する。

 当然、デカブツは迫る人へと拳を振るう。


「危ない!」

「心配ねぇよ!」


 拳が落ちてくる瞬間、四方から複数の魔法がデガブツの顔を覆う。

 それにより、デガブツは悲鳴と共に顔を逸らして手で覆う。


 魔法!?


「魔法だと?」

「商人から買ったもんさ。数はないけどな。ほら! 今のうちだ!」


 それらの魔法は、突っ込まなかった者の手にある石から出ている。

 その魔法が動きを奪っている間に、迫る者達は一斉に斬りかかる。


「おらあっ!」

「くたばんなっ!」


 強力な攻撃がデガブツを襲っていく。

 それでも、倒れるまでにはいかない。


「おい! 来るぞ!」

「はっ、避けるには充分だ!」


 デカブツの攻撃が一同を襲う。

 しかし、デカブツだけ動きは遅い。

 避けるには充分だろう。

 その間に、再び魔法が襲う。


「おら! もう一発!」

「おうよ! こいつでも、食らっとけ!」


 先程のように攻撃が襲いかかる。

 そして、すぐさま向こうの攻撃を避ける。

 その繰り返しだ。

 と、思った時だった。


「なっ、魔法が切れた!」

「マジかよ。くぅ、石一つじゃ駄目だったか。」


 相手が思ったよりもタフだったのだ。

 魔法が切れた事により、相手の攻撃が続く。

 その様子をローグが睨む。


「攻めてがないかっ。引けっ。」

「いや。続けろ!」

「なっ。」


 デカブツが手を振りかぶる。

 次の瞬間、デカブツの顔に火の玉が突き刺さる。

 その火の玉は、俺が放った魔法だ。


 やった!


「よし。魔法なら、にゃんすけも放てるんでな!」


 こうして使うのは久し振りだけど!


 更なる複数の火の玉がデカブツの顔面へと突き刺さる。

 これには、デカブツも耐えられまい。

 それを見たローグが叫ぶ。


「やるじゃねぇか! お前ら! 今のうちだ!」

「「「おう!」」」

「今度は私もだ!」


 デカブツへ攻撃が炸裂する。

 受ける度に、相手が後ろへと下がっていく。

 そして、手が地面に着いた時だった。


「はあっ!」


 その懐に入り込んだフィーによる一閃。

 それを受けたデカブツは、液体となって散っていく。


「やったぜ!」

「中々やるじゃない? うちら。」


 デカブツの討伐に盛り上がる一同。

 その中で一息着くフィーの下へ、ローグが歩いてくる。


「相変わらず良い腕だ。しかも、魔法を使えるなんてな。」

「大物に効いたところは見た事がないけどな。」


にゃー。


 どうせ弱いですよーっと。


「ははっ。そうむくれるな。立派な戦力だ。また頼むぞ?」


にゃ? にゃっ!


 そこまで言うなら!


「「ははっ。」」


 現金な俺の反応に笑う二人。

 しかし、弱い魔法でも今は大事な戦力だ。

 存分に活躍するだろう。

 その間にも、一同は盛り上がる。


「よっしゃ! リーダー! このまま次に行こうぜ!」

「分かってると思うが、ここから先はあの強さの戦いが求められる。あまり調子に乗るなよ?」

「大丈夫だって。今の俺達なら…。」


ズドーーーーン!


 調子に乗る仲間の後ろから、もう一体が現れる。


「大丈夫……。ははっ。」

「ほら見たことか。ほら、戦闘準備だ!」


 見事なフラグだったね。


 呆れるローグの声に、次の戦闘へと入る一同。

 先程のように展開して武器を構えるが。


ゴゴゴゴゴッ。


「なんだ?」


 ふと、何処からか聞こえる音に警戒を解く。

 その直後、奥から飛んできたもう一匹が目の前のへと衝突する。


「な、なんだぁ!?」

「どこから来やがった!」


 飛んで来たよね?

 何で?


 衝突しあったデカブツは、重なるように倒れ込む。

 すると、驚く一同の前で飛んできた方が液体となって消える。

 代わりに、倒れている方の上に複数の人影が現れる。


「おっと、同業者かい? 悪いけど引いてくんないかねぇ?」

「なるほど、引いて欲しい理由があるんだな?」

「ちっ。面倒な事になりそうだね。」


 お互いのリーダーが睨み合う。

 こちらと同じく宝を探すチームだろう。

 二人のよる睨み合いが続くのだが。


「おっと。」


 その睨み合いは、足下のデカブツが起き上がる事によって中断する。

 更に、周りが段々騒がしくなっていく。


「残念だけど、続きは後で。あんた達が生きてたらの話だけどね。」

「ほざけ。その言葉、返してやらぁ。」


 そう言葉を交わした二人は、違う方へと散っていく。

 戦いは、更に激しくなりそうだ。

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