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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
聖なる宝と古き英雄 ヴィオリズ王国編
198/283

罠にはめられました

 紆余曲折ありながらも、一同は森を駆けていく。


「次の獲物だ!」

「ぶっ潰せ!」


 って、もう獲物扱いだよ。

 なんだか可哀想に見えてきたよ…。


 目の前に魔物が現れるもお構いないだ。

 敵ながら同情してしまう程の快進撃。

 そんな一同に遅れを取られないようにと、フィーと俺も倒していく。


「ハンターがこんなにいるとっ、こんなに楽とはなっ。だが、何処に向かうのかがっ、分からないとっ、同じ事の繰り返しだぞ?」

「そうだぜ? でも逆に、同じ事が起きない場所をっ、目指せば良いってっ、事になるだろう?」

「ん? どういう事だ?」


 行く宛があるの?


 剣を振りながらも答えるローグに疑問を持つ俺達。

 先程から同じ事の繰り返し。

 しかし、狙いがあっての事らしい。

 敵を斬り続けながらも説明をする。


「良いか? この島ってのは、かなりの奴らが調べ尽くしてる。っと、つまりだ、人の気配が微塵もない場所なんかっ、行っても意味がねぇだろう?」

「なるほどなっ。つまり、人がいる場所こそがっ、目的地ということだな。」

「正解だっ。おらあっ!」


 へー、ちゃんと考えてんだね。

 まぁ、考えなしに来るような場所じゃないもんね。


 命の危険がある場所でたださ迷えば、すぐに命を落としてしまう。

 なので、対策をして挑むのは当然の事だろう。

 勿論、一つや二つの策でどうにかなるとも思ってはいない。


「なら、まだ作戦はあるという事で良いんだな?」

「おうよ。宝の場所まで華麗に案内してやらぁ。ま、華麗とは程遠いなりだがな。がははっ!」

「反応に困るが。まぁ、頼りにさせてもらうっ。」


にゃ!


 頼んだよ!


 自信満々に笑う姿が頼もしい。

 それだけの自信があるという事だろう。

 そんな事もあり、快進撃を続ける一同だったが。


「おい! 道だ! 道が出来てるぞ!」

「は? 道なんて今までも……本当だ。」


 一同の目の前に、所々に出来ている土の壁が現れる。

 そして、その壁の合間を縫うように道が整備されている。

 明らかに、人の手が加えられているようだ。

 その先をフィーが覗き込む。


「人が通ったって事だな。探していたのはこれの事か?」

「そういう事だ。道が作られてるって事は、何度も通るからって事だからな。例えばだが、商人の元に買い出しに行く為…とかな。」


 足場が悪ければ自由に歩く事は出来ない。

 そうなると、何度も同じ場所を行き来する事は出来ない。

 その為の、整備された道なのだろう。

 すると、ウィルが壁の向こうへと視線を移す。


「どうやらそのようだな。いるぞ。」

「分かるのか?」

「あぁ。こいつがな。」


 そう言って、袖から出てきた蛇を見る。

 ウィルと契約している魔物だ。


「こいつは特殊な個体でな。遠くにいる生き物が、なんとなく分かるんだ。」

「人数もか?」

「あぁ。壁の向こうに、そこそこの数がいるみたいだ。」


 そう?

 よく分かんないけど。


 俺も壁の向こうを探ろうとも、人の気配は感じられない。

 それでも、断言するからには間違いはないのだろう。

 それを聞いたフィーは、横のローグを見る。


「らしいが、どうする?」

「決まってるだろう? お前ら! 前進だ!」

「マジか!?」


 マジなのか!?


 この先にいるのは、敵か味方か分からない。

 そんな状況で進むのは危険なのだろう。

 それにも関わらず、一同は遠慮なく道へと入っていく。

 それを見て唖然とする俺達の前にウィルが出る。


「マジみたいだな。俺達も行こう。」

「……あぁ。本当に信じて良いのか?」


 不安になるよね…。


 信じて良いのか悪いのか。

 先に心配になるが、着いていくしかないだろう。

 そんな事もあり、道を進んで行くが。


「人がいないぞ?」

「あぁ、静かだね。本当にいるの?」

「らしいけど。」


 どれだけ進んでも、人がいないのである。

 むしろ、魔物すらいなく静かな道が続いていく。

 そんな中、ウィルだけが目を細める。


「来る。」

「何が…。」


 その言葉の意味を聞こうとした時だった。


「そこのお前ら! 止まれぇーーーーっ!」


 どこからか叫ぶような声が聞こえてくる。

 その直後だった。


ガシャーーーーンッ!


 道を塞ぐように、大量の瓦礫が雪崩れ込む。


「くっ。さ、下がれーーー!」


 何かを感じた一同が、すぐさま後ろを向いて駆け出すが。


「されねぇよ!」


 その言葉と同時に、来た道を瓦礫が雪崩れ込む。

 道の横は土の壁、前後の道には瓦礫。

 北方塞がりになってしまう。


「しまったっ。」

「おい、どうなってやがるっ。」


 状況を探るように、辺りを見渡す一同。

 すると、そんな一同を囲うように土の壁の上に大量の人影が現れる。


「はっはーーっ。ようこそ獲物の皆さん? 我が城によーこそー!」


 その中の一人が悪に満ちた顔で一同を見下ろす。

 その周りでは、同じくにやけた者達が見下ろしている。

 それを見返すローグが顔を歪める。


「しまった。罠だったか。」

「おい! 本当に信じて良いんだよな!?」


にゃにゃっ!?


 まんまと引っ掛かってるんですがっ!?


 見るからに、相手の罠の中だ。

 本当に考えがあるのか疑わしい。

 それを見た向こうの悪顔の男か笑う。


「仲間割れか? はっ。でも残念。皆まとめておさらばよ。」

「くっ、俺達を殺すのか?」

「いや。皆まとめて海に流すだけさ。あー、なんて優しい俺なんだ。」

「いやいやっ、結局死ぬじゃないかっ。」

「それは知らんよ。興味ねぇからよぉ。」


 凄い無責任っ。

 いや。元々狙いはそれなのかな?


 一同の質問に、悪顔の男が飄々と返す。

 海に流せばどうなるかなど、知らない筈もない。

 結局、こちらの命は惜しまないという事だ。

 それを聞いたフィーが剣を構える。


「させると思うか?」

「この状況を見てそんな事が言えるのかい? へー、ばっかだねぇー。自分の立場ぐらい考えてから言って欲しいねぇ! おい!」 


 悪顔の男は、更に醜く顔を歪める。

 見渡す限り、向こうは武器を持って囲っている。

 こちらの状況が不利なのは明らかだ。


「ぐっ、卑怯な。貴様! 何が望みだ!」

「決まってんだろぉ、情報だよ。持ってる情報全部置いてきな!」


 どうやら理由があって捕らえているようだ。

 それを聞いて疑問を持ったフィーが聞き返す。


「情報だと? 何のだ?」

「はぁ? 宝の情報しかねぇだろうが。そんな事も分からないのかねぇー。本当に馬鹿だねぇ。」

「ぐうっ。いちいち癇に障る野郎だなっ。」


にゃー。


 どうどう。

 追い込まれてるのは事実なんだしね。


「言わなくても分かってるさ。」


 腹が立つ気持ちは充分に分かる。

 しかし、不利な状況で下手に相手を怒らせる事は出来ない。

 その様子を見た悪顔の男がにやける。


「ははっ。そこの間抜けヅラのおちびちゃんの方がかしこいじゃねぇか。」


 猫です(怒)


「まあ良いや。説明してやるよ。島中宝を探してたんだが見つからなくてねぇ。しかも、敵は強いし同業者も強者揃いときたもんだ。そんなんじゃあ情報も探せないってね。そこで思い付いたのがぁ…。」

「この罠って事か。」

「せいかーい。満点をあげちゃうよぉー。」


 罠にはめて情報を聞き出す。

 そうすれば、わざわざ危険な事をする必要はない。

 あまりの卑怯な作戦にフィーが顔を歪ませる。


「卑怯ものめっ。」

「はっ。褒め言葉だよぉ。生きて宝が手に入れば正解なのさ!」


 楽しそうに笑う悪顔の男。

 周りの者もつられて笑っている。

 それ見たフィーは、横のローグを見る。


「おい! 何か抜け出す策は無いのか!」

「おっと無駄だよぉ。この状況で何が出来るというんだい? まんまとノコノコ来やがってさぁ。ほんっっっとーに、馬鹿な奴らだねぇ。」

「お前には聞いていない!」


 代わりに答える悪顔の男に怒りをぶつけるフィー。

 何も出来ない状況に、一同の冷や汗が止まらない。

 そんな中で、当のローグが肩を落として笑う。


「そうだな、本当に馬鹿だな。」

「ローグ!?」


にゃ!?


 諦めちゃうの!?


 諦めたかのように手を上げて首を横に振る。

 打つ手が無いかのように薄く笑っている。


「本当に馬鹿だ。こんな簡単な事、誰だってするさ。誰だって、勿論、俺だって……なぁっ!」


 突然、態度を変えたかのようにニヤリと笑う。

 それ見た悪顔の男の笑いが崩れる。


「はぁ? 何言って…。」

「お前ら! 作戦、黒だ!」

「「「おう!」」」


 そう叫ぶと同時に、懐から小さな玉を取り出す。

 そして、同じように一同も同じ物を取り出す。


「ぶちかませーーーーーっ!」


 その言葉と共に、小さな玉が地面へと叩きつけられていく。

 すると、玉が砕けて煙が飛び出す。

 その煙は、辺りに広がり全てを隠す。


「な、何をっ。」


 その光景に悪顔の男が驚いて顔を塞いだ直後だった。


「うわっ。」

「うおおっ。」

「ちょっ。」


 あちこちから驚きの声が上がる。

 しかし、煙で何が起きているかが分からない。

 それは、フィーと俺も同じ事。


「一体何だ?」


 見えないっ。


 煙の発生近くだと、より分からない。

 目を凝らして見ても、状況が分からない。

 そんな風に戸惑っていると。


「フィー! ウィル! にゃんぼう! 来い!」

「行こう。」

「あ、あぁ。」


 にゃんすけです。

 って、ちょっと待ってっ。


 誘われるままに、声がする方へと向かう。

 それからしばらく同じ状況が続き、遂に煙が晴れていく。

 そんな中、悪顔の男が目を凝らして周りを見る。


「おいおい。何をしやがっ…。」


 そう言いかけて言葉が止まる。

 何故なら、獲物の代わりに見知った者達が罠の中にいたからだ。


「おい! どうしたよ! どういう事なんだよ!」

「こういう事だよ!」

「え?」


 直後、背中からの痛みと共に前へと吹っ飛ぶ悪顔の男。

 そのまま、仲間達が待つ罠の中へと落ちていく。

 そんな悪顔の男を見下ろしながらローグがニヤリと笑う。


「形勢逆転だな。お馬鹿さん。」


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